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2024年7月23日

中国商務部は、7月23日午前0時をもって、日本製ステンレス製品に対するアンチダンピング課税措置を撤廃しました。
我が国の申立てに基づき、同措置はWTOで審理され、WTOアンチダンピング協定に整合しない措置であるとして、WTO紛争解決機関から中国に対し是正が勧告されていました。

1.概要

2023年6月19日、WTO紛争解決小委員会(パネル)は、我が国の申立てに基づき、日本製ステンレス製品に対するアンチダンピング課税措置(以下、「本アンチダンピング措置」といいます。)につき、「千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第六条の実施に関する協定(アンチダンピング協定)」に整合しないと判断し、中国に対し措置の是正を勧告しました。
その後、日中両国は、中国が2024年5月8日までに勧告を履行することに合意し、中国政府は、同年7月23日午前0時をもって、本アンチダンピング措置を撤廃しました。

2.日本政府の受け止め

我が国は、中国に対し、WTO協定に整合しない本アンチダンピング措置を速やかに撤廃するよう繰り返し求めてきました。今回日本製品に対する本アンチダンピング措置が撤廃されたことは、我が国がWTO紛争解決手続を申し立て、我が国の主張が認められた成果であると考えます。
我が国は、今後も、WTO紛争解決手続を通じ、保護主義的な貿易救済措置の濫用はWTO協定上容認されないことを明確にし、かかる措置の是正・撤廃を目指していきます。

3.参考

(参考1)WTO協定に基づく紛争解決手続

政府間の協議によって問題解決に至らない場合、パネル(第1審)という準司法的な第三者機関が、WTO加盟国の要請により、問題となっている措置のWTO協定整合性について審理・判断し、違反が認められる場合にはその是正を勧告します。措置国が妥当な期間内に勧告に沿って違反を是正しない場合、申立国は関税譲許その他の義務を停止すること(いわゆる「対抗措置」)ができます。
なお、パネルの判断に不服がある場合は上訴することができますが、第2審の上級委員会は現在機能停止中であるため、その機能を暫定的に代替すべく、 MPIA(多数国間暫定上訴仲裁アレンジメント)と呼ばれる仲裁手続が2020年4月に発足し、日本は2023年3月に参加しました(現時点で日本、中国を含む54か国・地域が参加)。MPIA参加国は、パネル判断を不服とする場合にも機能停止中の上級委員会に上訴して審理待ちのまま手続を中断させること(いわゆる「空上訴」)はせず、MPIAに基づく仲裁手続(紛争解決に係る規則及び手続に関する了解(DSU)第25条に基づく合意による仲裁)による解決をはかることとしています。
本件では、中国はパネル判断(2023年6月19日公表)を「空上訴」せず、またMPIA上訴仲裁にも付さなかったため、同判断はWTO紛争解決機関により採択されました(2023年7月28日)。その後、日中両国は、中国が2024年5月8日までに勧告を履行することに合意しました。しかし、本年5月8日以降も本アンチダンピング措置が継続していたため、日本は措置の早期撤廃を促しつつ、WTO協定上更なる手続(勧告履行の有無・適否を確認する手続、及び、対抗措置を申請する手続等)の検討を進め、5月29日には、今後の手続の遂行順序(「シークエンス合意」)をWTOに通報しました。

(参考2)ステンレス製品とは(対象製品)

本アンチダンピング措置では、ステンレス鋼片(スラブ)、ステンレス鋼熱間圧延鋼板(カットシート及び厚板)及びステンレス鋼熱間圧延コイルが対象製品となっています。ステンレス鋼片は、精錬された溶鋼を鋳造して得られる半製品です。ステンレス鋼熱間圧延鋼板は、船舶・橋梁など建材部材や産業用機械に利用されています。ステンレス鋼熱間圧延コイルは、自動車部品、家庭用電化製品用冷延鋼帯の原材料等に利用されています。

(参考3)アンチダンピング措置とは

ある商品の輸出向け販売価格が国内向け販売価格よりも安く、その輸出によって輸入国内における競合する産業が損害を被っていることが正式な調査により明らかになった場合に、その商品に対して国内向け販売価格と輸出向け販売価格の差を上限とする関税を賦課することをいいます。
アンチダンピング措置は、発動から5年以内に終了するのが原則ですが、措置延長調査を行い、アンチダンピング措置を終了するとダンピング及び損害が存続し又は再発するおそれがあると認定された場合は、措置を延長することができます。
なお、現在中国が日本製品に対し課税中のアンチダンピング措置19件のうち、15件は期間が延長されて課税が続いています。
本アンチダンピング措置では、日本を含む4カ国・地域(日本、韓国、インドネシア及びEU)から中国に輸入されるステンレス製品に対し課税が行われていました(措置期間:2019年7月23日~2024年7月22日)。7月22日、措置延長調査が開始されましたが、同延長調査の対象には日本は含まれておらず、韓国、インドネシア、EU、英国(2020年にEUから離脱したため)に対してのみ延長調査を開始するとしています。したがって、日本製ステンレス製品に対する本アンチダンピング措置は、2024年7月22日の措置期間末日の経過をもって終了・撤廃されました。

(参考4)本件に係る過去のニュースリリース

担当

  • WTO紛争処理について

    通商政策局 国際経済部
    国際経済紛争対策室長 寺西
    担当者:西村、杉澤
    電話:03-3501-1511(内線3056)
    メール:bzl-s-kikobu-kokusaifunso★meti.go.jp
    ※[★]を[@]に置き換えてください。

  • ステンレス産業について

    製造産業局 金属課長 鍋島
    担当者:高橋、焼家
    電話:03-3501-1511(内線 3661)
    メール:bzl-s-seizo-kinzoku★meti.go.jp
    ※[★]を[@]に置き換えてください。

  • 日中経済関係について

    通商政策局 北東アジア課長 福永
    担当者:国籐、渡邊
    電話:03-3501-1511(内線 3016)
    メール:bzl-s-tsusei-hokutoasia★meti.go.jp
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