財務省・新着情報

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財政制度等審議会財政投融資分科会
議事録

令和6年6月17日
財政制度等審議会


財政制度等審議会財政投融資分科会議事次第

令和6年6月17日(月)14:25~16:40
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)

  • 1.開会

  • 2.議題

  • 官民ファンドのフォローアップ

質疑・応答

  • 論点整理(案)

質疑・応答

  • 下水道事業者の資金繰りの研究

財政施策を通じた地方公共団体等との連携について

質疑・応答

  • 3.閉会

配付資料

資料1ー1

官民ファンド・フォローアップ(財務省)

資料1ー2

投資計画等の進捗状況

(経済産業省、株式会社海外需要開拓支援機構)

資料1ー3

投資計画等の進捗状況

(総務省、株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構)

資料1ー4

投資計画等の進捗状況

(農林水産省、株式会社農林漁業成長産業化支援機構)

資料2

論点整理(案)

資料3

下水道事業者の資金繰りの研究(財務省)

資料4

財投施策を通じた地方公共団体等との連携について(財務省)

出席者

分科会長

百合

奥理財局長

湯下理財局次長

藤﨑総務課長

大江財政投融資総括課長

田原資金企画室長

原山財政投融資企画官

小多計画官

大江計画官

土居丈朗

野村浩子

丸田健太郎

家森信善

臨時委員

有吉尚哉

岡田章裕

小枝淳子

冨田俊基

山内利夫


14時25分開会

〔翁分科会長〕ただいまから財政制度審議会財政投融資分科会を開会いたします。本日は、初めに官民ファンドのフォローアップについてご議論いただき、その後、7月に取りまとめを予定しております財政投融資の現状と課題についての論点整理(案)について、委員の皆様よりご意見を賜りたいと思います。また、下水道事業者の資金繰りの研究及び財投施策を通じた地方公共団体等との連携についてもご議論いただく予定としております。時間が限られておりますので、ご質問、ご意見などはできるだけ簡潔にお願いいたします。

それでは、官民ファンドのフォローアップについて、原山財政投融資企画官よりご説明していただいた後、投資計画に対する進捗状況につきまして、各ファンドの方より順にご報告をいただきます。委員の皆様からのご意見、ご質問については、全ての機関の説明が終了した後にお願いいたします。

なお、資料1-1の参考資料のうち、令和5年度決算資料につきましては、各機関における正式手続前の資料を含んでおりますので、本日、この内容に言及いただくことは差し支えございませんが、公表は後日とさせていただきますので、ご承知おきください。

それでは、よろしくお願いいたします。

〔原山財政投融資企画官〕それでは、資料1-1をお願いします。

3ページ目をお願いします。改革工程表に基づく投資計画の進捗状況については、CJについては、投資額は計画値に未達、累積損益は達成となっております。

JICTについては、投資額・累積損益共に計画値を達成しています。また、令和5年度は単年度黒字となりました。

A-FIVEについては、累積損益が計画値に未達となっております。

5ページ目をお願いします。前回の分科会以降の具体的な取組などについて、各ファンドに報告を求めておりますが、新規案件組成の状況や見通し、既存案件の状況や見通しなどについて、各ファンドには報告を求めています。

論点ですが、1つ目の論点は、新規案件の組成や既存案件について、収益黒字化や累積損失解消に向けた進捗管理は適切に実施されているか。2つ目の論点は、報告事項を踏まえ、各機関や所管省庁に対し個別に促すべき対応はあるか。こういった点を論点として考えております。

事務局からの説明は以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、クールジャパン機構からお願いいたします。

〔経済産業省山影商務・サービス政策統括調整官〕経済産業省、山影でございます。クールジャパン機構の取組状況等につきまして、資料1-2でご説明申し上げます。

まず投資計画の進捗状況でございます。

1ページ目をご覧いただけますでしょうか。まず投資の進捗状況でございます。2023年度の投資額は、計画額90億円に対しまして、82億円。また、2023年度末の累積損益は、計画額マイナス407億円に対しまして、マイナス398億円となっております。投資額につきましては、計画額を8億円下回っておりますが、これは投資検討プロセスにおきまして、十分な精査を重ねる中で、一部の案件の支援決定が2024年4月になったことによるものでございます。こうした案件を踏まえまして、2024年4月の支援決定額は合計で約70億円となってございます。また、累積損益の計画額は達成しておりますが、引き続き厳しい経営状況にあることには変わりございません。

引き続き機構におきましては、政策目的の実現を前提に、より収益性の観点を踏まえた投資ポートフォリオの構築に向けまして、1つ目、既存案件へのモニタリングやハンズオン支援。2つ目、いたずらに投資を拡大するのではなく、案件組成段階で十分なデューデリジェンスを行った上で、優良案件に絞った堅実な新規投資の実行。3つ目といたしまして、調査研究費の増加の抑制などの経費の合理化など、経営改革の取組を進めていくよう、経産省としてもしっかりと監督してまいります。

続きまして、クールジャパン機構から、投資状況あるいは経営改革の進捗等につきまして、ご説明いたします。

〔海外需要開拓支援機構川﨑代表取締役社長CEO兼COO〕クールジャパン機構の川﨑でございます。

それでは、2ページ目をご覧ください。まず、新規案件組成の状況、見通しについてですが、先ほどご説明ありましたように、23年度の投資実績は82億円、90億円という計画額を若干下回っておりますが、案件のブラッシュアップに時間を要した結果、年度またぎとなってしまいましたが、4月には、インバウンド分野、ライフスタイル分野で70億円の支援決定を行いました。新規案件といたしましては、海外プラットフォームへの投資やファッション分野へのメザニンローンなど、政策目的の実現、安定収益の確保に取り組んできております。国際的な社会・経済情勢や地政学リスクにも目を配り、欧米案件にも取り組むなど、バランスの取れたポートフォリオ構築を目指しております。

次に、既存案件の状況、見通しですが、今後はさらに投資回収が本格化する予定ですが、23年度は5件、EXITし、引き続き複数案件のEXITに向けて検討を交渉中です。

次に、足元の収益性の状況及び修正後計画の進捗状況ですが、24年度は、EXIT案件からの収益で、この5月末時点で58億円の売上総利益が確定しております。さらに、近いうちに複数案件で売却益を見込んでおります。また、LP出資先からの配当、メザニンローン案件の利息収入などが見込まれる状況です。

今後の経営改善の取組についてですが、リスク管理体制の整備、強化のため、この4月に経験豊富なシニア人材を採用しております。引き続きリスクマネジメントに力を入れて取り組んでいきたいと考えております。投資ファンドに必要な調査費用も、委託時のスコープを絞り込むなど、今後も抑制に努めていく所存です。

私からのご説明、ご報告は以上となります。

〔総務省国際戦略局井幡国際戦略課長〕総務省から、JICTの改善計画の進捗状況について、資料1-3に基づいてご説明を申し上げます。

資料の1ページでございます。令和5年度、JICTにおきましては、インフラ関係の新規の共同出資案件が1件、ファンドへのLP出資案件2件について、支援決定を認可しております。投資額については、支援決定済み案件の投資実行等を含め、76億円となっております。その結果、令和5年度の計画額である52億円を24億円、上回っております。

また、大型案件からの配当収入等が経常費用を賄うことができる水準に達しております。機構設置以来、初の単年度黒字を計上し、累積損益額は令和5年度末時点においてマイナス123億円ということで、計画額でございますマイナス181億円を58億円、上回っております。

総務省といたしましては、JICTが引き続き改善計画を上回る実績を積み重ねていけるよう、適切に監督してまいります。

収益性、投資案件の詳細につきましては、JICTからご説明させていただきます。

〔海外通信・放送・郵便事業支援機構大島代表取締役社長〕JICT社長の大島でございます。

実績につきましては、先ほどお話のとおりでございますが、やはり支援範囲拡大、また、エコシステム推進による効果が大きいと考えております。新規としては、インドネシアにおけるニュートラルホスティング事業、また、アフリカ、東南アジアにも支援いたしまして、広がりのある支援を実施することができました。

24年度の見通しにつきましても、少し投資検討スケジュールが後ろ倒しになっておりました大型ハードインフラ案件、こちらが認可をいただいたところでございますが、ほかにも複数、最終段階にあるものを含めまして、案件が控えてございますので、また、投資地域としても先進国にとどまらず、グローバルサウス諸国も含めて、幅広く、バランスよく支援ができるものと考えております。

足元の収益性につきましては、引き続き、経常費用を賄う配当収入が見込まれているということでございまして、また、投資期間全体を通じたリスクに見合ったリターンの確保、このことにも既存の投資案件について懸念があるものはございませんので、収益性についてもしっかりと確保していけるものと思っております。

JICTとしましては、外交、対外経済政策との調和、民業補完、また、リスクマネー供給といった政策性を踏まえながら、改善計画にとどまらず、昨年度公表しました中期経営計画を達成すべく取り組んでまいる所存です。

私から以上です。

〔農林水産省大臣官房新事業・食品産業部尾﨑新事業・食品産業政策課長〕農林水産省でございます。資料1-4によりまして、農林漁業成長産業化支援機構、A-FIVEについてご説明をさせていただきます。

資料1-4の1ページをご覧ください。A-FIVEにつきましては、2020年5月に改善計画を策定し、2025年度末までの回収と累積損失の最小化に向けて取り組んでおります。2023年度末の累積損失は決算見込みでマイナス162億円となり、計画額マイナス138億円に対して24億円下回りました。こうした乖離が生じた要因としましては、2022年度末において、計画と実績との差、マイナス20億円が生じていたところ、コロナ禍以降の業績回復の遅れ、資材・人件費高騰によるコスト高の影響等の下で、出資先の業績悪化により、さらにマイナス4億円の乖離が生じたことによります。残る2年間で、改善計画において当初想定していた売却益を上回る利益の確保が必要となりますが、今後も出資先の業績低迷が継続したり、株式譲渡先の投資スタンスが積極化しなかった場合には、累積損失マイナス120億円を下回る可能性もあると考えております。

3ページをご覧ください。2025年度末までの時間的制約がある中で、A-FIVEにおいては、出資先ごとのEXIT方針に基づいた進捗管理を行いつつ、大口出資先の業況回復を図るため、アドバイザー派遣等による重点的な経営支援、A-FIVEのネットワークを活用したビジネスマッチングや、国の支援策の活用提案等、経営強化につながる側面的な支援、メインバンク等の関係機関と連携し、EXIT後の経営安定も見据えたサポート体制の構築と併せての円滑な回収。売却先の探索について、シナジー効果の見込める事業連携が期待できる売却先の探索や、外部仲介や民間ファンドを活用して、多角的な観点から事業評価を得る機会を最大限増やすこと等により、最も高い企業価値を見いだせる売却先の確保。これらにより、期限までの回収の完了と回収の最大化を図り、可能な限り計画からの乖離を縮小させるよう取り組むこととしています。

農林水産省といたしましては、改善計画に基づき、期限までの回収の完了と、累積損失の縮小に向けて、A-FIVEにおける取組が着実に実行されるよう、必要な協力、助言等を行ってまいりたいと考えております。

以上で説明を終わらせていただきます。

〔翁分科会長〕それでは、ご説明ありがとうございました。

今のご説明を踏まえまして、委員の皆様からご意見、ご質問をお願いしたいと思います。官民ファンド関係者の方々にご質問をいただいても結構です。こちらの会場にいらっしゃる皆様については、名札を立てていただきまして、オンラインの皆様については、挙手ボタンまたはチャットでよろしくお願いいたします。ご発言の際に資料を引用される場合には、資料番号と該当ページをおっしゃっていただくようお願いいたします。それでは、どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、岡田委員、家森委員、お願いいたします。

〔岡田委員〕読売新聞の岡田です。本日はありがとうございます。

クールジャパンの関連の事業ですけれども、国民に広く理解をどう得ていくのかという点で、当初は、アニメとかコンテンツとか、そういったところにフォーカスした事業で、あまりうまくいかなかったので、食とか、いろいろ多様化して収益の改善を図っているということだったのかなとは思います。一方で、最近、政府のほうで、クールジャパン政策をリセットして、もう一度政府として力を入れていくという、そうした方針を伝えられているところかと思います。

一般に、普通の国民から見て、何となくクールジャパン政策ってあまりうまくいっていないのかなという印象が、例えば韓国は結構いろんなコンテンツ産業でうまくいったり、ネットフリックスで非常に高い収益を上げたり、K-POPなどが人気だったりして、日本もアニメなどは海外でも人気ですけれど、別に政府の政策というわけじゃなくて、日本のコンテンツ力で人気であるという。そうした大きい政策に理解を得ていくというときに、クールジャパンの、ここの官民ファンドでやっているような部分の支援している内容というのが大分当初から変わっているというのは、あまり一般の国民に浸透しているとは思えないというふうにも思います。

そうした中で、A-FIVEは、言い方悪いですけど、敗戦処理というか、もう解散していく方向でということでありますけど、クールジャパンは一応、事業を継続しながら、いろいろ後押ししていくという中で、どちらかというと収益に汲々とするところが目立って、大きく、政府の方針でクールジャパンをリセットする部分というのは人材育成とか、ちょっとフォーカスが違うというふうには伺っていますけれども、その辺り、なぜこうやっていかなきゃならないのだという国民の理解があまり広がらない中で、収益のところの改善に汲々としているというと、なかなか事業の説得性というか、理解も広がらないように思いますけれども、その辺り、やってこられた事業、数字以上に政策的な意味合いのアピールですとか理解というのはどのように図っていこうというお考えでしょうか。

以上です。

〔翁分科会長〕後ほどまとめてお答えいただければと思います。

家森委員、お願いします。

〔家森委員〕ありがとうございます。神戸大学の家森です。2つございます。

1つはクールジャパンについてです。クールジャパンは2022年に抜本見直しを実施されたところでありますが、その際、例えば産総研との連携などによって、目利き力を高めていくというようなことをおっしゃっておられましたが、今日のご説明のところは特にございませんでしたので、この目利き力がついてきているのかという、そういうことが今後の持続的なパフォーマンスにも影響すると思いますので、その辺り、どうなっているかを教えていただきたい。

それからもう1点は、A-FIVEについてであります。一般的に撤退戦というのは非常に厳しいものだというふうに思われますけれども、今ご説明いただいたように、できるだけ損失を小さくしていただくということをぜひやっていただきたいとともに、今後の教訓も得たいです。特に期限があと2年ということになっていくと非常に大きな負担もあろうかと思うので、今回、この撤退戦において、外部環境でパフォーマンスが悪くなっている部分以外に、こういう制限がある、期限が来るということで難しくなっている面がないのでしょうか。それに対して何か、今のようなやり方でない、別の方法がないのかという辺りについて、何かお考えはないでしょうかというところをお尋ねしたい。

以上でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

次は丸田委員、お願いいたします。

〔丸田委員〕丸田でございます。ご説明ありがとうございました。私のほうから、意見とご質問含めて、3つのファンドについて、それぞれコメントさせていただきます。

まず、クールジャパンでございますけれども、資料1-2の1ページ目を拝見しておりますと、近々のEXITの案件もあるということでございますが、まだ来期ぐらいまでは累積損失の拡大が想定されていて、そこからは、11ページ目にあるような新しいポートフォリオへの入替えによって、状況が好転する計画と理解しました。

恐らく来期、24年度までは、過去の案件のポートフォリオ入替えで損切りしていかなければいけないという課題が残っているかと思いますので、こちらを一刻も早く成し遂げて、ポートフォリオの改善を図っていくということが非常に重要ではないかと感じました。

一方で、この計画、1ページ目を拝見していますと、25年度からは投資計画が倍増する計画になっております。その意味では今後、取り組む分野も変えた中で、体制面の課題であるとか、あとは収益性として、そもそもパイプラインとして、この規模の投資のオポチュニティがしっかり良質なものが揃いつつあるのかといった状況につきまして教えていただければ幸いです。

続きまして、JICTでございますけれども、こちらにつきましては、資料1-3の4ページ目を拝見していますと、ポートフォリオとしましては、欧州のICTの事業にかなり偏っていて、恐らく本件からの配当で利益が出ているという状況と理解いたしました。こちらにつきましては、地政学等のリスクもありますので、よりポートフォリオについては恐らく分散を図って、リスクマネジメントを図っていくということが必要ではないかと感じました。

あと、こちらはご質問になりますが、6ページ目の投資の一覧を拝見していますと、主要なものは、まだ投資してから数年という状況ではございますが、この手の事業につきましては、やや足が長いものでございますが、当初の計画から乖離してくると、今後、含み損のリスクが高まってくるものが含まれる可能性があると思います。現時点で、特に減損等は計上していないように思われますけれども、そういったリスクを抱えた案件はないのかどうかという点がご質問になります。

最後、A-FIVEでございますが、こちらにつきましては、資料1-4、22ページを拝見していましても、EXITで過去毎年20億ぐらいずつしか出資残高が減ってきていない中で、あと2年間で損失を抑えて60億を処分していくという、具体的には最終的な損失額を今より減らしていくという計画になっているかと存じます。この計画は、組織の体制も含めて、撤退戦という意味では相当厳しい状況ではないかと推察いたしました。

ただ、7ページ目の主要ポートフォリオの一覧を拝見しますと、去年と主要案件は変わっておらず、言い換えると主要案件は恐らくまだ処分されていないものと見受けられます。その意味では、あと2年しかない中で、売り急いで損を膨らませることなく、タイミングを図って、ベストな条件でのEXITを達成していくということが非常に重要ではないかと感じました。

私からは以上でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、有吉委員、お願いいたします。

〔有吉委員〕有吉でございます。

私からは、既にほかの委員の先生方からコメント、質問があった点と重複するところが大半かと思いましたので、1点、クールジャパン機構について、コメントないしはご質問させていただきたいと思います。

クールジャパン機構については、、負のレガシーが残っている状況で、非常にかじ取りが難しい状況であるとも理解しているところでございますが、官民ファンドという性質上、収益だけ上げていればよいというものではないと理解しております。そういった中で、今申し上げた負のレガシーをどうにかしながら、一方で、政策的にも意味があり、また、官としてお金を出すことにも意味があるというような取組をどう進めていかれようとしているのか。特に、直前で、丸田委員からもご指摘があったとおり、投資額を今後、大きく増やすという方向だとお示しいただいているところでございますけど、どういう強みを生かして、また、それが先ほどの政策的な意義があって、官としてお金を出すことにつながるのか。この辺りについて、現状のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

私からは以上でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

次に、野村委員、お願いします。

〔野村委員〕ほかの委員の方から出た質問と重複するものは全て割愛しまして、A-FIVEについて、一つコメントさせていただきたいと思います。

こちらを拝見しますと、最終年度の着地として、計画額の達成はかなり厳しいのではないかと思われますが、ただ、その中で一つお願いがあります。8ページ以降、20ページまでに至るEXIT案件を拝見しますと、一つ一つの案件が小さいものの、その中でのご担当者の汗がにじむ様子が透けて見えるような、そういう思いで拝見していました。そこで、これらの取組から定性的に成果として導き出せるものをぜひ抽出して、次につなげていただきたいと思いました。

21ページに、「エコシステムへの貢献」というまとめがございますが、こうやって全体でくるりとまとめてしまうと見えてこない一つ一つの案件の中に、次へつながるような芽が何かあるのではないかと思います。廃止という残念な結果にはなりますが、次へ導き出せるものをコツコツと帰納法的に導き出して、ぜひレポートでもまとめていただきたいと思いました。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、土居委員、お願いします。

〔土居委員〕ご説明どうもありがとうございました。まず、一般論という感じで申し上げたいと思うんですけど、直接、今日お越しの官民ファンドといえば、クールジャパンとJICTですが、先ほど丸田委員もおっしゃっていたかと思いますけども、地政学的リスクという話で、昨今、国際情勢はかなり流動的で、なかなか先が読みにくい状況でもあるということでありますので、今までにも十分配慮されていたとは思いますけれども、今後さらにカントリーリスクを見極めながら投資していただきたいと思います。

もちろんそれぞれの機関で、それぞれに分析されて、それぞれで対応されているということだとは思うのですけれども、ここはもう省庁横断的に、外務省、それから、伝統的な財投機関ということであれば、国際協力銀行、さらには、ほかの国際業務を営んでいる官民ファンド、連携して、その投資案件に関連するカントリーリスクをきちんと分析した上で情報を共有しながら、よりよく備えていただくということが今後さらに必要になってくるかなと思いますので、ぜひそういう形で進めていただけるとありがたいなと思います。

それからもう1点は、A-FIVEについての意見ということになりますけども、120億円の目標が達成できないかもしれないというのは極めてゆゆしき状況だと思います。変に損益を悪化させないようにするために、2025年度末の解散というのを、根拠が薄弱なまま延期するということにならないように、しっかりとまずは不退転の覚悟でもって、2025年度末に解散しても、この120億円を下回らないように取り組んでいただくということが必要かと思います。

そういう意味では、私がそこまで言うべきことなのかというふうにも思うかもしれませんけれども、私は、もうここは財務省主計局と連携して、もし計画を下回るような実績にしかならないならば、農林水産省の予算を削るというぐらいの、一般会計予算を削るというぐらいのパニッシュメントがないと、全く120億円達成できなかったとしてもしようがないと、残念でしたという話で終わってしまってはいけない。極端に言えば、努力したかしないかにかかわらず、結果はそのままもう受け入れてもらうしかないというような形で臨まれると、やはりこれは国民の大切な財産を既に毀損してしまっているわけで、120億円といえども、毀損してしまっているというのは事実なわけですから、120億円という額を少なくとも下回らないように取り組んでいただきたいと、背水の陣で臨んでいただきたいと思います。

私から以上です。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。

そのほかの方、よろしいでしょうか。

それでは、今のご質問、ご意見につきまして、皆様からご回答をお願いしたいと思いますが、まずそれでは、クールジャパンのほうからお願いします。

〔経済産業省山影商務・サービス政策統括調整官〕ご意見、ご質問ありがとうございました。経済産業省、山影でございます。

まず岡田委員からのご質問というか、ご意見です。政府全体の中で、このクールジャパン政策、あるいは、広い意味でコンテンツ産業の活性化戦略というのも別途つくらんとしてございます。そういう中でのクールジャパン機構の位置づけについて、簡単にご説明申し上げたいと思います。

まず、クールジャパン戦略のほうは、先日、6月4日に関係閣僚会議で、知財本部でございますけども、そちらで決定されてございます。その中の考え方を簡単にご説明させていただくと、やはりコロナが明けまして、ある意味、コンテンツ産業に限りませんけれども、特にインバウンドの方々が非常に入ってきていると。特にその中で、日本のコンテンツ、アニメとかというご説明ありましたけれども、そういうところに注目されているとか、それがきっかけで、日本について非常にいいイメージを持たれている方々がインバウンドでお越しになられている。その中には当然、食といったところについても非常に人気が高うございまして、そういう意味では、ちょっと形を変えれば、日本の食、農水産物あるいは食材といったものの海外展開を求めるという、そういう事例がございます。

そういう中で、広い意味では、日本ブランド、ジャパンブランドを高めていこうということで、リブートという言葉を使わせていただいていると思いますけれども、新しいクールジャパン戦略というのをつくらせていただいています。

それで、もう一つ、別の組織になりますけれども、新しい資本主義実現会議が中心になってご議論させていただいてきたものが、コンテンツ産業そのものについてやはり活性化が必要ではないか。これは映画、あるいは映像、あるいは音楽といったもの、ライブのところも含めてですけれども、デジタルのところはご承知のとおり、具体名を挙げて恐縮でございますが、ネットフリックスですとかいろんな形の、いわゆる流通のところもデジタル的なところが非常に進んでいまして、多種多様な形でコンテンツも海外に配信されているという状況の中で、やはりコンテンツ産業そのもの、日本は非常に強いと言われてきていましたけれども、先ほどご言及ありましたとおり、韓国ですとかいろんな国々もいろんなアプローチをして、K-POPが代表的な例でありますけれど、非常に世界的にも評価されている国々があると。そういうものを意識した上で、コンテンツ産業の活性化というのを改めてやるべきじゃないかという議論もございます。

そういった大きな議論がある中で、このクールジャパン機構をどういうふうに位置づけるべきかというところで、特に、うまくいったかどうかはまたあるのですけれども、もともと日本から海外に流通、まさに海外に商品を提供するといったときに、プラットフォームが少ないという話がございまして、独自のプラットフォームが少ないということで、できれば出資という形を通じて、海外に、日本のまさしく商品あるいはブランド物を送っていくということを念頭に、まさにこのクールジャパン機構というのが設立された経緯がございます。

これがうまくいったか、いっていないかというのは当然あるのですけれども、そこについての独自プラットフォームがまだ足りないという話の認識は変わってございませんでして、一定程度の独自プラットフォームづくりについては貢献してきたものの、これについてはまだまだ足りないではないかと。特に、コンテンツに限りませんでして、特に食材ですとか、あるいはいろんなものの、まさにインバウンドを導くような形のところも含めてですけれども、そういったところについては、今回の新しいクールジャパン戦略の中におきましても、改めて独自プラットフォームが少ないところについて、これまでも取り組んできているのは評価するものの、しっかりやっていくべきじゃないかという政策的な評価がされてございます。

他方で、ここの場でもずっと随時ご議論されていますけれども、経理的な問題としまして、まさしく経常赤字がかかっているという実情ございますので、そういうところはしっかりと改善した上でという条件がついてございます。そういう中では、いろんな先生方からもご意見ありましたけれども、足かせになっているのではないかというご意見もありますが、私どもとしては、やはり国民からお預かりしている資金を基に、この機構というのは成り立っているものですから、そういうところについてはしっかりと経営改善を進めながらというのが前提となった上で、今申し上げたような政策的な重要性のところを留意した上で進めていくという感じで、今、考えてございます。

ただ、最後、すみません。国民理解のところについてはまだまだ不十分だというご意見だと思いますので、これは実績を積むということしかないかもしれませんが、それに限りませんでして、通常からもきちっと、私どもがどういうところに出資しているか、あるいは出資チャンネルを通じて、恐らく一般国民の方というよりは、むしろ流通チャンネルを使っていただくというところのほうが私どもとしてはより政策的には意味があるかなと考えてございますので、例えばマッチングですとか、あるいは出資している先ですね。日本の優良なコンテンツ、あるいは食材といったものをきちっと提供していただくに当たっては、例えば地方、地域にある企業の方々に紹介するですとか、地方公共団体の方にご紹介するという取組を進めてございますけれども、こういうところについて、より丁寧にしっかりとやっていくということを通じて、この機構が果たしている役割というのを理解していただくのかなと考えるところでございます。

それから、丸田先生からもご指摘のあった、まさに過去のポートフォリオを変えていきながらというところにつきましては、実は資料上も、1行、1文字、書かせていただいているんですが、「事業見通しが立たない案件の早期EXIT」という表現をさせていただきました。これは今の398億円の、まさに累積損益の中でも特に見ていただきたいところは、累損計上しているところがあります。減損評価しているところがございます。これについては、わりかし事業見通しが立ちにくいがゆえに減損会計をしているというものでございますので、こういったものについては、もちろん投資案件ですので、時期は見定めなきゃいけないのですけれども、早期にEXIT方向に持っていきまして、できるならば、今後利益が望めるところに再投資していくという形をしていきたいと思ってございます。

そういうことを重ねまして、もともと持っている既存の投資案件についてもしっかりと見ていくことが前提ではあるのですけども、併せてこういったところ、EXITしたものについては再投資を通じて、より計画どおりに、右肩上がりになるようにという形のポートフォリオの中身を改善していくというふうに考えてございまして、25年以降もそういう形で、検討を進めていくと考えてございます。

それから、土居先生からありました地政学リスクの話、これは私どもとしましても、欧州案件についてという形で、これまではどちらかといいますとアジア中心だったようなところが傾向としてはございましたけれども、そういうところに限らずやっていく必要があると思います。その際には、後ほど示しますけれども、いろんな機関との関係で、いろんな情報を入念に入れた上で、単に欧米に投資すれば安全だというわけではないと思いますので、ある意味、私どももですし、関係機関との意見交換なども通じまして、カントリーリスク、それぞれの観点から意見を集めさせていただいて、総合的に投資判断していただくということを考えてございますので、そういう形も含めて、よりカントリーリスクを低減する方向で取り組みたいと考えているところでございます。

それから、産総研のところにつきましては、実際のところ、社長からご説明させていただきます。

〔海外需要開拓支援機構川﨑代表取締役社長CEO兼COO〕家森委員からご質問、ご指摘のございました産総研との連携でございますが、ちょうど2年前に産総研との連携の契約をスタートしておりまして、ちょうど今、契約更改の手続をしているところですが、過去2年で4件の案件につきまして、技術力の評価、検証を依頼しております。4件のうち1件は支援決定に至っております。今後も、いわゆる技術面での検証、評価につきましては、産総研の協力を仰ぐ案件も出てくるのではないかということで、あと2年、契約更新する予定で今、手続を進めております。

あと、丸田先生からご質問のございました、来年度以降、投資を倍増していくに当たって、体制は整っているのかというご指摘、ご質問ですが、設立後10年たっておりまして、業界におけるプレゼンスというのも非常に高まってきておりますし、クールジャパンファンドが何を狙っていて、何をしたいのかというのも、おかげさまで大分浸透してきております。各国、日本だけではなくて、海外のVCだとかPEファンドにも浸透しつつございます。

そういった形での、これまでのプレゼンス、ネットワークの活用、実際に事業開発連携推進グループという形で別部隊も設けておりますが、私が直轄で、ソーシング、オリジネーションのところも組織的に進めるようにしております。国内であれば、地方自治体だとか地銀でそういったネットワークもございますので、それで進めていくような形を取っておりまして、様々な手法とかルートを駆使しまして、今、発掘に取り組んでいる状況です。

その結果、優良な投資案件の候補は充実してきているのではないかと。七、八年前と比べれば様変わりになってきているのではないかなと。ただ、その中で、よりよい案件を厳選して、精査して、投資していくというサイクルが定着しつつあるのかなというふうには考えております。

人材面では、クロスボーダーの投資の業務に対応できる、いわゆる日本語以外のコミュニケーション能力の高いファンドマネジャーをこの2年で、一時期、退職者が増えてしまったところもございましたが、10名ぐらいは採用できてきておりますので、充実してきているなというふうに私自身は感じております。

あと最後に、先ほど申し上げましたけど、積極的な投資活動を支える意味で、リスクマネジメントの人材、これも必要不可欠だというふうに考えておりまして、この4月にも、VCで長期間、審査部長をやっていたようなシニアの人材も採用しておりますし、今後、投資拡大を図るに当たって、リスクマネジメントの観点、切り口は非常に重要だというふうに考えております。

以上でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、次にJICTのほうから、ご回答お願いします。

〔海外通信・放送・郵便事業支援機構大島代表取締役社長〕では、大島から申し上げます。ご質問、ご意見ありがとうございます。

丸田委員からのご質問の点で申しますと、欧州の案件は割合と早い段階でやったものでありますけれども、直近においては、やはり日本企業の活動でありましたり、あるいは経済成長ということもあるかと思いますが、インド太平洋地域、東南アジア等の案件相談が多い状況です。東南アジア地域は比較的情報が入りやすいですけれども、インド等、なかなか情報が入りにくい部分もあるというふうには認識しておりますが、この辺りはまさにハンズオンで、事業者様の壁打ち相手、あるいは初期段階の立ち上げからしっかり入って、企業価値向上に取り組んでいるところでございます。足元、現段階ではポートフォリオ中でリターンの懸念があるようなもの、あるいはバランスシート上の懸念があるものは存在しませんけれども、むしろここから価値を上げていって、企業価値の向上が投資のリターンとして表われるようなフェーズに向かっていっていますので、この試みも続けていきたいと思っております。

2点目の土居委員からいただきました地政学等でございます。大変不安定な、不確実性の高い政治経済環境と認識していますけども、この辺りは実際に共同投資あるいは支援をご一緒したJBICやJICAともいろいろ意見交換する機会もございますし、先ほど申し上げたエコシステム等に関連しますと、金融市場であったり、インテリジェンスの機関であったりという、グローバルなネットワークが既にある程度できておりますので、そこからウェブベースで情報が入り、ウェビナーを社員が簡単に視聴できるような体制もございます。

例えばIISSとかそういったところで何やっているかということも聞こえてくるような状態になっておりますので、マクロの環境あるいは地政学的な、地経学と言うべきだと思いますけど、そういった状況がどうなっているかというのは、私以下、しっかり認識して取り組んでいるところでございますので、今後とも十分に注意して取り組んでいきたいと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、A-FIVE関係でお願いいたします。

〔農林漁業成長産業化支援機構矢花取締役専務〕A-FIVEでございます。

まず、家森先生からご指摘のありました、いろいろ難しい点ということでございます。現時点では、残り2年の中でしっかり対応していくということに全力を挙げておりますので、なかなか整理してというのは難しいのですけれども、一つにはやはり体制が限られてくる中でモチベーションを保ちながらやっていくというのが、非常に今、心を砕いているところでございます。

また、丸田委員からご指摘のありました残りの案件でございます。規模感としては、直接投資の大型案件が最後のところに残っておりますので、これの成否によって全体の損益のほうに影響が出てくると認識しておりますので、これにつきましては時期が限られてくるわけですけれども、私ども、改善計画の中で、2025年度末という期限をきちんと決められた時点から、相手先、関係者にお示しして、その先との間で早期回収への理解促進、それから、EXITに向けた合意形成ということに取り組んでまいりました。それをベースに、今、着実にEXITのペースも少しずつ上がってきておりますので、ここでしっかり取り組んでまいりたいと思っております。

また、野村委員から、次につなげるようなというお声をいただきました。ありがとうございます。実際にやはり小さな案件が多いのですけれども、一つ一つ見ていきますと、地域の活性化に非常に貢献していたり、日本の将来の食品産業の新しい姿につながるようなバリューチェーンをつくるとか、そういった事例も中にはありますので、そういったものについてはしっかり整理して、次につなげるような形で残していきたいと思っております。

最後に、土居委員からございました、A-FIVEといたしましては、この残された期間の中でしっかり取り組んで、期限までの回収、それから、計画からの乖離を縮小させるように、全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。

以上でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

ほかに追加的にございますか。よろしいですか。

ありがとうございます。クールジャパン全体については新しい戦略が出ており、コンテンツ産業などは非常に大事ですけれども、むしろ取引適正化とか、デジタル化対応とかそういうところに意を砕いて取り組んでいただく一方で、こちらのファンドのほうは、ご説明があったように、堅実にしっかり優良案件を見て、政策と収益性が両立するような方向でやっていっていただきたいと思っております。

また、A-FIVEについては、3ページに今後やるべきことをしっかり書いてございます。これら全部やっていただいて、累積損失を大きくしないように取り組んでいただきたいと思っております。終わりに行けば行くほど苦しくなってきますので、できるだけ早め早めにEXITを考えていただくということで、もう総力戦でやっていただきたいと思っております。

それでは、よろしいでしょうか。それでは、この辺りで質疑を終了したいと思います。官民ファンドの関係者の方々にはご退席いただきます。どうも今日はありがとうございました。

(官民ファンド関係者 退席)

〔翁分科会長〕それでは、続きまして、論点整理(案)につきまして、大江財政投融資総括課長よりご説明をお願いいたします。

〔大江財政投融資総括課長〕ありがとうございます。財政投融資総括課長の大江です。よろしくお願いします。

それでは、縦の資料ですね。論点整理(案)となってございます。こちらのご説明をさせていただきます。4月、5月の財投分科会におきまして、財政投融資の現状と課題及び産業投資についてご議論いただきまして、ありがとうございました。いただいたご意見を取りまとめまして、論点整理(案)という形で事務局で整理いたしました。時間も限られておりますので、ポイントを絞ってご説明させていただきます。

資料2ページ目をご覧ください。「はじめに」としておりますけれども、今回、議論を始めた経緯を整理しております。10行目からですけれども、本年は、平成26年、令和元年の報告書の取りまとめからそれぞれ10年、5年という節目に当たります。また、この間、財政投融資は、コロナ対応やスタートアップ支援等の重要な政策課題への対応に活用されてまいりましたが、大学ファンド向けに市場運用の原資として大規模な財政融資資金を貸し付けるといった異例の対応も行ってまいりました。また、リスクマネー供給手段である産業投資の規模は拡大傾向で推移しております。

17行目からのパラですが、こうした状況も踏まえ、財投分科会において、これまでの取りまとめにおける整理を基調としつつ、財政投融資を取り巻く経済社会情勢に対応するため、財政投融資が担うべき役割や在り方について検討を行っていただいたものになります。特に産業投資につきましては、運営改善やガバナンス強化のための取組、また、財源面での仕組み上の課題について具体的な議論を行っていただいたところです。

次に、資料3ページ、ご覧ください。2ポツの財政投融資の役割と課題でございます。

(1)の基本的な役割ですが、こちらは主に4月にご議論いただいた中身をまとめております。冒頭29行目からですが、財投の役割については、平成26年の報告書で整理された基本的な役割は今も変わっておらず、この考え方を引き続き維持することが適当であるというふうにさせていただいております。

その上で、38行目の辺りからですが、財政投融資の意義に関しまして、政策的に必要な分野において公的部門が出融資の形で事業を支援することは、事業を行う上での資本コストの引下げ、資金の量的補完及びリスク分担を通じて、より効果的な事業遂行に資すると考えられる等といった点を挙げております。

また、44行目からの下線部分をご覧ください。コロナ禍を経て、我が国の財政状況が一層厳しさを増し、より一層効率的な財政運営が求められている中、自助努力の促進や受益者負担といった特徴を有する財政投融資を、財政政策のツールの一つとして適切に活用していくべきであるとしております。

続きまして、資料4ページ目、資金供給の方法・対象分野でございます。56行目から始まりますが、財政投融資は、かつては道路や鉄道等といった社会資本や住宅の整備等に広く活用されてきましたが、2000年代以降、対象分野が大きく変化しておりまして、海外投融資等や中小零細企業向けの資金供給の比重が高まっております。

64行目からですが、財政融資について、今後も引き続き民業補完性と償還確実性という原則を堅持した上で、具体的な対象分野の在り方等については必要に応じて見直しを検討することで、長期・固定・低利という財政融資が有する特徴を生かし、経済社会環境の変化に伴う新たな資金ニーズに適切に応えていくべきであるとしております。

また、産業投資につきましては、73行目辺りからご覧ください。経済社会環境が急速かつ激しく変化する中で、民間のみでは負うことの難しいリスクを負担できる産業投資の役割はますます高まっていくと考えられるというふうにしております。

79行目の下線部ですが、産業投資については、我が国として戦略的に重要な分野に対して、民間資金を呼び込みつつリスクマネーを供給するという役割をより適切かつ効果的に果たしていくため、その運営改善やガバナンス強化を通じた機能強化が図られるべきであるとしております。詳しくは3ポツのほうで整理しております。

(3)運営の在り方ですが、こちらについても同様に、今までの報告書の内容がおおむね妥当と考えられるとした上で、下線部ですが、財政投融資が持つ金融的側面を踏まえた、規律ある運営が徹底される必要があるということで、以下に書いておりますけれども、かつての財政投融資において、収益性の乏しい事業への資金供給に活用された事例などといったようなものを述べまして、こうした運営は繰り返されるべきではないとしております。

また、その他、注意点を書いております。

97行目の下線部ですが、規律ある運営を確保する観点から、これまで分科会で議論してきた原則・基準を再確認した上で、財投計画の編成・執行等が行われることが必要であるとしておりまして、さらに、定量的な評価の活用を進めることが望ましいとさせていただいております。

続いて、人材育成や態勢整備の話になりまして、102行目からですけれども、財政投融資の実務を担う理財局、また、財務局等において、高い専門性が要求される付加価値の高い業務に対応できるよう、人材育成や態勢整備を進めていく必要があるとしております。

6ページに行っていただきまして、(4)危機時の対応でございます。コロナ対応などの危機時におきまして、財政投融資がセーフティーネットの役割を果たしてきたことなど、社会的要請に対し機動的に対応してきたことは大きな意義が認められると評価をいただいたものと考えております。

また、122行目ですけれども、将来の危機においても効果的な対応が行えるよう、過去の対応の有効性やコストを検証するなど、備えの確認を行うことが望ましいとさせていただいております。

(5)の大学ファンドでございますが、こちらはかねてより厳しいご指摘いただいておりますけれども、130行目の下線部です。本事業の特殊性や、貸付期間が極めて長期に及ぶことを踏まえ、財政融資資金の償還確実性が損なわれることのないよう、本事業について特段の注意を払って関与していく必要があると。また、本事業における資金運用や大学への助成について、継続的にモニタリングを行っていくべきであるとしております。

続きまして、3ポツ、産業投資の在り方でございます。

(1)産業投資の運営改善・ガバナンス強化として、具体的な取組を記載しております。

1つ目が①ポートフォリオの管理運営でございます。

152行目からですが、産業投資に求められる収益性は、これまでの報告書に示されているとおり、一般会計からの出資金等と決定的に異なる点であり、今後の運営においても徹底される必要があるとしております。

また、次の下線部ですが、産業投資のポートフォリオ全体の収益性について、定量的な指標によりモニタリング・ディスクロージャーを行っていくべきであるとしております。

9ページ目、開いていただきまして、下線部ですけれども、今後について、公的主体が資金供給を行う政策的意義や、各機関の経営状況等を総合的に勘案し、より重点的・効率的な資金配分としていくべきであるとしております。

「以降」で記載します、運営改善やガバナンス強化に向けた取組で得られた知見も積極的に活用し、産業投資のポートフォリオ全体を考慮した資金配分がなされるべきであるとしております。

②各機関の投資活動に対するモニタリングの高度化でございます。

1つ目がデータの取得・分析ということで、こちらについて179行目の下線部ですが、早期に実行した上で継続的に改善を図っていくべきであるということ。また、評価していく上では、機関毎の違いを踏まえる必要があるほか、収益性のみならず、政策的な意義・目的やその達成状況についても検証を行っていくことが期待されるとしております。

次に、公正価値評価でございます。現在、官民ファンドにおいては、公正価値評価の実施は限定的な状況ですが、今後は、ポートフォリオ管理の一環として活用を進めていくことが適当であるというふうにさせていただいております。

③大型案件に対する対応ですが、こちら、産業投資全体のポートフォリオにも大きな影響を与えうるためとしまして、下線部ですが、理財局は、各機関・所管省庁に対して、投資決定や投資期間中の管理について特に慎重な対応を求め、その状況を重点的にモニタリングしていくべきであるとしております。

また、各案件の政策的な意義・目的やその達成状況、リスク・リターンについて分かりやすい形で説明責任を果たすよう求めていく必要があるとしております。

次に、④各機関への建設的関与でございます。下線部ですが、今後は、経営陣を含めた各機関との対話や、必要に応じた実地監査の実施により、出資者として主体的に各機関に対応・関与していくことが適当と考えられるとしております。

次の214行目からですが、線は引いておりませんけれども、「もっとも」としまして、こうした取組を進めていく際には、各機関の日常的な業務執行については各機関が創意工夫を図りつつ運営されることが期待されているということを踏まえ、出資者としては、特に、経営陣の能力・構成や、経営陣の下で各機関のガバナンスが有効に機能しているかを重点的に確認し、必要な改善を求めていくべきであるとしております。

次に、産投機関間の連携・知見共有ですが、政府機関によるスタートアップ向けのプラットフォーム(Plus)というものを5月にご紹介しました。こちらの枠組みを活用しながら、連携・知見共有を進めていくことが望ましいとさせていただいております。

⑤収益懸念に対する実効的対応でございます。下線部、今後、産投機関の収益性に懸念が生じる可能性が認められる際には、出資者として、各機関及び所管省庁に対して、収益懸念の内容・原因に応じて以下の対応を求めていくことが適当と考えられるとして、次のページで表をつけております。

11ページ目の最後の行のところですが、経営体制の見直しや組織の統廃合といった選択肢を排除せず、真に実効的な改善対応が検討されるべきであるとしております。

また、必要な改善対応が行われない場合には、出資金の保全の観点から、追加の財投措置の見合わせ、執行留保や株主総会における議決権行使を含め、厳格に対応していくべきであるとしております。

⑥借入に対する規律の強化でございます。下線部ですが、産投出資先の借入れは、レバレッジ効果により産投出資のリスク・リターンに直接影響するため、理財局としてその水準や活用方法について適切に管理すべきであるとしております。また、特に、政府保証のうち5年未満の短期のものにつきましては、産業投資と一体的に管理していく必要があるとしております。

次に、財源面での仕組上の課題でございます。現行制度上、こちらは5月にご説明したとおりですが、投資勘定内に資金を留保しておく仕組みや、自前の機動的な資金調達手段がないということで、政策ニーズに的確に対応する上で問題があるということで、下線部ですが、3の(1)で述べた運営改善・ガバナンス強化に向けた取組を前提として、財源の平準化や必要に応じた資金調達のための仕組みについて、制度改正も念頭におきつつ検討することが適当であるとしております。

また、投資財源資金につきましては、歳入歳出差額が生じた場合にこれを翌年度以降の投資財源として留保できれば、年度ごとの収入の平準化や資金ニーズに対する機動的な対応が可能となるため、必要な措置について具体的に検討することが適当であるとしております。

また、274行目のパラですが、「なお」としまして、借入れによる資金調達につきましては、必要に応じた資金調達のための選択肢の一つとして考えられるとしておりますが、仮に借入れの活用を検討する場合には、限定的に運用されることが不可欠であるとしております。

こうした財源面の取組と、283行目のところですが、運営改善やガバナンス強化といった取組と相まって、新しい産業投資の仕組みの下、政策目的の実現と、それによる経済的利益が配当等の形で国庫に還元されるという好循環を目指していくべきであるとさせていただいております。

また、最後、以上を踏まえ、法令改正も含め、必要な具体的対応について検討していくことを求めるとして、結ばせていただいております。

以上が論点整理(案)のご説明になります。7月の最終取りまとめに向けまして、委員の皆様から修正等、ご意見いただければと思います。ありがとうございました。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明を踏まえまして、委員の皆様からご意見、ご質問をお願いいたします。

それでは、土居委員、お願いします。

〔土居委員〕ご説明どうもありがとうございました。この論点整理については、これまでの議論をうまく取りまとめていただきまして、ありがとうございます。私からは何点か意見を前のほうから順番に述べさせていただきたいと思います。

まず3ページから4ページにかけてというところで、これは私もこの分科会で意見を述べさせていただいたところではあるわけですけれども、コロナ禍で一般会計にかなり過剰に役割を担わせる形で財政政策が講じられてきたということだけれども、よくよくその内容を見てみると、必ずしも補助金という形ではなくて、むしろ出資とか融資というような形で、出資、融資先にしっかりと規律を持って運営してもらえるような形で財政政策を講じると、もっとよい結果になったのではないかなと思われるようなものも散見されるというふうに私は認識しております。そういう意味で、3ページから4ページにかけて、これまで私が申し上げたことについて書いていただいていて、感謝申し上げたいと思います。

それとともに、あえてここでもう1点、既に書かれているといえば書かれているのですが、私として強調したいことは、やはり補助金をもらっただけだと、交付先の運営ないしは経営に十分な規律付けは与えられない。補助金では十分に与えられない。だけれども、出融資の場合は、利払・償還ないし配当という形で、きちんと原資が担保できないような経営ということは許されないという意味で、出融資先の経営に対して規律付けを与えるという点で、もう天と地ほどの差があるというふうに思います。確かに一般会計で補助金を出すときに、十分な税財源がなければ赤字国債を出すということになる。赤字国債という国の債務をもって補助金を出すのだけれども、結局、それは補助金という手段ではなかなか経営に規律付けられないわけだけれども、例えば財投債を出して、それを融資に回して、それを融資先に利払・償還という形で求めれば、当然のことながらそれをこなせるだけの経営をしていかなければならないということになりますから、その点で経営を規律付けるというようなことができると。出資においてもそういうような効果があるという意味で、全くほかに、債務によらない形で、財源を確保した上で政策を講じるということであれば、またそれはそれとして政策手段をいろいろ考える余地はあるのかもしれませんけれども、債務によって財源を、国債によって財源を賄ったところで、どういう形で財政政策を講じるのが国全体として、経営の規律付けも含めてよりよくなるのかということを考えたときには、やはり財政投融資の活用というのが今後もさらに検討されるべきではないかというふうに思うわけでありまして、そういう意味で言いますと、近年、役割を過剰に負わされている一般会計に代わり得る存在として、財政投融資の活用が検討されることが望ましいのではないかと考えております。

それから7ページについて、大学ファンドでありますけれども、134行目から135行目にかけて、継続的にモニタリングを行っていくべきであるというのはそのとおりだと思います。けれども、もう一段踏み込んで、私も大学ファンドについてはこの分科会で相当厳しいことを申し上げてきていて、私が一番懸念しているのは、運用益が十分に確保されていないのに大学への助成を優先することのないようにモニタリングをしていくということが必要で、運用益があまり上がっていないというような中でも、もともとのファンドの政策目的が大学への助成だからといって、大学への助成に前のめりになり過ぎてしまうというようなことは、これは本末転倒だと思います。なので、運用益が十分に上がっていないならば、それは一旦立ち止まって、大学への助成も止めるというぐらいのことがないと、財政融資資金の償還確実性が損なわれることを懸念するということで、今、1点申し上げさせていただきました。

それから、11ページでいいのかどうなのかちょっと微妙であるので、また場所については事務局でお考えいただければと思うのですけども、224行目から始まる「産投機関間の連携・知見共有」というところで、先ほど官民ファンドのところで私が申し上げさせていただいたカントリーリスクに関する情報共有というのも、この産投機関間での情報共有というのも進めていただけるとありがたいなと思いまして、場所はお任せしますけども、一つ、私が考えられるかなと思った場所がここというところで意見を申し上げさせていただきました。

最後の論点として、13ページから14ページにかけてというところで、今後、制度改正も念頭に置きつつ検討することが適当だと私は思っております。その観点から申しますと、借入れによる資金調達というのは確かに、この産業投資で借入れによる資金調達というのは、14ページにかけても書かれているように、年度間の財源の平準化という観点から必要な手段だと思っています。その上で、では先ほど厳しく批判していた大学ファンドと、これから、もし産業投資で借入れによる資金調達をしたという場合とで何がどう違うのかというところはやはりはっきりさせておく必要があって、国民に対しても、そこはきちんと明確に説明しておく必要があるのではないかなと思います。

私の考えで申しますと、大学ファンドというのは、市場運用によって必要な財源を確保しようということなのだけれども、もともとは財政融資からの借入れに頼っているという意味において、借入れ依存というところが問題だということではあるのだけれども、ではこの産業投資で借入れによる資金調達をするということと何がどう違うのかというと、私は、決定的に違うのは、大学ファンドにはないけれども、産業投資には安定的に得られる配当等の収益還元があるということが、これは決定的に大学ファンドと産業投資とでは違うと思います。NTTやJTの配当というものが安定的に得られている。ただ、それだけで必要とされる投資の原資を単年度で捻出することができないようなタイミングというのもあったりするということなので、年度間の財源の平準化というのが必要になってくると。ですから、そのときに借入れというものを一つの調達手段とすることは民間の投資ファンドでもあり得ることではあって、産業投資だけが珍しくそういうことをやっているということには必ずしもならない。大学ファンドと違うのは、やはりそこが違うわけで、大学ファンドは、資金運用はしているのだけれども、確実に安定的に得られる配当などの収益還元が既に確保されているというわけではないので、そういう意味では、産業投資ならではでできることはあるだろうと思います。

ただし、どんなリスクでも取っていいわけじゃないということは、13ページの274行目から書かれている段落に触れられているところでありますから、やはり配当金などのコスト資金が中心であるわけなので、それを維持することが重要で、それをしっかり担保することをやっていただくとともに、一部出資先で毀損があったとしても全体としての健全性はきちんとを保たれるようにしていただくということが必要で、健全性に影響があるような形でのリスクはきちんとコントロールしていただくべく、借入れの上限というものも設定していただくということもあるでしょうし、前もって、リスクキャパシティーを客観的に把握するということも行っていただいて、そのリスクキャパシティーを把握しながらしっかりとコントロールしていくというような中で、どこまでならば借入れによって資金調達をすることが許されるのかということを客観的に見極めながら、全体としての財務の健全性を保っていただくということ。それからもう一つは、ガバナンスを強化した上で、限定的に運用されることが不可欠だというふうに思いました。

私からは以上です。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。

それでは、冨田委員、お願いします。

〔冨田委員〕ありがとうございます。まず、修文を述べたいのですけども、その前に私の修文についての考え方について申します。つまり、現状認識ですけども、地政学的なリスクの高まりを背景にいたしまして、多くの国々で先端技術、CO削減、医薬品、半導体など広範な分野で財政支出、税優遇、政府融資、政府保証、輸出入関税、貿易制限など、多様な政策手段が極めて大規模に採用され始めております。IMFはこれを産業政策のリサージェンスと呼んでいるほどであります。TSMCのアリゾナ工場建設、熊本工場建設に対します日米両国政府の補助金の出し方を見ておりますと、まるで政府支援の規模を拡大し合っているようにも見えます。

こうした認識の下で論点整理の骨格について、まず申し上げます。異議ございません。まず2ページの21行目で、特に産業政策の必要性の高まりを指摘し、4ページの75行目で、産業投資の役割はますます高まっている。そして、5ページ以下で、これらを踏まえまして、産投の運営改善・ガバナンス強化が図られるべきであるとする整理の骨格は異論ございません。特に10ページで大型案件に対する対応を特出しし、そして、各機関への建設的関与を指摘するということは大事な指摘だと思います。そして、14ページの着地もよくできていると思います。

しかし、この骨格にそぐわない記述が見られます。それは先ほど土居委員が言われたところなのです。それは3ページの具体的な役割の項目の後半部分でありまして、3ページの第1パラグラフが財投の役割を述べている部分です。ここで最後に、最後というのは33行目、「こうした財政投融資の基本的な役割は今も変わっておらず、この考え方を引き続き維持することが適当である」としております。ところが、今も変わっていない、そして、この考え方についての説明がなされていない。代わりに、土居委員がご指摘されたといった箇所が財投の活用について書いているのですが、意味がよく分かりません。44行目からのところ。これは一般会計との関係を書いてありますけども、あたかも財政で行うことを財投でやれというふうに書いてあるように見えます。これは前に問題として指摘した財投回しであり、3階回しです。

逆に、これまで起こってきたことは、奨学金について有償でやっていたら、それを無償でやるのだということで、一般会計のほうで支出したり、逆に大学ファンドについては、これは土居委員も指摘されているとおりだと思うのですけども、本来、一般会計でやるべきことを全く筋の悪い形で、財投がやるということになったわけです。

さらに、先ほど課長が言われましたけども、8ページに、153行目、一般会計からの出資金・補助金と決定的に異なるということを明示しているわけであります。だから、ここのところは、44行から47行は削除いたしまして、「また」の代わりに、「近年」以下のところで始まる文章にいたします。

それを私なりの修文を読み上げますと、「近年、成長分野への支援であっても」、これは先ほど申しましたけども、追加です。「国際的に産業政策が展開される中で」というフレーズを入れて、「渡し切りの補助金が活用される例も見られるが、補助金への依存は非効率な事業運営を生みかねないリスクがある」。この箇所は何を言っているかというと、冒頭で言っている、「今も変わっておらず」というところですね。この「今も」というところをここで述べたわけです。

その次、49行目に戻りまして、つまり、「リスクがある」に続いてですけども、「これに対して」、ここは以下、修文を読み上げますと、「財政投融資による支援は、民間金融市場が機能しにくい事業を対象に、出融資の毀損回避、適切な収益の確保による確実な回収という前提の下で、経営を規律付け、事業の効率的実施を促す効果が期待できる。」、ここで、この「基本的な役割」のところの記述を終えます。つまり、「また」以下のところは削除する。

「また」以下、もう何が書いてあるかよく分からないのですけども、「効果があれば」と書いてあるのですけども、では、そうじゃない場合はどうするかとか、そういうことも触れねばならない形です。何よりも、ここは基本的な役割を述べ、そして、活用については、次の4ページにあります対象分野のところで活用を述べるようになっていて、私はこの4ページのところはよく書けていると思います。

以上が主な点ですが、あとは言葉尻で恐縮です。9ページ、先ほどこれは課長もお読みになったところで、184行目ですが、「期待される」とありますけども、もう少し強く、「求められる」にしてはいかがかと思います。

それから、10ページ、大型案件のところです。これは201行目に、挿入したらどうかと思うのですが、「ポートフォリオにも大きな影響を与え」を「与える」。「また、政策効果の発現や収益が確定するまでに長期間を要する。このため」と続けます。ということで、ここに書いてあるとおり、「各案件の政策的な意義・目的やその達成状況」についてちゃんと我々出資者に説明してくださいよ、国民に説明してくださいよと。この分科会を通じてという意味ですけども、そういうことを申し述べたいわけでございます。

それから、13ページ、さっきの産投の借入れのところですけども、274行目、「民間の投資ファンド運用においても」とありますが、基本的には、出資者の了解を前提にというのはあってしかるべきです。つまり、ファンドを追加して行うことではなしに、結局、既存の株主のリスク・リターンに、あるいは株主権限に大きな影響を与えるので、ここのところは一文入れてはどうかと思います。

ただ、先ほど課長も説明あったように、「限定的に運用されることが不可欠である」というので止めているので、これはそう強く必要性を言うものでもございませんということです。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。この最初のところにつきましては、土居委員、ご意見があるかもしれませんが、今、もしコメントあったらいただいて、また後でちょっと。でも、財投回しにするとかそういうことを言っているつもりはないので、そういうふうに取られない・・・。

〔冨田委員〕そういうふうに読めちゃいますよ。

〔翁分科会長〕はい。ちょっとその辺りを。多分、土居先生もそのつもりは全然ないので。

〔冨田委員〕いや、これはそう書いてある。

〔翁分科会長〕何かコメントがありましたらお願いします。

〔土居委員〕よろしいですか。すみません。いや、まず1点は、受益者負担という話は私は残していただきたいなと思っていて、そこの部分は、財投回し云々以前の問題として、当然リターンを求めているという意味において、受益者負担は財政投融資の一つの性格だと思いますので、そこは残していただきたいということがまず1点。どういう形で残すかは事務局にお任せします。

それから、財投回しというつもりで私は申し上げたわけではなくて、むしろ借入れによって、補助金を出すというようなことが相当大規模に、このところ行われているということに対する懸念があって、もちろんそれは最終的には政策判断ですけれど、結局、借入れによって政策を行うということであるならば、一般会計からではないやり方があるということをもう少しきちんと世に周知させる必要があるのではないかという、そういうことでございます。

〔冨田委員〕いや、その点も考慮して、さっき申しましたように、「これに対して、財政投融資による支援は、民間金融市場が機能しにくい事業を対象に、出融資の毀損回避、適切な収益の確保による確実な回収という前提の下で、経営を規律付け、事業の効率的実施を促す効果が期待できる」ということなのですよ。だから、受益者負担は一番最初の30行目のところにも入って、もう大原則として書いているんですよ。では、具体的になぜ財投に意義があるかということを突き詰められると、何かというと、結局は出融資の毀損回避、そして、適正なリターンを上げる。そして、それによって確実に回収するということが、財投から出融資を受ける経済主体にそういうガバナンスが効くということなのです。それがなかったら全くほかのことと同じなので、だから、さっき土居先生が言われた補助金と同じになっちゃうわけ。だから、あくまで一般会計と産投は違うのだということですね。それをさっきの8ページだったかな。そのところでも指摘していることを一番最初のところで違った言い方できっちり書いていると。誤解を生むようなことで、何が書いてあるか分からないと僕が言ったのは、土居先生は何を想定して、44から47行は書いているのかということなのですよ。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。修文案を事務局につくっていただいて、それでお二人に見ていただいて、ここを調整。おっしゃっていることは、両者、そんなに大きくは異なっていないと思うので、ちょっと書きぶりを工夫して。

〔冨田委員〕いや、これは、僕は全然違うと思うの。これ、44から47を入れることで違ってくるのですよ。

〔翁分科会長〕分かりました。

〔冨田委員〕だから一般会計と関係ないんだということでここは書かなきゃいけない。

〔土居委員〕よろしいですか。私が実際、分科会でも申し上げていた言葉で、ちょっと下品だったので、あまりそういうふうにストレートに書いていないわけですけど、わざわざ一般会計で基礎的財政収支を悪化させてまでして補助金を出すのはおかしいんじゃないかと言いたいということが暗に、一つここにあると。同じ借入れをするにしても、財投債ならば基礎的財政収支を悪化させないということができるという点を、私は直接的には言いたいことですけど、さすがにそこまで言うとちょっと下品なので、非常に上品に事務局には書いていただいているというふうに認識していますが、そこはまずはお任せしてみたいと思います。

〔冨田委員〕国債、建設国債も赤字国債も財投債も、全く同じ金融商品として金融市場では取り扱われています。だから、財投債だったらいいのだという土居委員の指摘というのは全然違うんじゃないかしら。

〔土居委員〕いやいや、同じ借金であるという意味では、借金を膨らませるという意味ではよくないという意味では全く、冨田委員のおっしゃるとおりで、私もできるだけ債務によらない形で財政運営するべきだというふうに思っているのですけれど、何を前提とするかというところの違いということかもしれません。確かに同一券面で発行されているものだけれども、基礎的財政収支という財政健全化の重要な指標という観点からすると、2つは違うものになっていると。釈迦に説法ですけども。そこを申し上げる必要があるのかないのかはちょっと事務局に判断いただくとして、私が申し上げたかったのはそこだということです。

〔冨田委員〕だから、一般会計の規律が緩むような形の記述になっているのですよ、ここは。「財政状況が一層厳しさを増し」と書いてあるわけでしょう。より一層効率的な財政分野が求められる中で、財政投融資を適切に活用すると書いてあるじゃないですか。だから、こういうことがあるから大学ファンドが生まれたのですよ。こういう考え方でいるから。

〔翁分科会長〕ご趣旨、よく理解いたしました。そういうことを望んでいる方はここに誰もいないので、しっかりその辺りが誤解なく伝わるような修文にしたいと思います。ありがとうございます。またご相談させていただければと思います。

冨田先生、よろしいですか。

〔冨田委員〕はい。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、次に丸田委員、お願いいたします。

〔丸田委員〕丸田でございます。ご説明ありがとうございます。全体としてのストーリーや内容に違和感はありません。私からは後半の産業投資のところで、数点コメントを申し上げさせていただきます。

一点目は、やはり公正価値評価であるというところで、私個人としては、最終的にはポートフォリオ管理という言葉に含まれているかもしれないのですが、全体として資本コストを上回るリターンを生むという意味で、公正価値ベースのIRRのような視点まで踏み込んで記載いただいてもいいのではないかと思いました。それによって、資金の効率的な配分という意味でも、本日もクールジャパンの議論でありましたように、塩漬けになった資金をなるべく新しい投資に回していくような努力をしっかりしていただくためにも、そういったKPIがあっても良いのではないかというふうに感じたというところでございます。

2点目ですが、個別投資案件に関するデータの取得・分析の意義の中で、これは地政学だけではないと思うのですが、やはりリスクマネジメントといった視点が非常に重要かと思いますので、そういったものに資する情報も収集・分析すべきではないかと。投資は失敗するものもありますので、全体のポートフォリオとしてしっかりプラスになるという視点の中で、失敗も、許容するとまでは言い切れませんけれども、リスクを取るということもあるのではないかと思いますので、そういった点がもう少し明確になっても良いのかなと思いました。

3点目ですが、最後の財源面での仕組みという点では、借入れということも含めて記載いただいて、こちらは非常によろしいかと思うのですが、やはり全体として、どこまでの規模を想定するか、もちろん時代時代に政策的な意義というのがあって、恐らく、規模も変動すると思うのですが、一方で、体制面の課題もある中で、何らかの財源に関する規律のようなものがあってもよいのではないかと感じました。その一つが先ほどのIRRなのかもしれませんけども、全体としてのファンドに対する規律のようなものがあってもいいのかなと感じました。

最後に1点、これは本当に「てにをは」で恐縮ですが、12ページ目に、記載の対応で、「株主総会における議決権行使を含め」と書いてあるのですが、恐らく既に今でも通常に株主総会で議決権行使はされていると思いますので、多分、何らかを目的とした議決権行使というような記載のほうがより適切ではないかと感じました。

すみません。全体としては非常によく議論がまとめられているかと思いますので、特に全体のストーリーに異論があるわけではございません。

以上でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、次に有吉委員、お願いします。

〔有吉委員〕有吉でございます。まず全体観として、私も丸田先生と同じようにとてもうまくまとめていらっしゃるものだと思いますので、方針的なところについて、反対するところはございません。

その上で、4点ぐらいコメントさせていただきたいと思います。

まず1点目は、細かい点になりますが、4ページの64行目、財政融資の関連の記述でございます。言わずもがなであり、また、償還確実性という言葉の中に含まれているのかなとも思うのですが、元本が返ってくるということだけではなくて、金利リスクを踏まえた安定的な運用ということも財政融資については引き続き非常に重要な観点だと思います。そういった意味での安定的な運用も重要なのだというメッセージを一言加えるほうがよろしいのではないかと思いました。

それから2点目は、モニタリングやガバナンスの関係でございまして、11ページの214行目以下に書いてある部分について、もう少し全体的に強調したほうがよいのではないかと感じた次第です。どういうことかと申しますと、理財局としてのガバナンスやモニタリングを考えていくに当たっては、全ての機関に対して、理財局で全部を監督するということは、そもそも非効率なわけでありまして、やはり一義的には主務官庁がそれぞれ各機関の監督を行うと。これがあった上で、理財局の役割は、ここでお書きになっているような機能していない部分を補う、あるいは各主務官庁がしっかり監督するように、主務官庁の監督が機能するように働きかけるといったことがまず役割分担としてあるべきであって、その結果、主務官庁の機能だけではうまくいかないということになった局面においては、出資者として、もともとは間接的な立場であったものが直接的にガバナンスとか、その前提になるモニタリングに関わっていく。こういう考え方が出資者の間接的な立場としてのガバナンスを利かす工夫とではないかと考えております。

214行目以下にそういったことが書かれていると思うわけですけど、214行目の文章は、その前のページを見ていただくと、④との関係で書かれている文章だと思うのです。もっとも、このような考え方は、恐らくその前の③「大型案件に対する対応」とか、それから、9ページに戻っていただいて、170行目辺りの「各機関の投資活動に対するモニタリングの高度化」を含めて全体を通じてかかってくる考え方なのではないのかという気がいたします。

まずそういった役割分担がありきで、今回の報告書は、その上でモニタリング、ガバナンスの観点から、理財局のより積極的な役割を考えていこうということでまとめられた文章だと承知はしているのですけど、前提というのか、まず基本的な視点を示したほうがすっきりするのではないかと感じました。

それから、3点目のコメントは、これはガバナンス、モニタリングという視点と、あと、後ろの財源というところと、両方にまたがるコメントになりますが、産業投資に関しては、これまで私自身、この場で何度かコメントさせていただいたつもりでいるポイントではあるのですが、償還確実性と政策目的の実現という2つの観点と並んで、官がお金を出すことの意味をしっかり考えるべきだと感じております。言い換えれば、民間ではお金を出しにくい先に、優先的に資金を回すという観点でありまして、これは民業補完、あるいは民業圧迫を回避することという視点につながるとともに、限られたお金を有効に活用するということにもつながるものだと思います。

そういった意味では、政策目的にはかなうし、収益性も高いという投資案件があったとしても、放っておいても民間のお金が集まってくるという先に、官民ファンドなり、財投機関が積極的に投資を行うというのは本末転倒なのではないかと思います。今回の論点整理等の関係では、理財局としてはこういった視点からもモニタリングをしていったり、変にもうけ過ぎていて、民間にやらせればよいのではないかという投資ばかり行っている財投機関があれば、むしろそれはガバナンスの体制としておかしいのではないかと指摘するぐらい、出資者として働きかけてもよろしいのではないかと思うところであります。この論点整理の中でどういうふうに今のようなことを盛り込むことができるか、私には具体的な文章が思い浮かばずに申し上げて恐縮ですが、そういった視点も検討いただきたいと思いました。

最後4点目は、財源の観点でございます。特に産業投資の活用という観点から、財源の柔軟性や機動性といったことを確保するという視点は一層重要になっていくと思います。ただ一方で、274行目でお書きになっていて、既に何人かの委員の方からご指摘があった、借入れによる資金調達は、限定的に運用されることが不可欠であるという指摘は全くそのとおりだと思います。デットでの調達をエクイティに回すというのは、概念的にもマッチしにくいものであり、投資先のエクイティから安定的な収益があるからこそ成り立つ発想であるという、土居先生のご指摘は、全くそのとおりだと感じるところであります。

したがって、ここはこういった仕組みを取り入れることは必要、適切なのかもしれませんが、厳格に運営する必要があるということとともに、言葉尻を捉えるようなコメントかもしれませんが、274行目に、民間の投資ファンド運用においても一般的に借入れは行われているという記述があるわけでございますけど、理財局あるいは財政投融資特別会計自体がファンドになってしまっては、これはおかしい話なわけでございますし、恐らくそういった民間の投資ファンドと同等の人的な面、体制面、備わってはいらっしゃらないと思います。ファンド活動を会計自体がするわけではないということは、読めば分かるといえば分かるのかもしれませんが、変に揚げ足を取られないような文章でまとめていただくほうがよろしいのではないのかと感じました。

私からは以上でございます。

〔翁分科会長〕大変貴重なご指摘いただいたと思います。監督官庁の監督の在り方についての整理もできていない感じがちょっとありますし、あと、民間投資ファンドで一般的だからという書きぶりもちょっとやめておいたほうがいいなと私も今、思いました。ありがとうございます。

それでは、小枝委員、お願いします。

〔小枝委員〕承知いたしました。そうしたら、コメントを1点、申し上げたいと思います。産業投資についての記述ですけれども、そこでは、包括的にモニタリングが必要だという話で、データの分析の高度化とかそういったことが書かれていたと思うのですけれども、やはり政策コスト分析を既にされていて、レポートも出されていてという枠組みで、例えばどういうふうにモニタリングをすればいいかという点ですけれども、産業投資の出資についても、将来のキャッシュフローというのは、配当や、あるいは将来、ファンドがどのぐらい価値があるかとか、そういったことから試算することは十分可能ですので、そういったことも組み入れながら、ぜひデータの取得、分析の高度化をお願いできればと思いました。

ただ、そこでは、データを集めて、例えばそこに入れて、プログラミングして計算するとか、例えばそういったところにも投資して、分析する環境にも投資して、あと、そういったデータ分析ができる人材をもっと育てるという、そういったところにも、せっかくレポートを毎年出すマンデートがあるので、そういったところにも投資していただきたいなと考えております。

以上です。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。

それでは、山内委員、お願いいたします。

〔山内委員〕ありがとうございました。いただいている論点案について私は全面的に同意致します。大変時間かけてまとめていらっしゃったという印象を受けております。2つほど、実務的な点で申し上げます。

第1に、まず5ページ目の102行目から104行目にあります、財務省の皆様の人材育成と態勢整備のところでございます。特に大切と考えておりますのが2つほど、まず公正価値評価で、それが実際にどのように行われているかを理解いただくことです。産投機関と話をしたときに、相手方が公正価値評価を理解されていないことがあるかもしれません。逆に、高い専門性をお持ちの方もいるかもしれません。産投機関と対等に議論されるためには、公正価値評価についての知見を高めていただくことが必要なのではないかと思います。

もう一つが、先ほど話が出ました債務、借入等のファイナンスツールの話です。これまでのお話の中でも、補助金で支援するのが良いか、出資が良いか、融資が良いか。融資にも、公的融資もあれば、保証をつけて民間融資を使うこともあると思います。株式でも、優先株と普通株があります。要は、ファイナンスツールに対する理解をある程度持っていただいたほうが、産投機関の方々とお話をするときに、個別案件のレベル、産投機関の運営全体のレベルで、よりよい議論ができるのではないかなと考えております。

私は個人的には、先ほど土居先生がおっしゃった大学ファンドに関して、国の、財政融資を使うことについて若干の違和感を覚えていました。その理由は、お金を借りて株式を運用することのリスク感覚なのですよね。確かに投資ファンドでは融資を使って株式の投資に回すことはあるのですが、基本的には大体同じレベルのリスクのアセットクラスの中で考えていきます。例えば投資ファンドがお金を借りる場合は投資先への融資に充てます。ファンドの信用を使って低利でお金を借り、一般融資より低い金利、あるいは条件により高い金利で貸付けをすることによって、利ざやを抜く、アービトラージという形で考えるのです。確かに、株式でも信用取引があり、実際にはお金を持っていない状況でよりレバレッジを利かせるために証券会社からお金を借りることはあります。しかしそうは言っても、基本的には大体同じようなリスクアセットで考えていきます。

今後、産投機関と対話をなさる中で、直感的に、これは何かおかしいんじゃないかと、もやもや感を覚えられることがあったとき、なぜもやもや感を覚えるのか、それを自分たちで解消し、相手に納得いただき、全く情報がない国民の皆さんにご理解いただくために分かりやすく説明するには、ある程度のナレッジやセンスは必要かと思います。そういった意味で、公正価値評価と投資ファイナンスのツールについてぜひ知見を高めていただきたい。どちらかと言えば、知識を増やすというよりは、意識を持っていただき、徹底的に対話いただくことをお考えいただけたらと思っております。

第2に、有吉先生からのガバナンスのお話に関連する部分もあるかもしれないのですが、10ページの198行目から始まる大型案件の話でございます。投資では、大型案件の話が持ち込まれてきて、すぐに決めてくださいというケースが確かにあります。産投機関の場合にイシューになるのは、いわゆる業界再編に関する大型投資が発生したときにどう考えるかです。案件が持ち込まれ、国策から考えてもやらざるを得ないケースはあると思います。そこで、ファンドに出資する投資家、株主が反対したからできませんでしたという話になってしまうと、後々、諸々の運営が難しくなってくるんじゃないかなと考えています。

ただ、他方で、ファンドに出資する株主・投資家からしますと、予測可能性、このファンドは予測可能な行動をするという信頼性をもてないと、お金を出す判断に躊躇するか、納得できないまま無理をおしてお金を出すかということになりかねません。これから予算をつけていく案件や実行した案件の報告の中で、全体の投資ストーリー、例えば業界再編のストーリーを主管省庁なり投資機関なりがどう考えていたか、あるいはどう考えているかというのを常にテーマにしていただかないといけない。それによって予測不可能性に対するリスク、もっと言ってしまうと、お金を出すほうの心理的な怖さを解消していく、心理的なギャップ感を埋めていくコミュニケーションが、ガバナンス上で必要なのではないかと考えております。その点だけ申し上げさせていただきます。ありがとうございました。

〔翁分科会長〕業界再編というのはなかなか難しいところですよね。

〔山内委員〕そうですね。

〔翁分科会長〕監督官庁の関与の在り方もあって難しさがあるのですよね。そこは本当に。ちょっとまたどういう書きぶりがいいのか検討させていただきたいと思いますけど。ありがとうございます。

それでは、野村委員、お願いいたします。

〔野村委員〕全体的な論点整理については、これまでの議論をきれいにまとめてくださったと思いますので、異論はございません。3点ほど簡単にコメントさせていただきたいと思います。

まず、6ページの大学ファンドについてはこれまでも各委員からコメントございましたが、6ページ最後の行、「異例の対応であった」というのは、これは本当に二重鍵括弧にして強調したいぐらいです。このままで結構ですが、異例の対応であったと思います。

今後のモニタリングについても最後に触れていただいていますが、この段階ではこの書きぶりでとどまって結構だと思いますけれども、そろそろどのようなモニタリングをするか、その仕組みについて決めていかなければいけない時期ではないかと思っております。東北大学が第1号になるということがほぼ決定したようで、今年度100億円出すという報道も出ていますけれども、そもそも、まだ23年度の運用実績の報告もいただいていない段階かと思いますので、先ほど土居委員からもありましたように、どの程度運用益が出ていれば、どの程度助成ができるのかということも含めて、モニタリングの仕組みをつくっていく時期ではないかと考えております。

それから、3ポツの産投の在り方についての中で、2点ほどコメントさせていただきたいと思います。9ページになります。個別投資案件に対するデータの取得・分析について、確かにこの分科会でそれほど議論されてこなかったかと思います。これまで、過去、投資計画、予定どおり進まなかったときに累損に着目して、課題ありと指摘して議論してきたのですけれども、その累損が膨らむ前段階で、投資の対象、もしくは個別の案件の政策性に着目して、それを議論するということが必ずしも十分行われていなかったのではないかと思っています。

これは監督官庁との関係性という先ほど出たようなお話もあって、監督官庁の監督下にあるからそこまで口を挟んではと、こちらが少し遠慮する面もあったのかもしれませんが、今後、より産投の精度を上げていくためには、出資者として一歩踏み込んだ検証を行ってもよいのではないかと思います。特に政策的意義とか達成状況などについて、その個別案件をデータに基づいて議論していくということはあってもいいのではないかと思います。

それからもう一つ、10ページ目にあります「各機関への建設的な関与」というところにあります、経営陣はじめ、機関との対話ということですが、これは非常に重要だと思います。ここ、特に数年ですか、機関投資家と経営者の対話の重要性が非常に説かれているところです。先日もご存じのように、GPIFが委託運用会社と、それから、投資先である企業との対話を行ったところ、その効果がどうかという検証結果が発表されておりました。それによりますと、投資サイドが取締役会構成の改善を促した企業では、対話がなかった企業に比べて、時価総額が何と平均6%も増えたという検証結果が出ております。やはり出資者として経営陣との対話というのは非常に有効であると思われます。その辺りは今後、力を入れてもいい点かと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。

それでは、岡田委員、お願いします。

〔岡田委員〕本日、論点整理(案)を適切にまとめていただいてありがとうございます。この内容に関してはこのとおりかなと思いまして、賛同いたします。

その上で、この先のような、論点整理の先みたいな話になるかもしれませんけれども、1点、感想のようなことです。以前、この場で、官民ファンドで働いている方々のインセンティブのようなテーマを、少し意見を申し上げたことがあります。金融界の方が、官民ファンドに来られる方々というのは、ずっと別にいるというより、ある一時期にいて、成果を上げて、民間に戻っていくというときに、普通、純粋な民間のファンドであれば、うまくいかなければ破綻したり、社会的な制裁とか負担、いろいろなものを背負うということとの兼ね合いで、リスクを考えながら投資していく、勝負していくというか、そうしたインセンティブの構造でやっているということがあろうかと思います。官民ファンドの場合は、公的なお金を使って、そうした投資に携わる中で、過度にリスクを取ってしまわないかというふうな、そうしたことを申し上げたときに、官民ファンドの方からは、それはレピュテーションリスクになるので、きっちりとやるはずですというふうにおっしゃっていたと記憶しています。

ただし、そう簡単に言い切れるのだろうかという、全体として、論点整理でも理財局の監督、監視のようなものを強化していくというテーマはありますけれども、そうした本質的な、このインセンティブというのは、よくリーマンショックのときに、金融危機を引き起こした問題で、個別の金融機関で働いていらっしゃる方々あるいは個別の金融機関もそうですけれども、金融のシステミック・リスクが起きると、大体、公的な資金で救済しないとどうにもならないということの中で、過度にレバレッジを取って、リスクを取っていくという問題が指摘されて、その後、国民的な批判がどの国も、アメリカで特に強かったのですけれども、金融の規制を強化して、そうしたことが起きないように、インセンティブの構造まで切り込んで規制が強化、図られて、それはまだ途中でもあるかと理解しています。そうした中で、単に理財局は監視を強めるというだけで適切に監督できるのか、あるいは適切に公的なお金が使われていくのかというのは、この論点整理の先で重いテーマになっているのかなと思いました。

以上、感想です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。ちょっと感想ですけれども、さっき野村委員がおっしゃった、エンゲージメントみたいなことを少し、モニタリングだけでなく、やっぱりエンゲージメントを強めるというか、対話をしていくということで、より政策的にも収益的にもよくしていくという役割というのがもう少し、今の民間の資本市場の出資者の役割を考えると出てきているという感じもしますし、今の岡田委員の意見の延長線上にあるような議論かなというふうに思いました。ありがとうございます。

最後になりますけど、家森先生、お願いします。

〔家森委員〕ありがとうございます。まず、平成26年報告書や令和元年報告書の基本的な立場を維持するということには違和感はございません。その上で、財務省や財務局の人材育成、102行目辺り、あるいは危機時の対応能力に関して、123行目辺り、大学ファンドに対する特別な言及、126行目辺りなども含んでいただきまして、大変よいなというふうに思っております。

167行目のところで、「産業投資のポートフォリオ全体を考慮した資金配分がなされるべきである」という記述がありますが、これは以前、この分科会でも私は申し上げたのですが、去年、今年度のためには、GXとかスタートアップ、DXに力を入れていますということで、個別の機関はこれこれやっていますと言っているのですが、財投全体として、GXにどれだけやっていますとか、DXにどれだけやっていますというのが分からない。今の開示資料では分からないので、ぜひ、今回これに書いていただく金融運用の面でのポートフォリオだけじゃなくて、国民にしっかりと、この財投が何に向かってお金を流しているのかも分かるようにしていくことと、ここのポートフォリオ全体を考慮した資金配分というのは理解したいと思っております。

それからもう一つ、今、タイトルがまだついていないのですけれども、このタイトルも単に現状と課題というよりは、我々審議会として、この時期に、こういう問題意識を持って、こういう点を伝えたいのだというのが、例えば副題だけでもよいので分かると、より国民の皆さんに理解していただけるのではないかなというふうに感じております。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。ちょっと副題、考えてみたいと思います。ありがとうございます。

大江課長から何かございますか。

〔大江財政投融資総括課長〕ありがとうございます。大変多岐にわたるご意見いただきまして、また、改めて整理してみたいと思います。

この後の議題もありますので、ごく簡潔に申し上げますけれども、翁会長がおっしゃっていただいた点とかぶりますが、財政投融資、新たな財政政策のツールとしてという、冨田先生からご指摘いただいたところは、まさに我々も一般会計でやるべきものを財投に回すということは全く考えておりません。ただ、今の文章でそう読める部分が確かにあるかもしれませんので、そこはちょっと言葉足らずというか、文章がまだまだ、磨く必要があるのかなと感じております。

ただ、申し上げたかったことはまさに、今、一般会計でやっている中で、本来、民間金融のリスクを補完してという、まさに財投の役割が果たし得るような分野があるのではないかと。そういうものについては財投を活用すべきではないかという問題意識でございますので、そこの部分、ご異論ないようでしたら、その上で修文案をまた検討させていただきたいと思います。

また、もう一つの点ですけれども、ご意見を伺っていまして、例えば丸田委員からIRRを上回る収益をというお話ありましたけれども、例えば有吉委員からいただいたご指摘は、まさに政策的な面もあるので、財投はファンドではないというご意見いただき、まさに財投というものをファンドとして考えるべきなのか。それとも、やはり違う公的性格を帯びたものであるというところを意識しなければいけないのか。恐らく答えは、そのどちらでもなく、中間的な部分で非常に曖昧模糊としているものもあるのだろうなと思っております。その辺り、貴重なご指摘いただきましたので、何とかうまく文章にできないか考えてみたいと思います。

すみません。簡単ですが、私からは以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、今日は大変貴重な意見をたくさんいただきましたので、それを反映させていただけるようによろしくお願いいたします。

それで、大学ファンドのモニタリングというのはいつになるのか。ちょっとご質問を。

〔大江財政投融資総括課長〕そうですね。失礼しました。こちら、次回7月にはご報告できるかと思います。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、最後に、「下水道事業者の資金繰りの研究」及び「財投施策を通じた地方公共団体等との連携」について、大江計画官よりご説明をお願いいたします。

〔大江計画官〕計画官の大江でございます。よろしくお願いいたします。私から資料3及び4について説明させていただきます。

まず、「下水道事業者の資金繰りの研究」について説明させていただきます。

1ページ目をご覧ください。下水道事業者の課題や能登地震からの教訓を踏まえると、持続可能な下水道事業のためには、事業者の資金繰り能力を分析することが課題解決のために必要であると考えまして、理財局の持つ行政データを用いて、昨年の秋より、財務総合政策研究所の大野前総括研究官と上酔尾研究員とともに当研究を進めてまいりました。当研究は資金繰りに着目して、全国の下水道事業者を分析する初の試みでありまして、独自の分析フレームワークを提示できたと考えております。

研究成果を説明する前に、関連する情報をご理解いただくために、2ページで下水道事業を取り巻く動き、3ページで財政の仕組み、そして、4ページで実地監査についてご説明させていただきます。

まず2ページをご覧ください。最初に法適用について説明させていただきます。地方公営企業法を適用し、公営企業会計等を適用している事業者を法適用、そうでない事業者は法非適用と呼ばれております。水道事業は当然に法適用するものとされておりますが、下水道事業は各自治体の判断に任せられております。ただ、近年、総務省でロードマップを策定いたしまして、法適用を推進し、ストックマネジメントや適切な料金設定を促しております。それとも関連しておりますが、総務省はさらに、中長期的な投資と財源の見通し等から主に構成される経営戦略の策定及び改定を要請しているところでございます。

3ページをご覧ください。下水道事業の会計は、収益的収支と資本的収支から構成されております。公営企業は独立採算を原則としているものの、一定の公共性がある経費等については、総務省の基準に則り、一般会計からの繰入れが認められております。特に雨水に関する経費は一般会計で、汚水に関する経費は使用料で負担するのが原則になっております。基準に基づく繰入金を基準内繰入、収支不足の補填等のための任意の繰入金を基準外繰入と呼んでおります。

「経費回収率」は、汚水処理に係る経費がどの程度まで使用料収入で、使用料収入で賄えているかを示す指標でありまして、1を下回る場合、使用料収入以外の収入で賄われていることを意味しております。

4ページをご覧ください。理財局では、財政融資資金の貸し手として、下水道事業者等の経営状況を実地でチェックする実地監査と呼ばれる取組を行っております。特に一般会計に頼らない自前の債務償還能力を分析するため、基準外繰入れ前の経常損益に非現金支出である減価償却費等を加えた償還キャッシュ及びそれを用いた「企業債債務償還可能年数」等を算出する「公営企業監査シート」を作成しております。

5ページをご覧ください。当研究は、「公営企業監査シート」のデータを用いた初めての研究となっております。先ほど説明させていただいたように、近年、法非適用から適用に移行した事業者が多数存在することから、事業者を対象期間中ずっと法適用であったグループ1、ずっと非適用であったグループ2、法非適用から法適用に移行したグループ3の3つに分けて分析いたしました。

右下のグラフを見ていただきますと、「企業債債務償還年数」は減少傾向であり、一見良い傾向に見えますが、これは主に左から2つ目のグラフ、「実質債務残高」の減少によるものでありまして、更新投資等が十分に行われていないことによるものではないかという問題意識を持ったところです。

6ページをご覧ください。実際に更新投資の現状について直近までの統計を調査したところ、建設改良費に占める改良費の割合は増加しておりますが、有形固定資産減価償却率及び管渠老朽化率は上昇傾向にある一方、管渠改善率は0.3%程度で推移しており、財源が不十分なために十分な更新投資が進んでいないのではないかと問題意識を深めたところでございます。

7ページをご覧ください。更新投資等の財源については、更新等の際に、耐震化等の高機能化のために増大する費用を資産維持費として使用料に反映し、将来に備えた財源を確保しておくべきとの考え方が、既に総務省や日本下水道協会から示されているところですが、その計算方法についてはコンセンサスが得られていない現状となっております。こうしたなか、各事業者の資金繰りの実態としては、建設改良積立金を積み立てている事業者はごく少数となっているほか、それ以前に、「経費回収率」が1以上の事業者でも現行の資本的収支を自前で賄い切れず、基準外繰入に資金繰りを頼っている事業者も存在しております。

以上を踏まえると、「経費回収率」のみでは、更新投資等の財源も含めた資金繰りの良し悪しを判断しきれないため、「経費回収率」に加えまして、「将来の備え」を自前で賄える財政的な体力があるかどうかを判断する基準が必要ではないか、つまり、「経費回収率」と「将来の備え」の2軸で評価することが有効だと考えたところです。

8ページをご覧ください。資産維持費について定まった算出方法がない中で、次善の策といたしまして、償還キャッシュから企業債償還金を差し引いた数値を「将来の備え」としまして、将来の更新投資等の財源を自前で賄える体力がどの程度あるかを測る指標とすることにいたしました。座標軸上の右上に行くほど経営状況及び資金繰りがよい状態であると考えられ、第1象限を目指すべき状態と捉えれば、そこからの乖離度合いを客観的に数値で計測できることが、すなわち従来の類似団体比較による相対評価ではなく、目指すべき状態からの乖離度合いを絶対評価することができることが、当該2軸座標を用いた評価の特徴であり、優位性であると考えております。

9ページをご覧ください。実際にこの2軸座標を用いた評価を使って、先ほどご説明しましたグループ1及びグループ3の事業者を実際にプロットしております。グループ1をプロットした左下の表の赤い実線囲みをご覧いただくと、「経費回収率」は1以上であるにもかかわらず、「将来の備え」がマイナスとなっている事業者が相当程度存在することが分かりました。さらに、グループ3をプロットした右下の表をご覧いただくと、こちらは赤い実線囲みのように、「経費回収率」と「将来の備え」がともに悪い事業者が多数存在することが結果、明らかになりました。他方、グループ1については、ピンクのシャドウで囲まれた第1象限に位置する事業者、いわば目指すべき状態にある事業者も一定数存在することが明らかになりました。

10ページをご覧ください。そこで、第1象限に位置する公営企業の事業者から市町村名が付されている6団体を選定し、その要因を分析するためにヒアリングを実施いたしました。

11ページをご覧ください。ヒアリング先に共通するポイントを整理いたしますと、以下の4つの切り口が考えられます。まず、「組織体制・人材育成の強化」ですが、法適用を行い、上下水道で共通する業務範囲を増やし、職員数が減少するなかで、少ない人数で高い専門性を維持する努力を行っておりました。特に福知山市では、人材育成計画の策定に注力しておりまして、ISO認証を取得できるまで人材マネジメント能力を高めていたことが印象的でした。

次に、上下水道業務の統合・効率化は、「民間の積極的な活用」とも関連しております。例えば、守谷市では上下水道の包括業務委託にコンサル業務を加えた、国内初となる長期拡大型包括業務委託を実施しております。

他方、法適用の実施は、「使用料の適切な設定・改訂の実施」につながっております。例えば福知山市では、平成24年の法適用により、企業体としての経営実態が明らかになることにより危機感を持ったことが、平成29年度の大幅な使用料改定につながりました。

最後に、「効率的なエリアマネジメント」ですが、例えば妙高市は、処理場の統廃合を積極的に実施しております。その際、一時的に解体費用等が膨らみますが、それを財政的に賄えるベースには定期的に使用料改定を行っていることが考えられます。また、長崎県の諫早市や時津町は公共下水道と合併浄化槽の棲み分けをうまく進めているという特徴がございました。これらの取組は奇を衒ったものではなく、基本に忠実なものであり、課題から目を背けず、やるべき取組を行ったということが改善に繋がっていると考えております。

また、俯瞰して見ると、法適用を行ったことが改善に係る取組全体のベースになっていると考えられ、このことがグループ3の事業者のように、近年、法適用に移行した事業者にとって、有用な先行事例、参考事例になるのではないかと考えております。

最後に12ページをご覧ください。当研究では、資金繰り、特に一般会計に頼らない自前での資金繰りに着目した初めての試みでございまして、2軸座標を用いた評価という独自の分析フレームワークを提示できたと思っております。2軸座標にプロットすることで、グループ1及び3の課題が明らかになるとともに、第1象限にいる事業者からは資金繰り改善策の鍵となる取組を抽出することもできました。いずれにせよ、2軸座標を用いた評価は各事業者にとっても課題解決に向けた有用な気づきの機会になると思われることから、関係省庁、自治体と広く共有するとともに、実地監査業務への反映に向けて検討を行うことが求められると考えております。今後は、当該研究をデータ利活用の規定に基づく学術研究として実施していく予定でございます。また、この評価手法を、水道事業の分析にも応用することも考えていきたいと考えております。

以上が「下水道事業者の資金繰りの研究」のご報告でございます。

続きまして、「財投施策を通じた地方公共団体等との連携」について説明させていただきます。資料4をご覧ください。

1ページをご覧ください。財投施策を通じた地域連携については、緩やかながらも着実に進捗しております。今年度においてはより実効性を高めるために、これまでの取組の継続的な実施に加えまして、新たな取組を実施しております。

新たな取組についてご紹介させていただきます。2ページ目をご覧ください。各財務局等が実地監査や財務状況ヒアリングなどの機会を通じて把握した地方公共団体の課題について、各財務局等がセミナー開催などの取組を行う際に、本省理財局が各財務局等に対して積極的な支援を行う「財務本省理財局・地域課題解決よろず支援」という取組を本年4月より開始いたしました。具体的には、各財務局からの相談に応じて、理財局が主体的、積極的にセミナー開催に向け、リードするなどの支援を行います。

3ページ目をご覧ください。「財務本省理財局・地域課題解決よろず支援」の第一弾として、本年4月に「奄美群島活性化応援セミナー」を開催いたしました。鹿児島県奄美市の協力のもと、本省理財局、九州財務局鹿児島財務事務所がセミナーの企画・調整を行うことで、PPP/PFIの活用、観光活性化、離島航路の維持といった、離島が抱える課題について有識者にご講演いただきました。本セミナーには、奄美市の安田市長はじめ、奄美群島市町村の首長、議長、金融経済業界の関係者の多くの方々にご参加していただきました。

4ページをご覧ください。セミナー開催後も地方公共団体の取組状況を定期的に確認することで、継続的なフォローアップも行っていきたいと考えております。

5ページをご覧ください。実地監査におけるアドバイス機能の充実を図るために、実地監査を担当する財務局職員の育成として、地方公共団体等の課題解決支援における取組指針の策定、地方向け実地監査に理財局職員が同行しての直接サポート、外部講師を招聘した職員向けセミナーの開催などの取組を実施してまいりました。

続きまして、官民ファンドによる地域案件発掘等の深化です。令和4年度より、各地の財務局において開催しております、地域金融機関等を対象とした官民ファンド合同説明会については、具体的な案件組成につながるよう、さらなる工夫を加えた上で、本年5月に福岡財務支局において開催いたしました。当日の概要は6ページに参考として添付しております。

また、昨年7月の分科会において、地方銀行のネットワークを活用すべきとのご意見があったことを踏まえまして、新たな取組として地銀協、第二地銀協と連携し、全国の地方銀行を対象としたオンライン説明会を実施いたしました。引き続き、地域における官民ファンドの活用促進等を支援してまいります。今後も財務省財務局のネットワークや財投機関の機能も活用しつつ、地域関係者のニーズに沿った形で取組を充実させてまいりたいと考えております。

私からの説明は以上となります。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。

すみません。私の不手際で少し時間が延びてしまったのですけど、ここだけ聞いておきたいというようなことがもしありましたら。では、土居委員。

〔土居委員〕ご報告どうもありがとうございました。大変有意義な研究だったと思います。下水道事業に関連して資金繰りに着目した点は非常に重要で、「将来の備え」を数値化したということは非常に重要だと思います。これを今後に生かすということでいうと、いきなりすぐにというわけにはいかないけれども、地方債同意等基準とかそういったものにもこういう数値化したものを反映するような、つまり、「将来の備え」がそれなりにできていれば起債が許されるという、そういうような形にいずれ順を追って取り組んでいくということも重要かなと思います。

私から以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

ほか、よろしいでしょうか。今のことについてコメントありますか。

〔大江計画官〕貴重なご指摘をいただき、ありがとうございます。そのような方向性を念頭に置きながら検討を進めていきたいと思います。どうもありがとうございます。

〔翁分科会長〕大変貴重な研究で、ぜひ生かしていっていただきたいと思います。ご説明ありがとうございました。

それでは、この辺りで質疑を終了したいと思います。本日の議事につきましてはここまででございますが、もし追加的に何かコメントとかございましたら、報告、論点整理についてもお送りいただければと思います。

本日の議事内容につきましては、検討途中である論点整理(案)に関する内容を除き、この後、事務局より記者レク及び資料公表を行います。議事録につきましては、委員の皆様のご了解いただいた後、財務省ホームページに掲載いたします。

次回は7月29日の月曜日14時より開催いたします。議題は、論点整理の取りまとめに加え、定例の報告といたしまして、財政融資資金運用報告書等についてご議論をいただきたいと考えております。

本日はご多用のところお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。これにて閉会いたします。ありがとうございました。

16時40分閉会

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