首相官邸・新着情報

 令和6年7月30日、岸田総理は、総理大臣官邸で創薬エコシステムサミットに出席しました。

 会議では、創薬エコシステムに資する取組及び官民協議会の在り方を含む今後の政策について議論が行われました。

 総理は、挨拶で次のように述べました。

「内閣総理大臣の岸田文雄です。本日は、別会場のライブビューイングで、この様子を御覧いただいている方々も含めて、創薬エコシステムサミットに国の内外から大勢の皆様方に御参加いただいております。御協力に心から感謝を申し上げます。
 岸田政権は、我が国の創薬力を向上させ、国民に最新の医薬品を迅速に届けること、これを最重要政策の一つとしています。鴨下一郎先生に内閣官房の参与になっていただくとともに、昨年末より官邸で創薬力構想会議を開催し、5月に中間取りまとめを行ってもらいました。
 日本を世界の人々に貢献できる「創薬の地」としていく。こうした方針を政府がコミットしていくことを、ここに宣言いたします。そして、医薬品産業は、我が国の科学技術力をいかせる重要な成長産業でもあります。我が国の今後の成長を担う基幹産業となるよう、強力に施策を推進してまいりたいと考えています。
 具体的には、3つの施策を必ず実現してまいります。
 第1に、日本はもとより、世界中から開発を呼び込むために、ファースト・イン・ヒューマン(FIH)試験実施体制整備など、国際水準の治験や臨床試験の実施体制の整備を進めます。
 第2に、外国の製薬企業やベンチャーキャピタルも呼びこみ、アカデミアやスタートアップのシーズを育て、実用化まで連続的な支援を行う環境・体制を日本に作ってまいります。
 第3に、創薬ベンチャーエコシステム事業をよりアーリーな段階から支援を行えるようにすること等を通じて、創薬スタートアップへの民間投資額を5年後の2028年には2倍にし、企業価値100億円以上の創薬スタートアップを10社以上輩出するなど、投資とイノベーションが継続して起こるシステム、これを実現してまいります。
 本日発表した政策目標・工程表は、政府を挙げて創薬力構想会議の提言を具体的に進めていくことを国内外に向けてお約束するものとなります。
 創薬の原点は、新たな治療法を待ち望んでいる患者さんの存在です。現在、残念ながら、欧米で承認されている医薬品が日本では開発に着手されていないという、ドラッグ・ロスが生じてしまっています。こうした医薬品の中には、患者さんの数が少なく開発が困難な治療薬や、小児用の医薬品が多く含まれています。そのような患者さんが、わらにもすがる思いで、個人輸入や海外渡航など御負担の重い方法を選択せざるを得ない状況にあると聞いています。患者さんにこのような思いをしていただきたくない。そして、日本の患者さんだけでなくして、世界の患者さんに貢献する創薬の地でありたい。こうした想いが、今回の政府の取組の契機となりました。
 ドラッグ・ロスの解消、小児用の医薬品や希少疾病の医薬品の開発のための取組を進めていくに当たり、患者の皆様、そしてその家族の声に耳を傾けていくことを忘れてはなりません。本日は、希少疾病の一つである、ライソゾーム病の患者家族会協議会の秋山武之様にも御参加いただいております。この後、希少疾病と闘う子どもたちが一人も取り残されないよう、この創薬力向上に向けた取組への期待を語っていただきたいと思っています。
 製薬企業においても、従来から患者の声を取り入れるための様々な活動をしていただいていると承知しています。これまで以上にそのような活動に力を入れ、新たな治療法を望む患者の希望に応えることができるよう、共に頑張ってまいりたいと思っています。
 政府として、創薬力の向上に向けた環境整備に総力を挙げて取り組んでまいります。しかし、実際に患者さんの手に革新的なお薬を届けることは、残念ながら政府の力だけではできません。ここにお集まりの皆さん、そして別会場のライブビューイングでこの様子を御覧いただいている皆さんこそが創薬の担い手です。主役は皆様方であると思っています。
 本日のサミットでは、国内外から創薬に携わる様々なプレーヤーの方々に御参加いただいております。具体的には、国内外の製薬企業やその団体、基礎研究の中核を担い、創薬シーズを生み出す大学、創薬スタートアップ、スタートアップ等を支えるベンチャーキャピタルやインキュベーション組織、さらには、水平分業型の創薬モデルの中で研究開発を支えるCRO(医薬品開発業務受託機関)やCDMO(医薬品開発製造受託企業)、そして臨床試験、特にファースト・イン・ヒューマン試験の実施を担う医療機関、また、データの利活用などの観点から創薬に関わる方々、そして患者団体の方々、こうした方々に、この場には官民合わせて43名の皆様にお集まりいただいております。また、ライブビューイングの会場にも多くの方々に御参加いただける予定であります。
 新たな治療法を発見し、開発し、革新的な新薬を製造して、患者さんの手にお届けする。これは、ここにお集まりのどの方も、お一人ではできません。創薬に携わるプレーヤーの方々が連携し、時にバトンを渡すかのように代わる代わる支援をして大切に育てながら、やっと新しいお薬が生まれます。
 本日のサミットでは、国内外から、創薬に必要なあらゆるプレーヤーにお集まりいただいています。是非、今日のこの場を、皆様のつながりの輪をより大きく、そしてより太くしていく場としていただきたいと思っています。隣同士で座られた方、第二部のネットワーキングの場で近くにいらっしゃる方など、積極的に交流を深めていただければと思っております。
 本日は、皆様の取組を御紹介いただくだけでなく、来年度に設置予定の官民協議会の在り方も含め、創薬力の強化のための環境整備について、是非、政府に対する積極的な御提案をお願いしたいと思っています。
 世界の創薬基盤の一つとなるべく、我が国の創薬基盤の再構築、そして再強化を図ってまいります。そのために、我が国の医療分野を始めとするアカデミアの研究力を維持・向上し、スター・サイエンティストを生み出すとともに、創薬の経験を有する方などが、実用化の観点から初期段階の研究開発計画の作成支援を行うなど、基礎研究と実用化研究の双方の専門家を連携させることで、そのシーズを掘り起こし、創薬に結び付けていく。こうした取組を更に拡げて行くための方策について、官民で力を合わせて検討していこうではありませんか。
 岸田政権は医薬品産業を成長産業・基幹産業と位置付け、政府として、民間の更なる投資を呼び込む体制・基盤の整備に必要な予算を確保し、政府を挙げて創薬力構想会議の提言を具体的に進めていくことを国内外にお約束するものであります。
 産業界におかれては、政府の政策、創薬環境、市場環境の変化を踏まえた構造改革が進められることを期待いたします。
 創薬エコシステムに国境はありません。日本の国内で閉じるのではなくして、世界の他のエコシステムや、そのプレーヤーとつながり、その力を活用することをもって、初めて発展していきます。我が国が目指す創薬エコシステムも、世界に広く働きかけ、国内外から優れた人材や資金を集結させることで、日本を、アジアを始めとした世界の人々に貢献できる創薬の地としていきます。特に、高齢者人口の急増による疾病構造の変化が見込まれるアジア・太平洋地域で必要とされる医薬品の開発に重要な役割を果たしてまいります。
 本日のサミットは、我が国が日本、そして世界の患者さんが待ち望むお薬をそのお手元にお届けできるような国となるための出発点であると考えています。国内外からお集まりいただいた皆様、我々が力を合わせれば、必ず実現できます。共に頑張っていこうではありませんか。改めて皆様方のサミットに対する御協力に感謝を申し上げます。」

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