厚労省・新着情報

健康・生活衛生局 がん・疾病対策課

日時

令和6年7月4日(木)10:00~12:00

場所

オンライン

議題

  1. (1)対策型検診の項目の導入に係るプロセスについて
  2. (2)職域におけるがん検診について
  3. (3)「がん検診事業のあり方について」の見直しについて

議事

議事内容
○事務局 定刻となりましたので、ただいまより、第42回「がん検診のあり方に関する検討会」を開催いたします。

 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。事務局を務めさせていただきます厚生労働省健康・生活衛生局がん・疾病対策課の向と申します。
 本日の検討会はYouTubeで配信しております。構成員の皆様方におかれましては、参加中は基本的にマイクをミュートにしていただきます。発言の際にミュートを切って、初めにお名前をいただいてから御意見、御発言をいただくようにお願いいたします。
 初めに、構成員の出欠状況でございますが、現時点の検討会構成員の定数11名に対して、出席構成員が11名となっております。また、今回から祖父江先生が委員を辞退され、新たに松坂先生に委員を御就任いただいておりますことを申し添えさせていただきます。
 松坂先生、一言御挨拶いただければと思います。
○松坂構成員 弘前大学の松坂です。
 今回から構成員に加えていただくことになりましたので、よろしくお願いいたします。
○事務局 本日は、参考人として、野村證券株式会社人事企画部ヘルスサポートグループ長、河野和絵様に御参加いただいております。
 1点、事務局から連絡事項がございます。7月1日をもちまして、厚生労働省健康・生活衛生局がん・疾病対策課の配置替えがございました。推進官として、九十九が着任いたしましたので、御挨拶させていただきたく存じます。
○がん対策推進官 原澤の後任の九十九でございます。
 7月1日をもちまして、がん対策推進官を拝命いたしましたので、どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 それでは、以後の進行を大内座長にお願いいたします。
○大内座長 皆さん、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 最初に、事務局より資料の確認をお願いいたします。
○事務局 資料の確認をさせていただきます。
 資料は事前にメールでお送りさせていただいておりますが、厚生労働省のウェブサイトにも掲載しております。議事次第、資料1、資料2-1、資料2-2、資料3-1、3-2、3-3及び参考資料1、2がございますので、御確認ください。
 資料の不足、落丁等がございましたら、事務局までお知らせください。
 それでは、大内座長、議題をよろしくお願いいたします。
○大内座長 では、議題(1)「対策型検診の項目の導入に係るプロセスについて」に移ります。
 資料1について、事務局から説明をお願いします。
○事務局 事務局でございます。
 資料1について御説明いたします。
 こちらの資料は、「過去の対策型検診の導入過程」として示したものです。直近の動向としましては、令和5年に子宮頸がん検診としてHPV検査単独法、平成28年に胃がん検診として胃内視鏡検査が導入されたところでございます。HPV検査単独法と胃内視鏡検査については、国立がん研究センターの「有効性評価に基づくがん検診ガイドライン」の公表を踏まえて、本検討会での議論を重ね、「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」、いわゆる指針の改正を行ってきたところです。
 「第4期がん対策推進基本計画」においては、取り組むべき施策の一つとして、「国は、より効率的・効果的ながん検診の実施を推進する観点から、指針に基づくがん検診の科学的根拠に基づいた効果検証を進めるとともに、対策型検診の項目の導入に係るプロセスの明確化等について検討する」としています。
 対策型検診の項目の導入に係るプロセスについて、システマチックな過程が整理されており、プロセスを公表している英国を例として紹介いたしますと、英国のUK National Screening Committeeにおけるエビデンスレビュープロセスのフローチャートが公表されておりまして、主に、識別、フィルタリング、優先順位づけ、アセスメントの4つの要素から成り立っているところです。
 「対策型検診の項目の導入に係るプロセスについて」まとめますと、第4期がん対策推進基本計画において、プロセスの明確化等について検討することとしており、プロセスの整理が求められているところです。
 しかし、現状は、対策型検診の項目の導入に係るプロセスについて明示されたものはなく、新たな検診項目の指針への導入に当たっては、国立がん研究センターにおいて、当該項目に係る「有効性評価に基づくがん検診ガイドライン」が策定・変更されたことを受けて、導入を検討する形で現在運用しているところでございます。
 英国の例を見ますと、科学的根拠に基づくがん検診の項目の導入に係る検討プロセスについて明示しており、これらを踏まえた対応案として、英国における検討プロセス等を参考に、対策型検診の項目の導入に係る標準的なプロセスを整理することを提案させていただいております。
 以上です。
○大内座長 それでは、資料1について御質問、御意見がある方はお願いいたします。
 黒瀨構成員。
○黒瀨構成員 おはようございます。本日もよろしくお願いいたします。
 2点ほど私のほうから指摘をさせていただきたいと思います。
 まず1点目ですけれども、イギリスを例に取って、そのプロセスの整理をしておくということに関しては、おおむね特に反対はございません。
 ただ、その中で、やはりがん検診は人口の年齢構成とかも非常に大きな課題があると思いますので、特に日本の場合には高齢化社会がイギリスよりもかなり進んでいるということもありますので、今後プロセスの整理をしていく場合に、日本特有の状況というか高齢化ということをしっかりと考慮に入れていただきたい。特にかかりつけ医機能との関連とかも重要なことになるかと思います。
 もう一つ、スムーズな新しいがん検診項目の導入と実施の普及を考えた場合には、もちろん国立がん研究センターにおけるガイドラインに沿ったということで、必要なところではあると思いますけれども、それ以上にまた重要なのは関連学会や医会等の協力を得ないと、せっかく導入したがん検診もなかなか普及していかない、スムーズな導入ができないということになりますので、こういったところを整理するプロセスの上流のほうにしっかりと明示しておいていただきたいと考えております。
 以上でございます。
○大内座長 2点の件につきましては承りました。日本における年齢構成、特異性について検討する、それから、学会あるいは研究会等との連携も必要ということです。
 ほかに御意見ありますか。では、井上構成員。
○井上構成員 国立がん研究センターの井上と申します。
 このプロセスを整理するという考え方には大変賛同いたしますし、どんどん進めたらいいなと考えておりますが、確認といいますか、今までは何らかの形で明文化されていなかったけれども、ある程度エビデンスに基づいてがん検診の見直しなどが行われてきたという認識で、今回の作業というのはあくまでそれを明文化して、もう少し計画的に動かすようにするという考え方になっているものと認識してよろしいのでしょうか。このプロセスを明文化したところで、今までしてきたこととプロセス自体はあまり変わらないのかなと思いますが、何が大きく変わるのかということがもしあれば教えていただきたいです。よろしくお願いします。
○大内座長 では、推進官のほうから答えさせていただきます。
○がん対策推進官 井上先生、御質問ありがとうございます。
 まさに今後どのような形で必要な検診を議論していくかという入り口の部分に関しまして、今まではっきりした方向性というものが示されておりませんでしたので、現時点で事務局としてこのようにするというものではございませんが、この検討会を通じてどのように進めるかという方向性を議論いただければと思ってございます。
○大内座長 プロセスの明確化ということの中にはもちろん含まれていると思いますが、項目の整理、それから根拠の書き方、様々な手順があると思うのですけれども、そういったものも含めて総合的に明示していくということで考えていますが、よろしいですか。
 では、次の御質問、若尾構成員、お願いします。
○若尾構成員 おはようございます。
 一般として参加していますNPO法人がんフォーラム山梨の若尾直子です。今日もよろしくお願いいたします。
 今までの構成員の皆さんがおっしゃったように、それに加えてなのですが、プロセスの整理と明確化をする際に、実際の集団検診の実施母体である市区町村の関わりというのが、市区町村にとっても分かりやすくする必要があると思うのです。実際に市区町村は住民と関わって直接のがん検診を行うわけですけれども、市区町村が関わるのは多くは都道府県だと思います。その中で、多分都道府県は連携をしていると思うかもしれませんが、市区町村は知らない間に変更されていくというようなことを考えるという懸念があるのかなと思います。
 そこで今回、整理、明確化をする際に、いろいろ書くときに、「国は」とか、「都道府県は」という主語とともに、「市区町村は」というような明確な明文化も必要ではないかと思いますので、その点はどのような検討がされているのか一言伺えますか。
○大内座長 事務局、よろしいですか。
○がん対策推進官 若尾先生、御意見ありがとうございます。
 まさに実施主体であります市町村、また都道府県との連携といったところは本当に大事な部分だと事務局も認識しております。その上で、今回この検討会、複数回議論いただくことを想定しておりますけれども、その中で取りまとめられた役割分担、そういったものをしっかりと分かりやすい形で、特に役割分担について分かりやすい形で示していきたいと考えております。
 ありがとうございます。
○大内座長 では、中野構成員。
○中野構成員 このたびの目的は先ほどの事務局の御説明で分かりました。イギリスの例が提示されていますが、イギリスのプロセスありきで進めるのか、これを含めてということなのか、どちらでも取れるように見えてしまうので、イギリスの例で進む場合でしたら、イギリスを選んだ理由をもう一度確認しておいたほうがいいと思います。よろしくお願いいたします。
○大内座長 では、事務局から。
○事務局 ありがとうございます。事務局でございます。
 今回、英国の例を示させていただいたところではございますが、必ずしもこちらに全て則るというところではなく、ただ一例として示させていただいているところでございます。今回、英国の例を示させていただいた理由としまして、先ほども申し上げましたとおり、システマチックな過程が整理されていること、プロセスを公表していること等を考慮させていただいて、英国の例を示させていただいたところでございます。
○大内座長 では、松坂構成員、お願いします。
○松坂構成員 1つ質問と1つ意見があります。
 まず質問ですけれども、今回このように導入のプロセスを明確化することは大変賛成なのですが、新しい検診の項目があったときに、それを対策型検診として導入する場合には、明確に少なくとも3段階の異なる判断が必要だと考えています。1つ目は、その検診が科学的根拠があって、かつ不利益が小さいという判断をすること。2つ目が、そのがん検診が実際に自治体が運用可能かということを判断すること。3つ目は、その検診をいわゆる国策として、対策型検診として導入するという最終的な政策判断、この3つを別々に段階的に判断しなければいけないと思うのですけれども、今回のこの組織はそのどこまでを判断すると想定しているかということが質問です。
○大内座長 では、事務局のほうから答えます。
○がん対策推進官 御質問ありがとうございます。
 まず、まだこの時点で事務局として、今回のレビューのプロセスといいますか、どのようなところまでを担うのか、例えば導入のところを中心に、導入の段階で科学的エビデンスの現時点で分かっているレビューをお示ししていただくという役割もあるかもしれませんし、その中で、運用を検討するに当たって事前に市町村、自治体が実際に運用可能かどうか、そういったことも議論いただく可能性もあると思っております。
 いただいた3つの点、いずれも重要だと思いますので、現時点で事務局としてどこまで明確に入り口の段階で議論するかということまでは定まっておりませんが、今、御指摘いただいたような観点も最初の段階で一定程度御議論いただく必要もあるのかなと思っております。
○松坂構成員 ありがとうございます。
 それともう一つ意見ですけれども、今回、これまでのがん検診では、国立がん研究センターのガイドラインの改定によって導入を検討するということだったと思いますけれども、先ほど黒瀨構成員もおっしゃったように、国立がん研究センターだけではなくて、学会とか様々なところの協力も必要だと思います。学会でも独自にがん検診のガイドラインというものを出しているところがあるのです。それらを今後導入の可否の検討にのせるかのせないかというところがとても判断として大事だと思っています。
 といいますのも、一般住民の方、がん検診の対象者の方は、がん検診に興味があればネットでいろいろと調べます。そうすると様々ながん検診のガイドラインが出てきます。けれども、学会で出しているガイドラインがあるのに、対策型検診では採用されていないとかいうことがあると、なぜそのようなことが起こるのかを一般住民は分からないですので、対策型検診が時代遅れのものだと勘違いして、がん検診に対する信頼が失われます。信頼が失われると、受診率は上がりません。ですので、いろいろなガイドラインがあるのは当然ですけれども、それらをなぜ採用するのか、なぜ採用しなかったかということも含めて、しっかりと公表して検討していくことが必要だと考えています。
 以上です。
○大内座長 貴重な意見ありがとうございました。
 ほかにございますか。では、福田構成員。
○福田構成員 福田でございます。
 私も、英国のプロセスを参考に日本でもつくっていくことには賛成なのですけれども、勉強不足で申し訳ないですが、英国のプロセスをあまりちゃんと勉強ができていなくて、幾つか気になる点があるのです。といいますのは、例えばエビデンスを評価するための1つ以上のレビューをやっていくといっても、1つなのか、複数なのか、あるいはどれを取り上げるのかとか、そうするといろいろなレビューが出てくるはずなので、そのときに何をもって優先順位づけをしていくのかと。強弱というのでもあるのですけれども、もうちょっと詳しいことを教えていただける機会があると大変ありがたいなと思ったりします。
 以上です。
○大内座長 事務局のほうで回答できますか。
○がん対策推進官 福田構成員、御指摘ありがとうございます。
 いただいた御指摘事項につきまして、今回御紹介しているところでもございますので、もう少し事務局のほうでイギリスの制度について調べさせていただきまして、また次回のタイミングで御回答したいと思っておりますが、よろしいでしょうか。
○福田構成員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
○大内座長 ほかに御質問ありますか。
 それでは、続きまして、議題(2)「職域におけるがん検診の現状と課題について」に移ります。
 資料2につきまして、事務局から説明をお願いします。
○事務局 事務局でございます。
 事務局でございます。資料2-1「職域におけるがん検診の現状と課題について」、御説明いたします。
 こちらの資料は、令和5年3月に閣議決定されました「第4期がん対策推進基本計画」になりますが、がんの2次予防としてがん検診は位置づけられ、受診率向上対策について、がん検診の精度管理等について、科学的根拠に基づくがん検診の実施についての3つの観点で分野別施策等が明記されているところとなります。
 まず、受診率向上対策については、「職域におけるがん検診に関するマニュアル」、いわゆる「職域マニュアル」に示されているとおり、がん検診を受けた者の約30~60%が職域におけるがん検診を受けているとされており、職域におけるがん検診は、国民に受診機会を提供するという意味でも、非常に重要な役割を担っているところです。
 職域のおけるがんの普及啓発として、がん対策推進企業等連携事業を実施しており、本日御出席の中川委員にも御協力いただいて、がんを正しく理解いただけるよう、当該事業に賛同いただき、推進パートナー企業として登録いただいた企業を対象として、がん検診やがん対策に関する情報発信等を行っております。
 こちらは「保険者データヘルス全数調査」の調査結果の一部です。第40回検討会でも当該調査については情報共有させていただいておりますが、職域におけるがん検診の実態を把握する手段の一つとして、改めて御提示させていただいた次第です。こちらの表ではがん検診の実施主体ごとの実施状況を示しておりますが、どのがんにおいても、検診未実施である保険者があること、その中には自治体検診への受診勧奨も未実施としている保険者があることが分かります。また、被扶養者においては、被保険者と比較して未実施である保険者が多い傾向があります。
 こちらは全被用者保険者におけるがん検診の実施範囲についてお示ししています。がん検診ごとに傾向に大きな違いがあり、特に肺がん検診においては基本項目として加入者全員に実施されていることが多いです。胃がん、子宮頸がん、乳がん、大腸がんにおいては、希望者へのオプションで提供されることが多いですが、その割合は子宮頸がん、乳がんで多くなっています。
 こちらはがん検診の対象者と受診者数を示しておりますが、がん検診の種別ごとに受診率のばらつきが大きく、被保険者と被扶養者を比較すると、やはり被扶養者の受診率が総じて被保険者よりも低くなっています。
 次に精度管理についても、職域マニュアルにおいて、赤枠にあるとおり、精度管理指標に基づいて評価を行うことが望ましいと明記されているところであります。
 全被用者保険者におけるがん検診の要精密検査の対象者把握と受診勧奨の状況をお示ししています。要精密検査対象者を把握している保険者はおよそ3割程度であり、そのうちの7割以上が対象者に受診勧奨を実施しています。受診勧奨を行う保険者のうち8割以上はその後の受診状況を確認しておりますが、確認方法としては本人からの情報提供やレセプトによる確認が多いようです。
 こちらは要精密検査となった者を把握していない理由ですが、最も多かった回答は「精密検査受診の判断は精密検査の対象者に任せているため」となっております。
 3つ目に科学的根拠に基づくがん検診の実施についてですが、そもそもの立てつけの話にはなりますが、職域マニュアルは、がん対策は科学的知見に基づくものとするがん対策基本法及び基本計画の基本理念に基づきがん検診の項目等を設定し、職域におけるがん検診において参考となることを目指しているところです。
 しかしながら、科学的根拠に基づくがん検診について理解できないまま検診内容を決定している保険者や、内容について理解はしていても、マニュアルどおりに実施できていない保険者も見られることは課題としているところです。
 ここまでの説明についてまとめたものになります。職域におけるがん検診について、受診率や精度管理の向上等のために、先進的な企業の取組等も参考にしながら、今後どのような取組を展開していくことが考えられるか御意見いただきたく存じます。
 以上です。
○大内座長 「職域におけるがん検診の現状と課題について」の議論に入る前に、事例紹介としまして、2019年度にがん対策推進企業アクション厚生労働大臣賞を受賞し、現在もがん対策に積極的に取り組んでおられる野村證券株式会社人事企画部ヘルスサポートグループ長の河野和絵様から発表をお願いいたします。
○河野参考人 ありがとうございます。
 初めまして。野村證券の河野と申します。本日はお時間いただきまして、ありがとうございます。
 発表いたします。
 本日は、野村證券におけますがん検診について、事例を御紹介させていただきます。
 初めに、野村證券と野村證券健康保険組合は2017年にコラボヘルス共同利用宣言を策定いたしまして、事業主と健康保険組合が協力・連携して、従業員の予防・健康づくりに取り組んでおります。
 最初に少しだけ弊社の概要について御紹介させていただきますと、野村證券を含む野村グループは、世界30か国の拠点で約2万7000人の社員が働く金融サービスグループでございまして、日本における従業員数は約1万4000人になります。
 野村證券と聞いて皆様がイメージされるのは野村證券の店舗だと思いますが、全国に約100の店舗を展開しておりまして、顧客資産残高は国内最大となっております。
 皆様少し意外に思われるかもしれませんが、野村證券は創業者が「健康は吾人の最大の資本なり」と自叙伝に書き記しておりまして、ビジネスを成功させるためには健康が土台になければならないという精神が創業時から根底に流れております。
 野村グループで取り組んでいる健康経営についても簡単に御紹介させていただきますと、2016年から健康経営を推進しておりまして、グループ全体の健康経営のゴールを「野村で働くすべての人が、単に健康になるのではなく、肉体的にも精神的にも、社会的にも満たされた状態(Well-being)になること」としております。具体的には、こちらの一番下にあります5つのテーマを重要課題と捉えておりまして、その中の一つにがん対策が含まれております。
 がん対策の基本的な考え方としましては、「病気による社員の離職を防ぎ、社員一人ひとりが自らの持つ能力や個性を十分に発揮できる環境をめざす」としておりまして、早期発見、早期治療、両立支援、両立できる風土醸成にポイントを絞って取り組んでおります。本日はこれらのうちマル1の早期発見とマル2の早期治療について御紹介をさせていただきます。
 まず、早期発見ですが、30歳以上の社員に人間ドックを提供しておりまして、こちらが定期健康診断とがん検診を同時に受診する仕組みとなっております。費用はオプションも含めて健康保険組合と会社が全額負担しております。がん検診は2019年より健康保険組合が精度管理を開始しておりまして、先ほどのマニュアル、職域のマニュアルに基づく有効性が認められた検査方法を検診機関と協議した上で契約するという形に変更しております。
 実際には、人間ドックでがん検診と定期検診の同時受診をしているという仕組み上、従前から導入していた検診項目や対象年齢を容易に変更できないということもありまして、オプションとして対応しているところであります。
 社員ががん検診を受診しやすい仕組みづくりということで御紹介させていただきますと、健康保険組合が契約している全国450以上の検診機関を自分で選ぶことができるようになっておりまして、受診可能項目やレディースデーなどの情報を一覧にして提示しております。一人一人のニーズに合った検診機関を選ぶことで、受診に対するハードルを下げて受診しやすくしております。
 また、予約用のポータルサイトにログインしますと、自分がその年度に受診できる無料のオプション項目が表示される仕組みになっておりまして、女性のがん検診などをつけ忘れることがないようにしております。
 そのほか受診しやすい仕組みとしましては、社員向けに人間ドックを受診するときに取得できる特別休暇、人間ドック休暇を導入しまして、社員に人間ドックを受診する意識を植え付けてもらっています。この休暇は1日単位での取得となりますため、例えば午後は歯科健診を受けるなど、自身の健康について1日考える日にしてもらいたいという思いがございます。
 また、検査内容や結果について社内の医療職が相談に対応しておりまして、どの検査を受ければいいかや、精密検査が必要だと結果の紙に書いてあったけれどもどうしたらいいかなどの相談に、保健師や看護師が対応しております。
 また、被扶養者向けには、人間ドックを積極的に受診したくなる仕組みとしまして、被扶養者が早期、弊社の場合9月末までとしておりますが、それまでに受診した場合に、被扶養者と被保険者本人両方にインセンティブとして健康保険組合がアマゾンギフト券などに交換できるポイントを付与しております。
 続いて、がん対策の2点目の早期治療についてです。
 がん検診で要精密検査となった対象者に、健康保険組合より受診勧奨を実施しております。具体的には、対象者に対して健康保険組合がメールと郵送の両方で案内を送付しまして、対象者は受診状況をそこから回答いたします。その後、健康保険組合がレセプトで受診状況を確認し、適宜、再勧奨をしているという流れになります。
 メールで通知状を送付する際には、健康プラットフォーム「WellGo」というものを導入しておりまして、そのメール機能を利用し、ウェブサイトまたはアプリから回答することになります。画面を開くと、何をすべきかToDoリストに表示されておりますので、やるべきことが分かりやすく、そのまま回答画面に遷移できるようになっております。「報告」というボタンを押しますと、2人に1人ががんになる時代です。がんとなっても早期ならば9割が治っていますということの啓発を伝えまして、その下の画面で受診状況についてチェックをつけて回答することになっております。
 例えば受診予定、これから行きますと回答した場合には、右側の上のスライドにあります受診の予定日を自分で入力させるようになっておりまして、ナッジを活用しております。
 また、受診しないと回答した人に対しては、どうして受診しないのかという理由を尋ね、次年度以降の施策に生かしております。
 被扶養者向けの案内としましては、先ほどの「WellGo」というプラットフォームは、社員は約100%が利用しておりますが、被扶養者は半分ぐらいとなっておりますので、自宅に健康保険組合が圧着はがきで案内を送っております。内容につきましても、こちらにありますような、がんに対する啓発のところと、あと右側の回答方法のQRコードを読み取ると先ほど御紹介しました「WellGo」の画面に飛んで、ここから同じように回答をするという流れになっております。
 続いて、人事制度面での支援としましては、健康診断と人間ドックの結果、再検査や精密検査が必要になった場合に使える二次検査休暇が1人1日、病気にかかった際に使える傷病等休暇が最大50日ありまして、臨時有給休暇を時間単位で取得できるようにもしております。
 また、柔軟な働き方という点では、フレックスタイム制勤務や調整出勤制度、在宅勤務制度などを整備しておりまして、様々な制度を活用して精密検査を受診しやすい環境を用意しております。
 なお、本人の同意につきましては、健康診断、人間ドックを予約する際に表示される画面にて同意を取得しております。精密検査についてはこのような画面での同意取得はしておりませんが、本人が検査結果を報告するということをもって対応しております。
 最後に、御参考としまして、がん検診と精密検査の受診率のデータをお示しさせていただきます。
 まず、がん検診の受診率ですが、2022年度、赤い棒が社員、グレーが被扶養者となっておりまして、社員は比較的高いのですが、先ほどもありましたように被扶養者がちょっと低めということで、課題に感じております。
 続いて、精密検査の受診率ですが、こちらは精密検査の対象になった人のうち受診したことがレセプトで確認できた人の割合になります。大腸がんなどの項目によって差が出ておりますので、今後も啓発活動を続けていきたいと考えております。
 以上でございます。ありがとうございました。
○大内座長 大変すばらしいデータです。
 では、資料2-1の事務局からの説明、並びに資料2-2の野村證券におけるがん検診についての河野参考人の説明に関して、御意見等をお願いいたします。
 黒瀨構成員。
○黒瀨構成員 ありがとうございます。
 まず、野村證券様の取組と、そしてその上げている効果に関して、大変すばらしいなと思いました。ありがとうございます。
 それを踏まえて、まず受診率の向上あるいは精度管理の中でも精検受診率の向上のためには、やはり企業の協力が欠かせないということで、いわゆるコラボヘルスの推進が不可欠であると我々も感じております。
 その中で重要になっていく一つのキーとしては、産業医をうまく活用していただくこと、そしてその役割をより明確化していただくこと、こういったことが重要であるかと思いますし、また、日本の場合にはいわゆる専属の産業医がいない中小企業が非常に多いですので、こういったところへの配慮として、産保センターの機能の拡充ですとか、そういったことも考慮に入れておかなければいけないかと思います。
 また、野村證券様の事例にも示されておりますように、いわゆるウェルビーイングにつなげていくということが重要でありますので、その点に関しましては、例えばがんの早期発見だけではなくて早期治療に必ずつなげていかなければいけないということ、さらには生活習慣病対策とか喫煙対策、こういったこともセットで行っていかないとウェルビーイングにつながっていかないということで、そういった意味でも、この中核となる機能としての産業医機能というのは非常に役割が重いのではないかなと感じました。
 もう一点、また別の角度から考えると、ウェブやアプリを使われたこういった取組は非常に重要だと思いますし、今後、私どももいわゆるプッシュ型の受診勧奨の機能なども含めたPHRの利活用を十分に検討して推進していかなければいけない。こういったことが本当の意味の医療DXにつながっていくのではないかなと感じております。
 以上でございます。
○大内座長 ただいま御指摘いただきました産業医の役割についてなのですが、河野参考人説明資料の8ページ、社員への説明、あるいは推薦される検診内容等について、どの検査を受ければいいかなどの相談に対しては保健師、看護師が対応とありますけれども、医師の対応はあるのでしょうか。
○河野参考人 ありがとうございます。河野でございます。
 産業医も専属でおりますので、適宜、社員と面談する中での相談を受けたり、あと、がんにかかった後の社員が復帰する際の面談もしておりますので、そこでこういったことに気をつけてほしいと社員本人や職場にも伝えるなどもしております。
○黒瀨構成員 ありがとうございます。
 確かに、いわゆる社員の皆様方の健康相談といったことに直接携わるということも大切ですし、また、こういった仕組みをつくっていく上で、産業医が専門的な知識を持って、この仕組みづくりに主体的に参画していくことも重要かなと感じております。どうぞよろしくお願いいたします。
○大内座長 では、中山構成員。
○中山構成員 精密検査の受診率がどうしても職域で低くなるというところで、それに対してちゃんと休みを取れる制度を設けられているということは非常にすばらしいことだとして大変評価させていただきます。
 1点だけ苦言といいますか、このがん検診のあり方に関する検討会では、国が指針で推奨するがん検診に関しても、基本的には検診を受けることによって不利益を生じる。特に若い年齢でがんにかかりにくい人に対しては不利益のほうが大きくなるだろうということで、国が推奨しているのは例えば40歳以上の乳がん検診とか、50歳以上の胃がん検診となっているのですけれども、ここの年齢のところがどうしても30歳という、臨床的にはがんはまれだろうなという年齢にされているのですけれども、そこの変更はやはり無理なのですか。
○河野参考人 ありがとうございます。
 御指摘のとおりでございまして、この制度で数十年、20年ぐらい運用してきたということがありますので、社員にはまず先生がおっしゃいますようにがん検診のメリットとデメリットについては社内で健康情報の番組などを作っておりまして、そこで皆さんの検診はこういうものがありますが、国が定めているものはこういったもので、例えばリスクについてはこういったことがありますよというような啓発をまず進めているところであります。その上で、項目、年齢をもっと引き上げるのかとか、頻度をどうするのかについては健康保険組合と一緒に今後検討していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○中山構成員 どうぞよろしくお願いいたします。
○大内座長 では、井上構成員。
○井上構成員 ありがとうございます。井上です。
 幾つか共通のもう既にいただいた御意見になります。
 細かい話なのですが、非常に受診率が高いということに感銘を受けたのですが、先ほど精密検査に関してはいろいろな手を使ってリマインドして呼びかけていってもらうようにするということだと思うのですけれども、そもそも検診そのものを最初に受けるときには、何らかの通知はするのでしょうけれども、通常、私のいる医療機関などでも、なかなか検診を受けない人に対してリマインドをかけて何とか受けるということで、検診自体のリマインドというのはどうされているのか。もう既に会社でそういう素地が整っていて、呼びかけたら必ず皆さん受診してくれて、そのぐらいの受診率になっているのか、そこら辺を教えていただきたいのと、先ほど中山構成員から指摘されていた話とほぼ同じなのですけれども、産業医が関わっていらっしゃるとは思うのですが、全体のプランニングをするときに産業医の関わり方がどういう関わり方なのか。産業医は専門的な知識を持っている者として意見をする立場として関わっていらっしゃるのか、それとも、どういう形でやっていこうかというプランニングにまでかなり関わられているのかということを伺いたいのと、もう一つは、先ほど年齢の変更はなかなか難しいという、難しい理由はどこにあるのかということをもう少し詳しく教えていただけますとありがたく存じます。
 以上になります。
○河野参考人 ありがとうございます。
 まず、健康診断自体の受診勧奨につきましては、御説明申し上げましたように人間ドックを30歳以上は定期健康診断を兼ねておりますので、その関係で会社からかなりの頻度で勧奨しております。
 方法としましては、通常、メールを所属長に送っていて、予約を各自する仕組みになっておりますが、それでも予約しない社員に対しては個別にメールで、それでもしない場合は電話をかけ、それでもしない場合は上長から指導してもらうなど、あの手この手で予約を取って受診をするということをやっております。
 2点目の御質問の産業医の関わり方につきましては、弊社の場合、健康保険組合には顧問医とかがおりませんので、何か精度を変えたいとか、この項目を入れたいけれどもというようなときには、健康保険組合等の産業医、弊社の産業医が協議して、産業医が専門的な意見を健保に伝えることにしておりまして、そこは連携して、精度をつくるときも一緒にやっております。
 3点目の年齢につきましては、社員にとっては何も説明しないと不利益に感じてしまう社員がいるかもしれないというところですので、知識を持ってもらうというところが一番の課題だと思っております。ちゃんとリスクとベネフィットについて社員が理解できるようになったら年齢を引き上げるというようなことも考えられるかもしれないのですけれども、そこを今、取り組み中であるというところになります。
 よろしくお願いいたします。
○大内座長 では、松田構成員。
○松田構成員 福井県健康管理協会の松田でございます。
 社員のみならず被扶養者も受診できるような環境の整備がされていて、非常にすばらしいと思いました。加えて、精検受診の状況も把握しているわけですが、さすが野村證券だなと感心をいたしました。
 そこで質問を2つさせていただきたいと思います。1つ目は、まず他の企業や職域では、精検の結果や精検の受診状況を把握することが極めて難しいと聞いています。先ほど事務局からの御説明にもあったのですが、その点に関して野村證券では何かしら精検結果の把握などに関して障害や障壁はなかったのでしょうか。
 2つ目は、中山構成員や井上構成員が御指摘になったように、私もがん検診の対象年齢は問題だと考えています。職域におけるがん検診も「職域におけるがん検診に関するマニュアル」を参照することが望ましいと書いてあるのですが、そこから外れた30代の胃がん、大腸がん、乳がん検診、そして科学的根拠がまだ明らかになっていないような肺のCTとか乳腺のエコーが行われています。その点に関して、これは変えないといけないというような議論が社内あるいは健保組合でなされたのか、これからなされるのか、その点いかがでしょうか。
○河野参考人 ありがとうございます。
 まず、1点目の精密検査の結果の把握につきましては、仕組みとして健康保険組合が受診勧奨して、その結果と、あともちろんレセプトの確認も健康保険組合が全部完結しておりますので、会社は統計データだけを提供してもらって、それに基づいて社内の啓発をどうするかとか、そういった対策を検討しているという役割分担をしております。
 2点目の年齢につきましては、本当におっしゃるとおりでございまして、ただ、弊社の場合、全国に支店がございまして、例えば乳がんとなりますとエコーしかないところとかがまだ一定数あります。そこの契約を全部しないということにしますと、検診を受けられるところがなくなってしまうとか、極端な話そういったこともございまして、一部、エコーとマンモグラフィーはオプションで残しているところになります。議論は健康保険組合と会社のほうで続けているところでありますので、今後検討していきたいと考えております。ありがとうございます。
○松田構成員 ありがとうございます。
 今後、職域のみならず地域においても、科学的根拠のある正しいがん検診は誰もが平等に受けられる体制ということが極めて重要だと思いますので、今後ともぜひよろしくお願いいたします。
 ありがとうございました。
○大内座長 では、若尾構成員、お願いします。
○若尾構成員 ありがとうございます。一般で参加しております若尾と申します。
 今回、職域でのがん検診ということでこの項目があるわけですけれども、職域でのがん検診、非常に重要な役割であると思います。そして、先ほどまでも河野さんから何回もオプションという言葉が出ていますが、このオプションという位置づけなのですが、特に職域の場合ですと、労働安全衛生法という一般の健康診断という中で考えますので、強制とか義務とかという言葉は使えないので、致し方ないなと思うのですが、がん検診に相当する項目がオプションであるという位置づけを、受ける立場である従業員の方がどれほど理解しているかというのはちょっと疑問なのです。
 希望者だけが受けるということの曖昧さとか、メリット、デメリットなども含めたオプションの在り方、位置づけというのも社員教育の中でしていただけると、今回の野村證券さんだけではなく、職域の検診の中でがん検診に相当する項目の位置づけを示すときにはとても必要ではないかなと思います。なので、受けている人が多いだけに、企業で受ける、いわゆる健康診断の中にあるがん検診に相当する検査、これがその方にとってどういう位置づけになるのかということが理解できる環境整備が日本全体に必要なのかなと思います。ここをしっかり共有しないと、職域によってとても大きな格差が出てくると思うのです。
 この後、2点質問をしたいのですけれども、1つは河野さんに質問させてください。私、女性の立場で見ているわけですが、今回の検診受診率や精密検査受診率を見ますと、当然、乳がん検診や子宮頸がん検診は受ける方は女性だけですので、女性という位置づけで見ると受診率は高いなと思うのです。一方、男性も女性も受ける胃がん、肺がん、大腸がん、これの受診率が男女でどのくらい差があるのかというのは非常に興味があります。労働環境の中で、正規社員もしくは非正規社員の格差というか、それが大きい女性にとってみると、働き方によって検診の機会が少なくなるのではないかなということは以前からちょっと考えていたのですけれども、こういった好事例として取り上げていらっしゃる企業さんでは、その男女差というようなものに対してどのような把握、それからどのような考えを持っておられるのか質問させてください。
○河野参考人 ありがとうございます。
 女性のがん検診以外のがん検診の男女差につきましては、ほぼ同じとなっております。弊社の場合は、健康保険組合に加入している社員ががん検診の対象になっておりますので、非正規の方はいらっしゃらないというところとかもございます。
 あとは胃がん、肺がん、大腸がんについては本当に男女変わらず同じような受診率となっております。
 よろしくお願いいたします。
○若尾構成員 女性でも非正規の方がほとんどいらっしゃらないのですね。
○河野参考人 おっしゃるとおりです。
○若尾構成員 それは気がつきませんでした。ありがとうございます。
 今のお返事を受けて、事務局でいいのかな、質問したいのですけれども、従業員数、今回、野村證券さんは何万人という単位であるようですけれども、私の地元山梨のように弱小企業が多い、従業員数十人というような立場の企業の実態調査というか事例を検討されたことがありますか。もし検討して、こういった場でその取組について共有する機会があるとしたら、今の質問、男女差における違いみたいなものを共有するというようなことが検討されていますか。教えてください。
○大内座長 では、事務局のほうから。
○事務局 ありがとうございます。
 先ほどもお示しさせていただきました企業アクションのほうでは、特に企業の大きさ等とは関係なく、その企業に対して啓発等々はさせていただいているところです。
 また、個別の小さい健保組合の状況等は、現在のところではこちらのほうで正確に把握はできていないところではございますが、好事例の共有という点におきまして御意見いただいたというところで、また検討会のほうを考えていきたいと思います。
 ありがとうございます。
○大内座長 若尾構成員、どうぞ。
○若尾構成員 ありがとうございます。
 把握をしていることと、次のアクションに進むことは別の次元だと思います。把握をしたら、何が課題かということをまとめ、こういった場で課題に上げ、協議し、次のアクションにつなげるということが大切だと思いますので、把握して、何か検討する必要がある。もしくは、従業員がそれほど多くない企業が日本では多いわけですので、そういったところの事例になるような対策とか提案、指針のようなものが今後できるように、大切な検診の場となっている職域でも、日本中の働く世代、男女問わずいい機会に恵まれるような環境整備ということにも視点を置いていただきたいと思います。
 以上です。
○大内座長 それでは、中川構成員、お願いします。
○中川構成員 まず、今の若尾構成員からのお話、中小企業の話です。今日御紹介いただいたがん対策推進企業アクションのパートナー企業数が今、5,560社でありますが、その3分の2が従業員数100人以下の中小企業なのです。ここについてとりわけこの企業アクションでも注力をしていまして、例えばホームページで後で確認いただくといいと思いますが、中小企業を対象にしたがん検診あるいは両立支援の状況の調査というのは、ここのところ毎年やっています。その際に、中小企業経営者のところに行って、具体的に言うと大同生命さんです。この検討会でも私が一度御報告したことがありますが、大同生命さんは中小企業、特に従業員数10名、20名といったところを顧客に持っているのです。そこの経営者のところに足を運んで、それぞれの企業の実態を聴く。そして、チラシ、パンフレットを経営者の方に差し上げて、こういうことをやってくださいと、そんなこともやっているのです。
 御指摘があったように、職域がん検診の最大の問題が根本的には法律がないということなのです。法律がないと個人情報保護法に規定されてしまいますので、野村證券さんも御紹介いただいたような同意を取っています。個別同意を取らない限りは、さすがに一次検診は勧奨できるわけですけれども、要精密という情報、要するに一般用語で引っかかったということです。要精密検査ということが、職域の中ではがんの疑いというような理解が非常にあるのです。そうするとそれは機微情報と認識されるのです。そうしますと、そこに関しては企業、健保がアクセスできないです。したがって、把握していない企業が非常に多いということになってしまうのです。ですので、野村證券さんのように、申込み時に同意を取るという作業が必要だと。
 企業アクションの中ではその問題は非常に大きいと意識していますので、ホームページの中にも、あるいは委員会の中でも、職域がん検診に関する情報取扱い、簡単に言うと個別同意をきちんと取りましょうということなのですが、これを進めています。
 私は、基本的に法定化を進めるという方向で議論いただけないかなとかねがね思っています。それと、野村證券さんは令和元年に厚生労働大臣賞をお取りになっていて、その野村證券さんでも皆さんから御指摘があったように指針から外れる。この問題は職域でのがん検診の大きな問題で、そもそも法定健診ではないわけです。裏づけがないので、それを。
○大内座長 中川先生、ウェブ回線が落ちましたね。
 復帰しましたね。続けてください。
○中川構成員 年齢については、経営層などから反対が出てしまうのです。要するに何で減らすのかと。この辺は河野さん、年齢、対象については健保で決めていますか。
○河野参考人 随分以前からやっているので経緯は分からないのですが、健保と会社で協議して決めたと理解しております。
○中川構成員 やはり健保主体で変えていく必要があると思います。会社をここに関与させると、結局人事の上層部とか、あるいは本当に社長とかそういう話になってしまうのです。ですから、この部分は健保主体にやっていただかないと難しいような気がします。
 それから、非正規の問題も若尾構成員から出ていましたが、計画としては本年度で16年目のロングランの事業なのですが、非正規についての調査は今までしておりませんでした。今年度の調査についてはここもやろうとしております。
 まとめますと、情報の取扱いについては個別同意が必要ということで、これは企業アクションのパートナー企業の中でも徐々に浸透している気がします。指針については、マニュアルの内容をよく理解してもらうような、そういうことをやらなければいけないと思っていまして、あり方検討会から企業アクションに座長名でも結構ですので何かそういう御指示があると私も動きやすくなるということです。
 御迷惑をかけまして申し訳ありませんでした。
○大内座長 貴重な御意見です。
 中川構成員も何度か指摘されました。ほかにも皆さんから意見があったのですが、せっかく今日、野村證券の河野参考人から詳しいデータをいただいたのですけれども、どうしても法律の壁があって踏み込めないのです。先ほど中川先生がおっしゃったように、一企業の問題ではなくて健保連の問題、あるいは法律の立てつけですから国の問題です。労働安全衛生法の中にがん検診の項目はありませんので、その中でオプションとせざるを得ないというのが実態かと思います。ですので、この仕組みを、この検討会が基軸になるのかどうかは分かりませんけれども、がん検診の対象は全国民であるということを皆さんもう一度理解していただいて、対策型検診からオーガナイズド、組織型検診に向かって進める必要があるということを改めて痛感しております。
 いかがでしょうか。どなたか御意見ありますか。
 中山構成員、どうぞ。
○中山構成員 大内座長のおっしゃるとおりで、結局のところはいろいろなところでがん対策という形で検診が議論されていたわけですけれども、職場のほうでは労働安全衛生法に基づく話ばかりが議論されているわけで、何となくがん検診をオプションとしてやったほうが健康経営の点でいいだろうという形で上乗せをされているけれども、何をやっているのかよく分からない、変更も利かない、いろいろな人の意見を聴かないと変えることも何もできないというところで、何となく外側から議論をしているのですけれども、やはり一つには法律をつくることだというのが一番の正攻法だと思いますので、絡めてのことはいろいろ御議論しましたけれども、正攻法のところをどうしても議論はここで始めていかないと、いつまで経っても始まらないのではないかと私は考えております。
○大内座長 松田構成員、お願いします。
○松田構成員 先によろしいですか。松田です。
 大内座長がおっしゃったとおりだと思います。職域におけるがん検診は、法制化に向けて、全ての国民が平等にがん検診を受けられる体制がつくられないといけないと思います。新型コロナの流行下において、地域におけるがん検診は激減したのですが、職域におけるがん検診は実はほとんど減っていないという状況があって、これは本人の自由で受けているというよりは、職域では半ば強制力が働いているのだろうと私は思います。
 職域におけるがん検診のマニュアルを検討した際に、もう7~8年前なのですけれども、職域におけるがん検診は任意型検診なのか、対策型検診なのかという議論がありました。私は限りなく対策型検診に近いと思いますので、正しいがん検診は職域においても全員が受けられるように、そして指針にのっとった検診になるように、是非、法制化を進めるべきだと思います。そのような理解が国民にも広がらないといけないかなと思いますので、よろしくお願いします。
○大内座長 河本構成員、お願いします。
○河本構成員 いつもお世話になっております。倉敷市保健所の河本でございます。
 私のほうからは現場の意見ということなのですけれども、私どもの自治体では、管内の事業所に所属されている産業看護師さんとか保健師さんとかと情報交換する定期的な会を持っております。職域におけるがん検診の実際についてもお伺いしましたら、企業により検診種類だけでなく、対象者の年齢の選定とか、精度管理の方法もかなり差がございました。いろいろと御意見を伺いましたら、法律で決まっていないので、どうしても職員の定期健康診断、労働安全衛生法で決まっていることの方を優先して、マンパワーの問題もあるので、がん検診のフォローまでなかなか手が回らないのだというようなお声もたくさん頂戴しています。今、先生方がおっしゃったように、法定化がされないと職域のがん検診を進めていくのはなかなか難しいのかなと思います。
 もう一点、私どもの自治体の健康増進計画を立案する際にアンケート調査を行ったのですけれども、通常の私たちの自治体のがん検診の受診率と、アンケートでがん検診を受けられましたかという問いの結果がかなり違っていて、事業所で受けましたと言ってくださる方が大勢いらっしゃいました。これは国民生活基礎調査の結果と似ているかと思うのですけれども、自治体以外の実施主体が実施しているがん検診データの把握がなかなか正しくはできませんし、アンケートは標本調査ですので、事業所で実施されているがん検診の受診率を正しく把握できるのがとても大切だと思っています。
 あと、先ほどの野村證券さんのすばらしい発表とても参考になりました。先ほどレセプトの話も出たのですけれども、健康保険組合、保険者さんとの連携もすごく大事だと思いますので、これからそのような点について検討していけたらいいのではないかと感じました。
 以上でございます。
○大内座長 では、中川構成員、お願いします。
○中川構成員 先ほどは失礼しました。
 法定化を進めるべきだと思っていまして、野村證券さんの事例でもやはり指針よりは広いわけです。職域検診によっては、日本を代表する企業であっても、例えばいまだに腫瘍マーカー検査などが行われている。それについては個別に御相談したりしてきました。ただ、法定化になって、対策型の指針に沿ってくると、大幅に職域がん検診に関するコストが減るのです。恐らく当初は経済界などからまた追加で法律でということに関する反発が出る可能性はあるのですが、しかし、今、福利厚生として行われているわけですけれども、結果的にはこのコストは大きく減ると思います。したがって、そのことを比較的早い段階からいろいろお伝えしていくことが大事だと思っています。
 以上です。
○大内座長 ほぼ議論は出尽くしたと思いますが、次の第3の議題にかなり関連しますので、こちらのほうに進みたいと思います。
 議題(3)「『がん検診事業のあり方について』の見直しについて」、改定版が示されておりますが、この点について事務局から説明をお願いします。
○事務局 事務局でございます。説明させていただきます。
 本検討会において、「がん検診事業のあり方」ですが、市町村事業及び職場におけるがん検診が適切に実施されることを目的としまして、平成20年に「今後の我が国におけるがん検診事業評価の在り方について報告書」、いわゆる「平成20年報告書」が公表されたところです。
 その後、令和2年度、3年度に厚労科研「がん検診事業の評価に関する研究」において、平成20年報告書に係る見直し事項や検討課題が整理されたことを踏まえまして、令和5年6月に「がん検診事業のあり方について」、「令和5年報告書」と略しますが、現在公表されているところです。その中でスライドのとおり報告書の見直しに関しても記載されております。
 令和5年報告書につきましては、第4期がん対策推進基本計画の内容や、直近の子宮頸がん検診のHPV検査単独法を、また、そのほかの法令・ガイドライン等の改正を反映させ、資料3-2、3-3のとおり、令和6年度版「がん検診事業のあり方について」としての発出を検討しているところです。
 また、平成20年報告書から令和5年報告書まで時期が空いたという過去の対応も踏まえまして、今後の報告書の見直しの頻度等について検討してはどうかと御提案いたします。
 事務局からは以上です。
○大内座長 それでは、御意見等ございましたらお願いします。
 中山構成員。
○中山構成員 今の説明なのですけれども、確かに平成20年報告書というのは物すごく長くそのままであって、あのときに事業評価、精度管理に関するいろいろなものをつくったけれども、あまり長い間ずっとほったらかしだったために、現状とそぐわなくなってきたというようなことがあって、研究班を組織して改定をしたというような経緯があるわけなのですけれど、これから目指すものは、事業評価、精度管理に関する部分だけの話をするのか、それとも検診そのもののいろいろな話をするのか、その辺のところを決めていただきたいと思うのです。
 というのも、先ほど松田構成員がおっしゃったのですけれども、これからのがん検診は、住むところ、いろいろなところで同じようなサービスを受けられるようにというお話があったのですが、例えば胃の内視鏡検診は導入されてもう8年、9年になるのですけれども、いまだにできている自治体は6割でストップしていて、残り4割は全くできないわけで、今後、例えば大腸内視鏡が推奨されるということになったらもっと悲惨なことになって、大都市以外は全くできないということになる可能性はあるのです。なので、世の中が期待する物すごく精度の高い検診が住んでいるところにかかわらず受けられるのかということになると、全く反対のことが起きてしまうので、その辺の基礎的な考え方についてもこの検討会で整理をしていただいて、報告書には入れていただきたいなと思うのですけれども、いかがですか。
○大内座長 事務局にお尋ねする前に、中山先生御自身のお考えを。
○中山構成員 恐らくそういうところは物すごく近々に私が抱えている不安であって、幾らガイドラインでやったとしても、誰も恩恵を被らないものをやるべきかというような話になってきますから、その辺のところを検討する場は恐らくここしかないので、そういうことはこれからも検討して、項目の中に入れていただきたいなと思います。
○大内座長 事務局のほうからいかがですか。
○がん対策推進官 事務局でございます。
 中山先生、貴重な御指摘ありがとうございます。
 まさに見直しの頻度や中身のところにつきまして、今後、少し見直しが必要ではないかという問題意識を持ちまして、このたび議題として上げさせていただいております。
 具体的な見直しの頻度等につきましては、まさにこの中で御意見をいただいたことを踏まえまして、今後お示ししている中で示していきたいと思っております。
○大内座長 中山先生、よろしいですか。
○中山構成員 「あり方に関する」というようなタイトル自体が大げさなので、それだと世の中がイメージするものはかなり大きなことを書かなければいけないのかということになるので、その辺も踏まえて意見をさせていただきました。
○大内座長 では、黒瀨構成員、お願いします。
○黒瀨構成員 ありがとうございます。
 先ほど中山先生も御指摘された中で、例えば大都市圏と過疎化が進む地方とでは、医療のリソースも偏在が今後かなり大きくなっていくという中で、なかなか均一ながん検診を提供するというのは難しくなっていく。これは十分予想されることなのですけれども、かといって、それを見過ごしていくわけにもいきませんし、その時代時代に合わせて、いわゆる人口構成比の変化、あるいは医師の地域偏在の問題、あるいは医療提供体制の拡充その他の問題も含めた上で、ある一定の期間を置いてがん検診のあり方ということを示していく、そういった必要があるかなと私は感じています。ですので、一つの考え方としては、がん対策推進の基本計画の年度に合わせて行っていく。あまり長くなり過ぎると時代に合わなくなっていきますので、かといって短過ぎたらなかなか改定作業も大変ですので、基本計画のスパンに合わせていくというのは一つの考え方なのかなと思っています。
 以上でございます。
○大内座長 ただいま黒瀨構成員から、基本計画のスパンに合わせるという具体的な意見がありました。いかがでしょうか。
 現在、第4期がん対策基本計画の2年目です。この検討会も基本計画の期間に合わせて行っていますので、第4期に向けての提言をまとめて意見書を協議会に出しております。それが第4期基本計画に入っております。ですので、第4期計画期間の中間年である令和7年度に向けて、今は令和6年ですから1年間この検討会でもんでいって、一定の方向性を示す必要があります。その中で、こういったガイドライン等の見直し等についても明記する必要があると考えております。親委員会といいますか、国の基本的な計画を決めているのはがん対策推進協議会で、そこが基本計画に沿って動くわけですので、黒瀨構成員も言われたように、基本計画の年次計画に合わせた形で文言を作成していくことが最もふさわしいと考えております。
 果たしてそこまで意見集約できて、皆さんが希望されるようながん検診の仕組みが日本で構築できるかということなのですが、それはその都度議論していく。大まかな予定としましては、今年が第4期計画の2年目に当たっていますので、第4期中間である令和7年度末に向けてはあと1年半しかありませんが、この1年半をかけて議論を深めるということでいかがでしょうか。
 若尾構成員、いかがですか。
○若尾構成員 ありがとうございます。一般で参加している若尾直子です。
 今、座長がおっしゃったように、その期間というものに対しては、がん対策推進基本計画が6年のスパンでということになっていますので、半分のところで中間評価をする。そして、最終のアウトカムのところで最終評価をするというようなことを念頭に置いて検討するのはとてもいいことだと思います。そして、今回、がん検診のあり方について何を検討するのかというような具体的な項目に入りますと、今回資料としてお示しいただいた3-2の通し番号で184ページに具体的な項目が書かれています。がん検診のあり方の中で、こういった課題がありますね、こういったことが挙がっていますね、こういったことは充実させていきたいですね、この中で検討課題及び主な意見としてまとめてくれてあります。これに基づいて具体的な議論を進めていく、具体的な意見交換をしていく。そして、中間評価の中で、ここまではできたけれども、これから先は残りの半期の中でやっていくことを目指すとかというようなことがしっかりとした形に残れば、次に進んでいけると思いますので、評価をして、チェックをして、次に進むというようなことをある一定のサイクルの中でこなしていくという作業が必要なのかなと思います。
 なので、これを基に一定の目標の日程、つまり今回の場合でしたらがん対策推進基本計画の6年間の節目を意識した上で、いつまでにここまでが検討できたのであったら残りはここまででやっていく、できなかったらできなかったって積み残しにして、次に進むというような共通の課題を明確にしたらいいのかなと思うのですが、いかがでしょうか。
 以上です。
○大内座長 今日は令和6年度の第1回検討会ですので、多くの方から意見をいただいた上で今後進めていきたいと思っております。
 もう少し時間がありますので、忌憚のない御意見をいただければと思います。
 では、松田構成員。
○松田構成員 先ほど中山構成員から、私が「全国津々浦々どこにいても同じ検診が受けられる体制が必要だ。それは地域、職域を問わず。」と述べていると紹介いただきましたが、私の持論は全く変わっておりません。ただ、現実には、胃の内視鏡検診も自治体の4割が導入できていないという状況にあると。それは踏まえないといけないと思います。
 では、どうすればそれが可能なのか、何が問題なのかという検証が必要でしょうし、胃の内視鏡検診にかかわらず、一旦導入したらそれを延々と続けるではなくて、現状把握をして、問題点があったらそれを修正するというスタンスがやはり必要なのだと思います。今後、がん死亡率が今より激減するようながん種に関して言うと、そのがん検診は中止をするということもあり得ると思います。例えば胃がん検診です。ということも踏まえて、一旦導入したらそのまま突っ走るではなくて、逐一検証しながら、次にどうするかを考えていく。それは新たな検診の導入もそうでしょうし、今やっている検診についてもそのようなスタンスが必要だと思います。先ほどの内視鏡検診で言うと、4割の自治体がなぜ導入できないのかということの検証は是非すべきではないかと思います。
以上です。
○大内座長 ほかにございますか。よろしいですか。
 第3の議題、「がん検診事業のあり方について」の見直し、この報告書を含めて、もう一度全体を通して質問はありますか。よろしいですか。
 では、今日いただきました御意見を事務局のほうで整理させていただきまして、次回以降の議論の柱立てをつくりたいと思っております。
 改めまして、全体を通しまして今日お話ししておきたいことがありましたらどうぞ。
 なければマイクを事務局に移します。
○事務局 大内委員、進行いただきありがとうございました。
 次回検討会の詳細につきましては、調整の上、御連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。
 本日は、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございました。

照会先

健康・生活衛生局 がん・疾病対策課

代表 03-5253-1111(内線8306)

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