首相官邸・新着情報

【岸田総理冒頭発言】
 御質問を受けさせていただく前に、冒頭、昨日発生した宮崎県日向灘(ひゅうがなだ)を震源とする地震の関連と中央アジア、モンゴルへの訪問について、一言申し上げます。昨日の日向灘を震源とする地震の被害については、これまでのところ、複数の負傷者や建物被害の報告が上がっております。一部地域では地盤液状化が生じているという情報もあり、被害把握と迅速な対応に万全を期してまいります。
 加えて、昨日、気象庁が南海トラフ地震臨時情報の「巨大地震注意」を発表いたしました。この情報は、大きな地震の発生が続く可能性に備え、日頃から地震への備えの再確認や、地震が発生したらすぐに避難するための準備を国民の皆様に呼び掛けるものであり、発出するのは初めてのことになります。偽情報の拡大防止への協力もお願いいたします。
 今回の南海トラフ地震臨時情報は、あくまでも事前避難を求めるものではなく、また、特定の期間に地震が発生するということを具体的にお知らせするものでもありませんが、初めてのことであり、国民の皆さんの不安も大きいと思います。危機管理の最高責任者である内閣総理大臣として、念には念を入れ、少なくとも、気象庁が地震の備えの再確認等を呼び掛けている1週間程度は国内にとどまり、政府としての対応や情報の発信に万全を期すべきであると判断いたしました。このため、今回予定していた日程での中央アジア、モンゴルへの訪問は取りやめることといたします。本日、長崎での日程の後、直ちに官邸に戻り、震災及び南海トラフ地震臨時情報への対応に当たってまいります。冒頭、私からは以上です。

【質疑応答】

(司会者)
 ありがとうございました。記者会見は、地元記者代表1名1問、総理同行記者1名1問、一問一答形式といたします。それでは、長崎市政記者クラブを代表して、西日本新聞、布谷真基記者から質問をお願いします。

(記者)
 幹事社、西日本新聞から質問させていただきます。よろしくお願いいたします。先ほどの要望にもありましたが、指定地域外で長崎原爆に遭った被爆体験者について、国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館所蔵の被爆体験記調査では、雨と飛散物の記述が計200件確認されましたが、厚生労働省は、降雨などを客観的事実として捉えることができなかったと結論づけました。被爆から79年がたち、科学的かつ客観的な根拠を求めるのにも限界があり、当事者からは政治的な判断での解決を望む声が上がっています。
 2023年には一部拡充もされてはいますが、広島の黒い雨被害者が被爆者認定されているのと同様に、長崎で黒い雨や灰などに遭った被害者についても、原爆放射線の影響下にあった人として、政治判断で被爆者と認定する時期に来ているのではないでしょうか。首相の考え方をお聞かせください。
 また、ロシアのウクライナ侵攻における核の威嚇や、パレスチナ自治区ガザでの戦闘激化など、緊迫した世界情勢が続く中、世界の戦争や核兵器使用をちらつかせる国に対し、日本の外交的役割をどのように考え行動していくのか。被爆80年を来年に控え、被爆者の間では、日本政府の核兵器禁止条約への批准・署名を求める声が更に高まっています。
 締約国会議へのオブザーバー参加の有無を含めた今後の対応や、核保有国に対してどのように働き掛けるかなど、唯一の戦争被爆国の首相としての考えをお聞かせください。

(岸田総理)
 まず、1点目についてですが、今日、被爆体験者の皆様ともお会いをさせていただき、これまでの経験を直接お伺いをさせていただきました。政府としては、今、御質問の中でも御指摘がありましたように、被爆体験による疾患などへの医療費助成を行うとともに、昨年4月からは、一部のがんも助成対象に追加するなど、被爆体験者の方々への支援に努めてきたところでありますが、しかしながら、被爆から実に80年が経過しようとしており、被爆体験者の方々は高齢化されています。
 また、広島との公平性についての御指摘もあったところです。政府として早急に課題を合理的に解決できるよう、厚生労働大臣において、長崎県、長崎市を含め、具体的な対応策を調整するよう指示をしたところであります。先ほども厚生労働大臣に対応を直接指示する、確認したところであります。是非、具体的な、そして合理的な解決策について調整を政府としても進めてまいりたいと考えております。
 そして、2点目ですが、おっしゃるように、国際社会は不透明感を増し、分断が進んでいる、こうした厳しい情勢を感じています。その中において、日本外交の役割、こういった点についての御質問でありましたが、やはりこうした不透明な時代であるからこそ、国際社会は分断・対立ではなくして、協調していくための一つの方向性や一つの物差し、こういったものが重要であると考えています。
 その中にあって、私自身、今日まで外交の中で強く訴えてきたこと、国際社会が共に協調する、寄って立つべき基盤として、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化していく、更には、こうした国連憲章を始めとする国際的な規範に基づいての対応、少なくとも、力による一方的な現状変更、法の支配ではなくして、力によって現状を変えようとするような試み、こういったことは許してはならない、こうしたことを訴える中で、グローバルサウスを始めとする多くの国々から賛同いただいた、こういった取組を続けてきました。
 是非、日本外交としてそういった考え方を念頭に、首脳外交を始め、様々なレベルで国際社会に働き掛け、分断や対立ではなくして、協調を目指す、こういった国際社会を再び取り戻していかなければならない、このように思っています。
 そして、3点目、核兵器禁止条約について御質問がありました。これについては、先ほどの要望を伺う会の中でも申し上げましたが、核兵器禁止条約も、そして、我々日本の日本外交も、核兵器のない世界を目指すという大きな目的については、目標、目的、共有しているところです。唯一の戦争被爆国としての日本の取組においては、その中で特に核兵器禁止条約に1か国も参加していない核兵器国を具体的に動かすところに力を尽くしていかなければならない、このように思っています。
 そのためにも、まずは、今の国際的な議論の枠組みの中で、核兵器国も同じテーブルについている枠組みでありますNPT(核兵器不拡散条約)の枠組みを維持・強化していくこと、これは重要なことだと思いますし、その維持・強化していくための具体的な取組として、一昨年のNPT運用検討会議で私自身が国際社会に提唱した「ヒロシマ・アクション・プラン」の5つの柱、これを具体的に進めていくことが重要であると思っています。
 そして、更に具体的な例として、核実験を禁止するということ、それから、核兵器用物質の生産を禁止するということ、この2つの切り口から、具体的な核兵器をなくす、核兵器のない世界に向けて前進する糸口をつくっていかなければならないということで、一昨年の国連総会においては、CTBT(包括的核実験禁止条約)フレンズの首脳級会合を日本が働き掛け、そして、今年の3月には、FMCT(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約)フレンズを日本が立ち上げ、そして、秋にはFMCTフレンズのハイレベル会合、これには米国も英国も、そしてフランスも参加を表明してくれています。
 こういった核兵器国を巻き込みながら、核実験あるいは核兵器の物質の禁止、こういった取組を前進させていていくことが重要であると思います。こういった取組を進めることによって、核兵器禁止条約も目指している核兵器のない世界に核兵器国をどれだけ近づけることができるか、こういった努力を進めていくことが、唯一の戦争被爆国、日本の外交において重要であると認識しています。以上3点です。

(司会者)
 ありがとうございました。総理同行記者団を代表して、時事通信の原野琳太郎記者から質問をお願いいたします。

(記者)
 時事通信の原野です。よろしくお願います。本日の平和祈念式典には、長崎市がイスラエル大使を招待しなかった影響で、G7の駐日大使が出席を見送りました。政府は長崎市として判断したものとの立場ですが、各国大使の欠席をどう受け止めておられますか。
 核保有国を含む各国の対応に、被爆者団体からは懸念が出ております。政府が長崎市と大使館の間に立って調整を図るべきだったとの指摘もありますが、政府の対応は適切だったとお考えでしょうか。
 広島と長崎で平和式典を終えられました。総理の掲げる核兵器のない世界の実現には、御自身の継続的な働き掛けが欠かせないと考えられますが、内政・外交の両面で政策を継続する重要性を勘案し、自民党の総裁選に立候補されるお考えはありますでしょうか。立候補の有無をいつまでに判断されますでしょうか。お願いします。

(岸田総理)
 まず、1点目の平和祈念式典への出席の質問でありますが、これについては、本件式典、これは長崎市の主催の行事であります。外交団の出席等を含めて、政府としてコメントする立場にはないと考えております。そしてその上で、平素より各国外交団あるいは長崎市側とは、国際情勢等についての情報提供など、様々なやり取りは行ってきているところであります。ただ、それ以上の詳細については控えたいと思います。
 そして、2点目の質問についてですが、唯一の戦争被爆国である日本は、核兵器のない世界に向けた国際的な取組をリードする歴史的使命を負っていると思っています。そして、私自身も、政治家としてのライフワーク、核兵器のない世界を目指すというのはライフワークであると思って取り組んでいるところであります。
 一方、今、内閣総理大臣としては、この問題だけではなく、外交・安全保障、経済、社会、日本がいずれも予断を許さない状況に直面して、こうした先送りできない課題に一つ一つ取り組んで、一つ一つ結果を出していく、これに専念しなければならないと従来からも申し上げております。
 御質問は、総裁選挙についての御質問ではありますが、私自身、こうした先送りできない課題に一つ一つ取り組み、結果を出していく、これに全力を挙げて専念している、こういった状況であるからして、それ以上のことについては申し上げることは控えるということを従来から申し上げております。今現在も同じ答えであります。以上です。

(司会者)
 ありがとうございました。以上をもちまして、総理の記者会見を終了させていただきます。

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