文科省・新着情報

1.日時

令和6年7月5日(金曜日)13時30分~15時30分

2.場所

対面及びオンライン会議にて開催

3.議題

  1. 「常陽」への新燃料確保・供給
  2. 原子力バック援護作業部会における議論の報告
  3. 今後の原子力科学技術に関する政策の方向性
  4. その他

4.出席者

委員

寺井主査
黒﨑委員
秋山委員
石川委員
大塚委員
尾崎委員
小澤委員
高木委員
松浦委員
和田委員

文部科学省

清浦 大臣官房審議官
井出 研究開発戦略官
奥 原子力課 課長
前田 放射性廃棄物企画室 対策官
髙倉 原子力課 課長補佐
生方 原子力課 課長補佐

オブザーバー

皆藤 威二 次長 日本原子力研究開発機構 大洗研究所 戦略推進部
郡司 保利 様  日本原子力研究開発機構 エネルギー開発領域 上級技術専門官

5.議事録

原子力科学技術委員会 原子力研究開発・基盤・人材作業部会(第23回)
令和6年7月5日(金曜日)13時30分~15時30分 

【生方課長補佐】 定刻になりましたので、第23回 原子力研究開発・基盤・人材作業部会を開会いたします。今回の作業部会は対面とオンラインを併用したハイブリッド形式にて開催しております。
 まず、オンラインにてご出席されている方への留意事項をご説明いたします。委員の皆さまにおかれましては、現在遠隔会議システムWebex上で映像および音声が送受信できる状態となっております。ご発言される際は挙手ボタンを押していただくと、画面の左上に挙手マークが表示されますので、順番に主査よりご指名をいたします。ご発言いただいた後は、もう一度挙手ボタンを押して手を下ろしてください。会議中にビデオ映像および音声が途切れている場合、その時間帯はご退席されているものと見なさせていただきます。遠隔会議システムの接続の不具合等が生じた際は、随時事務局までお電話にてお知らせください。議事録につきましては、事務局にて会議を録音し、後日文字起こしをいたします。事務局以外の方の会議の録画および録音はお控えください。以上が本日の進行に当たっての留意事項となります。
 続いて本日の配布資料の確認をさせていただきます。委員の皆さまおよび傍聴の登録をされた方宛に、メールにて配布資料をお送りさせていただいております。お手元に議事次第を配布しておりますが、本日は議題が3点ございます。1点目が「常陽」への新燃料確保・供給。2点目が原子力バックエンド作業部会における議論の報告。3点目が今後の原子力科学技術に関する政策の方向性でございます。配布資料として資料が4つと参考資料が4つございます。お手元の資料をご確認いただき、不足等ございましたら事務局までお知らせください。また、その他にも何かございましたら、随時お申し付けください。時間は15時30分までを予定しております。
 委員の皆さまのご出席状況につきましては、開始前に事務局にて確認させていただいております。本日は10名の委員にご出席いただいており、運営規則の第3条に規定されている定足数の過半数を満たしておりますのでご報告いたします。
また、本日は話題提供のため、日本原子力研究開発機構 大洗研究所 戦略推進部次長の皆藤威二様、同機構エネルギー開発領域 上級技術専門官の郡司保利様にご参加いただいております。
 続きまして、事務局参加者についてご連絡いたします。文部科学省からは、大臣官房審議官の清浦、研究開発局原子力課課長の奥、研究開発戦略官核燃料サイクル廃止措置担当の井出、放射性廃棄物企画室の前田、原子力課課長補佐の高倉と私、生方が出席しております。
 それではこれから議事に入らせていただきますが、運営規則第5条に基づき、本会議は公開とさせていただきます。また、第6条に基づき、本日の議事録につきましてもホームページに掲載いたします。事務局からは以上です。ここからは寺井主査に議事の進行をお願いしたいと思います。
 
【寺井主査】 主査を仰せつかっております寺井でございます。皆さま、こんにちは。こちらに来ていただいている方につきましては、暑い中、ありがとうございます。また、リモートでご参加の方々、お忙しいところ、ありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。
 それでは、これから私のほうで司会をさせていただきますが、議事に先立ちまして、委員の方がおひとり交代になってございます。電事連の中熊委員の後任として大塚委員です。
 
【大塚委員】 寺井先生、ご紹介ありがとうございます。電気事業連合会の大塚でございます。私は電事連に来る前は、東京電力で30年ほど事業者として原子力部門に関する業務に従事してまいりました。この経験を生かして、この部会にも貢献できたらと考えてございますので、皆さま、よろしくお願いいたします。以上です。
 
【寺井主査】 どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。それでは本日の議題は、お手元の議事次第にございます通り、議題の1から3まででございます。それでは早速でございますが、本日最初の議題は、「常陽」への新燃料確保・供給でございます。まず始めに、日本原子力機構の郡司様からご説明をお願いいたします。
 
【郡司様】 ありがとうございます。原子力機構の郡司でございます。それでは早速、「常陽」への新燃料確保の供給ということで、ご説明させていただきます。
 1ページめくっていただいて、「常陽」への期待という観点ですが、これまで本会合でもご説明させていただいた通り、まずはカーボンニュートラル、原子力の持続可能性への貢献という観点から、次世代の革新炉開発の一環としまして、特に高速炉に向けた経済性に優れた燃料の開発、または放射性廃棄物の有害度を低減するための燃料の開発。このための照射試験を行うことが必要だと認識しております。
 また、新しい医療への貢献としては、医療用ラジオアイソトープであるアクチニウム225の製造実証を行い、がん細胞だけを選択的に放射線で攻撃できる薬剤の研究開発にも貢献していきたいと思っております。その他、これまで本会議の委員の方々からもコメントいただいております通り、国際協力や大学等の共同研究、人材育成といった観点でも期待されていると認識しております。次のページをお願いいたします。
 特に、その中でも高速炉開発に向けた「常陽」への期待ですが、高速炉は経済性や環境負荷低減に関する実証が重要だと認識しています。経済性の観点では、燃料を高燃焼度化し、長期間使用すること、またより高温での使用が可能な燃料によって発電効率を上げることが必要だと考えています。また、環境負荷の低減という観点では、放射性毒性が強く半減期が極めて長いマイナーアクチノイドを燃料として使用することで、廃棄物の減容・有害度の低減を可能にします。これらのMA含有燃料の開発が必要だと考えています。これらの燃料の開発においては、「常陽」での照射試験を通じて許認可データを取得し、燃料の健全性を実証することが不可欠だと認識しています。
 次のページをお願いいたします。特に燃料の観点で、高速炉燃料の開発ですが、ペレットの中心部をあらかじめ中空にしておき、燃料溶融防止や燃料の膨れによる被覆管との機械的相互作用を抑制する太径中空燃料、高速中性子による膨れを抑制し、耐照射特性や高温での強度に優れたODS鋼の開発を進めることが必要だと考えています。また、環境負荷低減としては、先ほどご説明している通り、MAを含有した燃料の開発が必要だと考えており、これについては「常陽」で継続的に照射試験を行い、データを取り、健全性を実証することが必要だと認識しています。また、これらの開発を通じて、被覆管材料や炉心材料のサプライチェーンの再構築も極めて重要な課題だと認識しています。次のページをお願いいたします。
 具体的に「常陽」の運転計画のイメージですが、現在「常陽」では2026年度半ばの運転開始を目指して、新規制基準対応等の工事と準備を進めております。これまで述べてきた通り、この燃料開発をやっていく上では、照射試験が必要でして、ここの表にも示している通り、様々な照射試験をやっていくことが必要ですし、このためには時間がすごくかかるという課題がございます。こういう観点において、当面運転するための在庫の燃料というのはありまして、それによって運転は可能ですが、今後の運転の方法や計画によっては、運転期間は変わってきますけども、高速炉の実用化に向けた技術実証には中長期的な技術開発が必要になりますので、すごく時間がかかるという観点においても、新たな燃料の確保が必要な見通しでございます。次のページお願いいたします。
 一方、この燃料の開発においては、製造技術という観点からの開発も重要だというふうに我々は認識しております。先ほどご説明したような太径中空燃料は中空ペレットと言って、ペレットの中心に穴が開いているものですが、これの品質の安定性や検査の方法など、これまで少量での試験はやってきましたけども、量産規模で確実にできるというところの実証が必要だと思っています。また、先ほど述べたODS鋼の被覆管については、従来のステンレスによる被覆管ではTIG溶接という溶融溶接を行ってきたわけですけれども、ODS鋼は材質の特性上、固相圧接による加圧抵抗溶接という技術を使っていかなければならないということもありまして、これにおける量産での品質の安定性を確保した燃料ピンの加工技術といった部分も実証していくことが必要だというふうに思っています。また、環境負荷低減のためのMA燃料については、燃料自体にMAが入っているということで線量が高いので、従来のグローブボックスにおける製造が困難です。そのため、セル構造での燃料製造が必要になります。そうなるとグローブボックス以上に遠隔自動での燃料製造や保守技術の開発をしっかりと確立していくことが必要になります。このように、高速炉燃料の実用化に向けては、インフラ整備を含めた開発が必要だと認識しています。次のページお願いいたします。
 以上のように、高速炉燃料における課題として、大きく2つ述べさせていただきました。要は燃料開発において照射挙動のデータの取得や健全性の確認のために「常陽」での継続的な照射試験が必要だということと、そのために新燃料の確保が必要だということ。2点目は燃料の高性能化、高燃焼度化、MA燃料の製造技術の開発も併せてやっていくことが必要だというふうに認識しています。続いて、次のページお願いいたします。
 実際に「常陽」に向けた燃料確保の方策として、いくつかありますが、まずは海外調達という観点で見た場合、下の表にありますように、フランスにおいては過去にフェニックスやスーパーフェニックス用の燃料をカダラッシュで作っていたことがありますけども、現在は廃止されています。したがって、現在フランスで動いているのは、軽水炉用のMOX燃料の製造だけです。一方、アメリカにおいては、Natrium炉向けの燃料として、HALEU燃料といって、濃縮度20%以下のウランを原料とした金属燃料で運転するための燃料製造するための計画がされていることを聞いております。そういう中で「常陽」はご存じの通り、MOX燃料の仕様なので、金属燃料にするためには大幅な炉心の変更が必要だということと、HALEUのような20%以下もさらに高い濃度のものでなければ、仕様的にも厳しいという現状があります。一方でロシアやインドは高速炉用のMOX燃料を製造していますが、ご存じの通り、ロシアは日露原子力協定において、プルトニウムの移動は認められていないということと、インドについては核不拡散条約(NPT)の非加盟国であるという観点、国際情勢の観点からも調達は困難な見通しということで、海外で現時点で調達ができるところは無いような状況です。次のページお願いいたします。
 一方、既存施設の活用ということですが、ご存じの通り東海にあります核燃料サイクル工学研究所のプルトニウム燃料第3開発室(Pu-3)においては「常陽」の燃料の製造の実績があります。ただし、今後も新たに「常陽」の燃料を製造する場合には、現在の使用の許可という許認可から、新規制基準に適合した加工事業の取得が必要になります。この加工事業の取得においては、既に施設としても老朽化しているところもありますし、高いハードルとしては、耐震の問題や火災の問題があります。
 参考資料の13ページのほうにもお示ししたように、加工規則において、米国の放射性物質取扱施設の火災防護に関する基準を満足させることが要求されます。そうすると、壁ごとに防火壁を設けるということになりますが、グローブボックスの排気系のダクトやグローブボックス自体が壁越しにあるため、ここにダンパーとか防火壁を設けることになりますが、このグローブボックスは既にプルトニウムで汚染されており、常時負圧を維持しなければならないということになっております。そういう観点からも、稼働中のグローブボックスの排気系やグローブボックス自体にダンパーを付ける工事は困難な状況です。さらに、この加工事業の取得には検査を改めて受けることになりますが、当時、プルトニウム燃料第3開発室では必要なかった検査としての材料証明書の記録や建設中の検査データなど、様々なデータが不足していることもあり、規制要件を満たさない可能性が高いと認識しています。このように、現時点では海外調達や既存施設の活用は困難な見通しであり、先に述べた高速炉燃料に関する課題を解決するためには、新規施設を整備することを視野に据えて考えていくことが必要だと考えています。次のページをご覧ください。
 新施設のイメージとして我々が検討しているものですが、先ほど言っている高性能・高燃焼度燃料の開発やMA含有燃料の技術といった機能を備えた燃料製造施設のイメージとしては、下のような図になります。許可区分として、先ほどから言っているように「常陽」の燃料を作るということで加工施設にするということと、「常陽」の燃料製造量はそんなに多くないので、規模的には年間0.5トンぐらいの製造能力があれば十分だということです。機能としては、「常陽」の燃料製造やMOXのための製造技術開発をやるグローブボックスの燃料製造ラインの他、右側にあるようなMA含有燃料をセル方式で製造できる機能を持った設備の整備も考えていきたいというふうに思っているところでございます。
 これらの整備にあたっては、予算の確保や取り扱い量も非常に小さいので、グレーデッドアプローチの適用を考えた規制を合理的に進めていきたいというふうに考えています。次のページをご覧ください。
 今まで説明した「常陽」での燃料確保の供給のオプションについて整理したのがこの表になります。まず、海外調達は技術的な成立性や国際情勢を踏まえると困難な見通しであるということと、既存施設のプルトニウム燃料第3開発室については、規制の観点から非常にハードルが高いということです。そういう観点からすると、「常陽」の燃料確保と技術開発が行えるような機能を持った新規施設を整備することを視野に考えていくことが必要だと整理しています。次のページをお願いいたします。
 最後にまとめです。繰り返しになりますが、「常陽」は経済性、環境負荷低減に関する燃料の材料開発を行うという、非常に大きなミッションを持っています。したがって、高速炉の開発にしっかりと貢献していきたいと考えています。そのためには「常陽」での照射試験をするために、新燃料の確保供給が必要ですし、その方策に関しては、既存施設や海外調達が困難な状況を踏まえると、新規の燃料製造施設の整備を視野に据えて検討を進めていきたいと考えているところです。また、高性能燃料やMA含有燃料に関しては、既存施設の活用も視野に入れながら、新規に施設でやるのかというのを考えながら、合理的な検討としてどうあるべきかを合わせて検討しながら、しっかりしたものを進めていきたいと思っています。新施設の整備にあたっては、予算の確保やグレーデッドアプローチの適用など、これらの課題解決に向けて関係省庁とも連携・協力していただきながら、検討を進めていきたいと思っています。私からの説明は以上となります。
 
【寺井主査】 どうもご説明ありがとうございました。非常に分かりやすくご説明いただいたと思います。それでは、本件につきまして、委員の皆さま方からご意見、ご質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。オンラインから参加の委員におかれましては、オンラインシステムの挙手機能をご活用いただき、挙手をされた方はミュートを外してご発言いただけますようにお願いいたします。それではご質問をお受けいたします。いかがでしょうか。小澤委員、どうぞ。
 
【小澤委員】 ありがとうございます。結構大変な燃料製造ということが、よくわかりました。海外調達は難しく、既存施設の活用も難しく、新規ということになってますね。新燃料を使うのが2030年代前半からで、10年位で終わるというと、間に合うのでしょうか。新しい燃料が高燃焼度燃料の実証をすると、それが実証炉の適用に間に合うのかどうかという工程感を解説していただくほうが良いと思いました。よろしくお願い申し上げます。
 
【郡司様】 ありがとうございます。5ページの資料はあくまでイメージということで捉えていただければと思っております。「常陽」の運転に関しても、在庫燃料の活用や運転方法、あとは過去に使った燃料を再活用するといったことで、なるべく有効に使いながら、既存の燃料でも運転できるようなことを考えていきたいと思っているところでございます。
 また、施設の整備に関しても、コンパクトで小さいということ、規制基準に関しても、グレーデッドアプローチという考え方を取り入れることによって、なるべく短期間で作って間に合わせていく形も併せて考えていく中で、全体的に調整していきたいと思っているところです。また、その実証炉に関しても、今後の実証炉のあり方をどういう形にするかというのは、今検討が進められているところですが、基本的には、いきなり高燃焼度・高性能の燃料を目指すのではなく、基本的なところから始まって、段階的に開発が進むと思っています。そういう観点からも、「常陽」の照射試験が実証炉の安全審査などに間に合う形で、しっかり照射試験をやっていければと思っています。
 
【小澤委員】 段階的にというのは、実証炉が最初はあまり高燃焼度ではなく、段々上げていくというイメージでよろしいですか。
 
【郡司様】 そういうことです。
 
【小澤委員】 段々上げていく段階で入れるとすると、この工程表だと、2050年よりもっと伸ばさなければいけないということになりますか?
 
【郡司様】 そこは、実証炉の計画に合わせて考えていくということで、まだ具体的に、いつから高燃焼度化にするかは決まっておらず、あくまでもこういうイメージとして捉えているということです。ステップ的なことになると、ご理解いただければと思っています。
 
【小澤委員】 順番はわかりました。ありがとうございます。
 
【寺井主査】 ありがとうございました。さっきの小澤委員のご質問で、ドライバー燃料の製造が間に合うのかという話がポイントではないかと思いました。実際には2035年ちょっと前ぐらいまでは今の燃料が使えるが、それ以降は手当てしないといけないという話なので、そのために海外調達や既存施設の活用、新規設備の整備というのが挙がっていて、この絵では11ページで新規施設の整備に赤い枠を付けてありますので、このあたりが一つの狙いなのかなというふうに理解をしています。この場合、新しいものを作るとなると、お金の問題もさることながら期間がかかるような気がします。これが2035年より前に完成して燃料が作れるのかがポイントだと思いますが、そのあたりの見込みについてはどのようにお考えですか。
 
【郡司様】 まず、この図上は2035年で切れているように思われますが、在庫燃料の利活用の方向や「常陽」での照射試験の計画をどのように組むかによって変わりますので、必ずしも2035年ありきではないということをお断りさせていただければと思っています。そうは言っても、我々としても、なるべく早く整備をしていくことを考えています。繰り返しになりますが、施設がそんなに大きくないことと、グレーデッドアプローチという考え方で合理的な施設にすることによって、建設期間をなるべく短くして早めに立ち上げたいと思っているところです。
 
【寺井主査】 わかりました。ありがとうございました。その他にいかがでしょうか。大塚委員、そのあとに石川委員でお願いいたします。
 
【大塚委員】 電気事業連合会の大塚でございます。私も実証炉との関係について質問しようとしていましたが、先ほどの小澤委員の質問と被っているので、残りの半分について意見をさせていただきます。
 実証炉については、官民一体のプロジェクトで進めており、政府の高速炉開発会議や戦略ワーキングで議論・検討しているところです。今回、ご説明いただいた件についても、実証炉と大きく関わってくると考えておりますので、そちら側との連携をしっかりやっていただきたいという意見です。何かご回答がありましたら、よろしくお願いいたします。
 
【郡司様】 ありがとうございます。大塚委員のおっしゃる通りでして、高速炉の実証炉に向けては官民一体となって計画を進めていますので、そこの計画にしっかり間に合うような形で開発を進めていきたいと思っています。そのために早く「常陽」の燃料を作って、照射試験が確実に行えるような形にしていきたいと思っているところです。
 
【大塚委員】 理解しました。ありがとうございます。
 
【寺井主査】 ありがとうございました。それでは、石川委員お願いいたします。
 
【石川委員】 ご説明ありがとうございました。小澤委員のご質問と重なる部分もありますが、元々は「常陽」の燃料があと数年でなくなるというところから議論が始まり、新規施設を作るのが最も良いであろうということですが、予算規模が数百億円かかるとなったときに、この施設は「常陽」の燃料のためだけに作るのか、あるいは実証炉やその他の高速炉の燃料の開発・製造も念頭に置いているのか、どちらでしょうか。予算が大きいため、様々な用途に活用するという観点のほうが良いと思いますが。
 
【郡司様】 ありがとうございます。10ページの図でもお示ししましたように、単に「常陽」の燃料製造だけでなく、高速炉用の燃料製造の技術開発も行って、ペレットから集合体まで組めるような形を考えています。また、将来のMA燃料やODS鋼を使った高性能燃料もできるような形として考えております。それは、今後いろいろな方々と議論しながら、この施設にどこまでの機能を持たせるかを考えていきながら、皆さんの合意を取りながらしっかりやっていきたいと思っています。
 
【石川委員】 ありがとうございます。もし、新規施設を整備するということであれば、それに持たせる機能を十分に検討していただければと思います。以上です。
 
【寺井主査】 どうもありがとうございました。その他にご質問はいかがでしょうか。松浦委員、どうぞ。
 
【松浦委員】 少し細かい話になるかもしれないのですが、海外調達の件です。金属燃料自体は「常陽」でも照射試験の予定が入っているということですが、それが使用の際にいろいろと問題があるということをおっしゃっていました。どちらかというと、金属燃料は米国が先行しているようなイメージですが、それを「常陽」で燃やすとどういう問題があるのか、もう少し詳しくお聞きできればと思いました。
 
【郡司様】 ありがとうございます。私の説明が悪かったようです。照射試験として金属燃料を数本やる分には全然問題ありません。ドライバー燃料として、今ある酸化物燃料を全て金属燃料に置き換えるとなると、炉心の大幅な変更があるということです。また、「常陽」は非常に炉が小さく、通常の金属燃料よりも40%くらい濃縮されたものでなければ燃えないので、その濃度がHALEUのような20%以下のものでは、使用が満足にできないということです。
 照射試験をやる分には全然問題なく、全てドライバー用燃料として作るのには問題があるということです。
 
【松浦委員】 もう一つお伺いしたいのですが、経済性向上ということで、高燃焼度化とか長寿命炉心のことでODS被覆管の話が出てきましたが、被覆管を変えることで炉心の出口温度を上げられるものなのでしょうか。少し気になったのは、炉心自体が40年くらい経っているということです。軽水炉でもアップデートする時は、炉心への影響も結構あったと思いますので、そういうことができるのかという心配があります。
 
【皆藤様】 「常陽」自体の炉心や出口温度は基本的に変わらないです。あくまでも「常陽」でODSの照射試験をやりますので、集合体レベルで入口の流量を絞ったりすることはあります。集合体の中で温度が高くなったりはしますが、「常陽」自体の出口温度を大きく変えることはありません。
 今、郡司からあった話は、あくまでも実証炉のほうの出口温度を上げて、発電効率を上げて、経済性を向上させるということです。そのために長寿命化も含めて、ODSの被覆管が有望な材料になるというお話になります。
 
【松浦委員】 照射試験としては、燃料の部分の温度は上げることができるということですね。わかりました、ありがとうございます。
 
【寺井主査】 その他にいかがでしょうか。私から一点、細かい質問で申し訳ないのですが、5ページをお願いいたします。5ページの下の米印に、照射試験には照射後試験は含んでいないと書いてありますが、照射後試験のPIEの施設については、これまでのものをお使いになるということでしょうか。
 
【皆藤様】 この図には、照射後試験の時間は含んでいないということで、このようなコメントを記載しております。実際の照射後試験については、「常陽」の周りにFMF、AGFという施設がございますので、そちらでしっかりやっていくという計画です。
 
【寺井主査】 これまでの施設を使ってやっていくということですね。わかりました。ありがとうございます。その他にいかがでしょうか。
 ありがとうございました。これで議題1は終了とさせていただきます。原子力機構におかれましては検討のほどお願いいたします。ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして議題の2に移らせていただきます。議題2は「原子力バックエンド作業部会における議論の報告」です。こちらは文部科学省研究開発局 放射性廃棄物企画室の前田対策官からご説明をお願いいたします。
 
【前田対策官】 放射性廃棄物企画室の前田でございます。それでは、資料2「原子力バックエンド作業部会における議論の報告」について説明させていただきます。
 表紙にもございますように、こちらの資料は今年の2月と6月のバックエンド作業部会でご審議いただいた資料を再構成したものです。原子力研究開発・基盤・人材作業部会は、原子力全体をカバーされている部会でありますことから、本日、バックエンド対策に関する議論の状況についても報告させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは2ページをお開きください。時間の関係もございますため、ポイントを絞って説明させていただきます。原子力機構のもんじゅ・ふげん・東海再処理といった大規模の主要施設以外に中小規模の36施設は現在、廃止措置に移行しております。再処理やMOX燃料の試験研究を行った様々な施設も、現在廃止措置に移行しているところです。これらの施設の廃止措置にかかる費用は、こちらの資料の上のほうにもありますが、総額1,490億円と見積もっています。また、これらの廃止措置の費用ですが、現在、年間約7億円の予算を設置しているところですが、このままの予算規模が継続した場合、廃止措置の完了に至るまでに約200年の期間が必要となり、この期間が長くなると維持管理費も多くなり、約2,600億円以上の維持管理費用を要すると試算しています。一方、これらの中小規模の36施設について、中長期のリスクや管理コストの低減の観点を踏まえた施設の優先順位、また後ほど説明しますが、サプライチェーン関連企業の育成確保等を考慮した上で費用を集中的に措置した場合、廃止措置にかかる期間は約35年となります。このように設定した場合、維持管理費は総額約980億円となり、現在の予算規模で200年かかると申しましたが、こちらと比較する場合、約1,620億円規模の維持管理の効率化が可能という試算をしています。続きまして3ページをお開きください。
 こちらは、ただいま私から説明いたしました中小規模の36施設の廃止措置を、35年とした場合のシミュレーションの詳細でございます。年間の維持管理費の観点から廃止措置期間は短ければ短いほど良いのですが、例えば、こちら資料の上にあるシナリオの条件を記載していますが、⑤廃止措置作業を実施する際には、原子力機構の人員だけでなく、協力会社等のサプライチェーンにおける人材確保も重要となります。こういった将来におけるサプライチェーンの育成確保を踏まえますと、35年という期間が、現実可能性があるだろうということで設定しております。また、資料の下のほうには予算の変動要因として、物価の変動や、研究開発は複数年契約による合理化も考えられるとしています。加えて、この資料には記載しておりませんが、バックエンド作業部会におきましては、廃止措置対象施設のうち再利用が可能な施設については、リノベーションを行うことで新たな研究開発の有効利用や、解体撤去で発生した廃棄物の保管に活用するなど、より効率的な廃止措置方策についても検討推進していく方向性が示されているところでございます。次のページをお開きください。
 ただいま説明いたしましたシミュレーションを現実のものとするためには、年間で平均約40億円程度の予算確保が必要となります。この資金確保が非常に重要ですが、現在、原子力機構の予算を巡る状況は非常に厳しいものとなっております。表にも書かれておりますが、それぞれの課題への対応の検討を行い、必要な資金確保のあり方について整理を進める必要があると考えております。こちらの方策についても簡単にご説明させていただきます。表の一番上は、銀行からの長期借り入れができるのではないかということです。一方で、現在の機構法では、廃止措置を目的とした長期借り入れが認められていないなどのルールというハードルがあります。
 2番目のPFI契約におきましては、廃止措置自体が利益を生み出す行為ではないため、PFIの受け入れ先の確保が難しいという課題があります。
 3番目の積立金制度については、既に一部では廃止措置が進んでいる状況で、今から積み立てを始めることは、削減効果はあまり高く期待できないという課題があります。
 最後に補助金制度です。こちらは原子力機構の運営交付金とは別の枠で補助金という形で資金確保を行うものですが、昨今の財政状況の中で、なぜ今のタイミングなのかという点について説明をするロジックが課題となっております。
 どれも課題があるという表になってしまっていますが、こういった課題につきまして、資金確保のあり方について検討を行い、令和7年度概算要求を念頭に、中長期的な観点も踏まえ、政策としての具体化を図ってまいりたいと考えております。続きまして5ページをお開きください。
 ここからは、原子力発電所以外の原子力の研究開発、放射線利用において発生した、研究施設等廃棄物の埋設処分についての内容となっております。研究施設等廃棄物の埋設処分につきましては、原子力機構がその埋設事業の実施主体となっております。原子力機構におきましては、埋設処分の対象とする放射性廃棄物の種類と量について、おおよそ5年ごとに見直しのための調査を行っているところでございます。
 この調査は、原子力機構の中で発生する廃棄物についての調査と原子力機構以外の大学、研究機関、民間、ラジオアイソトープ関係の事業者へのアンケート調査により実施しているところでございます。
 こちらについて今般、調査計画を行ったところ、今回実施された調査結果におきましては、前回調査実施した平成30年度の結果と同程度の廃棄物量の見込みという結果となり、現在の埋設規模として設定している約75万トンという数字については見直しを行わないこととしております。6ページをご覧ください。
 こちらは放射性廃棄物の種類と量の見込みの調査結果の内訳の詳細を示したものです。若干の内訳の変動はございますが、全体規模を見直すものではありませんでした。続きまして7ページをお開きください。
 埋設処分に関連しまして、原子力規制委員会における原子炉等規制法の許可基準の改正が行われたことを示しているページでございます。このため、埋設施設の設計についても見直しを行っているところです。こちらの図にトレンチ埋設施設について記載しております。トレンチ埋設というのは、例えばコンクリートピットなどの人工構築物を必要とせず、下の図の通り、覆土による簡易な方式での埋設方式となっています。令和元年に原子力規制委員会において、原子炉等規制法の許可基準・規則の改正が行われまして、下の図にもございますが、覆土に加えて雨水等の水の侵入を抑制する機能追加が要求されております。下の図の右側にもございますけれども、覆土の下に薄い水色の層はベントナイトといって水を通しにくい性質を持った粘土のようなものです。原子力機構におきましては、埋設施設、トレンチ方式について、このようなベントナイトの層を追加することで、原子炉等規制法の許可基準・規則に適合するよう設計の見直しを行おうとしているところです。続きまして8ページをお開きください。
 こちらは埋設処分業務の総費用の見直しについての説明のページです。研究施設等廃棄物の埋設処分業務の実施主体である原子力機構では、埋設処分業務にかかる総費用の見直しを行っているところです。ただいま説明いたしましたトレンチ埋設施設の設計の見直し、また総費用の積算に用いている単価(労務単価や建設資材単価等)の上昇を踏まえまして、今回、総費用の見直しを行っているところです。9ページは積算単価の見直しの詳細ですので、説明は省略させていただきます。10ページをお開きください。
 こちらは積算単価の上昇についての説明です。現在用いている積算単価の根拠は、2010年度の単価で用いているものと同じです。今般の見直し時点の2023年度のものと比べますと、労務単価では約1.5倍、材料費では約1.6倍という形で上昇しています。11ページをお開きください。
 以上の説明を踏まえまして、埋設処分業務の総費用の見直しを行った結果、表の一番下の欄にあるように、現在、約2,243億円としている総費用についての見直しを、約2,900億円に見直すという試算結果について、令和6年6月の原子力委員会原子力バックエンド作業部会へ提示を行ったところです。12ページをお開きください。
 こちらは、原子力機構が行っている埋設事業に関する情報発信の状況です。詳細な説明は省略させていただきますが、原子力機構におきましては、このような活動を進め、引き続き埋設処分事業の実現に向けて取り組みを進めているところでございます。
13ページは、ただいま私から説明したまとめになっておりますので、説明は省略させていただきます。14~17ページまでは参考資料ということで、こちらについても説明は省略させていただきます。18ページをお開きください。
 こちらは大学・研究機関における核燃料物質の取扱いについて、これまでのバックエンド作業部会の議論についての説明資料です。令和5年6月の原子力バックエンド作業部会において、大学や民間企業を対象にヒアリングを実施し、特に少量の核燃料物質を扱う施設内部の核燃料物質を集約することで管理施設を有効活用したり、核燃料施設の基盤強化の体制の構築、また、大学や民間企業で扱っている研究開発用の核燃料物質は多種多様な化学形態となっておりますので、これらを保管・貯蔵するに当たり、核燃料物質の安定化処理技術が必要であるなど、基盤研究のニーズが存在することを、バックエンド作業部会でも確認しているところです。このようなニーズを踏まえまして、18ページにありますように、国際原子力人材育成イニシアティブ事業の一部として、核燃料物質等の使用管理に資する専門人材等育成のための基盤の強化、また少量の核燃料物質のみを扱う施設の集約による核燃料物質の適切な管理と施設の有効活用を進めるための効果的なマネジメント体制の構築および環境整備等を支援する取り組みを推進することとしています。
 19ページも、先ほど説明しました、昨年6月にバックエンド作業部会で確認したニーズを踏まえ、大学・研究機関、企業における多種多様な核燃料物質の保管・貯蔵する際に安定化処理技術が必要になります。そういった基盤研究や人材育成等を支援する取り組みについての説明です。こちらも原子力システム研究開発事業(特定課題推進型)の一部として実施することとしています。
 駆け足での説明となってしまい、大変恐縮ですが、以上が、これまでバックエンド作業部会においてご審議いただいた内容の説明です。私からは以上です。ありがとうございました。
 
【寺井主査】 どうもご説明ありがとうございました。原子力バックエンド作業部会でご議論いただいている内容について、特に研究廃棄物の取り扱いの現状や今後の課題、大学等における核燃料物質の管理の問題、それを反映した文部科学省さんの政策の事例について、ご紹介いただきました。ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご発表につきまして、ご質問、ご意見等をよろしくお願いいたします。尾崎委員、どうぞ。
 
【尾崎委員】 ご説明ありがとうございました。2ページの総括で書かれているように、廃止措置期間に200年かかるのが現状のシナリオで、費用の集中投資で35年に短くなるという事ですが、全体に要するコストが一緒という前提で考えると、集中投資をしてもここまで短くはならないのではないでしょうか。数字だけを見ても、方法がよくわからないので説明をお願いします。
 
【前田対策官】 3ページのほうに、シミュレーションという形で、私どものほうも様々な条件を考慮しているところでございます。例えば、中小規模の36施設を全部一緒に進めるわけにはいかないということで、リスクとコストが一番かかる施設はプルトニウムを扱う施設でございます。プルトニウムを扱う施設というのは、プルトニウムそのものがリスクとなることも当然ながら、プルトニウムを扱うことは、先ほどの原子力機構の説明でありましたように、グローブボックスといって内部で閉じ込めるために、非常に大規模な給排気設備を持っているので、非常にコストがかかるということです。
 こちらは3ページの下のほうにございますが、再処理やプルトニウムの研究をした施設を4施設ほど、いわゆる中小規模の中でも若干中規模なものがあるので、こういったものを優先することでリスクとコストを下げていき、設備維持を簡略化していこうというところもございます。
 また、⑤という形で、意外とネックになるのが作業のマンパワーです。35年よりも短い期間にできないかということですが、原子力機構だけでマンパワーをこなせるものではありませんので、関連企業の方々をどれだけ確保できるかということも考えて35年としているところです。
 一方で、真ん中にグラフがございます。かかる予算が平均で40億と言ってしまいましたけれども、実際にはこのような形で、一番下の黄土色が維持管理費で、これは進めば進むほど右肩下がりですが、真ん中の紫色の部分が廃止措置にかかるものです。集中して4施設をやるにしても、最初は多くないのですが、あるところからピークがどんどん増えてしまいます。こういう形で予算も一定ではないという形です。ピークでは上のほうまでいくと、全体にすると100億近く、解体に関しましても50億円程度かかるということで、予算確保や人材確保の観点からも、35年という形を実現可能性があるのではないかと見ています。ただ、さらに予算の変動要因もあるわけですので、あくまでもシミュレーションという形です。これを軸に実現に向けていきたいと思います。そのためには4ページにも説明しましたが資金確保が重要です。
 こういう形で36施設についてのシミュレーションを実施した上で、本日説明させていただいたところです。このような答えでよろしいでしょうか。
 
【尾崎委員】 4施設のプルトニウムの管理がキーですから、それが予定通りいかなかった場合は、期間も予算も跳ね上がるリスクがあるということでしょうか。
 
【前田対策官】 それもあると思います。一方で、この4施設が廃止措置の負担とはなりますが、逆に言うと、経験が積める施設になるかなと思います。バックエンド作業部会のポイントになっているのが、こういった先行施設における経験やノウハウを、32施設にもきちんとフィードバックすることで効率的なバックエンドというものをしっかりと進めていくことが大事だろうということです。これはすなわち人材の育成にもなります。これは原子力機構だけではなく、サプライチェーンも含めた育成という形なので、逆に言うと、先生のおっしゃる通り、そういったものを積み重ねていかなければ35年は実現できないのではないかということは、バックエンド作業部会でもご指摘いただいているところでございます。計画の遅れのリスクというものも認識しているところでございます。
 
【尾崎委員】 ありがとうございます。
 
【寺井主査】 よろしいでしょうか。今の件に関係するのですが、廃止措置の期間が長いので、サプライチェーンをいかに育成し確保するかということが大事だというのはその通りだと思うのですが、一方で発電炉の廃止措置も同じタイミングで進みますよね。そちらは、3分の1くらいは廃止措置することになるので、そちらとの人の取り合いも起こりそうな気もします。むしろ、そうであれば、廃止措置産業みたいなものを原子力産業の一つとして位置付けるというのが重要だと思います。このあたりは文部科学省さんよりも経産省さんのお仕事かもしれませんが、原子力機構の廃止措置だけでなく、いわゆる電力会社さんが持っておられる通常炉の廃止措置と関係付けて、それと一体で産業として考えていくというのもあるのではないかと、聞いていて思った次第です。そういう理解でよろしいですよね。
 
【前田対策官】 その通りでございます。発電炉の解体は、より大規模な解体であり、研究施設はプルトニウム汚染などの管理区域での除染がメインであり、全体として異なっているのですが、管理区域での除染など共通項も非常に多く存在しております。そういった意味では、発電における解体のノウハウと、我々の核燃料研究施設のノウハウを共有することも大事でしょうし、以前のバックエンド作業部会では、福島第一における廃炉の情報・ノウハウも必要ということは、バックエンド作業部会でもご意見をいただいているところでございます。
 また、現在、福井県では、スマートデコミッショニング技術実証拠点において、まだ廃止措置をやったことのない未経験の会社も研修・トライアルといった訓練ができるような施設もあります。福井におきましては、もんじゅ・ふげんだけではなく、商用原発もありますので、この原子力機構のスマートデコミッショニング技術実証拠点の施設を使って経験を積んでいただいて、もんじゅ、ふげん、商用の原発の廃止措置作業でもご活躍いただきたいという部分もあります。東海、大洗地区でのサプライチェーンも、ぜひ、東海や大洗地区で得た経験を踏まえて、商用の廃止措置にも行っていただければということは、まさに寺井先生のおっしゃる通りです。そういう方向でも進めていきたいと考えております。
 
【寺井主査】 先ほど、廃止措置産業と言いましたが、文部科学省であれば、廃止措置工学や廃止措置科学という言い方のほうがいいかもしれないですね。それをベースにして、実際にいろいろなところでの廃止措置を進めていくための人材育成、あるいは学術基盤を作っていくという考え方だと理解しました。ありがとうございます。他にご意見等はございますか。石川委員、どうぞ。
 
【石川委員】 ご説明ありがとうございました。私は18~19ページのところの、化学的安定化処理技術の開発研究などの施策をしていただくのは、かなり有意義だと思いますが、一方で、研究や教育で使わなくなった核燃料物質が、各大学にそのままあるということが問題だと思います。本来であれば違う新しい分野の教員や研究者を雇用できるはずの人件費がその管理にかかってしまいますし、施設のスペースを新しい研究・教育に使うことができないという状態が長年続くということになってしまうと思います。
 もう一つ、各大学に研究に使うわけではない核燃料物質が置かれていること自体が、核不拡散やセキュリティ上の懸念点でもあると思います。一昨年くらいに、アメリカの大学の原子力学科の先生と話したときに、もう研究に使わない核燃料物質を大学に持たせておくことは、アメリカでは信じられないとおっしゃっていたこともあります。これは文部科学省だけで進められることではありませんが、我が国の政府として、そういう点も考慮して、ぜひ、集約管理するような施設の実現を改めてお願いできればと思います。寺井主査にも共感していただけるのではないかと考えております。以上です。
 
【寺井主査】 石川委員、ありがとうございました。私も東大にいたときに、そういう仕事を兼務でやっておりましたので、石川委員の今のお話はすごく身につまされます。私はその仕事を終えましたが、現役の先生方は相変わらずそこに結構な懸念点を持たれていると思います。前田さん、いかがでしょうか。
 
【前田対策官】 今、おっしゃられた話は、昨年バックエンド作業部会のニーズを確認したと申しましたが、18ページの真ん中に参考と書いていますけども、これは令和5年2月の原子力委員会の原子力利用に関する基本的考え方の中でも、石川先生や寺井先生からもお話があったように、利用自体がなく保管だけされてる放射性物質(核燃料物質も含む)の集約管理を実現するための具体的な方策を検討するべきとしています。ご存じの通り核燃料物質はこれまでも広く使われ、民間企業もそうですし、環境系とか医療系もございますので、まさに関係行政機関全体で実施するという形で、原子力委員会の決定の中でも述べられております。また、原子力規制委員会も同じく、安全を担う観点からも、こういった集約管理を進めなければいけないということを示しており、文部科学省も含めた関係行政機関でしっかりとやっていかなければいけないということは、我々政府も認識をしているところでございます。
 今回、大学研究機関関係ということで、18~19ページで文部科学省の取り組みを説明させていただきましたが、原子力委員会としましては、大学研究機関のみならず、全体としてこういったものの取り組みをしていかなければならないと考えております。そういった意味で政府としても、このあたりの取り組みを引き続き進めていきたいと思っております。ただ、今現時点で「ある場所に集めます」とはまだ言えない部分がありますが、18ページにおけるような取り組みを進めることで、体制基盤をしっかりと進めた上で、こういった集約管理に関しての対応を進めていきたいと考えているところでございます。ご意見、どうもありがとうございました。
 
【寺井主査】 ありがとうございました。石川委員もよろしいですか。
 
【石川委員】 はい。
 
【寺井主査】 前向きに進めていただけるというご発言だと理解いたしました。今日明日というわけにはいかないところがありますし、複数の省庁や機関にまたがっているというところもあります。文部科学省だけだったら、例えば原子力機構とかそういうところに集めるという話は無いわけではないと思うのですが、それ以外の研究廃棄物は民間のところにもありますので、今後そのあたりも含めて、より高いところでご議論していただいて、方針を決めていただくものと理解いたしました。ありがとうございました。その他にいかがでしょうか。黒崎委員、どうぞ。
 
【黒崎委員】 ありがとうございます。まずは集中投資シナリオの話ですが、話を聞く限りは非常にいいと思いました。長々とダラダラやるよりは集中投資をして、差額としても1,600億円くらい出てくるということで、もし本当にこういうことが実現できるのであれば、これは非常に有効なのではないかと思いましたので、ぜひやっていただきたいと思います。一方で、これをやると短い期間でやっていくわけなので、当然廃棄物も出てくると認識しています。そうなると、次の話と絡むのですが、次の話は廃棄物の調査結果ということでいろいろと調査されていますが、これは現在ある廃棄物についてのものでしょうか。
 
【前田対策官】 埋設事業の実施主体が原子力機構と言っておりますけれども、原子力機構におきましては、令和30年度までの発生分とこれまでのものの推定見込みというものが、こちらの調査の数字の意味でございます。
 
【黒崎委員】 そうなると令和30年の推定というのは、前半の話で言うと、年間約7億円ベースでやっていったときに出てくるという話のものですか。
 
【前田対策官】 いえ、それ以外も含めております。どちらかというと、今までの研究活動で発生した廃棄物です。逆に言うと、これから発生する解体自体は含めていないところです。それは令和31年以降の廃棄物という扱いです。
 
【黒崎委員】 要は集中投資シナリオでやったときの廃棄物の量というのは、11ページの数字と変わってくるのでしょうか。
 
【前田対策官】 解体撤去や廃止措置を進めることで廃棄物が出てくることは、まさにおっしゃる通りでございます。こういったものにつきましては、現実問題としましては、保管廃棄建屋を整備しなければいけません。そこはリノベーションという形で、新しく作るのではなく、再利用可能なものについては、そういったものを使ってストレージキャパシティを確保するという形もできると思っているところでございます。
 一方で、75万本という埋設計画は、令和30年度までの廃棄物ですけれども、基本的には、これまで発生した研究活動に伴う、いわゆる核燃料の使用に伴って発生するものです。これには大規模に発生する解体廃棄物については現在入れていないということでございます。そういった意味では、現在の埋設処分事業というのは第一期計画という形で、令和30年度までを1つの区切りとして見ています。当然ながら、それ以降も発生する廃棄物については、埋設処分事業の第2期以降として考慮していくものとなっているところでございます。
 
【黒崎委員】 なるほど。集中的に数十年でやると、当然、廃棄物についても別枠で考えなければいけないという理解でよろしいでしょうか。
 
【前田対策官】 その通りでございます。
 
【黒崎委員】 わかりました。その上で確認したいのが、13ページのところで、なぜ埋設処分の話がなかなか前に進まないのかという話です。立地の早期実現が一つのポイントになるのではないかと思っています。これを実現するために、どういう努力をされているのか教えていただきたいと思います。
 
【前田対策官】 まさに今のご質問は非常に重要な点だということは、我々政府としても認識しているところでございます。埋設実施主体の原子力機構におきましては、これまでに埋設処分業務の実施計画というものを定めているところでございます。その実施計画の中には、埋設処分の概念設計の検討や立地手順や立地基準の作成、また建設・設計に向けた技術的検討や廃棄物の受け入れ基準の技術的な検討も行ってきたところでございますけれども、現時点では埋設処分場の選定に至っておりません。処分場の立地につきましては、地域の住民の方々のご理解、また自治体の方々のご理解が非常に不可欠となっておりまして、非常に難しい問題も抱えているところでございます。現在、文部科学省と原子力機構は一体となって、引き続き埋設処分場の選定を含めた埋設事業の実施に向けて必要な対策に取り組んでいるところでございます。
 12ページにございますようなご理解をいただくような活動も進めつつ、埋設事業実施の実現向けて取り組みを進めてまいりたいと考えているところでございます。以上でございます。
 
【黒崎委員】 わかりました。あまり言わないでおこうと思ったのですが、ここは非常に大事なことなので、やるのであればどこでやるかを決める必要があると思います。そこについては引き続き、12ページの取り組みで必要十分なのかというところもあると思いますけれども、よろしくお願いいたします。
 
【前田対策官】 ありがとうございます。
 
【寺井主査】 よろしいでしょうか。発電廃棄物については、低レベルはもう六ヶ所村でやっておられるわけですよね。ですから、それ自体はクリティカルな問題にはならないと思います。しかし、基本的には自治体や地元の方のご理解が一番大事であるということは全くその通りです。そこは引き続きよろしくお願いをしたいと思います。その他にいかがでしょうか。松浦委員、どうぞ。
 
【松浦委員】 18ページの研究基盤・人材育成強化のところで、下のほうに補助内容として、核燃料の専門人材と技術者の育成と書いてございます。最後のほうに放射能評価手法確立等に資するカリキュラムマニュアル等を整備するというふうなことが書いてあります。これももちろん大事だと思っているのですが、実際に、こういったことをできる人材・技術者を維持、または増やしていくということに対する施策として、どのようなものがあるのでしょうか。
 例えば、寺井先生がおっしゃっていたような、廃棄物廃止措置の工学など、大学にそういう学科ができるとか、それをもっと進めていくような施策もあるのではないかと思います。この部会でも、原子力の人材育成を何十年と続けていかなければいけないということなので、やはり人材を増やしていくというところは、ものすごく大事だと思います。私の希望として、いろいろと施策をお考えいただければなと思っています。よろしくお願いします。
 
【前田対策官】 ご意見をありがとうございます。今回、国際原子力人材育成イニシアティブの事業について、一部の取り組みを説明させていただきましたが、今の松浦先生のご意見も踏まえまして、バックエンドでございますが、避けられない課題だと思っておりますので、文部科学省としても引き続き、施策を進めていきたいと思います。ご意見ありがとうございました。
 
【寺井主査】 その他にいかがでしょうか。秋山委員、どうぞ。
 
【秋山委員】 ご説明ありがとうございます。18ページ目にありますが、管理者の高齢化というのは、私の大学でも代変わりしなければいけないというところはあると思うのですけれども、人材育成の観点からは、退職者の方にも、このアドバイスをいただいたり、人材育成に少し関わっていただくことで、技術の伝承をすることも考えられますが、退職者の方が何かアドバイスできるような仕組みなどはあるでしょうか。
 
【前田対策官】 今のご質問に対して、私のほうで状況を知っている部分がありませんので、お答えできない部分があると思いますが、原子力機構でも、様々な形で、OBの方々のノウハウが非常に大事だと思っており、そういった取り組みを進めているところもありますので、大学・研究機関も含めて、そういったナレッジをしっかりと継承する上でも、今のご意見は非常に貴重なご意見だと思います。ありがとうございます。
 
【秋山委員】 企業とは少し違って、大学のほうでは新しい人材をどんどん育成していくことが重要なので、あまりOBをいつまでも雇うのは良くないことかもしれませんが、技術の伝承をしていかなくてはならないのであれば、そういうことも必要なのではないかと思いました。ありがとうございます。
 
【寺井主査】 ありがとうございます。18ページにプログラムがいくつかあって、例えば、国際原子力人材育成イニシアティブ事業の提案の中で、シニアの方に特任研究員などのポジションで参加していただき、技術の継承をしていただくやり方もあるのではないかと思いました。
 
【秋山委員】 ありがとうございます。
 
【寺井主査】 その他にいかがでしょうか。一点だけ細かい話ですが、5ページで、中深度処分対象のものについては、その後、全く触れていないのですが、現在検討中という理解でよろしいでしょうか。
 
【前田対策官】 その通りでございます。こちらはあくまでも浅地中処分ということで、六ヶ所でいうところの10~20mくらいです。いわゆる中深度処分と言われる70mよりも少しレベルの高いものについては、今後も引き続き検討していくということが、原子力機構の実施計画でも述べられているところでございますので、そのような形で対応していきたいと考えております。
 
【寺井主査】 わかりました。ありがとうございます。引き続き、よろしくお願いいたします。
 
【前田対策官】 ありがとうございました。
 
【寺井主査】 よろしいでしょうか。それでは、これで議題2を終了させていただきます。どうも、ありがとうございました。次に議題3「今後の原子力科学技術に関する政策の方向性」に入ります。これが本日、一番重要な議題だと思っております。こちらにつきましては、文部科学省研究開発局原子力課の奥課長から、ご説明をお願いいたします。
 
【奥課長】 ありがとうございます。資料3−1、3−2に沿った形でご説明させていただきます。主に3−1の本文のほうを使ってご説明いたします。この作業部会と原子力科学技術委員会の下のバックエンド作業部会、それと別に核不拡散セキュリティ部会というのがありますが、その3つの部会で、それぞれ、昨年の12月以降に今後の原子力科学技術政策の方向性について議論をさせていただきました。
 その検討結果について、中間的なまとめとして作成したのが、この資料3−1と3−2になります。大部になりますので、ポイントを絞った形でご説明させていただきます。目次につきましては資料の通りで、特に4ポツのところに、5つの重点政策ということで新試験研究炉から福島第一原発の対応まで、5つの柱を掲げさせていただいております。
 まずは1ページ目で、背景と現状のところになります。国内外の諸情勢の変化と国内における現状ということで、エネルギーの安全保障の観点と技術安全保障、経済安全保障、さらには産業競争力の観点から、原子力について再考の動きがありますということを5つ書かせていただきました。その中でも特に、1ページ目の一番下のところに、これまではGX等が進むにつれて電力消費量やエネルギー消費量が減るという話がありましたが、一方でAIやDXの流れの中で、電力の消費量が拡大するという流れが出てきています。こうしたことも念頭に、次期のエネルギー基本計画のほうの議論もされていくということで、これに資する検討を我々としてもしていく必要があるということを書かせていただいています。
 また、2ページ目のところで、原子力科学技術をめぐる現状と課題というところで、何度もご指摘をさせていただいておりますが、昔は我が国も原子力分野で、国際的にもトップ集団を走っていたと思いますが、最近では、論文数あるいは人材をめぐっても、長期の低落傾向にあるということは否めないということを踏まえて、今後の政策を考える必要があるということを書かせていただいています。
 続いて3ページ目の基本姿勢で、今回は3つ挙げさせていただいております。まず、当然ながら、福島第一原発事故等を踏まえて、安全確保を大前提とした政策を推進するということです。これは政策を進める上で最優先事項として考える必要があると思っています。2つ目は、文部科学省の役割として、原子力科学技術に関しての中核基盤(研究開発や技術、人材の基盤)を、きちんと構築発展させていくことが主要な役割だろうということで2つ目に掲げています。また、3つ目ですが、原子力については、単純にエネルギーだけではなくて、健康医療、あるいは素材産業、製造業、宇宙等を含めて幅広い分野への活用が可能だということで、社会的な課題解決に向けて「共創」という考え方で進めていく必要があるのではないかということを、3つ掲げさせていただいています。
 こうした基本姿勢のもと、4ページ目、今後の原子力科学技術の方向性として整理をさせていただいています。この理念として、3つ挙げています。繰り返しになりますが、文部科学省の役割は何かということなのですが、新型炉の開発、燃料製造等のフロントエンドから廃止措置を含むバックエンド対策まで、あるいは基礎基盤的な研究から人材育成、それと研究施設の整備、こうした一連の技術体系を全て網羅するというのが文部科学省の役割だろうと思っています。また、2つ目である原子力の再定義になりますが、エネルギーだけではなく、原子核物理、材料、機械、電気電子、応用化学など、幅広い分野にまたがる総合科学技術としての位置づけというのを、きちんと見直す必要があるのではないかと思います。こうした観点から研究水準の向上に繋げていく必要があるだろうということが、2つ目です。
 3つ目が資源配分のあり方です。先ほどバックエンドの報告の中にもありましたように、現在、特に原子力機構においては、原子力の関係施設の維持管理費・固定経費に大部分のお金が割かれているという状況がありまして、新しい研究開発や研究水準の向上に繋がるような研究に、なかなかお金が回っていかないという現状があります。こうした中で、維持管理費・固定経費をいかにして削減をして、新しい研究に回していくかという資源配分のあり方というのを考えていく必要があるのではないかということを書かせていただいています。こうした観点から今回は5つの重点政策として5つの柱を掲げさせていただいています。また、当然のことながら、エネルギー政策の全般を担う経済産業省であるとか、規制を担う原子力規制庁と連携協力しながら進めていく必要があるということを書かせていただいています。
 こうした考え方のもと、5ページ目以降で5つの重点政策について整理をさせていただいています。まず1つ目は、新試験研究炉の開発整備ということで2つありまして、もんじゅサイトの新試験研究炉とJRR-3の2つを掲げています。この中身については、現状と課題、それと実績と評価、それと今後の取り組みに関する基本方針という3つの柱で整理をさせていただいています。現状と課題、および実績と評価のところは、特に新試験研究炉につきましてはこの部会でも3回ご議論をいただきました。その中身について、簡単にまとめてさせていただいているものです。特に6ページ目、前回の作業部会になりますが、JRR-3をもとにして、新試験研究炉建設にかかる全体規模として1,500億円程度がかかるのではないかと、詳細設計1の期間で160億円の規模がかかるということを初めて試算として出させていただきました。それも表として添付をさせていただいています。
 6ページ目のところから今後の基本方針になりますが、まずは、令和6年中の設置許可申請の見込み時期の提示に向けて、着実に詳細設計を進めるということを書いています。ここの基本方針のところは、できるだけ年限を書くような形で整理をさせていただいています。
 同じように7ページ目になりますが、設置場所についてです。これも令和6年中に、今、候補地として3つありますけれども、この3つの候補地の中から、今年中に設置場所の選定を行い、それに向けて必要な地盤調査等を進めていくということを書かせていただいています。3つ目が実験装置に関する検討です。これは京都大学を中心にアカデミアのタスクフォースを組んでいただいて、ユーザーニーズも踏まえた形で、今、基本仕様の検討を行っていただいています。これについて着実に進めていくとともに、特にJRR-3を用いて、この実験装置群についてテストをしていくということを、今後検討していきたいということを書いています。また、4つ目ですけれども、先ほどの1,500億円等の総工費につきましては、まだJRR-3をもとにした荒い試算ですので、これを、引き続き精緻化していくということを書いています。また、5つ目の柱としては、この新試験研究炉は、地域への経済波及効果として、地域の産業育成等にも期待されているところですので、利用促進体制あるいは敦賀駅前の複合拠点のあり方、それと人材育成のあり方等々について、地域政策検討ワーキングループ(原子力機構を中心に関係の自治体も入った形での検討の場)を中心に検討していくということを書かせていただいています。
 続いて、JRR-3についてです。これも現状と課題、実績評価にありますように、引き続き安定的に運用していくということが非常に大事であろうと思っています。9ページ目のところで、今後の基本方針とあります。これについては、着実に安定的な運用をしていくこと、また、アカデミアのみならず、産業界の利用に供するということが非常に大事だろうと思っています。その上で②医療用のRI(モリブデン99等)製造について、期待が多く寄せられているところですので、内閣がまとめたアクションプランに沿った形で、この技術実証を進めていくということを書いています。また、JRR-3は非常に重要な中性子利用のための場ですが、これについてJ-PARCや他の放射光施設とも連携協力しながら、中性子と放射光の相互利用を進めていくということを書かせていただいています。4ポツ目は繰り返しになりますが、新試験研究炉に対して、技術的な支援を提供していくこともJRR-3の重要な役割ですので、そこも繰り返し書かせていただいています。また⑤につきましては、前回、寺井先生の方からご指摘がありましたが、国内の照射ができる炉が減少しているということです。JMTRも廃炉になって、こういう場がないということもありますので、まずは10ページ目の上のところですが、海外照射炉を使った代替照射については、引き続き、こうした枠組みを使って支援を行うとともに、現在の取り組みで照射機能を確保しつつ、また、代替困難な照射ニーズがあることも踏まえて、将来的な照射炉のあり方について総合的な検討を行うということを書かせていただいています。ここまでが1つ目の柱になります。
 2つ目が次世代革新炉の開発に関する基盤整備になります。まずは常陽です。常陽につきましては、これまでもこの場で2回ご議論いただきましたが、そこの現状と課題、実績と評価を簡単にまとめさせていただいています。
 11ページ目から今後の基本方針になります。11ページ目の真ん中あたり、令和8年度半ばの運転再開を目指して、まずは安全対策向上を着実に進めていくということ。常陽につきましては、稼働すれば、唯一OECD諸国で稼働している高速中性子照射炉となりますので、この位置づけを積極的に発信していくことが大事だろうと思っています。また、先ほどのご説明にもありましたように、常陽につきましては、同じように重要なRI(アクチニウム225)の製造実証に使えるということで、これもアクションプランに沿った形で、確実に技術実証をしていくとともに、常陽については、高速の中性子照射場としての活用も期待されるということで、その照射機能の確保に向けた安定的な運用を行うということを書かせていただいています。また3つ目については、実証炉の開発への貢献ということで、原子力機構は、今回、実証炉開発に向けた研究開発の統合組織としての位置づけがなされました。この位置づけに沿った形で、着実にプロジェクトのマネジメントをしていくということが重要だと思っています。また④につきましては、常陽の新燃料への供給確保ということで、議題1で説明した内容をコンパクトに書かせていただいています。特に3行目になりますが、新規の燃料製造施設の整備を視野の中心に据えた検討を行うということです。その際に燃料製造にかかる技術開発機能を追加した設備等を整備することも含めて、必要な検討を進めるという形にさせていただいています。
2つ目はHTTR(ガス炉)になります。ガス炉についても、現状と課題、それと実績評価について、簡単に書かせていただいていますが、特に実績と評価の3つ目の丸、今年の3月に世界初となる、出力100%中の炉心流量喪失試験に初めて成功したということで、固有の安全性がきちんと評価されたというのは、大きなマイルストーンであろうというふうに思っています。
 13ページ目の下から基本方針のところになります。これについても安定的な運用を行うこと、この高温の熱利用をした水素製造の実証試験を行うことが1つのミッションですので、令和6年度中に、その熱利用試験のための設置許可変更の申請を行うことを一つの目標にしています。これも同じように、②では実証炉開発への貢献を進めていくということ、それと③で海外との研究協力が重要だというふうに思っていまして、文部科学省とポーランドとの間での実験炉開発に向けた協力覚え書き、それと英国のNNL原子力機関との実証炉開発に向けた、燃料プログラムの参加について、引き続き進めていくということを書かせていただいています。(3)は安全研究の推進になります。
原子力機構は、原子力規制委員会の外部の技術支援機関(TSO)として、重要な役割を担っています。現状と課題、実績評価、これまでの取り組みを踏まえて、15ページ目からが基本方針になりますが、原子力安全研究センターを中心にNSRRのほうも稼働になると思いますが、これを活用した研究を着実に進めていくということと、2つ目のポツにありますように、原子力規制委員会の技術支援機関として、よりリスクに応じた効果的・科学的合理的な安全規制のあり方について、積極的な提案を行うということを書かせていただいています。また、原子力緊急時支援センターと核不拡散・核セキュリティに関する取り組みを着実に進めてまいりたいと思っています。
3つ目が廃止措置を含むバックエンド対策の強化ということで、まず1つ目は、使用施設以外の廃止措置の促進に向けた仕組みの整備になります。これは2つ目の議題で説明のあった中身をコンパクトにまとめさせていただいています。現状と課題、実績と評価、特に実績の評価のところは先ほどの1,490億円や200年であるとか、主要施設以外の36施設の集中的な廃止措置をすると35年間といった数字も書かせていただいています。
 今後の基本方針のところですが、先ほど説明のあったように、長期借入や債券発行、PFI等々の方策がありますが、この中から課題や採用方針等を踏まえて速やかに結論を得るということ、それと、令和7年度の概算要求も念頭に、中長期的な観点も含めて施策としての具体化を図るということを明記させていただいています。また、17ページ目の表の下になりますが、原子力機構においては、この資金確保策の具体化も念頭に置いた形で、廃止措置の対象施設をリノベーションして、いわゆる廃棄体の保管施設として活用することなど、新しい有効活用のあり方についても検討推進するということを書かせていただいています。また、②廃止措置に関連する課題への対応として、いくつか掲げさせていただいておりますが、先ほど複数の委員の方からもご意見がありましたけれども、この廃止措置は非常に長期間にわたって、継続的に取り組む必要があります。この知見や経験、ノウハウを次世代に継承することが大事だということで、その取り組みを書かせていただいています。
18ページ目からは、いわゆる主要施設であるもんじゅやふげん、東海再処理の廃止措置の着実な推進になります。まず、もんじゅについては、すでに廃止措置工程の第2段階に移行しておりまして、今は使用済み燃料を全て取り出し、ナトリウムも取り出してしゃへい体の取り出し作業を進めています。これも18ページ目の下の基本方針になりますが、当面は29年度の廃止措置の完了に向けて、着実に段階を経て、計画的に廃止措置作業を進めていくことを予定しています。一番下にありますように、もんじゅの使用済み燃料のあり方ですが、フランスで再処理を念頭に、他のオプションも含めて、引き続き検討を行うというのを書かせていただいています。
 19ページ目がふげんになります。ふげんは、比較的廃止措置が進んだ炉になります。実績と評価のところに書かせていただいておりますが、本体工事の解体に関するリスク低減のために、より保守的な工法に見直して、全体工程を7年延伸したというのがあります。これを踏まえて基本方針のところで、令和22年度の廃止措置終了に向けて、計画的に取り組みを進めるということ。また、当面ふげんの使用済み燃料について、フランスでの再処理を念頭に、着実に取り組みを進めていくということを書かせていただいています。当初、令和5年度に搬出を開始する予定でしたが、輸送容器の一部変更に伴って、令和9年度からの搬出開始を予定しています。
また、3つ目の東海再処理施設ですが、こちらは20ページ目の一番上にありますように、比較的長期間である70年間で段階的に進めていく必要がありますので、まずはこの計画に沿った形で、着実に取り組みを進めてまいりたいと思っています。今後の基本方針にありますが、まずはリスクの高い高放射性廃液のガラス固化処理を優先的に進めること、そして低放射性廃棄物の処理施設の整備等も進めることで、優先的かつ計画的に取り組みを進めていきたいと考えております。
 (3)バックエンド対策の促進についてですが、こちらも先ほど説明のあった内容です。21ページ目の真ん中に実績と評価がありますように、現在、施設の規模は75万本で維持されています。ただし、施設の総費用が2,900億円に膨れ上がっているため、対策を練る必要があります。今後の基本方針としては、まず2つ目のポツですが、物量調査の結果および総費用の見直しを踏まえて、計画変更に関する手続きを今年度中に進めることを書いております。また、総費用の見直しを受けて、毎年の埋設にかかる費用の確保のあり方を引き続き検討していくことを記載しています。
 22ページ目の下から、少量核燃料物質の集約安定化に関する取り組みを推進するということで、人材育成の観点を含めて着実に取り組みを進めてまいりたいということを書かせていただいております。
4つ目の柱として、研究と人材育成基盤の強化を据えています。ここは、中身が2つに分かれており、原子力科学技術イノベーションの推進の中でも、文部科学省における原子力システム研究開発事業と原子力機構における取り組みを分けた形で書かせていただいております。こちらも、先日の部会でご審議いただきましたが、まずは原子力システム研究開発事業になります。これまでNEXIPの枠組みのもとで、原子力を対象とする唯一の競争的資金制度として、幅広い大学等の研究者に対して研究資金を提供してきた実績があります。それを踏まえて、24ページ目の今後の基本方針では、原子力科学技術イノベーションの中核的な競争的資金制度として明確に位置づけた上で、令和7年度の概算要求に向けて一部の内容は課題等を踏まえて見直してはどうかということを書かせていただいております。これまでに基盤チーム、ボトルネックや新発想等々で進めてきたものを再編し、より新規性、独創性、革新性、挑戦性の高い研究課題を支援する新領域の開拓型制度を設けてはどうかということ、それを大規模・異分野連携あるいは若手といったカテゴリー分けをした上で、研究期間は5年間、人材育成も含めた形で進めていく制度として見直しをしてはどうかということを書いております。一方、継続課題については引き続き推進した上で、新規の課題提案に関しては、全て新領域開拓型に一本化する形を想定しています。事業推進体制のあり方はここに記載の通りです。
また、原子力機構においても、現在の小口理事長のリーダーシップの下「ニュークリア×リニューアブル」を旗に掲げて、イノベーションに向けた先端原子力研究を重点的に進めています。こうした実績の評価を踏まえた上で今後の基本方針として、令和7年度の概算要求も念頭に、原子力科学技術に関する新しい研究開発を積極的に推進することを目指しており、具体的な事例として、レドックスフロー電池やスピン熱電素子の開発に関する取り組みを書かせていただいております。
2つ目の柱として、人材育成機能の強化があります。ここでは、文部科学省の国際原子力人材育成イニシアティブ事業と原子力機構の取り組みを分けて記載しています。26ページ目の下から、国際原子力人材育成イニシアティブ事業の取り組みになりますが、これまでANECでコンソーシアムを設けて、4つのグループ(カリキュラム、国際、実験・実習、産学連携など)について着実に取り組みを進めていただいており、高く評価される取組だろうと思っています。
 こうした中で、一部課題等も指摘されている中で、今後の基本方針として、4つ掲げさせていただいています。まずはANECの事業と人材育成の事業を中核的な事業とした上で、専門人材と多様な人材・思想の拡大を車の両輪として進めていく必要があるのではないかということで、令和7年度概算要求に向けては、特に裾野の拡大で、原子力のマスを拡大するという意味からも、28ページ目にあるように、他学科の学生等を対象に、一般教養科目や副専攻として原子力の基礎教養を学ばせるような環境を整備してはどうかということ。それとカリキュラム開発に関して、特に専門人材を念頭に、東大や東工大のような大学に主体的に参加していただくような枠組みを作りたいと思っています。産業界についても、現在メーカーに参加いただいておりますが、もっと中小企業にも参加いただきたいと思っています。そのためにも企業にメリットを感じてもらうためにも、学生と職員の相互交流、企業のリカレント・リスキリングの場として提供するといった形が必要なのではないかと思っています。さらに原子力の人材育成は、資源エネルギー庁や規制庁、原産協会等においても様々な取り組みが進んでおりますので、そこと連携協力を拡大していくということを書かせていただいています。また、2番目の原子力機構の取り組みとしては、原子力機構においても、特に原子力人材育成センターを中心に様々な取り組みを進めていただいています。こちらについては29ページ目の基本方針にあるようにANECと連携しながら、こうした取り組みを一層充実強化していくということを書かせていただいております。また、核不拡散に関する人材育成センターもあって、こちらの取り組みもIAEAの関係するところと連携協力しながら進めてまいりたいと思っています。
 5つ目の柱が、福島第一原発事故への対応になります。こちらは若干毛色が違うので注釈のところに入れさせていただいておりますけれども、原子力損害賠償の取り組みにつきましては、この委員会ではなくて、原子力損害賠償紛争審査会のほうで専ら議論を進めておりますが、福島原発事故の対応の一環として、ここにも関連する取り組みを列挙させていただいているところです。まずは、1Fの廃止措置に向けた研究開発の推進ということで、原子力機構のほうでCLADSという廃炉のための研究組織を設けて取り組みを進めております。こちらを中核として、今後の基本方針に、英知を結集した原子力科学技術・人材育成事業として関連する基礎基盤研究や人材育成、こちらはまさに廃炉に向けた研究開発だと思っておりますので、こちらを着実に進めていくということを書いています。また、令和7年度に福島国際研究教育機構(F-REI)という組織ができましたが、ここと協力しながら進めていくということも書かせていただいています。
 (2)は原子力損害賠償に関する取り組みとして、これまで文部科学省において、中間指針を策定するとか、和解仲介の取り組みをADRセンター等で行っていますが、こちらも引き続き、着実に進めてまいりたいと思っています。また、原賠法については、10年に1回改正することが求められておりますので、次期の改正に向けて事前検討を行うあたりについても書かせていただいています。
 最後の32ページ目が、今後に向けてのまとめになります。今回、12月以降の議論の中では、特に新試験研究炉、常陽と基礎研究と人材育成基盤の強化について、この部会を中心にご議論いただいて、バックエンド対策に関してはバックエンド作業部会のほうで、それぞれ議論をしていただきました。それをまとめたものが今回のものになりますが、引き続き残された論点もありますし、令和7年度の概算要求あるいは年末までの調整を踏まえて変更になるところも多々あると思いますので、引き続き、この方向性については検討した上で、適切な時期に最終的な取りまとめを行うということを書かせていただいているところであります。あとは関連する資料を付けさせていただいています。資料3−2については、今申し上げた内容をまとめたものと、これまでの審議の中で配布させていただいた参考資料をまとめさせていただいたものになります。以上です。
 
【寺井主査】 どうもありがとうございました。本作業部会でのこれまでのご議論、バックエンド作業部会、核不拡散・核セキュリティ作業部会でのご議論も踏まえて、中間まとめを作っていただいたということでございます。この資料の取り扱いですが、7月エンドくらいまでに、親委員会の原子力科学技術委員会のほうにご報告されるということですか。
 
【奥課長】 7月31日を、親委員会である原子力委員会の開催日にしておりますので、そこで取りまとめにしたいと思っています。
 
【寺井主査】 わかりました。ありがとうございます。ということで、今日はこの内容についてご審議いただきます。基本的には、これまでの議論がうまく反映されていると理解しております。ただ、いろいろなご意見があろうかと思いますので、まずは大きなところについて、今日ご意見をいただいて、細かいところは、また時間の問題もありますので、個別に事務局のほうまでご意見を出していただき、最終的に間に合うように取りまとめたいと思っていますので、よろしくお願いします。
 ただいまのご説明につきまして、委員の皆さま方からご意見やご質問等をよろしくお願いいたします。小澤委員、どうぞ。
 
【小澤委員】 小澤でございます。集中的に議論した中身ですので、ほとんど異論はありません。修正は一任したいと思っています。ただ、若干座りの悪そうなところがあったので確認しておこうと思います。
 冒頭1ページ目から、いきなり国内外の諸情勢の変化から始まっており、本当に直近の変化のことを書いているのですが、この取り組みそのものが結構長い取り組みのはずなので、芯となる部分から始めたほうがいいと思いました。(2)のところでは、「原子力を取り巻く現状」ということで、資源の乏しさなど、やっていかなければいけないことが書いてあるので、どちらかというとこちらが先で、直近の話は続いて記載する、そういう位置づけになってくるのではないかなと感じました。
 それから、2ページ目の上のほうも座りが悪いと思ったところです。「他国に依存し続けることは困難かつ不適当」とありますが、むしろ他国に依存し続けることは安易な方向で楽な話のはずですが、これが不適当かつ自立していかなければいけない理由があるはずです。それと国際的な協調の中で強かに生き延びていくことも必要で、そのあたりの整理が若干弱いと感じました。
 また、ところどころ、様々なトラブルや1F、福島第一の事故の影響を受け、という文言が入ってくるのですが、その次の3ページ目、「安全確保を大前提とした政策の推進」という基本姿勢で言って、そこが研究開発を中心とした記載の中では若干ピンボケになってきているような気がするので、そこの繋ぎがあったほうがいいと思いました。
 あと余計な話かもしれませんが、3ページ目の一番上の文章がこなれていないのではないかという部分があります。書き出しを一つ例にとってみますと「原子力科学技術は」と始まって、2行目に「政策手段であるとともに」と、原子力科学技術は政策手段と繋がっているところもあるし、脱炭素やカーボンニュートラル、GX等と、要は地球温暖化防止の話がいくつかの方針で言葉が入れ替わっているだけのところが並んでいるなど、飾り過ぎていると言えば失礼ですが、本来はどうかということをドスンと言って、あとは文法的なところを、何が政策で、何が手段で、何がやるべきことなのかということを整理した文章にしていけば、後半のほうまでスッと読めるのではないかなと思いました。以上です。
 
【寺井主査】 どうもありがとうございます。書きぶりの話ですね。読者がいかにスムーズに理解できるかというところに焦点を絞ってコメントをいただきましたけど、いかがでしょうか。
 
【奥課長】 ご意見を踏まえて、こちらでまずは修正案を作成させていただきます。
 
【寺井主査】 わかりました。よろしくお願いします。私も妥当だと思います。その他にいかがでしょうか。尾崎委員、どうぞ。
 
【尾崎委員】 23ページ以降のNEXIPについてです。ここでは必要な項目は、ほぼ網羅されていると思いますが、特に前段に加えていただきたいことがあります。それは、これに関連する企業の属性です。大学の基礎研究であれば、こういうプログラムの提示で、斬新なアイデアが提案されると思いますが、産学共同のプログラムの場合は、放っておくと今までと同じような顔ぶれの企業からの提案になることが懸念されます。これでは、旧態依然の提案ばかりになりかねません。関連する話として、3年前に、某大手商社の経営者とお話をしたときに「我々は原子力や核という名前のつくビジネスはやりません」と明言されていました。そうしたら1年後に、アメリカの核融合のスタートアップに出資していました。彼らは別に嘘を言っていたわけではなく、情報収集によって考えが変わったんですね。学会や研究者レベルでは、必要な技術情報は社内に入ってきているが、経営層の判断に役立つような情報はあまり入って来ないことが多いです。核融合だけでなく、原子力についても、そういう現象が起きているのではないかと思います。原子力の要素技術を使って原子力以外のビジネスを推進し、自社の成長を戦略に繋げてもらう。そういった目的をプロジェクト募集で強調したら良いのではないでしょうか。これまで原子力に対してアンテナを立てて来なかった企業から、斬新なアイデアが集まる効果があると思います。
 
【奥課長】 制度設計等の中でも、きちんと考えさせていただきたいというふうに思います。
 
【寺井主査】 ありがとうございます。経営層への理解の促進といったことかと思いますが、よろしくお願いいたします。黒崎委員、どうぞ。
 
【黒崎委員】 私からは3つあります。1つは、2ページの一番上のところで、原子力というのが極めて重要かつ不可欠なものであるとか、国として、維持強化を着実に図っていくことは必要不可欠であるというふうにきちんと明記されていることは非常に良いと思いました。ここで方針をはっきり明言されていることは、こういう形できちんと残してほしいと思います。
 残りの2つはコメントになります。1つが、7~8ページの新試験研究炉の話で、もんじゅサイトに新しく作るという話になっていまして、やはり、もんじゅサイトというのが場所として若干不便であると思います。一方で、敦賀の駅前がすごく発展しており、どんどん人が集まるような場所になっているので、8ページの上から3行目のところの複合拠点というところで、きちんと明記はされていますが、もんじゅサイトと複合拠点という2つでもってきちんとやっていくんだというところをもう少し加えていただけると、なおいいと思いました。
 もう1つは、20~21ページの前説部分で、平成20年からこの話があって、令和になっても、なかなか先が見えていないところがあります。それはすごく大きな課題なのではないかと思っています。ちゃんとやっていくんだという内容が書かれているのですが、21ページの下の今後の取り組みにかかる基本方針のところで「立地の選定に向けた広報等の取り組みを進める」と書いていますが、本当にこれで前に進むのかというところが若干心配なところもありまして、本当に前に進めるために、きちんとここは向き合うんだという姿勢が見える形で、もう少し何かしらを書いていただけるといいのではないかと思った次第です。以上です。
 
【奥課長】 もんじゅサイトについては、おっしゃる通り、もんじゅの白木地区にあるサイトに加えて、敦賀駅前の拠点というのも研究開発の拠点として非常に重要な役割を担っていると思います。そちらは相互に連携協力しながら進めていくことを強調したいと思います。もう1つの埋設処分に関する業務は、おっしゃる通りで、立地に一番ネックなところがあって、文部科学省と原子力機構で本当に着実に進めているところです。広報だけではなく、前向きに進めていることがわかるような形で強調させていただければと思っています。
 
【黒崎委員】 ありがとうございます。
 
【寺井主査】 その他にいかがでしょうか。石川委員、どうぞ。
 
【石川委員】 これまで様々な作業部会での議論、あるいは原子力科学技術委員会での議論をまとめていただいて、非常にバランスのいい中間取りまとめをしていただいていると感じています。これまでに何回か議論をして、私は親委員会のほうでも委員をしておりますので、そちらの議論にも加わったのですが、繰り返し、奥課長が「文部科学省の役割とは」というところから説き起こされていたのが印象的で、本日もその中で「基礎基盤的な研究開発、人材育成を含めて」という部分を強調されていたのが印象的でした。
 私は様々な国際会議にも参加して、海外の研究者や大学の先生とも意見交換をすることがあるのですが、一般の方が持たれているイメージと結構違っていて、アメリカやヨーロッパの大学の役割は基礎研究であり、企業との共同研究においても、企業が大学に求めているのは基礎的・基盤的な研究のほうです。先月にアメリカの先生と話したのですが、むしろ産業実装をするような研究では、外部資金が取れなくて困っているということをおっしゃっておりました。基礎から応用までなんでもできる日本の大学は恵まれていると思ったくらいです。原子力ですから、カーボンニュートラルに資する、あるいは先端医療に資するということを念頭に置きながら進めることは当然ですが、大学において基礎的・基盤的な研究が進められることが国力に繋がると思いますので、原子力の中間取りまとめだけではなく、そういう意識が文部科学省全体に、より浸透していくといいのではないかと感じました。そのように感じましたので、コメントいたしました。
 
【寺井主査】 どうもありがとうございました。その他にいかがでしょうか。和田委員、どうぞ。
 
【和田委員】 報告書の取りまとめありがとうございます。これまでの議論を取りまとめていただいて、内容については特に異論があるものではありません。この中で大事だなと思ったことを2点お話させていただきます。1点目は原子力の価値についてです。この政策の方向性の中にいろいろと原子力の価値というものを示していただいていると思っています。この中で、高速炉による放射性廃棄物の有害度低減、医療用RIの製造、26ページにある劣化ウランを用いた蓄電技術、廃棄物の熱放射性を用いた発電技術等々、一般にはあまり知られてない点が入っていると思います。このような原子力の貢献や取り組みを社会に知っていただき、原子力の価値への認識を高めるとともに、若い人を引きつけていくきっかけとなっていければ良いと思っています。
 もう1点は人材の育成・確保についてです。原子力を持続的に活用していくためには人材の裾野を広げて、幅広い人材を確保することが必要になります。原子力システム事業については、24ページにあるようにアカデミアとの連携、国際原子力人材育成イニシアティブ事業については27ページにある多様な人材の育成ということで裾野の拡大ということが示されております。多くの人に原子力業界に入っていただくためには、多様な分野の学生たちに原子力に興味を持っていただけるということが大事だと思いますので、ぜひ、これらの点については進めていただきたいと思います。
 もう1点はコメントです。原子力損害賠償のところについてです。30ページの(2)は「原子力事業の健全な発展に関する取り組み推進」というタイトルになっています。こちらは、今の資源エネルギー庁の議論で、原子力の最大限の活用と電力自由化の両立という点で、原賠制度のあり方について問題提起がされています。30ページに「令和11年末までに改正」という文言がありますが、そこまで待たなくても、今後の損害賠償のあり方について、議論を進めていっていただければと思っています。以上でございます。
 
【奥課長】 原子力損害賠償の件について、意見は承ります。こちらの注釈にもあるように、専ら原子力損害賠償紛争審査会のほうで議論することになりますので、今後はそちらのほうで、次期改正に向けて検討事項を絞り込んでいくということになると思います。こちらは同じ文部科学省ですので、繋げさせていただきたいと思います。
 原子力の利用に関しては、この中でも繰り返し書かせていただいていますが、原子力は単純に電力利用だけではない、幅広い利活用が可能な総合技術だということを強く強調させていただいておりますので、そうした観点で大学や研究機関における研究というのは、人材育成も含めて、きちんと支援をさせていただきたいと思っています。また、人材に関しては、裾野の拡大は重要だと思いますし、ぜひ、原産協さんと一緒に協力しながら、全体としての底上げを進めさせていただきたいと思っています。よろしくお願いします。
 
【寺井主査】 ありがとうございます。よろしくお願いします。特に最後の人材育成に関しては、いろいろなアクティビティが今動いているところです。それをどこかでうまく整理してもらいたいという話があって、そういう仕組みができるといいと思います。こちらについては、28ページに検討すると書いてあるので、そのあたりをうまくマネージしていただけるといいかなと思います。その他にいかがでしょうか。高木委員、どうぞ。
 
【高木委員】 ご説明ありがとうございました。原子力科学技術の政策やこれからの方向性について、現状や今後の取り組むべきことが、よく整理されていると思います。中身については特にコメントはなく、これを着実に推進・実行していただきたいところです。
 せっかくこうやってまとめられたのですから、国民へのメッセージというか、広く積極的に是非発信していただきたいと思っています。国が積極的に発信したり、そういう姿勢を示すことは、この分野に人材を集めるための呼びかけになりますし、今回の内容に直接携わっている関係者だけではなく、発電等のいろいろな分野も含めた幅広な原子力関係者のモチベーションや潜在能力を引き上げ、この分野を活性化していくという効果をもたらすのではないかと思います。そういう意味で大きな意味があると期待しているところです。ですので、今後エネルギー基本計画等の改定等もありますけれども、そういった機会も捉えて、このようにまとめられている原子力科学技術の政策を、是非発信していただきたいと思っています。以上です。
 
【奥課長】  ありがとうございます。おっしゃる通りです。正直申し上げて、文部科学省が原子力をやっていることを知らない方々も多いです。それは非常に反省すべきところで、こうした方向性を一旦まとめた上で、積極的な広報・情報発信というのは、対外的に進めてまいりたいと思っています。よろしくお願いします。
 
【寺井主査】 どうもありがとうございました。その他によろしいでしょうか。特にご意見がないようでございますので、本件につきましては、議論はここまでにさせていただきます。この中間まとめを7月末までに出さないといけないということで、文部科学省さんには引き続き作業をお願いしたいと思いますが、今日はいろいろなご意見をいただきましたので、それでOKだと思いますが、もし、何か特段のご意見があれば、なるべく早く事務局までご連絡いただいて、それをベースに事務局のほうで修正をしていただき、最終的には主査一任とさせていただきたいと思います。
 私も責任を持って最終的に対応したいと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、事務局におかれましては、中間まとめをしっかりと作っていただいて、原子力科学技術委員会のほうへ、7月末までにご報告いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 以上で、本日予定しておりました議題は終了いたしますけれども、全体を通して何かご意見等はございますか。それでは、最後に事務局から連絡事項等をよろしくお願いいたします。
 
【生方課長補佐】 寺井主査、ありがとうございました。最後に事務局から、今後の予定についてご連絡いたします。次回の開催日程については、追ってご連絡いたします。また、本日の議事録につきましては、出来次第メールにてご確認いただいた後、文部科学省のホームページに掲載させていただきます。以上でございます。
 
【寺井主査】 どうもありがとうございました。これで第23回の原子力研究開発・基盤・人材作業部会を終了いたします。どうも、ありがとうございました。
 
―― 了 ――

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