厚労省・新着情報

労働基準局安全衛生部労働衛生課

日時

令和6年5月31日(金)15:00~

場所

中央合同庁舎5号館12階共用第14会議室(東京都千代田区霞が関1-2-2)

議題

  1. (1)前回までの主な意見について
  2. (2)今後の進め方について
  3. (3)その他

議事

議事内容
○夏井産業保健支援室長補佐 事務局です。「第3回ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」を開催いたします。本日は、大変お忙しい中御参集いただきまして誠にありがとうございます。構成員の皆様におかれましては、御多忙の折、御参加いただきましたことに御礼を申し上げます。報道関係者にお願いです。カメラ撮りは、ここまでとしてください。
 さて、本日の出欠状況ですが、三柴構成員が御欠席でございます。また、及川構成員、大下構成員、黒木構成員、砂押構成員、堤構成員、森口構成員、矢内構成員はオンラインでの御参加になります。
 次に、オンラインで御参加いただいている構成員の皆様に、御発言の仕方などを御説明いたします。会議中、御発言の際は、「手を挙げる」ボタンをクリニックし、座長の指名を受けてからマイクのミュートを解除し、御発言をお願い申し上げます。御発言終了後は、再度マイクをミュートにしていただきますようお願い申し上げます。また、議題に対して御賛同いただく際には、カメラに向かって「うなずいていただく」ことで「異議なし」の旨を確認させていただきます。
 続きまして、資料の確認です。会場にお越しになっている方は机の上のタブレットで、また、オンラインで御参加されている方におかれましては画面共有の画面にて御確認をお願いいたします。本日の資料は、事前にお送りしておりますとおり、議事次第、資料1、第1回及び第2回検討会における主な意見、資料2、WHO職場のメンタルヘルス対策ガイドラインの紹介、こちらは、堤構成員提出資料です。それから参考資料1、関連条文及び指針等、参考資料2、WHO職場のメンタルヘルス対策ガイドラインとなっております。この後、議事に沿って画面共有にて御覧いただきますが、不足などがありましたら事務局よりお送りしますので、コメント又は御発言にてお申し出ください。
 それでは、以降の議事進行につきましては川上座長にお願い申し上げます。
○川上座長 ありがとうございます。それでは、これより議事に入らせていただきます。まず、次第に基づき、「(1)前回までの主な意見について」、事務局から、資料1により第1回及び第2回の議論を振り返っていただきます。その上で、今回第3回は、課題の深掘り・洗い出しを行っていただき、次回第4回以降は、事務局に論点を整理していただき、個別の具体的な議論というものに入っていきたいと考えております。
 したがって、自由に御発言いただく会としては最後になりますので、言い残しのないように御注意いただきながら御発言を頂ければと思います。それでは、事務局から資料1の御説明をお願いいたします。
○富賀見メンタルヘルス対策・治療と仕事の両立支援推進室長 事務局です。座長からありましたように、まず資料1によって、第1回及び第2回検討会における主な御意見の振り返りといたします。資料1をお開きください。2ページから御説明します。2ページに、この資料の目次的に、これまで頂きました御意見を大括りに分類しております。冒頭にありますように、第1回及び第2回検討会では、ストレスチェック制度の効果、制度の枠組み、制度の運用の切り口で御意見がありました。1は、ストレスチェック制度の効果について。2のストレスチェック制度の枠組みとしましては、(1)(2)のように、50人未満の事業場におけるストレスチェック、集団分析・職場環境改善、それぞれの観点から御議論があったところです。
 さらに、50人未満の事業場におけるストレスチェックに関しましては、まず1のように、その義務化について検討すべきという御意見と、一方で、課題があるとする御意見がありました。続く234ですが、その課題として挙げられた労働者のプライバシー保護の課題、人的リソースの課題、中小企業に対する支援策のそれぞれについて御議論があったところです。
 次に(2)集団分析・職場環境改善に関しましても、まず1のように、その義務化について検討すべきという御意見と、課題があるとする御意見がありました。23は、その課題として挙げられた事業場内の実施体制の課題、外部の支援のそれぞれについて御議論があったところです。
 続きまして3は、ストレスチェック制度の実効的な運用について。制度のフレームワークに関わらない現行制度の運用上の課題について御意見を頂いております。それを大括りに分類すると、制度の理解促進、高ストレス者等のフォロー、そのほか制度上の様々な課題について御提起いただいたところです。
 個別に見ていきます。3ページを御覧ください。1として、ストレスチェック制度の効果についてです。ストレスチェック制度に一定の効果があるとする学術論文、研究報告書などについての説明がなされました。それに対して、以下の御意見があったというものです。なお、この資料におきまして御意見の末尾に12とあるのは、それぞれ第1回、第2回で頂いた御意見という意味になっております。
 4ページを御覧ください。ストレスチェック制度の枠組みにつきまして、まずは50人未満の事業場におけるストレスチェックに関しまして、以下のとおり、義務化を検討すべきとの御意見、義務化には課題があるとする御意見がありました。下線部分の御議論といたしまして、事業所規模が小さくなるほどメンタルヘルス対策の実施割合が低いことから、小規模事業場における対策強化が必要。労働者であれば、事業場規模にかかわらず同様の制度が適用されるのがあるべき姿であり、50人未満の事業場におけるストレスチェックの義務化を検討すべき。三者構成による合意事項であったことの重みを踏まえるべきであり、当時と今日において大きな状況変化がなければ、改めて認識を共有し、全労働者に対象を拡大することを検討すべきといった御意見。またその一方で、「産業医の選任義務がないなど、体制が整備されていない小規模事業場では情報管理等が適切に実施されないという懸念により、従業員50人未満の事業場については、当分の間は努力義務とするという特例を設けた」という当時の懸念が解消されたかどうかが大きな判断要素になる。次のページです。50人未満の事業場へのストレスチェックの義務化は、労働者のプライバシー保護の問題、人的リソースの問題で課題が大きいといった、義務化には課題があるとする御意見がありました。
 6ページを御覧ください。その課題で挙げられた1つ目、労働者のプライバシー保護に関しましては、中小企業で実施事務従事者を内部の職員にすると、全部の情報を知ってしまうことになるが、実施事務従事者の機能を外部委託するなど方法はある。大企業でも、プライバシー確保のために、基本的に実施事務従事者を外部の機関に委託しているケースが多い。中小、特に零細企業の場合、実施事務従事者の外部委託等のコストの視点は重要。従業員が2人しかいないような事業場で、プライバシーの確保は現実的か。こういった50人未満の事業場におけるプライバシー保護に関する課題や、そのプライバシーを保護するための方法につきまして御意見がありました。
 7ページです。同じく課題として挙げられた人的リソースの問題に関しましては、中小企業では、健康管理を行う専門的な人員があまりいない。地産保による支援や環境整備を併せて検討していくことが必要。50人未満の事業場においてストレスチェックをどうすればやれるのかという観点から、地産保等の体制強化を含め、中小企業の支援策をセットで議論すべき。このような御意見がありました。
 8ページです。そのほか、地産保等の支援策以外に、中小企業でのストレスチェック実施を進めるために必要となる支援策につきまして、厚生労働省のストレスチェックの無料プログラムや、小規模事業場向けの実施マニュアルの整備、また、かかりつけ医の充実、産業医的な考え方をしっかり持っていただくことが必要といった御意見がありました。
 次に、9ページです。ストレスチェック制度の枠組みについてのもう1つの議論でした集団分析・職場環境改善に関しまして、以下のとおり、義務化を検討すべきとの意見、義務化する場合に、考慮すべき観点についての御意見がありました。具体的には、プライバシー確保を前提としつつ、義務化への移行を検討すべき。ストレスチェック制度は一次予防を主眼としていることから、集団分析・職場環境改善の義務化は検討していくべき。一定のガイドライン等が必要。義務化する場合、個々の事業場の取組が制約されないようにすべき。実効性を確保していくため、安全衛生委員会への報告の義務化も検討の俎上に上げていくべき。パターン的な実施を義務付けることは、現場の実態を反映しないものとなる。こういった御意見がありました。
 10ページです。また、事業場内の実施体制の視点から、集団分析・職場環境改善を通じて効果的にメンタルヘルス対策を実施するための事業場内の実施体制、実施方法につきまして、一次予防の観点から、適正配置の問題が非常に大きく、産業医、産業保健スタッフだけではなく、人事労務部門、事業者と表裏一体でやる必要があるといった御意見がありました。
 11ページです。また、事業場における集団分析・職場環境改善の実施を進める上で、外部の支援を充実すべきとして、産保センター及び地産保の予算拡充、集団分析の活用など、好事例の水平展開といったものが必要といった御意見がありました。
 12ページです。これらのほか、ストレスチェック制度のフレームワークに関わらない、現行制度の実効的な運用に向けた御議論がありました。1制度の理解促進に関しては、メンタルヘルス対策の一次予防の制度としての目的や効果につきまして、事業場に対して周知を強化していくべきといった御意見がありました。
 13ページです。また、高ストレス者等のフォローにつきまして、高ストレス者等が個別に相談しやすい体制づくりを推進していく必要があるといった御意見を頂戴しております。
 14ページです。以上のほか、現行制度の制度上の課題につきまして、皆様から幅広く、様々な御意見を頂戴しているといったところです。以上、第1回及び第2回の御意見の振り返りといたします。
○川上座長 事務局、ありがとうございました。それから、本日、堤構成員から「WHOメンタルヘルス対策ガイドライン」について御説明があると伺っております。資料2になると思いますが、堤構成員、御説明をお願いしてよろしいでしょうか。
○堤構成員 はい、承りました。こちらの声は聞こえておりますでしょうか。
○川上座長 はい、大丈夫です。
○堤構成員 そうしましたら、資料を提出させていただいておりますので、文面を映していただくことは可能でしょうか。ありがとうございます。
 事務局から10分程度でと申し付かっておりますので、できるだけ分かりやすくと思います。お付き合いいただければと思います。今日御紹介しようとしているのは、「WHO職場のメンタルヘルス対策ガイドライン」というものが出まして、その紹介になります。
 まず、こちらを紹介するに至った理由ですけれども、私のほうで初回に、ストレスチェックのいわゆる論文化されたエビデンスを御紹介しました。第2回目では、ストレスチェックに限らず、効果がない対策もあるようなこともお話をしたところです。一方、ストレスチェックに限らず、効果のあるようなことも御紹介した上で御議論いただくのが好ましいのではないかということで、ここで御紹介するような次第でございます。
 WHOが2022年にこの題名にあるガイドラインを出しております。今回、参考資料2で邦訳の部分も出ていますので、詳しくはそちらを御覧いただければと思います。読むのに少し理解の難しい所もありますので、それを解説させていただくような立て付けでというように思っています。
 まず、はじめにの所です。WHOはこのガイドラインで何をしようとしているかということを書いています。労働者の精神健康の保持増進、精神健康問題の予防、精神的な問題のある労働者の職場復帰及び就労継続に関する科学的根拠に基づく推奨事項を提供しているという、そういう趣旨です。この後、作成過程が書かれていますけれども、今回は内容を御紹介したいと思いますので、結果に飛ばせていただきたいと思います。
 表2を御覧いただければと思います。こちらで何が書かれているかという御説明です。まず、このガイドラインの対象となるところが1から3まで定められています。1が全ての労働者で、2がヘルスケア、人道支援、緊急事態対応を行う者、3が精神的な問題のある労働者といったところです。それぞれの対象に対して、A~Fまでの介入に関する研究がレビューされて、最終的に推奨1から推奨12までマークが付いている、12の推奨がなされていると御理解いただければと思います。少しここで申し上げますと、全労働者に対しては組織への介入、ヘルスケア、人道支援、緊急事態対応者に対しては組織への介入、精神的な問題のある労働者に対してはそれぞれ推奨という形で出ております。
 これをちょっと細かく御紹介したいと思いますので、次に表3に向かっていただいていいでしょうか。これは、今申し上げたことの並べ方を変えたような形で、より詳しく書かれている所です。一番上の行を例としまして読みますと、全労働者という対象に関しては、心理社会的リスク要因への参加型アプローチを含む組織的な介入を、精神的苦痛、仕事に関連するアウトカムというようなものを目標にして行うことは、条件付きで推奨する、科学的な根拠の確実性はとても低いというような感じで並べられております。介入の部分は、言ってみれば、イメージとしては職場環境改善、我々が今議題にしている職場環境改善のアプローチに匹敵するものです。違いとしては、ストレスチェックのエビデンスとは違うが、メンタルヘルス対策を目的とした一般的な職場環境改善が挙げられているというような形で御理解ください。そして、推奨の強さと科学的根拠の確実性については少し特殊なところがありますので、もう少し解説をさせていただこうと思っています。
 こうしたガイドラインの推奨の文章ですが、大きく2つの軸で示されます。まず最初に、推奨の方向と強さです。推奨の方向というのは、いわゆる推奨するか推奨しないかといったようなところですけれども、このガイドラインで12挙がっていますが、基本挙げられている施策は推奨するという立場で挙がっています。その次に、推奨の強さです。推奨の強さは、強い推奨と条件付き推奨という形で表せます。条件付き推奨というのは、ときに弱い推奨といった形でも言われることがありますが、条件付き推奨というのは、言ってみれば諸手を挙げて推奨というわけではないぐらいの感覚で取っていただければよろしいかと思います。
 2つ目に、エビデンス、科学的根拠の確実性ですが、これは通常は4段階で示されます。今、表3に挙がっているのはとても弱いですけれども、低い、中くらい、高いといった形で4段階で通常表すことができます。少し解説いたしますと、まず、科学的根拠の確実性ですが、皆さん御存じのとおり、介入研究といって実験的に行う研究は、かなりエビデンス、科学的根拠は高いほうに分類されます。一方で、メンタルヘルスに関連しては、この前も御紹介しましたけれど、観察的な研究もありますので、その観察的研究の科学的根拠の確実性もあるのですが、実験的な研究に比べては低いほうで捉えられます。個々の研究で、例えば無作為化比較試験のような介入研究であれば、基本、科学的根拠の確実性は高いというところからスタートします。研究にはそれぞれ弱点がありますので、例えば、その弱点が見付けられたら、その研究では点数が下がっていくような下げ方をします。一方、観察研究のほうは低いところからスタートするのですが、例えば、見られた効果が大きかったということであれば、確実性が上がるように得点される形です。
 そのような形で、個々の研究で、まず、とても低いから低い、中くらい、高いが設定され、いろいろ研究がありますので、その研究が全部総合されて、ここにとても低いとか低いとかいうような形で表されると御理解ください。ですから、必ずしもこのエビデンス、科学的根拠がとても低いというのは、根拠が劣っているとかそういうことではなくて、現状ある根拠の中での評価という形で捉えていただければと思います。
 推奨の強さですけれども、このガイドラインでは、推奨というのは、介入による望ましい効果が望ましくない効果を上回るか下回るかについて、どの程度確信できるかを示すものと言われています。望ましい効果というのは、有益な健康アウトカムのことです。例えば、QOLが上がるといったことです。一方、望ましくないのは、副作用などが出ていたらそれは望ましくないということです。こうした推奨の強さの判断を、先ほど御紹介した科学的根拠の確実性とか、望ましい効果と望ましくない効果のバランス、それから価値観とか、コストであるとか、そのようなものを基に、主観的に判断されて推奨の強さが表現されるというように御了解ください。
 そういった形で御覧いただいて、先ほどの全労働者に関しては、そこに書いてあるような介入が、精神的苦痛のようなアウトカムについて、科学的根拠は低いけれども、条件付きで推奨される形で並べられているところです。ヘルスケア、人道支援、緊急事態対応の従事者に関しては、そちらに書いてあるような介入が、やはり精神的苦痛であるとか、仕事に関連するアウトカムに対して、科学的根拠の確実性は低めだけれども、条件付きで推奨されています。精神的な問題のある労働者については、こちらはアウトカムは書いていませんが、その介入の所を御覧いただくと、国際人権原則に従って、心理社会的障害を含む精神的な問題のある労働者のために合理的な配慮を行うべきであると記載されていて、確実性の所を見るととても低いのですけれども、推奨の強さが強いとなっていて、人権に関わるようなことは是非行うべきであるというスタンスで推奨が行われるという形の立て付けです。
 以下は読み方ですので、この後はざっと内容だけ流させていただきます。表4の部分について、管理監督者のトレーニングに関しては、全労働者に対して、それからヘルスケア、人道支援、緊急事態対応従事者に対して、部下のメンタルヘルス支援のための管理職トレーニングというのが、メンタルヘルスに関する管理監督者の知識や態度や行動を上げるのに関して、科学的根拠が中程度そろっていて、推奨の強さは強いという形で出されています。
 次のページになりますが、表5に労働者へのトレーニングに対する推奨事項があります。全労働者、それからヘルスケア、人道支援、緊急事態対応従事者に対しては、メンタルヘルスリテラシーと気づきに関する従事者のトレーニングというのを、労働者のメンタルヘルスに関する知識、偏見を含む職場での態度を改善するのに、エビデンスのレベルとしてはとても低いけれども、条件付きで推奨するとしております。
 表6は、個人向け介入に関する推奨事項です。対象は全労働者、ヘルスケア、人道支援、緊急事態対応従事者、それから精神的な問題のある方も含めてということですけれども、そこに並べてあるような介入が、アウトカムとしてはポジティブメンタルヘルスとか、精神的苦痛などに対して、それぞれの科学的根拠の確実性をもって、条件付きな推奨となっています。
 なお、この労働者へのトレーニングと個人向けの介入がどう違うかということですが、労働者のトレーニングの方は基本、予防に関連するようなことをここに挙げています。個人向けは、予防は予防ですが、より臨床に近い二次予防的な部分、マインドフルネスや認知行動療法といったものが含まれると御理解いただいて結構かと思います。
 次のページに表7、表8があります。表7は、精神的な問題により休業中の方に対して、1、2のような介入があって、こういうものが精神症状や休業日数を良いほうに動かすことに関して、科学的根拠の確実性は低いけれども推奨するという形です。また、表8ですが、精神的な問題のある当事者の就労に関しては、雇用継続をするために、そこの介入にあるものに関しては、科学的根拠の確実性は低いけれども、推奨の強さとしては強く推奨するという形で出されております。
 117ページ、最後のページを御紹介して終わりたいと思います。今御紹介したのがガイドラインの内容ですけれども、WHOとILOはジョイントで、Policy Briefというものを出しています。4の所に書いています。このPolicy Briefというのは、国の「政策ガイド」とか企業・組織の「方針ガイド」といった位置付けで、正に今私たちがこのような所で議論していくときのガイドということで御認識いただいていいかと思います。表9を御紹介して終わろうと思っております。3つの戦略が書いてあります。01が、仕事と関連したメンタルヘルス不調を予防するという戦略です。02が、職場のメンタルヘルスを保持・増進するという戦略です。03が、職場でメンタルヘルス不調の者を支援するという戦略です。それぞれの戦略に対して、右に書かれている内容をしていく。そのために推奨される対策というのは、先ほどのWHOのガイドラインではここに当たるという形の表になります。
 一番上、仕事と関連したメンタルヘルス不調を予防するということに関しては、心理社会的な要因を除去したり軽減したりといった、リスクの低減をすることが対策の内容になります。その対策の内容というのは、先ほどのWHOのガイドラインでは、表3にありました、いわゆる組織介入、この組織介入がそれに当たるということで、こういう対策を取るといった流れです。02のメンタルヘルスの保持・増進に関しては、心理社会的な要因の影響を最小限にするためのトレーニングとか、二次予防的なことがここに含まれている形です。最後、職場でメンタルヘルス不調の者を支援するということに関しては、当事者の方々に対して、職場復帰とか就業継続ができるようなアプローチということで、WHOのガイドラインで言えば、推奨事項の11とか12をやっていくという、そういう並べ方で書かれていると御理解いただければと思います。
 以上、WHOが出しているガイドラインについて御紹介しましたが、メインの結果は表2で御紹介したところでして、ここで検討された対象に対して、12の推奨が出されているということを御紹介させていただきます。すみません、長くなりましたが、以上です。
○川上座長 堤先生、専門的な視点からも解説を頂き、ありがとうございます。WHOが効果を評価して推奨できると言っている取組のリストを頂いたというように理解しております。直接ストレスチェックに関連する部分ではありませんけれども、今後の議論の参考になるかと思います。
 それでは、もう1つ。本日御欠席の三柴構成員からコメントの提出があると伺っておりますので、事務局から御紹介をお願いしてもいいでしょうか。
○夏井産業保健支援室長補佐 事務局です。三柴構成員からコメントを頂戴しておりますので、御紹介申し上げます。
 前回発言させていただきましたとおり、メンタルヘルスに関する問題の背景要因の多様さや根深さが想定される中で、ストレスチェック実施後の対応において、多様な人材の活用が重要と存じます。例えば、高ストレス者の割合が高い事業場などにおいて、もめ事の発生を想定し、具体的な事例を用いた研修の実施を御検討いただければと思います。予防を理解する法律家、良識ある人事などの活用が考えられます。多職種交流の第一歩としていただければとの趣旨です。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。それでは、第3回の課題の深掘りと洗出しに移っていきたいと思います。構成員の皆様から自由に御発言を頂いて、次回以降、具体的に検討していく基本的な骨格を作っていきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。オンラインで参加の構成員につきましては、御発言されるときに挙手ボタンを押していただければ、私のほうで見付けて指名をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。では茂松構成員、よろしくお願いいたします。
○茂松構成員 1回目と2回目の意見の整理の説明を頂きまして、誠にありがとうございました。また、「WHO職場のメンタルヘルス対策ガイドライン」の紹介ということで、堤先生から御紹介を頂いて、本当にありがとうございます。ただ、ちょっと気になるのは、この検討会の目的は、メンタルヘルス対策であると思いますので、ストレスチェック制度のみに焦点を当て続けて議論をしていることには違和感を感じております。是非とも、この検討会では、ストレスチェック制度のみならず、広くメンタルヘルス対策を考える場にしていただければということを、最初に申し上げたいと思っております。
 その上で、ストレスチェック制度はメンタルヘルス不調を未然に防止する一次予防であることが目的であり、事業場がストレスチェックの結果をいかして職場環境改善に取り組むものです。一次予防と職場環境改善は1つのセットになるものであろうと考えております。したがって、集団分析と職場環境改善の実施は必要ですが、一律に義務化するというのではなく、まずは大規模事業場から実施すべきではないかと思います。そして、事業場の規模に応じて、段階的に実施する。例えば30~49名とか、10名以内とか、10~20名とか、段階的に実施していくという方向ではどうかと思います。
 また、メンタルヘルス対策は個別性が非常に高いということを考えますと、努力義務となっている50人未満の事業場も、ストレスチェックの義務化ではなくて、地産保の充実の中の取組、これは今までも発言してきておりますが、地産保の活用というのが非常に大事ではないかと思います。小規模事業場の労働者が、こころの耳のホームページに掲載されている職場のストレスセルフチェックを活用することも有効な方法でしょう。まずはセルフチェックの活用の周知も必要ではないかと思っております。
 前回も申し上げましたが、小規模事業場は地域医療との関わりが非常に重要になってきますので、小規模事業場でのメンタルヘルス対策は、地域で支えることも非常に重要ではないかと思っておりますし、これが基本ではないかと思っております。それと、労働者自身が実施したセルフチェックの結果を、メンタルヘルスに問題がある労働者が、かかりつけ医に相談すること、また、かかりつけ医が事業場にフィードバックして、地産保の登録産業医と連携するなどという対応を、ふだんからしっかりつくっていっていただければと思います。そのために、メンタルヘルス対策の相談先として、地産保の相談窓口の周知を特に強化していただければと思っております。以上です。
○川上座長 御発言、ありがとうございました。次回以降の進め方については、今日の回の最後に少し御相談をして考えていきたいと思います。まずはありがとうございました。堤構成員が手を挙げていらっしゃいますので、オンラインからお願いいたします。
○堤構成員 本日、そちらに伺えなかったのは申し訳ないのですけれども、講義等の関係で、この後、16時過ぎには退室しますので、先にお話をさせていただきます。私は今、御発言があったように、確かにメンタルヘルス全般を視野に置いてという考え方に、非常に賛同するものです。それが1点です。
 今回、いわゆるWHOのガイドラインをお示ししたのも、そういう趣旨もあってお示しした部分もあるのですけれども、前もって事務局に挙げていただいているストレス制度の枠組みについてというところで、一言、付言させていただきますと、今回WHOが示しているのは、やはり予防の部分では、いわゆるリスクの軽減を重視しているという考え方ではないかという感じで、勉強させていただきました。ストレスチェック制度というのは、広く組織的な対策を取っていくという意味では、リスクの軽減を図っていくものではないかと思っています。そのためのツールとして、この対象を広げていくことが合理的なことではないかという考え方を持っているのです。そういう意味で、50人未満の事業場におけるストレスチェックの中で、少し広げていくという方向性はいかがかと考えているところです。
 ただ、前回までのお話にも出ておりましたように、コストの面など、いろいろな御負担があるということも伺っております。その部分に関しては何らかの支援が必要ではないかというのは、同時に思っておりますが、方向性の1つとして、そういう方向はいかがかと思っているところでお話をさせていただきます。以上です。どうもありがとうございます。
○川上座長 それでは井上構成員、お願いいたします。
○井上構成員 精神神経学会から参加している、大阪公立大学の井上です。第2回は欠席したもので、話がずれるところがあるかもしれません。まず、ストレスチェックそのものは、私の関係しているところでは万能論みたいになっていて、ストレスチェックをしていればメンタルヘルス対策ができているみたいなこともあって、大変受入れがいい。ただ、それが本当に正しいのかというところを危惧しております。
 と言いますのは、ストレスチェックを開始して長くたちました。いわゆる労災などで、脳・心疾患の労災申請は大きく変わらないが減少傾向ですし、実際の認定も同様です。一方で、精神疾患の労災申請に関しては増加傾向です。そうなると、果たして現在のストレスチェック制度の内容そのものが、実際に労災とイコールではないと思いますけれども、メンタルヘルス対策に対してどれぐらい効果があるかというのが気になっています。
 実際にメンタルヘルスの訴えが減るような形で、例えば何らかの質問をもう一問増やすとか、何か体制を変えるとか。ストレスチェックの対象を広げていくことも大事ですけれども、いずれかの段階で、質問項目などが本当に適切かどうかというのを、一度御検討いただけると有り難いと思っております。また、先ほど堤先生からもWHOのお話を頂きましたけれども、もし何かいいもの、こういう項目を足せばメンタルヘルスの訴えがもっと減るというような項目が、今の時点であれば、それを検討の課題にしてもいいかと思いました。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。渡辺構成員、お願いいたします。
○渡辺構成員 渡辺です。よろしくお願いします。先ほど茂松先生から非常に重要なお話をお伺いしたので、私も是非、それに加えてお話をしたいと思います。非常に抜本的な問題になってしまって、大きな話になってしまいます。
 メンタルヘルス対策ということで考えますと、私が一番重要だと思っているのは、そして日本で少し欠如していると思っているのは、適正配置、適材適所の問題だと思っております。本人のパーソナリティや能力適性に合わせた仕事、業種、あるいは仕事のやり方にしていけば、自然とストレスは減りますし、業績も向上します。そういう意味で言うと、やはり日本の社会の中で、もっともっと適材適所という観点を重要視していかなければいけないと思っています。
 ただ、このことが日本はとても遅れていると感じています。その理由は、日本社会の風土というのは、仕事に人を合わせるということで、もう何百年もやってきているのです。しかし、今の適材適所という考え方は、人に仕事を合わせるという考え方ですから、特に日本文化においては、ものすごく大きなパラダイムシフトが必要なのです。一方で、多様性やダイバーシティ&インクルージョンということが、働き方改革その他で強調されていますが、実は全くその逆にあるのが、日本文化の在り方なのです。
 ということで、これから日本の職場のメンタルヘルスをきちんと発展させていこうと思いますと、我々はこの問題をきちんと把握して、本当の意味での多様性やインクルージョンを目指すためにはどうしたらいいのか、この課題をはっきりさせていかなければいけないと思っております。人に仕事を合わせるという発想が、本当に今から日本でやっていけるのかどうか、そこのところを真剣に考えて、そのためにどうしたらいいかというのは大問題です。これは、国がリーダーシップを持って、国が進めていかないとうまくいかないのではないか。逆に言うと、そこがうまくいくと、結果的にストレスは減りますし、メンタルヘルスが非常に良くなり、業績も上がるということにつながっていくと思います。抜本的な問題ですけれども、是非、これだけは言っておきたいと思い言わせていただきました。ありがとうございます。
○川上座長 御発言、ありがとうございました。非常に大きな視点からの御意見だったと思います。ほかにいかがでしょうか。御発言いただける構成員はおいでになりませんか。神村構成員、お願いいたします。
○神村構成員 茂松先生がおっしゃった、メンタルヘルスを、ストレスチェックではなくて、もっと全般的なもので捉えるということに、先生方も賛同される御意見が大きいと思いますので、本当にこの検討会の中で今後、その方向でもしっかりとした話合いができるものと思います。
 私も同じように考えているところではありますけれども、特に今、渡辺先生がおっしゃったような話もそうですし、個人のレベルで言いますと、現場では、特に若い世代の方々がすぐに退職されるとか、職場のルール、例えば始業時間を守るぐらいのルールも、守るのに苦労しているような若者が多いように私は感じております。そういう個人の様々な、社会に適合していくレジリエンス、マインドフルネスなどの範疇に入ることだと思いますけれども、そういうところからも、現場の会社では苦労していると感じております。メンタルヘルスという枠の中で考えるよりも、もうちょっとはみ出てしまうかもしれませんが、日本の社会の中で働くことと個人が適合していくか、正に渡辺先生がおっしゃったことが、根本的に必要な問題であろうと感じております。それとストレスチェック制度がどのように合致していくのか、共存していくのかについては、皆様の御意見を伺った上で、議論を深めていければと思っております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。そのほかに御意見はいかがでしょうか。これまで頂いた御意見でも、再度強調しておかれたいことがあれば、御発言いただきたいと思います。坂下構成員、よろしくお願いします。
○坂下構成員 ありがとうございます。この検討会の射程範囲は、検討会の名称に「ストレスチェック制度等」と書いてありますけれども、その後に「メンタルヘルス対策」と書いてありますので、メンタルヘルス不調となることを未然に防止する一次予防に限らず、二次、三次予防についても議論になり得るだろうと思っています。ただ、かなり深い議論にもなるのではないかと思います。これは事務局や座長のお考えによるかと思いますが、まずはどの内容にフォーカスして決めていかなければいけないのか、議論を深めなければいけないのかが重要な視点かと思いましたので、冒頭に申し上げたいと思います。決して、メンタルヘルス対策全般について議論したくないと申し上げているわけではありません。
 会議の冒頭、座長が「言い足りないことがないように発言ください」とおっしゃいましたので、これまでの間、私の中でもやもやしていることを、この際、全部お話ししたいと思います。その上で、構成員の皆様から、それぞれの点について御意見を頂いたり、今後の議論の参考にしていただければと思います。少し長くなるかもしれませんが、御容赦いただければと思います。
 まず、大きな論点として挙げられている、50人未満の事業場へストレスチェックの実施義務を拡大することについて申し上げます。平成25年の労働政策審議会安全衛生分科会の建議では、事業場の規模にかかわらず、ストレスチェックの実施を義務にすべきという結論を得ています。その後、現在の法律では、50人未満の事業場は実施が努力義務となっておりますが、今回、そこの部分をどうするかというところが大きな論点だと思います。第2回の会合のときに、日本商工会議所様も全国中小企業団体中央会様も、ストレスチェックの実施にかかるコストや人的リソースの問題を挙げて、実施の義務化については極めて慎重な検討が必要であるといった趣旨の発言をされたと思います。私も基本的には同じ認識を持っていますが、仮に義務化していくということを考えた場合に、次のような観点をどう考えるかといったことを是非、皆様と議論したいと思っております。
 1つは、第2回の会合でも申し上げましたが、努力義務になった最大の理由である、特に中小・零細企業のプライバシー確保をどう実現するかという点です。これについて、その後、何かよいアイディアがあるのか、平成25年の後、何か大きな変化が政策的にもあったのかといったところは、一度整理しないといけないのではないかと思います。何も変化していないのに、時間が経過したから実施を義務化しますといった乱暴な議論でよいのか、という視点です。また、高ストレス者の医師面接を実施した後、本当に就業上の事後措置を実施できるのかどうかといったことも、大きな論点だと思っています。
 その上で、50人以上の事業場で義務化されている現行制度は、社内の衛生委員会等において、ストレスチェックの実施体制や実施方法、実施者の選定、社内周知、ストレスチェック結果の保存とその方法、結果の利用、目的、利用方法、苦情処理、実施後の調査審議等を行うことを求めています。さらに、年に1回、定期的に検査結果報告書を、所管である労働基準局、監督署のほうに提出する必要もあります。これを50人未満の事業場に全く区別することなく、同じ理念で同じ方法の制度を義務付けるべきなのかどうか。その制度が、日本商工会議所様や全国中小企業団体中央会様がおっしゃっているような、人的リソースや資金面で制約の多い中小・零細企業において本当に対応可能なのか、実施できるのかといった観点は、よく議論する必要があるのではないかと思っています。
 仮に50人未満と50人以上の事業場を区別して、別の対応を求めることが考えられるとした場合に、その現実的な対応は何なのかといったことも、議論したほうがよいと思います。単に見た目上、義務化を広げるということでは、これまでつくってきたストレスチェックのよい文化に水を差すことになるのではないかという懸念があります。
 さらに踏み込んで言えば、一括りに50人未満の事業場といっても、その実態は極めて多様です。1~9人というような、本当に小規模な事業場になりますと、実態も大きく変わってきます。数十人規模と9人以下の事業場では、明らかに会社の体力、置かれている状況や事情も異なります。こうした実態を考えたときに、何らかの考慮や支援がないと、法違反の状態が増えてしまうという懸念もありますし、実効性を確保するのは、なかなか難しくなるのではないかという気がします。特に、ストレスチェックを集団分析と職場環境改善にもつなげていくといったことになればなるほど、小規模事業場に対する影響や、実施することによって得られる効果と、プライバシーも含めて、逆にデメリットになり得るような点は、よく検討する必要があると思います。
 ストレスチェックの実施主体については、大手企業であっても、医師等を雇って自前で実施しているというよりは、外部機関を活用しているケースが多いようです。中小・零細企業においても、実施を義務化するとなれば、同じように外部機関を使うケースが想定されます。その辺り、どのような状況を想定して義務化するのかということも、大きなポイントだと思います。外部機関を活用するとなった場合の費用は、実際に事業者にとってどれぐらいの負担になると見込まれるのか、もしデータのようなものがあるようでしたら、次回以降の会合で結構ですのでお出しいただけたら地に足のついた議論をする上で重要なデータになるのではないかと思っています。
 費用の話になりましたので、資金面で支援するといった場合に、よく考えられるのが助成金や補助金による支援ですが、実施を義務にしてしまうと、義務に対しての助成はできないという基本があるかと思いますので、助成金の支給等の対象にすることは難しくなる。では、そうした場合にどのような他のオプションがあるか、事務局にアイディアがあれば、是非、幾つかオプションを提示していただきたいと思っています。
 今のは費用の話ですが、実施面での支援体制の話になると、先ほども指摘のあった地産保の活用という話が出てくると思います。私も期待したいところです。ただ、50人未満の事業場は、既に実施義務の対象になっている50人以上の事業場と同じぐらいの数が存在すると思うのです。実際に50人未満も義務になった場合に、地産保が本当にどこまで対応できるのか、客観的なデータのようなものがあれば、是非示していただきたいと思います。現在、地産保に付けている予算がどのぐらいのレベルの対応を想定していて、仮に全部の企業を義務化の対象にしたときに、全ての企業をカバーすることは当然できないと思いますが、どれぐらいの規模の予算を付ける必要があるのかといった具体的な議論をしないと、中小・零細企業への影響はなかなか分からず、軽視できないのではないかと思っています。
 あと、厚生労働省が公表している職業性ストレス簡易調査票が一番メジャーで、多く使われていると思うのですが、先ほど構成員から指摘もあったように、調査票の項目について、制度の開始以降、長い間、改訂や見直し、検証があったのかどうか。検証する必要があるかないか、私自身はよく分からないですが、調査票の項目に関する議論も行う必要があるのではないかと思います。
 最後に、集団分析と職場環境改善について申し上げます。今、50人以上の事業場でも努力義務という状況にあります。これを大企業に対して義務化するとなったときの影響は大きく、大企業であればできるのではないかというような簡単なことではないのではないかと思っております。というのは、第2回の会合のときに、現場の実態をよく御存じの矢内構成員からもご指摘がありましたが、ストレスチェックを外部委託した場合に、個人向けのストレスチェック結果とセットで、集団分析のデータが提供されることがよくあると聞いています。その結果を踏まえて、職場環境改善につなげていく会社があるのは、よく承知しているのですが、実際に各社がどのように進めているかというと、集団分析の結果だけで、職場環境改善を検討しているわけではないという実態があることが分かっています。実際にはエンゲージメント調査などの様々な調査と組み合わせて、その職場の実態もよく見ながら、例えばある職場には特定の対応が必要、ある職場には研修が必要、ある職場には施策のほうが効果があるのではないかといったことを、従業員等とも話し合いながら進めているのが実態だと思います。
 そのときの施策の1つの参考になっているのが、この集団分析であり職場環境改善であるという側面もあると思っています。今、色々と工夫をしながら進めている企業が多い中で、そうした企業の実態も大事にしつつ、取組を広げていくことが大事だと思っています。仮に形式的に実施を義務化してしまった場合に、今までの取組が後退するようなことがあっては良くない。すなわち、特定の取組を実施してくださいといったパターン的な行動を義務として求めることについては、企業の実態に合わなくなる可能性があるので、避けるべきであると思います。この点は非常に慎重に議論する必要があるだろうと思っています。
○川上座長 どうもありがとうございました。当会自体の流れの進め方のほかに、ストレスチェックの50人未満への義務化の課題とか、集団分析・職場環境改善の義務化について、非常にきれいにまとめていただいたので、すごく整理ができたと思います。これに関しては、恐らく、もう少しテーマを絞り込んだ次回以降の会で詰めていくのかと思いますが、もちろん、構成員の皆さん方、今日の時点で御発言いただいても結構です。事務局のほうから、何か今の坂下構成員の御発言に対して、お答えする部分は今はないですかね。今すぐは特にないですかね。分かりました。それでは、及川構成員がオンラインで手を挙げていらっしゃいました。お待たせいたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
○及川構成員 及川です。中小企業にとっても、メンタルヘルス対策は大変重要であるということを前回も申し上げました。私ども中央会では、まずもって第14次の労働災害防止計画で、令和9年までに労働者の50人未満の小規模事業場におけるストレスチェックの実施割合を50%以上とするという計画が立てられましたが、この目標に向けて努力をしているところです。そうした中で、その後の検証の中で、もし50人未満の所でできるものがあれば、例えば業種でこういったことが対応可能だということが見えてくると思います。私ども中央会としては、令和9年までの50%以上ということについて周知をし、支援をしてまいりたいと思っております。
 そういった中で、現在のところ、50人未満の事業場におけるストレスチェックの義務化については、現場からしますと少し乖離があると感じております。人手不足の中で、このストレスチェックというのは、人事権を有する者がストレスチェックの実務に従事してはならないと、いろいろな制約があります。こういった問題も一つひとつどうやって解決していくのかということが、次回以降必要になってくるかと思っております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。大下構成員、よろしくお願いします。
○大下構成員 日本商工会議所の大下です。今のお二方のお話で、ほぼほぼ問題点は御指摘いただいたと思っています。50人未満のストレスチェックの義務化に対して、前回も構成員の方から御発言がございました。こうした取組の対象外になっている労働者がいる状況は望ましくないという考え方自体に、全く異論はありません。その効果に関しては、様々な分析があるようですが、働く人が、自身のメンタル面、ストレス面での負担を客観的に確認できる仕組みが広まる、利用されることは非常に重要かつ意義があると思いますが、やはり、50人以上を対象とした現行の制度をそのまま当てはめることには様々な問題があると思います。
 手間暇、コストという部分ももちろんですが、例えば社長1人、従業員1人というケースも、50人未満の全企業が対象となれば発生します。そのような場合においても、仮に面接指導や、事後措置、現在も10人以下は対象外とされている集団分析といった、結果を事業主側にフィードバックする仕組みを導入した場合、プライバシーの確保は全くできなくなる懸念もございます。この点を考慮すると、やはり同じ仕組みをそのまま50人未満に適用すると、単に中小企業は体力がなくて費用を負担するのが厳しい、人手が足りない、といった点から実施できないというよりも、むしろ働く人のプライバシー、あるいは働く環境を守ることに逆効果になる懸念があることが問題だと思います。先ほどのお話にもございましたが、このプライバシーの問題が、近年解消されているかとなると、決してそのような状況にはなっていないと思います。
 したがって、これは本検討会冒頭で御発言もございましたが、すでに存在している、こころの耳のストレスセルフチェックなどの利用を進め、それによってセルフチェックを徹底すると同時に、事業者側には、働く人のメンタルヘルス対策というのは重要で、こうした状況があったら異変があるかもしれないですから、必ず対応してくださいね、不安があれば地産保なども頼ってくださいねというような、働く人、事業主側それぞれへの働きかけを、パラレルで実施しここにループを作らないことが必要かと思います。これを作ってしまうと先述の通り、プライバシーが守られなくなってしまう懸念がありますので、パラレルな形でそれぞれの取組を進めていくのが現実的な解決策ではないかと思います。私からは以上です。
○川上座長 ありがとうございました。森口構成員、よろしくお願いします。
○森口構成員 プライバシーの話が幾つか出ていましたので、2、3年前の堤先生と御一緒した研究の中で、私が収集した情報を少し御紹介しておこうと思います。
 小規模事業所に実際に関わっている産業保健専門職である産業医や保健師などから具体的にどういうふうにやっているのかという話を聴取したところの情報です。やはり、面接指導をやる際に、個人、同僚に分からないように注意されていました。先ほど、大下先生がおっしゃったような労働者2名などというときは、さらなる難しさがあると思いますが、ある程度の規模であれば、他の健康相談などと紛らわせるなど分からないように配慮する。あるいは、ストレスチェックのシステムを外部業者に委託して実施事務従事者なども基本的に外部に置くような形にして、中のスタッフがあまり動かないという形を仕組みとしては用いているという話がありました。また、小さいからこそかもしれませんが、高ストレス者に限らず、各自の健診結果とストレスチェックを参照しながら全従業員と面談して専門職からアドバイスをするという話もありました。
 また、職場環境改善については、外部の専門家としてかなり積極的に入り込んで、問題の評価から課題の解決に向けた道筋なども伴走しながら関わるという先生方が多かったというところでした。途中でメンタルヘルス全般にしっかり対応していくべきだというお話がありましたが、私もこれは賛成ですが、実際に産業保健職として入っていくとすれば、高ストレス者が出たので面接だけやってくださいという形ではなくて、毎月でなくてもいいと思いますが、低頻度でも事業所と薄く関わりながら関係性を作った上で緊急対応もやっていくという土台が作れると良い取組になっていくのではないかと思って聞いておりました。そこで、やはり費用のことは大きな課題だというところも同じ認識を持ったところです。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。江口構成員、お願いします。
○江口構成員 産業医科大学の江口です。先ほど井上構成員からも御発言がありましたとおり、このストレスチェックが2015年から始まって、精神障害の申請件数の増加の傾向が続いているという現状はあるかと思っております。
 先ほど各委員の皆様から出てきた、中小企業において様々な対策を取っていくということは、いろいろな課題があるということは十分想像できるところだとは思っております。そのストレスチェック制度の建議のときに様々な課題が示されたと。それが今改善しているのかということについては、それはそのとおりで、急激に個人情報保護についての国民の意識は高まったというようなことは、恐らくないのであろうなと思っております。ただ一方で、2015年のときには、こういったメンタルヘルス対策、ストレスチェックを導入することで、日本の労働者のメンタルヘルスを取り巻く環境が改善するのではないかという期待を持ってこういった制度を導入したわけですが、少し私自身は見方が違いまして、ストレスチェック制度を導入しても、この精神障害による労災申請件数が右肩上がりの状況であると。このことからすると、当時の議論の状況と、そこでストレスチェックを入れるときの状況と、また少し違ってきているというところもあるかと思っています。
 私自身は、職域において精神障害の方々、メンタルヘルス不調者の増加傾向が変わらないということ、健康保険組合においては、精神障害に関する傷病手当金の支給件数もどんどん増加しているこの時期においてメンタルヘルスに関する検討会で、新たな対策を出さないということになると、そのことは何を意味するのかというところはすごく心配するところです。やはり何かしらの対策は打っていくべきではないかと。もちろん、そこには様々な課題もあるかもしれませんが、私は、何かしらの対策を出す必要があると思っております。そういったことを考えるときに、もちろんいきなり50人未満の事業場全てに対してということではないにせよ、50人未満の事業場に対策を少しでも広げていく必要があると考えています。
 また、私自身もストレスチェック導入当時の議論を一産業医として見ていたところですが、法律上、次の対策として努力義務になっているものは、次の施策の候補としてそこに位置付けられていた、当時はそういった環境がなかったので努力義務とするということで位置付けられていたと、私自身はこの法律の立て付けから認識しています。そうすると、何かしら職場環境改善や集団分析といったような努力義務として位置づけられているものを今回の検討会の中でより積極的な形で盛り込んでいくことと比べて、また全然違う取組をどこかからか新たに持ってくるということとは、なかなか現実的ではないと思うときに、何か次の対策を打っていくというときには、私自身は職場環境改善や集団分析の優先順位が高いと考えたというところです。この約9年間、研究者の立場からでもありますが、ストレスチェックに関するエビデンスの蓄積等もある程度してきているところです。もちろん挙げられた課題は縷々そのとおりだと思っておりますので、そういったところを、ある程度のガイドラインであったりとか、事業場規模であったりとか、そういったようなものを示すことで少し幅を広げていけないかと、次回以降の議論でその点を検討できればと思っておりますので発言をさせていただきました。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。種市構成員、お願いします。
○種市構成員 日本公認心理師協会の種市です。50人未満の事業場に対してのストレスチェックの義務化の話が出ていますが、今、事業規模にかかわらず実際に行われている施策として、例えば、長時間労働者に対する医師面接があります。そちらは事業規模にかかわらず実施するというふうになっているのですが、ストレスチェックのほうは規模が小さい所はやらない。そこの違いはどこにあるのかということを整理しておく必要があるのではないかと思います。
 実際、長時間労働者の医師面接は、どちらかと言いますと、体のほうが中心になってくる。一方、ストレスチェックについては、職場のいろいろなもめ事であったり、メンタルのものだけではなくて、そういう厄介な要素が結構あるわけです。そうしますと、受け持つ医師の対応も難しくなってきたりすることもあるわけですが、その辺はどういう違いがあるのか。その違いを踏まえた上で、実施できないのかどうかということについても検討する必要があるだろうと思います。
 ただ、ハラスメントについても、改正労働施策総合推進法によって、相談窓口の設置が義務付けられています。例えば、ハラスメントについてもそうですし、長時間労働者の医師面接についても、プライバシーの確保というのは実際は求められているわけですから、そういうところはできていくようになっていくのに、なぜストレスチェックについてはその部分が懸念され、実行できないのかというところは、少し整理しておいたほうがいいのではないかと思いました。
 なぜなかなか進まないのかということを考えたときに、この健康対策に取り組んでいる事業場割合というのが毎年出るのですが、その調査によりますと、10~29人規模の事業場では53.5%ということで、そもそもメンタルヘルス対策に取り組んでいない事業場がまだまだ多いということです。そう考えると、やっていないのでできないというのが、まず1つの理由としてあるのではないかと思いますので、では、どういうふうにすれば取り組みやすくなるのかということを建設的に議論していくことも必要ではないかと思います。
 もう一点、労災については、例えば、脳・心臓疾患については減ってきているという現状があり、メンタルヘルスについてはむしろ増えているという現状があるのですが、メンタルヘルスの特性として、件数が増えていくと悪くなっているのかと言いますと、実態としては、むしろ、手を挙げやすくなってきているという側面もあるだろうと。つまり、健康相談について相談しやすくなっている。例えばストレスチェックだったり、いろいろなことをきっかけにして、相談してみようかというふうにしている結果が、例えば、労災についての周知がされて、それに対して申請する人が出てきたりということもあり得るのではないか。例えば、ハラスメントについても、ハラスメントについての法律ができたことで、ようやくハラスメントの被害を受けていた方が訴え出ることができるようになったという事情もありますので、これから件数は増えていくと思います。件数が増えたのは悪くなったということではなくて、むしろ、今まで言えなかった人が言えるようになってきたとも読み取ることができるので、件数が増えているから必ずしも効果がないではないかということとは違うのではないかと思いましたので、1点指摘しておきたいと思いました。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。新垣構成員、お願いします。
○新垣構成員 精神科病院協会の新垣と言います。よろしくお願いします。今、お話をいろいろと伺っていて、小規模の所で、今何となく思っていたのは、私たちが精神障害者の事業場ということを考えていますと、企業として成り立っているというよりは、要するに職場というよりは、やっているような、何となくできて上がっているような所が結構多いのです。精神障害者のB型とかA型とかあるのですが、そこの中でコンプライアンスと言うのでしょうか、事業者と従業員というよりは、一緒になってやっているような感じがあって、そこの人たちについて、メンタルヘルスという観念が、こうあるべきですとか、会社を運営している小さい所だと、会社を運営しているときに、こういう労働者については、こういうことを考えていかなければいけないのではないかとかというところが、多分抜けているような気がするのです。大きい会社になると、もちろんそういうふうに1つずつやっていくのですが、例えば建設業の下請の10人ぐらいの小さな所になりますと、そんなことは考えていないと思うのです。やはり、事業主のほうから、そういうことについてきちんと取り組んでいくというところを、もう少し徹底させていかないといけないのではないか。ストレスチェックというよりは、企業体なのですから、こういうふうにしてくださいというようなレクチャーがあって、その後にメンタルヘルスのストレスチェックが出てくるのかと感じました。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。そのほかの御意見はいかがですか。黒木構成員、お願いします。
○黒木構成員 先ほど種市先生のほうから、労災の請求件数が非常に増えていると。確かに令和4年度は2,683件でしたか、3,000件まではいっていませんが、かなり増えております。これはどんどん増えていっているのです。私が関係している労働局では、1つの労働局で年間700件を超えるという状況になっております。昨年の9月に労災認定の基準が改定されて、確かに敷居が低くなったと言えば敷居が低くなったということかもしれませんが、基準が非常にスッキリしました。そして、捉え方もいろいろな出来事に対応できるようになったということも1つの要因で、請求件数が増えていることと、認定件数もちろん増えておりますが、これは危機的というよりも、むしろ、敷居が低くなったと、これは種市先生の言うとおりです。
 それから、傷病手当金の件数も精神疾患の場合は非常に増えている。請求件数が増えて、例えば傷病手当を請求する際にその仕事で病気になったのではないという意識があり、自分の病気は仕事は関係がないと思って傷病手当金の請求を健康保険被保険協会にすると、仕事をしているというだけでこれはまず労災に請求してくれという事例も発生してきています。いわゆる傷病手当金の請求と労災の請求とは非常に近寄ってきているという現状もあります。しかし、あくまでも労災は業務起因性というところは明確にしなければいけないわけですから、これは明確にした上で対応するということなので、企業も、労災請求ということになりますと、企業責任とか民事の問題も出てきますので、やはり非常に注意するわけです。かと言って、これが労災認定になって、その後、企業はどう対応するかということになると、要するに解雇できない。解雇権を消失するので、会社は解雇できないという状況が発生するので、どう扱っていいかということも今後の非常に大きな問題だろうと思います。
 ストレスチェックに関しては、50人未満、50人以上で実施体制が取れない所で、このストレスチェックをやっていくという規制を作るとなるとなかなか大変ですが、前回のときにも言いましたが、しかし、ある部分は50人未満に下ろせる下ろし方を考えてほしいです。先ほど、こころの耳を周知するということで、いいのではないかという意見も出ましたが、やるかどうか、義務化するかどうかということは、やはり非常に大事なことで、ストレスチェックを労働者に実施することは必要です。
 そして、こういった事例もあるのです。いわゆる自分の所で手を挙げずに、産業医面談も受けない。高ストレス者だけれども受けない。しかし、自分が高ストレスになっているということで実施者に手をあげずに産業医面談を受けずに、私どものクリニックに受診した事例というのがありました。やはり、それは自分で気が付くということなのです。労働者は、特に精神的なストレスといいますと、なかなか自分で意識していないこともあるのです。まだ大丈夫だということで、まだ頑張れると。しかし、自分がどういう状況になっているかということが把握できていない事例もあるのです。そういった意味では、そういうストレスに気付く、あるいは気付いて自分が高ストレスにあるということを自覚するということは、受療にも受診にもつながるという事例もあるので、前回から言っていますが、どの部分はどういうふうに下ろすと、そして、それがどういうふうにつながるかというところを今後検討していっていただければと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。中野構成員、お願いします。
○中野構成員 日本看護協会の中野です。働く方の健康支援という領域の中で、メンタルヘルスの問題が、量的にもその対応の難しさの観点からも、大きくなっている中で、既にストレスチェック制度が義務化されている50人以上の全ての事業場でこのメンタルヘルスに対して適切に対応できているかと言うと、大きい事業場でも、難しい面が残っているのではないかと思っています。
 先ほどの御発言の中にもあったのですが、義務化されている既に取組をしなければいけない状況にある事業場の中で、どこまでできていて、こうやれば効果が上がるという部分をきちんと評価して、より小さい事業場で実施できるのかという議論を、もう少し丁寧にしていくべきと思っています。
 何をどう義務化なり強化なりすれば、効果が上がるのか、みんなが幸せになれるのかは非常に難しく、デリケートな議論だとは思います。一方で、働く方のメンタルヘルスに対して対応できる体制をもっと強化しなければいけないということを考えたときに、既に地域のリソースとしてあり、さらに、制度的に役割も負っている地産保の役割が相応に大きいことに関しては、理解もしており、同意をするところです。
 一方で、地産保の使い勝手の問題や、ニーズがあるときに対応できる人的なリソースとして、産業医の方ももちろん、そこで協働する医療専門職や、その他の職種が、どのぐらい活用できているのかということについては、全国的に見て多様な状況があり、必ずしも十分でない状況があるという声も聞いているところです。
 今後議論していくときには、是非、地産保というリソースを活用していく観点から、使い勝手や、人員体制等について、どうあれば効果的で、より効率的なのか。また、先ほど来お話もありますが、コストも含めてフィジビリティの面でどうなのかという議論を、この後の検討会の中では、具体的にできたらよろしいのではないかと思います。
○川上座長 ありがとうございました。高野構成員、お願いします。
○高野構成員 日本精神神経科診療所協会の高野です。よろしくお願いいたします。総論的なことと各論的なことということで、2つほどあります。まず、総論的なところで、最初に渡辺構成員のほうからもお話がありましたが、適材適所に関することですが、合理的配慮ということが大分一般の方に知られるようになってきたと思います。今、合理的配慮と言いますと、どうしても障害者を中心にということになると思うのです。ただ、この概念は、うまく理解していくと、あらゆる労働者に合わせてというふうな考え方にもつながっていくのかと思います。各々がより生産性が高まる働き方です。そういううまい広げ方ができるといいのではないかというのが総論的な意見ということになります。
 もう1つは各論的で、既に義務化されていることを、もう少しより良くということを思っています。先ほど、坂下構成員からありました医師面接指導の後のやり方です。実際に私も医師面接指導をしますが、面接後は意見書を書きます。職場環境改善につながるような意見をなるべく工夫して書く。大体は産業医は意見を言いっ放しで、事業者はそれを聞きっ放しで、その後、どういうふうに扱われているのかということが明確ではありません。
 2019年4月から産業保健体制の強化ということで、厚生労働省のほうからきちんと文書が出ています。そこには、意見を述べた後に、事業者は既に講じた措置、また、講じようとする措置の内容に関する情報、措置を講じない場合は、その旨、その理由を産業医に提供しなければならない、と記載があります。私が関わっている事業場では、意見を出した後に事業場が返事を書くように書式を作り変えて使っています。しかし、このことを産業医の仲間とかでお話をすると、まだあまり周知されていないようです。ですので、せっかく良い仕組みを作ろうという提案が厚生労働省から出ていますので、それをもう少し周知し直してほしいということです。あと、そのまま使える書式の例示をマニュアルとかに載せてくれますとよろしいかなと思います。そうしますと、産業医というか、意見書を述べるほうも、モチベーションを持って書けるのではないかと思います。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。島津構成員、お願いします。
○島津構成員 日本産業ストレス学会の島津と申します。よろしくお願いします。先ほど来からいろいろ議論を伺わせていただいていて、1つ、義務化というところの議論がずっとこれまでも出ていますが、やはり、そのプラスの面、マイナスの面がそれぞれあると思います。その辺りを整理して議論していくのが大事なのだろうと思っています。
 一方的にただ無理なことを進めていく形に近くなると、先ほど来からありますように、コストを含めてプライバシーなど、いろいろな弊害が起こる可能性もあるので、良くない面が出てしまうでしょう。一方で、義務化ということをきっかけとして、例えば大企業で導入したときの例なども見てみると、それをきっかけでストレスチェックの制度を導入するということは、ただストレスチェックをやりましょうというだけではなく、事業所の中で、メンタルヘルスの計画を立てなくてはいけない、安全衛生委員会で話さなければならない、そうすると、経営層もメンタルヘルスについて考えなければならない、ということになる。やはり何もないところで、ただメンタルヘルスを考えましょうというのではなく、法的にストレスチェックが義務化されたから、という1つのきっかけを基に、メンタルヘルスについて経営層や社員から議論するきっかけになるというのが非常に意味があると思うので、そういった目的や意義などをどう周知していくかも、大変大事なのかと思いました。
 50人未満の事業所については、人数規模もそうですし、1回目のときの頂いた資料の中でも、それこそ単独の事業所では、ストレスチェックの実施率が10%未満と少ないが、単独でない事業所では50人未満でも約3-4割とより多く実施をされていたりなどもありました。これはもちろん背景があるからとは思うのですが、一口に50人未満の事業所と言っても、規模だけではなく業種などいろいろなもので差があるかなと思います。先ほど森口先生からも幾つか事例を御紹介いただきましたが、業種別や地域別など、何か実際に導入してうまく進んでいる例があれば、このような形で外部委託を活用しているなど、ちょっとした事例集みたいなのができると、50人未満の事業場でもすごく進みやすくなるのかなと感じていました。
 私がふだん産業保健の活動をしている現場などで、ストレスチェックの効果をどういうところで感じるか、ということを考えたときにですが、例えば、高ストレス者の面接指導については、厚生労働省の報告等を見ても申出そのものは5%未満という所が多いと出ていると思います。同様に、私が産業保健活動をしている現場でも、面接を申し出ると人事に必ずこの結果が行くということがあらかじめ明示されるので、そこに同意するとなると、やはり申出数は少し減ってくるという事情はあるだろうなと思います。
 1つ感じているのが、ストレスチェックの実施時期は、7~8月に例年行っているのですが、例年、実施時期に健康相談の件数が増えるという事象が起こっています。ストレスチェックとは全く別に、普通に社員が「健康相談」をしてくる人数そのものが増えています。その方たちの話を聞くと、ちょうどストレスチェックを実施して、そのときは手を挙げなかったのだけれども、ずっと気になっていて、やはり相談したいと思ってとか、高ストレスと出たけれども、人事に結果が伝わるというのが気になって申し出なかったなどの例もあり、やはりストレスチェックがきっかけで、自分自身の健康の気付きになったり、自分の健康を考えたり、手を挙げてきたりということにつながっているというのがある、というのを感じています。そういう意味では、結構メンタル不調の早めの段階で自分で気付いて手を挙げてくる、セルフケアにつながるというのはすごく良いことだと思いますので、そういう活動につながるということで、ストレスチェックは1つ意味がある、と思っています。ただ、手が挙がったときに相談できる先があるかどうかというのが、小さい規模の事業所になってくると、非常に大変になってくると思うので、その体制をどれだけ地産保も含めて整備できるかというのも、大変大事になってくるかなと思っています。
 ストレスチェックも含めて、今年度、令和6年度の産業保健活動総合支援の拡充で、精神科の専門医や心理職が新たに配置される、拡充されるということが、行われていますが、それも地産保の体制の整備という意味で大事なことと思っています。そういった拡充の施策が今後も継続されることで、少しずつ地域のリソースなどが何らかの形で拡充されていき、企業が小さい規模だったり、なかなか体力がない場合でも支えていけるような体制も1つできていけるといいのかなと感じているところです。
 ちょっと長くなってしまいますが、もう1つだけ。職場環境改善のところで発言させていただければと思います。冒頭、堤先生からWHOのメンタルヘルスガイドラインの御説明がありました。職場環境改善の効果については、第1回を含めて、第2回では堤先生からもいろいろと御紹介を頂いて、職場環境改善そのものだと、必ずしも効果がありますという一致したエビデンスが出ているわけではないと思うのですが、このWHOのガイドライン等を見ると、やはり参加型であれば、職場環境改善は効果がある、意味があるというところが出ているのかと思っています。その職場環境改善・集団分析についてもただやるというよりは、参加型と一口に言っても難しいかなと思いますが、何らかの対話を通じて、結果に対してこの結果がどうですという解説など、結果に基づく対話が何かあるというのは、すごく改善にとって大事なことかと思っています。
 私たちも心理職なのですが、例えば心理職が心理テストやアセスメントをする中で、やはりテストをやりっ放しということはなく、テスト、アセスメントをすると、必ずその結果がどうでした、これに対してどんな改善策やサポートができそうかということを話し合っていきます。そういったことをするのと、すごく過程が似ているのかなと感じています。やはり職場環境改善も実施後に、結果について何らかの対話ができるような形があると、本来の意味のメンタルヘルスの不調予防効果につながるような、ただやりっ放しではないようなところにもつながるのかなと思っています。
 その意味でも、目的を含めて事例などを周知をするとともに、そういった人的リソースを、ただやれと言っても、お金もないし人もいないという中で難しいと思いますので、そこをできる体制をどう整えていくかというのがすごく大事なのかなと感じているところです。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。では、山脇構成員、お願いいたします。
○山脇構成員 連合の山脇です。よろしくお願いします。まず今回の検討会の射程は、メンタルヘルス全般について議論するものだと思っています。ただし、中心的にはストレスチェック制度について議論していくべきだと思っていますので、まずはこの点突き詰めた上で、その議論から漏れるものについて、どのような対策ができるのかという二段構えで検討を進めてもらいたいと思います。
 次に、各論の部分ですが、1つ目は、50人未満の事業場における義務化について発言します。先ほど坂下構成員から大変よく整理された課題提起があったと思います。こういうことが一定クリアできれば、やり得るのではないかという提起いただいたと、大変前向きに受け止めました。坂下構成員も全てクリアしろとまで言わないと思いますが、事務局の皆様には、坂下構成員のご提起に対して、一定程度答弁いただけるよう準備していただけると今後の議論が進めやすいと考えます。
 その上で、事後措置についてですが、先ほど種市先生のご発言にもあったとおり、事後措置で懸念されている問題点は、ストレスチェック固有の問題ではなく、長時間労働者に対する措置にも共通する問題です。面接指導後の事後措置ができないため導入ができないと言われてしまうと、法的に義務付けられている長時間労働者に対する事後措置がそもそも適正に実施されていないのではないかという懸念を持たざるを得ません。事後措置ができないからということを声高に言われることには、私は違和感があります。
 また、産業医が選任されていない事業場において、高ストレス者に対する医師の面接指導が大変だという話もよく聞くところです。この面接指導は、医師資格を持っていれば、産業医でなくても対応可能ですので、定期健康診断の際に併せて実施する、あるいは労働者自身がストレスチェックの結果をかかりつけ医に相談するなど、対応策は多く考えられるのではないかと思います。
 あと、小規模事業場におけるメンタルヘルス対策について、改めて12次防まで遡って調べてみました。12次防は、2013年からの5年間を計画年度とするもので、ストレスチェック制度の導入前に策定されたものですが、そのときから、小規模事業場におけるメンタルヘルス対策は課題とされていました。では、この間10年間でどれだけ進んだのかというと、やはりストレスチェック制度が義務化されていないことも要因として、それほど前進は図れなかったのではないかと私は考えます。そのため、今ある対策を深めようとしても、この先どこまで深まるのかという点については、やや疑問を持たざるを得ません。現状、有効な対応策が見いだせないのであれば、ストレスチェック制度の義務化を契機として、メンタルヘルス対策の取組を推進強化していくべきと考えます。
 2点目は、ストレスチェック制度の対象となる労働者についてです。現行制度では、週所定労働時間が通常の労働者の4分の3未満の労働者はストレスチェック制度の適用除外となっています。前から申し上げていますが、労働者であれば労働時間の長短にかかわらず同じ産業保健サービスが提供されるべきであると考えます。今日的に、この4分の3要件というのが適切か否かどうか、今一度、この検討会の中で検討いただけないかと思っています。
 最後に、プライバシー保護についてです。労働者のプライバシー保護が徹底されることは、大変重要であり、当たり前のことであると考えます。しかし、一部の企業においてプライバシーを保護できない可能性があるという理由で、ストレスチェックをすべての企業において実施することを阻害しない根拠とはなり得ないと思います。実際には多くの企業において、プライバシーは保護されており、一部の事例にばかり言及すべきではないと考えます。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。それでは、渡辺構成員、お願いいたします。
○渡辺構成員 渡辺です。今の先生方のお話を聞いて、私の考えです。少し総論的になってしまいますが、結局、メンタルヘルス対策の目的は、労働者の方の精神的健康の増進ですよね。そして、労働者の方の精神的健康の増進がかなえば、職場の業績向上にもつながるでしょう、すなわち両者にとってプラスですよねということで、この制度が始まったわけですし、健康経営という考え方も今広がってきているわけですし、ウェルビーイングという考え方にも共通することだろうと思います。すなわち、両者にとってプラスになる制度にしなければいけないと思っております。
 今、まず現行の50人以上のストレスチェック制度に関して、法制度化してうまくいっている点、うまくいってない点、多々あると思うのですが、一番良かったと思うのは、少なくとも労働者のメンタルヘルスに対する認識が増進した、これは確かにあると思います。職場改善や職場環境、そしてその労働者のメンタルヘルスが、職場環境をも改善し、それが生産性も改善するという。今、健康経営という考え方などは非常に強く大きくなってきています。そういった意味で、認識が高まったということはとても大きな成果だったと思います。ただ、その後、労働者のためにも、そして企業のためにもなる運用をどうしていくのか、ここがまだうまくいってない。そこに関してのきちんとした議論と、あるいはその方法論をいろいろなところから教えてもらいながら検討していき、それをいろいろな企業、世の中に提供していくことが必要だろうと思います。
 その考え方からしていうと、50人未満の事業場は、労働者の数にしてみると3,500万人の労働者です。全部で6,000万人ですから半分以上が50人未満の所に属しているわけです。なので、その半分以上の人が対象になっていないということは、やはり少しどこかでおかしいのだろうと思います。では、50人未満の3,500万人の労働者の方に対しても、健康の増進につながるような制度を考えていく、そしてそれが中小企業の会社の方にとってもプラスになるものにしていくというのが、今回のこの目的にならなければいけないと思います。ただ、そのためにいろいろなリスクや危惧があります。そのリスクや危惧をいかになくしていくか、そこに知恵を絞らなければいけないのだろうと考えております。非常に総論的なことですが、そんなところです。
 となると、50人未満の事業場、零細事業所まで考えると、大企業と状況が大きく違うのは確かなので、少なくともストレスチェック制度に関して言えば、大企業と同じシステムは無理だろうと思います。となると、ストレスチェック制度のやり方も2本立てで考えていかなければいけない。中小企業・零細企業向けのストレスチェック制度はこんなやり方がありますよと。その2本立てで、その事業所の都合に合わせて選べるような形にしていくのがいいのではないかと考えております。
 そういったことも総論的な話ですが、では具体的にどうするかというのは、まだそこのところの見識が全然ありません。ということで、堤先生などから非常にいいデータ、情報を提供していただいたのですが、では、あのWHOのあの提言を基に諸外国ではどんな変化が起こって、そこでどんな成果が現れたのか。そういったアウトカムも一度教えていただきながら、そういったものを参考にして、我が国の中小企業に適した方法を考えていく、それがこれからの在り方検討委員会の課題ではないかなと考えています。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。神村構成員、お願いいたします。
○神村構成員 神村です。産保センターの所長の立場でお話をさせていただきたいと思います。様々な産業保健が義務化されている50人以上の事業場で働いている労働者の全国の総数と、例えば30~49人の事業場で働いている労働者の総数というのはほぼ同じと、令和3年の経済センサスでもそのようなデータが出ております。
 そこを勘案して、例えば、50人という枠をもう少し広げる、少ない人数の所にふえんさせることを考えれば、まずは30人以上ぐらいではどうだろうかということを、日本医師会のほうで試算して考えております。例えば、その程度の所からであれば、既に産業医を選任している事業場は、30~49人の所では30%近くはあるという現実もあり、産業保健やメンタルヘルスに対する関心も高い事業場がかなりあるということは現実です。それに対して、今のところ地産保が無償でサービスを提供しているわけなのですが、その地産保のリソースの現状についてもお話をしたいと思います。
 現在、地産保のほうで、50人未満の事業場に対して、産業保健サービスやメンタルヘルスに限らず、健康診断の事後措置、意見を述べるとか、そういうことも依頼をされ担当しております。地産保には登録産業医や登録保健師などがいらしゃいます。今年度からメンタルヘルスに対しての拡充が図られ、現在、心理職の方も地産保あるいは産保センターに所属されている所もあります。ただ、全国の地産保の状況から考えると、規模がそれぞれ大変ばらばらです。頂く予算も違います。
 そして現在、地産保がその小規模事業場に対して産業保健サービスを提供するときに、どのようなことを考えているかというと、例えば、年に1回あるいは2回程度、健康診断の結果、あるいはストレスチェックの結果、長時間労働者が出たときの面接指導などの対応について対応するというのがやっとです。それでも、地域によっては地産保のキャパシティが少ないので、お断わりせざるを得ないのが現状で、そこの所にもう少し予算措置が欲しいと訴えをさせていただいているという現状があります。
 ですから、地産保を今後活用するというのは本当に大事なことだと思ってはおりますが、冒頭で茂松先生がおっしゃったとおり、まずいきなり地産保にそのまま無償でお願いという形ではなく、例えば地域のかかりつけ医、地域の医師の先生方などから相談を受け、更にそこで地産保が産業保健的な様々な手続を支援するという形だったら可能かもしれませんが、全て相談に乗るということは現状無理だと考えております。以上です。
○川上座長 ありがとうございました。そろそろ検討会の時間が一杯になってまいりました。どうしても御発言をという構成員はおいでになりますでしょうか。大丈夫でしょうか。ありがとうございます。
 最後に少しお時間を頂いたのは、議題の(2)今後の進め方について、そちらの確認をしておきたいと思います。本日を含めてこれまで3回の議論において、今日の資料2に出ているストレスチェック制度の枠組みと、現行のストレスチェックのもう少しうまい使い方はないかという運用について議論いただいております。さらに、それ以外のメンタルヘルス対策の在り方についても議論が必要ではないかという御意見も頂いております。ただ、これまでの議論を伺っておりますと、やはりストレスチェック制度の枠組み、つまり、50人未満の事業場にストレスチェックをどうするのか、それから、集団分析・職場環境改善をどうするのかということについての議論が多分一番大きな論点になり、また、たくさんの異なった御意見もあるようです。ですので、まずはここを中心に議論を検討会としては進めさせていただいて、その議論が取りまとまった後、現行のストレスチェック制度の実効的な運用についての工夫、それからストレスチェック制度以外のメンタルヘルス対策全般に関する議論にも、検討会の中で意見交換をしていくという立て付けがいいのではないかと、座長としては考えているところです。これについてサポートいただける御意見も2、3この中で頂いたかと思っておりますが、このような進め方でよろしいかどうか、構成員の皆様に一度確認をしておきたいと思います。いかがでしょうか。御自由に御意見を頂ければと思います。特に御異論はありませんでしょうか。分かりました。それでは、このような進め方で第4回以降の準備をしてまいりたいと思います。事務局は次回以降の準備をよろしくお願いいたします。
 それ以外に御意見がなければ、今日の検討会は終了したいと思いますが、いかがでしょうか。ありがとうございました。では、事務局に一旦、進行をお返しいたします。
○夏井産業保健支援室長補佐 ありがとうございます。では、事務局から連絡事項が2点ございます。次回の日程は6月24日(月)の開催を予定しております。構成員の皆様には改めて御連絡を差し上げます。また、本日の議事録ですが、構成員の皆様に内容を御確認いただいた上で、厚生労働省ホームページに掲載させていただきたいと思っております。追って内容確認のお願いをさせていただきますので、よろしくお願いいたします。事務局からの連絡は以上です。
○川上座長 それでは、第3回の検討会を終了したいと思います。大変熱の入った議論をありがとうございました。次回以降もどうぞよろしくお願いいたします。

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