環境省・新着情報

伊藤大臣閣議後記者会見録 (令和6年7月19日(金)13:00~13:25 於:環境省第一会議室)

1.発言要旨

まず、新潟水俣病関係団体との懇談について御報告申し上げます。
7月17日及び18日に新潟県新潟市を訪問し、新潟水俣病関係団体との懇談を行いました。熊本における懇談に引き続き、今回、新潟での懇談においてしっかりと時間を確保して、皆様からじっくりお話をお伺いすることができ、大変貴重な機会になりました。ありがとうございます。
今後は、団体の皆様から実務者レベルでの意見交換の御要望をいただいたことも踏まえ、様々な課題について、実務者レベルで関係団体の皆様と意見交換を行い、真摯に検討することで水俣病対策を前進させてまいります。
次に、この夏の熱中症対策についてでございます。
昨日、気象庁より、関東甲信・東海地方で梅雨明けが発表されました。また、この週末から多くの小・中学校が夏休みに入ります。厳しい夏が本格化することに備えて、国民の皆様に改めて熱中症対策についてお願い申し上げます。
環境省が暑さ指数に基づき発表しております熱中症警戒アラートは、今年は既に全国39地域で292回出されており、今後、さらに増加することが見込まれます。熱中症対策強化のため、改正気候変動適応法に基づき、今年度から新たに市区町村にクーリングシェルターの指定の制度や、従来の熱中症警戒アラートの一段上の熱中症特別警戒アラートの運用を開始しました。
クーリングシェルターについては、7月1日の時点で全国710市区町村において指定されています。本日、各市区町村のクーリングシェルターの情報を環境省のウェブサイトに公表しましたので、地域の情報の確認などに御活用ください。
また、熱中症特別警戒アラートについては、これまで発表はされておりませんが、今後、厳しい暑さが続く見込みです。環境省では、本日から連続7日間、LINEや環境省公式Xなどで、熱中症予防行動に関する呼びかけを集中的に行ってまいります。加えて、来週23日火曜日には、私が議長を務める熱中症対策推進会議を開催し、政府としてのこの夏の熱中症対策について議論する予定です。
熱中症予防行動は、命を守るための行動です。国民の皆様には、暑さ指数や熱中症警戒アラートなどの情報を活用し、小まめな水分、塩分補給、適切なエアコンの使用、クーリングシェルターの利用など、熱中症を予防するための行動をお願いいたします。
 

2.質疑応答

(記者)幹事社の朝日新聞の市野です。私から2つ質問させていただきます。
 1つ目、熱中症対策についてですね、クーリングシェルターの指定状況、発表いただいたんですが、全国で1,900ほど自治体があるうち710ということで、4割程度かと思います。この数字の評価というものを教えてください。また、指定が進んでいない自治体というのがどのような課題を抱えているか、その課題に対してどのように支援していくお考えがあるのか、その点についても併せてお聞かせください。
(大臣)はい、ありがとうございます。
 市区町村がクーリングシェルターを指定する制度は、本年4月の改正気候変動適応法の全面施行によりスタートしたものでございます。法律が施行されてから3か月の間に多くの市区町村が検討、準備を進め、全国の約4割超の市区町村において指定されていることは、一定の進展だというふうに考えております。また、現在も引き続きクーリングシェルターの指定の手続を進めていただいている市区町村があるとも承知しております。
 まだクーリングシェルターの指定をしていない市区町村が抱えている課題については、一概に言うのは難しいんですけれども、例えば指定すべき施設の選択や指定後の施設の運営方法などの検討に時間を要していると想定されております。環境省としては、必要なアドバイスを行っているところでございます。環境省としては、クーリングシェルターの指定が進むよう、地方公共団体向けの研修での事例の横展開などを通じて、引き続き地方公共団体の取組を後押ししてまいりたいと、そういうふうに考えております。
(記者)ありがとうございます。
 もう一点、本日午前に、官邸で観光立国推進閣僚会議があり、伊藤大臣も出席されたと理解しています。一部報道でもあるとおり、2031年までに全国の35か所の国立公園に高級ホテルを誘致するというふうな旨も出ているところですけれども、総理からどのような指示を受けたのか、環境省としてどのように取り組む意向があるのか教えてください。
(大臣)まず、私のほうから発表したことを申し上げたいと思うんですけども。今日の午前中、11時35分からあったんですけども、環境省では国立公園の美しい自然の中での滞在型高付加価値観光の推進を図るために、4か所の国立公園での先端モデルの事業を進めております。
 その1つである十和田八幡平国立公園では、宿泊施設の誘致を含む滞在拠点の上質化や、自然体験アクティビティなどをパッケージで検討しているところでございます。こういった事業で得た知見も活用して、2031年までに全ての国立公園で、地域の理解を得つつ、民間活用による魅力向上の取組を展開していきたいと思いまして、そのことを本日の観光立国推進閣僚会議でも説明したところでございます。
 そして、私も直接申し上げましたけれども、政府としては、高級リゾートホテルに限定したものではない宿泊施設の誘致を含む滞在拠点の上質化を行うということでありまして、あくまで地域の理解、そして環境保全、これを前提に、世界水準のナショナルパーク化を実現すべく、民間活用による魅力向上事業を実施していくということでございます。
 それから、総理からの発言は皆さんも御存じだと思いますけれども、ネイチャーツーリズムの視点から、全国35か所の全ての国立公園において、先端モデル事業を踏まえ、国立公園制度100年を迎える令和13年までに、地域の理解と環境保全、これを前提に世界水準のナショナルパーク化を実現すべく、民間活用による魅力向上事業を実施してくださいという御指示がありました。
 以上でございます。
 
(記者)新潟日報の貝瀬でございます。
 昨日まで当県にお越しいただきまして、ありがとうございました。それに関してなんですけれども、新潟水俣病に係る国の責任について、昨日のぶら下がり取材の中で大臣から御発言がありまして、結構内容について患者団体の方々からも画期的だとか、懇談して良かったという声もあったところなんですけれども、その後に事務方から、何か多少やり取りに齟齬があったような指摘もあったので、改めてお伺いしたいと思います。改めて伺いますが、新潟水俣病が熊本から9年後に第二の水俣病として発生してしまったということについて、国の責任を大臣は改めてどのようにお考えでしょうか。
(大臣)これまでの裁判でも判事されているとおり、新潟水俣病の発生拡大について、国に法的責任はないと考えております。その上で申し上げれば、今回2日間にわたって新潟水俣病関係団体と懇談を行って、様々なお話を伺う中で、現在、水俣病対策を担当する環境省として、広い意味で責任を感じているということを申し上げたところでございます。そこも含めて、今回の懇談でいただいた御意見、御要望を踏まえて、実務レベルの意見交換を進めて、水俣病対策を前進させていきたいと、そういうように考えております。
(記者)法的責任と広い意味での責任とおっしゃるその違いについて、もう少しお話しいただけると分かりやすいのかなと思うんですが。
(大臣)法的責任は御存じのように、今、係争中の地裁がありまして、それは否定されて判事されているわけでございます。責任という言葉は、どういうふうに捉えるかということでございますけれども、環境省は人の命と環境を守るというのが環境省の目的でありますから、そういう意味での責任はあるということです。
(記者)その発生拡大について、法的責任があるとは言わないけれども反省すべきところはあったという意味では、国の責任は広い意味ではあっただろうということなんでしょうか
(大臣)その発生拡大の時期は、まだ環境庁もできていない時期なんですね。ですから、御質問も環境省の責任という質問ではなくて、国の責任ですから、何かできることがあったのではないかと推測すると、具体的にどうと言ったら、国としては環境省と同じように国民の命を守る、国民の健康を守るという責務がありますから、そういう意味での責任はあるだろうという趣旨で申し上げたところです。
(記者)分かりました。
 
(記者)日刊工業新聞の松木です。
 ちょっと古い話になりますけれども、先週の金曜日、企業グループの日本気候リーダーズ・パートナーシップが2035年の温室効果ガス排出量75%削減を求めた提言を手交しました。大臣室でのやり取りで、JCLPがコストや量の課題から、日本の再エネの調達環境が難しいんだという話をされていたかと思います。そういった脱炭素化の取組が遅れると、日本の産業基盤が毀損するという訴えだったと思うんですけども、それについての大臣の受け止めと環境政策への反映についてお聞きしたいのが一点です。
 もう1つ、提言の中で、国の政策を決める審議会メンバーについて、エネルギーの需要家、企業を入れてほしいという要望がありました。先週のこの会見の中で、大臣は環境省所管の会議であれば、バランス等を取るように私自身が言うというような趣旨の発言をされたかと思います。今の温対計画を議論している中環審の小委員会のメンバーを見ると、学者の方だとかシンクタンクの方が多いかと思うんですけども、その辺について、大臣はバランスを取れた委員構成と評価されているのかどうかを聞かせてください。
(大臣)先週、7月12日、脱炭素社会に向けた取組をビジネスの立場から先導されているJCLPの皆様から、1.5度目標に整合した次期NDCの策定を求めることなどを内容とする提言をいただいたところでございます。その中で、今御意見があった幾つかの数字もありました。脱炭素が経済成長のエンジンになるとの考えの下、政府においても、GX実現に向けた取組を進めております。環境省としては、JCLPをはじめとして、企業の皆様の実践を加速化できるように、地域、暮らしといった需要側の取組を引き続き主導してまいりたいと思います。
 それから、再エネについては、主力電源として最優先の原則のもと、最大限導入するということが我が国の方針です。次期NDCの策定や、地球温暖化対策計画の見直しに向けた議論を先月スタートさせました。2030年以降の再エネのさらなる導入拡大、そしてまた、産業基盤の確保といった観点も含め、経済産業省とも密に連携を図りながら検討を進めてまいりたいと考えております。
 2つ目の御質問でございますけれども、次期NDCと地球温暖化対策計画を議論する合同審議会の委員構成については、専門分野、年齢層、性別などのいろんな観点でバランスを取ることが大事であって、バランスを取っていると思います。それから、エネルギーの需要家のサイドも、例えば経団連であるとか、日本商工会議所にも参画していただいております。今後、この合同審議会では、ヒアリングなどを通じてエネルギー需要家を含む多様な主体から意見を伺う予定でございまして、ディマンド・リスポンス、デコ活といった需要家側における対策についても議論を深めてまいりたいと、そのように考えております。
 
(記者)NHKの林と申します。
 熱中症対策について伺いたいんですが、言及いただいたクーリングシェルターについて、改めて住民の方にとって、どういう方々にどういうふうに活用してもらうというのが、政府として見ていることなのかということを伺ってよろしいでしょうか。また、その呼びかけをしていただければと思うんですけれども。
(大臣)クーリングシェルターと一言に言っても、いろんなシェルターがあるんです。例えば、大規模商業施設もありますし、小さな理容室とか美容室もあるんです。それから、集会所みたいなところもある。ですから、熱中症対策ですから、なるだけ今いるところ、あるいは住んでいるところ、働いているところのそばに行くということが大事だろうと思います。
 さっきの質問にもかぶるんですけども、クーリングシェルターに指定されるには何か専門の係員がいなくてはならないという誤解があるんですが、そんなことはないんです。理容室とか美容室に専門の係員はいませんので。しっかりとしたエアコンがあって、それなりの遮熱効果がある建物であればいいわけです。
 ですから、国民の皆様には、それぞれ自分の住んでいるところ、あるいは昼間だったら働いているところ、あるいはたまたま出かけている場所でしたら、そのそばのどこにシェルターがあるかということを周知しておくということも大事で、その辺を環境省としても、地方自治体と協力して、どうやったらそういう情報がいち早く、特に携帯電話等でつかめるかについても、これから検討を進めてまいりたいと、そういうふうに思います。
(記者)住民の方々もシェルターの場所を発信したような情報で確認して、必要なら活用されると。
(大臣)はい。住民の方が、今はやっぱり携帯電話で見る場合も多いと思うので、そういうことがどういうふうにできるか、最終的には自治体が実施するものだと思いますので、連携してまいりたいと、そういうふうに思います。
 
(記者)共同通信の堀口です。
先ほどの国立公園制度100年のタイミングで行う魅力向上事業なんですけれども、高級リゾートホテルの誘致以外では、例えば、具体的にどんなものが想定されるんでしょうか。
(大臣)今のところ、具体的にどういうものということは私のほうから言及できないんですけども、決して高級リゾートホテルだけを考えているのではなくて、それ以上に、環境省としては、環境との調和、それから地域との調整、それを踏まえた上で、上質な宿泊施設を誘致すると、あるいは既にあるものに対して上質化していくという選択肢もあると思います。
(記者)あくまで宿泊施設ということなんでしょうか、その魅力向上事業というのは。
(大臣)宿泊施設のみではありません。今日は、私以外にも、文部科学大臣であるとか、国土交通大臣であるとか、複数の大臣がいらっしゃいまして、それぞれの省庁と連携しながら、魅力向上を総合的に図っていくということが必要だろうと思います。例えば、文部科学大臣であれば、文化的な価値、これも大変魅力向上の大きな要素ですね。そういうことも含めて、総合的に政府として魅力向上事業をしていくというのが趣旨で、今日の官邸での会議があったというふうに承知しております。
 
(記者)TBSテレビの池田と申します。
 今のお話で、今日の総理からの指示を受けて、環境省としてホテル誘致だけではないと思うんですが、ホテル誘致も含めた事業を全ての国立公園で2031年までに実施することを目指すということでよろしかったでしょうか。
(大臣)ホテル事業も含めて、環境省が所管しているものはいろんなことがあるけども、例えば道しるべを多言語化するといこともあるかと思います。皆さんのほうにペーパーが行っているかどうか分かりませんけども、もし無ければ、事務方から皆さんにお配りしますが、いろんなところがあります。宿泊施設だけではありません。野外アクティビティのプロモーションみたいなものもあります。それから、ここには書いていないけれども、環境省がもともとやっているのは、登山道とかトレイルの場所の道しるべというのをやっています。それをこれから外国の方がいらっしゃることを考えると、多言語化も必要じゃないかと、そんなことも考えています。総合的に、日本の国立公園に来てよかったなということをつくることが魅力向上だと思います。
 
(記者)熊日の髙宗です。
 水俣病の集団訴訟で、国が主張されている除斥期間についてお尋ねしたいと思います。旧優生保護法を違憲として、最高裁判決が、除斥期間について著しく正義公平の理念に反して容認できない場合は適用しないことが可能という判断を示しています。岸田首相が、旧優生保護法に関しては除斥期間の主張を撤回するというふうに表明されているんですが、水俣病の訴訟ではこの除斥期間の主張を継続されるのか、国の責任が熊本の水俣病では確定していますけども、こういう公平の理念に反するという状況ではないのか、大臣の見解を教えてください。
(大臣)水俣病訴訟における除斥期間に関する主張については、係争中なのでコメントを差し控えさせていただきたいと思います。
(記者)主張は続けられるのでしょうか。
(大臣)除斥期間そのものは環境省の法律ではありませんけども、そのように裁判所が判断していると思います。
 
(記者)エネルギージャーナル社の清水です。
 外交に造詣が深い大臣のことで伺いますが、昨日、太平洋・島サミットが終了して、それで共同宣言とか、首脳宣言が出ましたけれども、中国に対する威圧的な対応への、その3か国の言わば新たなその懸念というのが随分表明されていますけど、一方で、環境省は日中環境協力とか、あるいはG7でのパリ協定へのゼロカーボンとか、そういうものも途上国が非常に強く主張していたわけです。今回の島サミットの環境面から見て、中国との環境協力の継続と、その後段の、島しょ国が要望していた脱炭素の主要国の対応、これはどう評価していますか。
(大臣)必ずしも二項対立的な問題ではないと思います。地球温暖化、あるいは気候変動によって、島しょ国、特にツバルをはじめとする海抜高度の低い島しょ国は、一部もうニュージーランド等に移住しなければならないような状況も生まれているわけでございます。ですから、やっぱり脱炭素化を進めるということは、島しょ国でも重要であるとともに、もちろん中国との関係でも重要だと思います。
 地球の気候変動の影響というのは、もちろん日本にも世界にも及んでいるわけでございますけれども、島しょ国においては、まさに、大げさに言うと、このまま進むと、自分の国が海の底に沈んでしまうかもしれないという危機感を持っていると思います。ですから、そこも含めて日本は協力をしておりますし、これからも協力関係を進めてまいりたいと思います。
 ですから、中国との関係と島しょ国の関係が対立するものでないと思います。やはり、前々から申し上げているように、地球環境が悪くなれば、特に気候変動がこのまま進めば、島しょ国も中国も日本も、またほかのG6も持続がかなり難しくなる状況ということに、今、我々は直面しているんだろうと思います。
 

会見動画は以下にございます。
https://www.youtube.com/watch?v=Lj-OQSnnveE

(以上)

発信元サイトへ