首相官邸・新着情報

 今から79年前の今日、原子爆弾により、十数万ともいわれる貴い命が奪われました。街は焦土と化し、人々の夢や明るい未来が容赦なく奪われました。一命をとりとめた方々にも、筆舌に尽くし難い苦難の日々をもたらしました。内閣総理大臣として、ここに原子爆弾の犠牲となられた方々の御霊(みたま)に対し、謹んで、哀悼の誠を捧(ささ)げます。
 そして、今なお被爆の後遺症に苦しむ方々に対し、心からのお見舞いを申し上げます。
 79年前の広島と長崎にもたらされた惨禍、人々の苦しみは二度と繰り返してはなりません。被爆の実相を後代に伝えつつ、非核三原則を堅持して、「核兵器のない世界」の実現に向けて努力を着実に積み重ねていくことは、唯一の戦争被爆国である我が国の使命です。
 核軍縮を巡(めぐ)る国際社会の分断の深まりやロシアによる核の威嚇等により、核軍縮を巡る情勢は一層厳しさを増しています。しかし、「核兵器のない世界」への道のりがいかに厳しいものであったとしても、我々はその歩みを止める訳にはいきません。核兵器不拡散条約(NPT)の維持・強化のため、「ヒロシマ・アクション・プラン」の下での現実的かつ実践的な取組を進め、核軍縮に向けた国際社会の機運を高めるべく、国際社会を主導してまいります。
 この点、現在、世界は、冷戦の最盛期以来初めて、核兵器数の減少傾向が逆転しかねない瀬戸際に立っています。これを防ぐためにも、FMCT、すなわち、核兵器用の核分裂性物質の生産禁止条約の推進は重要であり、本年、我が国は、核兵器国、非核兵器国を含むFMCTフレンズの枠組みを立ち上げました。私自身、先頭に立って主体的に関与してまいります。
 昨年5月、G7広島サミットにおいて、世界中の指導者や若者が、被爆地広島及び長崎を訪問することを促しました。被爆の実相を正確に理解していただくことは、核軍縮に向けたあらゆる取組の原点として重要です。
 こうした取組の一環として、昨年12月、日本政府の拠出により国連が立ち上げた「ユース非核リーダー基金」プログラムが始動しました。今年、このプログラムを通じ、核兵器国・非核兵器国の双方の未来のリーダーが、広島及び長崎を訪問します。
 我が国は、被爆者の方々を始め、「核兵器のない世界」の実現を願う人々と共に、被爆者の方々の思いや被爆の実相を次世代に継承するため、引き続き、力を尽くしていく決意です。
 被爆者の方々に対しましては、保健、医療、福祉にわたる支援の必要性をしっかりと受け止め、原爆症の認定について、できる限り迅速な審査を行うなど、引き続き、高齢化が進む被爆者の方々に寄り添いながら、総合的な援護施策を推進してまいります。
 結びに、永遠の平和が祈られ続けている、ここ広島市において、核兵器のない世界と恒久平和の実現に向けて力を尽くすことを改めてお誓い申し上げます。原子爆弾の犠牲となられた方々のご冥福と、ご遺族、被爆者の皆様、並びに、参列者、広島市民の皆様のご平安を祈念いたしまして、私の挨拶といたします。

令和6年8月6日
内閣総理大臣・岸田文雄

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