文科省・新着情報

1.日時

令和6年6月21日(金曜日)10時00分~12時00分

2.議題

  1. 法科大学院の特色・魅力について
  2. 法科大学院教育を担う教員(研究者)の養成・確保について
  3. 法科大学院教育の動向について
  4. その他

3.議事録

【松下座長】  それでは、所定の時刻を過ぎておりますので、第115回中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会を開会いたします。御多用の中、御出席を賜り誠にありがとうございます。
 本日はウェブ会議として開催しております。本会議は公開が原則のため、この会議の模様はユーチューブのライブ配信にて公開いたします。ウェブ会議を円滑に行う観点から、御発言の際には挙手マークのボタンを押していただき、指名されましたらお名前をおっしゃってから御発言いただきますようお願いいたします。また、御発言後は、再度、挙手のボタンを押して、挙手マークの表示を消していただきますようお願いいたします。また、さらに、御発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど御配慮いただけますと幸いでございます。
 また、御出席された方全員が御発言できますように、大変申し訳ありませんが、御発言は1回当たり二、三分程度までを目安にお願いいたします。これについては恐縮ですけれども、繰り返しお願いをすることになろうかと思います。
 また、議事次第には12時までという記載があろうかと思いますが、議事進行の状況によっては最大30分程度、審議時間を延長する可能性がございますので、あらかじめ御了解いただきたいと思います。本日も活発な審議をどうぞよろしくお願いいたします。
 それではまず、事務局に人事異動があったとのことですので、事務局から御報告をお願いいたします。

【保坂専門職大学院室長】  事務局でございます。法科大学院の担当審議官に異動がございました。4月1日に大臣官房審議官高等局及び科学技術政策連携担当として奥野真が着任しております。一言御挨拶させていただきます。

【奥野審議官】  おはようございます。西條の後任で4月1日に着任いたしました奥野でございます。よろしくお願いいたします。
 法科大学院制度につきましては、委員の皆様の御指導、また、各法科大学院における取組、さらに関係各所の皆様の御支援により、現在のところに至ることができたものと思っております。一方で、我が国の高等教育全体が置かれている状況については、人口等を鑑みますと、分野ごとに特に国内から必要な人材を獲得していくことも大きな課題となってくるところです。
 そういった観点の中で、国内、特に若手の今後の学生の方々にとって、この法科大学院を経て法曹に進むという進路が魅力あるべきものになっていくことが非常に重要であると考えております。本日の御議論というのはそういった方向性に向けて大変意義のあるものになると考えておるところでございます。引き続き、委員の先生方の皆様の御指導を賜ってまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

【松下座長】  よろしくお願いいたします。
 それでは続きまして、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
 
【保坂専門職大学院室長】  本日は、資料1から資料6までの全170ページをメインの資料として御用意しております。そのほか、参考資料1から18までは別途ページをつけておりまして、全123ページの参考資料を御用意しております。よろしくお願いします。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入りたいと思います。
 まず、議事の1、法科大学院の特色・魅力についてです。
 今期の審議に当たっての基本的認識にもありましたように、今期は法科大学院開設から20年を迎える節目の期に当たり、これまでの歩みを俯瞰し、その成果や残された課題を整理した上で、法科大学院教育のさらなる改善・充実に向けて必要となる方策について審議をし、提案をしていく必要があると考えております。
 そこで、今回から3回にわたり、法科大学院の特色・魅力についてという議題を設けたいと思います。今回は企業法務をテーマに注力されている神戸大学と、先端的法政策課題をテーマに注力されている京都大学より現在の取組や今後の課題について御発表いただき、その後、質疑を行うこととさせていただきたいと思います。
 それではまず、資料1について、榊素寛神戸大学大学院法学研究科教授より10分程度御説明をお願いいたします。なお、本日は、神戸大学法科大学院において企業法務に関する講義の講師を務めておられる榊原美紀様にもお越しいただいております。
 それでは、榊教授、よろしくお願いいたします。
 
【榊教授(神戸大学)】  ただいま御紹介いただきました榊と申します。どうぞよろしくお願いします。本日は、神戸大学法科大学院の企業内法務の教育ということでプレゼンをさせていただきます。
 まず、神戸大学の教育の中ではビジネスローの教育が大きな特徴の一つになっているのですが、全体像としては2ページ目にありますようなイメージでして、この企業内法務の教育は、法科大学院教育全体の中では、キャリアパスを示す科目であったり付加価値を与える科目に位置づけられます。
 3ページ目のタイトルにおいて、企業法務という言葉を使わず企業「内」法務という言葉を使っているのですが、なぜこのようなワーディングをしているかの説明から入ります。
 法律事務所の弁護士業務と、企業の中で実際に行われている法務とは全く別物であるというのが、認識の前提にあります。そして、学生が企業の中で行われている法務を具体的にイメージすることは極めて難しいと思われます。
 他方で、我々神戸大学は、実学の大学として、法曹あるいは非法曹を問わず、企業で実際に法務に携わっている同窓生を多く抱えておりまして、現役で法務に関わっている講師により生の教育を行うことを考えています。生きた企業の法務は企業の内部にしかないと考えておりますし、また、その具体的なイメージを持つことが、学生にとっては法曹の職域拡大につながっていくのではないかと思われます。
 企業内法務の教育は、通常の法科大学院の教育で行っておりますような、条文、判例、あるいは教科書を使って実践できるものではありません。企業、立場、もっと言えば人の数だけ考え方がありまして、そうすると、優れたリーガルマインドを養うためには、多くの講師の話を聞き、考え方を相対化する必要があるということになります。これはオムニバスの形で開催することの利点です。
 学生にとっては、法曹としてのキャリアの各ステージにおいて、いつ、どのようなポジションでどのような仕事をするのかということについて具体的にイメージを形成させることが必要です。例えば、仕事の中には弁護士である必要がある仕事もありますし、資格は関係なく法務の一員である仕事もある、こういったイメージも持っていく必要があると思います。
 参考情報として、5ページ目に、シラバスより到達目標と授業の概要と計画、また、履修者の状況をここに示しております。
 スライド6ページ目にありますように、教育の特徴として、大学の教員よりむしろOB・OGを中心に授業を設計いただいていることが挙げられます。すなわち、講師陣の中核メンバーが新たな講師を発掘し、あるいは授業内容を調整し、いわゆるPDCAサイクルを回しております。大学側は、講師の日程調整や授業の補助、アンケートの回収、あるいは成績評価といった、言わばロジを中心に担当しています。
 では、具体的に誰が教えるかです。
 神戸大学の法学部、大学院の法学研究科、あるいは法科大学院のOB・OGの組織のうち、主として法務関連の同窓組織である六甲法友会という組織がありまして、このバックアップの下、講師は多様なキャリアの段階や業種を組み合わせて講師陣を形成しております。これらの講師陣はほとんどが神戸大学の法学部、法学研究科、法科大学院のOB・OGにより構成されており、一言で言えばパワフルで熱意のあるOB・OGが同じ方向を向いて授業をしていることが特徴です。
 この潜在的な講師の人材は法務に携わっている人の数だけあり豊富ですが、我々としては常にバランスを考えて、言い換えれば、常に若返りを意識して講師の候補者にお声がけをしております。コーディネーターである私としては、できるだけ意識して講師の多様性を確保するように提案しているところです。
 具体的にどんな方が講師になっているかということで、スライド9ページ目、企業名は消しておりますけれども、ここに挙げているような方々が昨年度(2023年度)の講師です。本日は、この講師の中から、先ほど紹介がありましたマクニカホールディングス株式会社の執行役員・ジェネラルカウンセル兼日本組織内弁護士協会――JILAの前理事長である榊原先生にも来ていただいております。
 スライド10ページ目は、昨年度(2023年度)の授業で扱われたテーマの例です。見ていただいてお分かりいただけるかと思いますけれども、極めて多様な内容が扱われていることが示されているかと思います。
 スライドの11ページ目に行きまして、具体的にどのようにPDCAサイクルを回しているかについて説明します。
 大学側で、ルーティン的に、授業の後の短時間で学生の反応を調査します。具体的には、金曜日の5限に授業がありまして、その回の講義に関する意見を月曜締めで収集をします。そして、その翌日あるいは翌々日の火曜か水曜に、回答を集約したスプレッドシートを加工した上で、全講師が参加しているメーリングリストで情報を即時に共有しております。ここでは学生の生の意見を共有しておりまして、また、授業担当者自身が前回の授業についてその時点で講師間において感想を共有しています。そうすると、その次以降の講師が反応を見て、授業方法を順次ブラッシュアップしていきます。
 大学関係者としては、半年に1回ほどアンケートを取っているわけですけれども、これに比べると非常にサイクルが早いといいますか、講師が受講生の受け手の意見に対して非常に敏感であるという印象です。
 具体的にどのように授業を運営しているのかについて、スライド12ページ目をご覧ください。
 まず、初回に守秘義務に関する誓約を全受講者に提出させまして、提出をしない者については受講を拒否しております。OB・OGは、企業秘密に関するものは当然お話になりませんけれども、OBだからこそおっしゃることが当然ありまして、それが漏れないようにすることで、逆に様々なことを話しやすくするという配慮です。
 授業の方式は様々です。ほかの法科大学院に対して3コマほど授業を提供しておりますし、また、法科大学院の試みから派生をして、学部生に対して1単位の学部科目を別途並行して提供するというふうに、縦展開、横展開も行っております。
 私から講師に対しては、一般的な万人受けする話をするよりは、むしろ少数の誰かに深く刺さる話をしてほしいと依頼をしております。これが積み重なると、誰かに刺さって、それが進路に影響するのではないかと考える次第です。
 スライド13ページ目に移ります。学生からの反応は、総じて好評と言ってよいと思います。授業後のアンケートは、毎回のものでも期末のものでも、いわゆる数字、自由記述欄いずれについても肯定的なものが多く、履修者数は年によって変動がありますけれども、以前は30名から40名程度が多かったです。昨年は60名ということで、予想外に多い人数でした。
 毎回、授業後のアンケートを取っているとお伝えしましたけれども、そこでは、例えば、学生が持っていた「インハウスの仕事イコール契約書のチェック業務」という紋切り型の認識が毎週塗り替わっていくことを見ることができまして、これは非常に面白かったです。
 次のスライド14ページ目。授業の効果がどうなのか、成果がどうなのかを打ち合わせ段階で聞かれたのですが、正直に言いますと、これを説明するのは大変難しいです。というのは、キャリアパスをお話しになる文脈で、講師の先生には、最初からインハウスという人もいれば、最初は事務所に行って法廷の経験を積んでからインハウスに行ったほうがよいという考え方の方もいらっしゃいまして、キャリアに関する考え方が先生によって様々です。ですので、学生の進路についても、最初からインハウスになる者もいれば、数年たってインハウスに転職する人もいますし、また、どういう事務所に行くかについても、企業法務系の事務所に行く者もいれば、当然、一般民事に行く者もおります。その意味で、この授業をやることによる成果が出るのか、それがいつなのかということは正直なところ測定は不可能だと考えます。とりわけインハウスの方々は弁護士登録をしないことが結構ありますので、そうすると、大学として追跡をすることも容易ではないというのが現実です。
 最後のスライド(15ページ目)は、前回、こちらで経営法友会のプレゼンテーションがあったようでして、そちらの資料を拝見いたしました。そこで挙げられていた要望といいますか、企業内法務教育に対するものに対して幾つかのアンサーを用意しております。
 特徴的なところだけを挙げますと、先生方に共通していますのが、事務所の弁護士とは違って顧客は社内にいるという観点は非常に強いように思います。また、法務もビジネスの一環だということがかなり強調されているという印象を持っております。法科大学院教育に求めるものということがありましたが、神戸大学では授業の開始のときからそこで求められていることをやっているというのが正直なところでありまして、さらに学部教育への波及効果もございます。
 私からは以上です。よろしくお願いします。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの榊神戸大学大学院法学研究科教授からの御説明について、御質問、あるいは御所感があればお願いいたしたいと思います。冒頭お願いしましたとおり、御発言の際には1回当たり二、三分程度までを目安にお願いできればと思います。
 それでは、どなたからでも結構ですので、御発言がある方は挙手マークを押していただければと思います。いかがでしょうか。
 それではまず、清原委員、お願いいたします。
 
【清原委員】  ありがとうございます。清原です。榊先生、どうもありがとうございます。本当に魅力的な授業を展開されていることがよく分かりました。特に、「キャリアパス、プラス、付加価値」という点で、これだけ多様なロースクール卒業生の方が企業「内」法務として活躍されていて、しかもテーマも多様であるということで、実社会の多様性をまさにロースクールの中で反映していらっしゃると思いました。OB・OGの皆さんに出会うことで学生に対してロールモデルも届けることができているのではないでしょうか。さらに守秘義務についてきちんと確認するということも法律家の倫理の基本で、大事なことだと思います。
 本日、講師をされていらっしゃる榊原先生が御同席いただいていることなので、学生さんの反応については一定程度教えていただきましたけれども、講師をされているお立場から、このような魅力的な授業を担当されていることの所感を一言教えていただければありがたいです。よろしくお願いいたします。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。
 すみません、私から振るべきだったのかもしれません。榊原先生から補足等があればぜひ、一言と言わずお願いいたします。
 
【榊原講師(神戸大学)】  ありがとうございます。
 講師は15名ぐらいいると思いますけれども、先ほど榊先生がおっしゃったとおり、メーリングリストで連携をしておりまして、毎回の授業については、ほかの講師の授業を見学させていただいたり、授業の資料は全て見せていただいています。アンケートも相互に見ていて、ほかの人がすごく好評だったというのを聞くと、その人の授業の資料を見せていただいたりもするので、いい意味で競争というか、ほかの人がそんなに頑張っているんだったら自分はもっといい授業をしなければいけないというプレッシャーもありまして、全体的に質が相当向上しているのではないかと思います。
 
【清原委員】  どうもありがとうございます。
 
【松下座長】  ありがとうございました。
 清原委員は取りあえず今のところよろしいでしょうか。
 
【清原委員】  本当に生の声を聞かせていただきありがとうございます。コンペティションの「競争」ではなくて、ともにつくっていくコクリエーションの「協創」も榊原先生たちのネットワークがつくっていらっしゃって、それがさらに学生にロースクールの魅力を増幅させていくのではないかなと、今後の御活躍を期待しております。どうもありがとうございます。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして北川委員、お願いいたします。
 
【北川委員】  ありがとうございます。早稲田大学の北川でございます。榊先生、非常に貴重な御報告をありがとうございました。
 企業内法務に関する授業というのは非常に興味深く思う半面、授業運営を実際にどのようにされているのかなどについて考えるところがあり質問いたします。具体的に二つ質問がございます。よろしくお願いいたします。
 1点目は、資料の赤い数字で7ページ目、スライドでは5ページ目ということでしょうか。こちらに実際に受講した学生さんの数字をお示しいただいて、昨年度はとても多かったとお話しいただきましたけれども、昨年度の特徴として男性の数が非常に多いのが私にとっては意外でした。
 というのは、勝手な個人のイメージでございますが、企業内法務に興味があるのは、女子学生のほうが多いのかなと。女性のライフ・プランにおいて仕事をしていく上で、産休や育休を取るには企業内で働いたほうが都合良い等の理由から、女子の受講生が多いのではという勝手なイメージを持っておりましたが、男性が多いということで驚いた次第です。これは何か理由があるのかということを一つお伺いしたいと思いました。
 もう一つは、授業をこのようなオムニバスで実務家の先生方からお話しいただけるのは非常に貴重な経験だと思いますけれども、成績評価が難しいのではないかと思いました。この点に関しては、赤数字の14ページの授業運営のところに成績評価について書かれていますけれども、アンケート、期末レポートということで、私たちもこうした授業を実施する際には評価が感想文程度になることを危惧することがあります。この成績評価について工夫をされている点がありましたら教えていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。2点御質問がありましたが、いかがでしょうか。
 
【榊教授(神戸大学)】  御質問ありがとうございます。
 まず、昨年男性が多かった理由については、分からないというのが正直なところです。学年が2年次、3年次のいずれでも履修することができまして、2022年を見ていただきますと、こちらはかなり女性が多いです。もともと男女比が1対1ということはなくて、もっと男性のほうが多く、そもそも多いということに加えて、前年度履修している結果、隔年現象という形で相対的に若干男性比率が上がっている気がいたします。実際、2021年も男性比率が高く、その意味では単に隔年現象で、特に何か傾向があるわけではないように思います。
 2点目の特徴は、感想文ではないということは確かですが、一つには、私は実際にほぼ全員の先生の授業を見ておりまして、出している課題としては、授業の回数のうち2回分を取り上げて、資料に基づいて論じなさいという形で、感想ではなくきちんと授業の内容を理解してレポートさせる形を取っております。したがいまして、話の内容や資料をきちんと理解しているかをチェックする形でやっておりまして、成績評価がただの感想にならないようにしています。
 以上です。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。
 北川先生、よろしいでしょうか。
 
【北川委員】  ありがとうございました。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、笠井委員、お願いいたします。
 
【笠井委員】  ありがとうございます。京都大学の笠井でございます。榊先生、榊原先生、今日は充実した内容の授業の様子をお聞かせいただきまして、どうもありがとうございました。大変勉強になりました。
 企業内法務の授業についてと、最初におっしゃったビジネスロー教育の全体像についても質問させてください。全部質問です。
 まず、企業内法務の授業に関しては、研究者が教える――榊先生の商法、会社法であるとか、あるいはそのほかの選択科目である知財とか労働法とか経済法といったいろいろな科目に関係する話題が結構出てくる感じがしますけれども、そういうほかの科目との授業内容としての連携といったものについてどのような工夫あるいは留意をされているかを伺えればと思います。
 それから、企業内法務の授業のほかに、企業法務――いわゆるローファームなどに行って弁護士になって企業法務を扱うような人向けというか、そういうことを念頭に置いた授業も別にあるのかどうかを伺えればと思います。
 そして、それと関係しますけれども、最初のビジネスロー教育の全体像との関係で、修了プログラムのようですから、企業内に行かれる方以外にも弁護士として企業外から企業法務をされる方の受講ニーズが大きいかと思いますけれども、このビジネスロー教育というのはそういう方も念頭に置いた授業をしておられるのかということと、修了者がどのくらいいらっしゃるのか。たくさんの質問で申し訳ないのですけれども、以上でございます。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。それでは榊先生、いかがでしょうか。
 
【榊教授(神戸大学)】  ありがとうございます。
 1つ目の点、この科目との連携あるいは工夫です。なかなか難しいところですけれども、例えば、会社法について聞かれた場合は、教える先生との関係で、どういうことを教えているか、どういうことを話していないかというやり取りをすることはありますし、例えば、労働関係や経済法の話になりますと、履修しているかしていないかを確認しながら進めている先生がいらっしゃいます。履修する学年も2年次、3年次のいずれでも取れるということもありまして、それぐらい緩めの連携をしているというイメージかと思います。
 2点目のローファーム向けの授業ですが、こちらは企業法務のゼミ(R&W企業法務)が別途ございます。
 3点目ですが、企業外の人が受けるニーズ、企業法務に行かない人が受けるニーズということですが、こちらも実際に企業外部の弁護士の先生にお話をいただきまして、企業を相手にする弁護士としての話をしていただいていて、インハウスに行かない学生も念頭に置いた教育になっております。
 4点目の修了者は、これは調べてきておりませんが、ざっと1学年30人から40人ぐらいいるとすると、今までの9年で300人は超えているという計算になるでしょうか。
 以上です。
 
【笠井委員】  ありがとうございました。
 
【松下座長】  ありがとうございました。笠井委員、よろしいでしょうか。
 
【笠井委員】  はい、結構です。ありがとうございました。
 
【松下座長】  それでは、続きまして大澤委員、お願いいたします。
 
【大澤委員】  ありがとうございます。早稲田大学の大澤でございます。
 今の笠井委員の御質問とほとんど重なっていますけれども、念のためもう一度伺わせていただきたいと思います。
 神戸大学の強みを生かした教育のお話で、非常にすばらしいものだなと感じながら伺いました。まず、御紹介いただいた授業というのは、最初のビジネスローの教育の全体像のところに挙がっているものでいうと、ワークショップ企業内法務に当たるのかなと理解いたしましたが、そのようなことでよろしいでしょうか。
 それから、このグローバル・ビジネスロー・プログラムは外国法と海外エクスターンシップとも組み合わせて修了証が出るということですが、この全体の修了人数が各学年30人程度という理解でよろしいでしょうか。伺った授業のお話というのは非常に興味深いものですけれども、入り口といいますか、ここから興味を持ってさらに学びを深めていく科目のようにも理解されましたので、他の科目と組み合わされたプログラムが実際にどのように動いているのかといった辺りと、このグローバル・ビジネスロー・プログラムの中でどのくらい実際に修了者が出ているのかを確認させていただきたいと思いました。よろしくお願いいたします。
 
【松下座長】  ありがとうございました。
 それでは、榊先生、いかがでしょうか。
 
【榊教授(神戸大学)】  まず、1点目ですけれども、こちらにありますワークショップ企業内法務が今お話をしたものになります。
 次に、このグローバル・ビジネスロー・プログラムの修了者ですけれども、海外エクスターンの参加者が年に2人から6人ぐらいの感じですので、実際にプログラムを修了している者は1年に1名から2名という程度です。企業内法務を単独で取るものは30とか40いるわけですけれども、海外エクスターンシップまで組み合わせて取るものはそんなに多くありません。とりわけ在学中受験が始まりましたので、派遣する機会がなかなか難しくなっているというのが正直な現状です。
 
【松下座長】  大澤委員、よろしいでしょうか。
 
【大澤委員】  了解いたしました。ありがとうございます。
 
【松下座長】  ありがとうございました。
 それでは、井上委員、お願いいたします。
 
【井上委員】  ありがとうございます。非常に充実した説明をしていただきまして、私も企業法務の中にいる者ですけれども、このような授業を学生さんが受けられるという環境はすばらしいのではないかと思います。
 資料で、授業の効果を説明するのが難しいということを、16ページですか、お書きになっていらっしゃいますが、非常に効果はあるのではないかと思いまして、何か測る方法を考えていただいて、神戸大学が企業法務に関して非常にいい大学院であることをアピールしていただくと、学生さんにもよいメッセージになるのではないかと思います。御謙遜なのかもしれませんけど、もう少しアピールしていただいてもよろしいのではないかというお願いでございます。
 以上です。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。なかなか難しいですが、榊先生、何か御発言がございますでしょうか。
 
【榊教授(神戸大学)】  ありがとうございます。実際、例えば、KPIを設定してという人数で測定するのは正直無理だと思います。なので、どういう人が働いているかといった情報がだんだん口コミで広がっていくのが、多分、一番大事かと思います。定量的なものではなく定性的なものであると思いますので、その意味では、例えば、途中に入れていたのですが、受講生の中から講師が出てくるというサイクルのように、授業を受けて視野が広がったということを学生に伝えるといったところが、効果を測定するというか、効果を広げるのに有効なのではないかなと思っております。
 以上です。
 
【井上委員】  ありがとうございます。ぜひお願いできればと思います。
 
【松下座長】  確かに、受講生の中から次世代の講師が出てくるというのは、非常に象徴的なすばらしい出来事だと思います。大いに期待したいと思います。
 それでは、髙橋委員、お願いいたします。
 
【髙橋委員】  ありがとうございます。榊先生、榊原先生、大変貴重な御報告をいただきまして誠にありがとうございました。インハウスローヤーのアプローチについては、企業法務教育の一環として扱うことがあっても、法科大学院で独自科目として位置づけられていることは少ないと存じますので、大変参考になりました。
 ほかの委員の御質問とちょっと趣旨が重複しますけれども、1点御質問させていただければと思います。
 インハウスロイヤーの活動に関連しましては、例えば、個別の講演会や修了生のキャリアアドバイスの機会、あるいは企業説明会などの機会を設けている法科大学院は少なからずあると思いますけれども、法科大学院の1科目として位置づけるに当たって特に工夫されておられること、あるいは苦労されていることなどございましたら御教示いただければ幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【松下座長】  ありがとうございました。それでは、榊先生、いかがでしょうか。
 
【榊教授(神戸大学)】  ありがとうございます。そうですね、なかなか難しいところですけれども、一つはキャリアの様々な段階の人の話を聞く――一つの企業ではなく様々な企業の、しかも一つのポジションではなく様々なポジションの人の話を聞くと。若手の段階から中堅、それからジェネラルカウンセルクラスまでですね。ということで、単発ではなくて線や面で見ることができることが一番大きいと思います。
 すみません、2点目の御質問を書き漏らしました。もう一回お願いしてよろしいでしょうか。
 
【髙橋委員】  その点でもし御苦労されていることがありましたら教えてください。
 
【榊教授(神戸大学)】  ありがとうございます。正直なところ一番苦労しているのは日程の調整です。我々神戸大学は関西にありますが、インハウスの先生方の大部分は東京在住です。東京から遠隔で授業を行うことも可能ではありますが、東京から関西に来ていただいて授業をしていただく場合、丸1日空けていただかないと授業ができません。その日程調整をする際に、埋まらない日が生じて苦労し、新しい先生を探すといったところがありまして、正直なところ、私としては日程調整に一番苦労しています。
 
【髙橋委員】  ありがとうございます。
 
【松下座長】  それでは、続きまして富所委員、お願いいたします。
 
【富所委員】  榊先生、榊原先生、どうもありがとうございました。
 修了者のキャリアパスという意味で、企業や官公庁への人材供給というのは今後、法科大学院の非常に大きな役割になる部分だと思いますので、こうしたところに力を入れていらっしゃるのは非常に先進的だなと思いました。
 以下、基本的なことかもしれませんが、2点ほど教えていただけたらと思います。
 私も企業におりますので、インハウスの先生方と一緒に仕事をした経験がありますが、時代とともにインハウスの形も随分と変わってきていると感じています。プロジェクトごとに企業の中に入って、その期間だけ一緒に仕事をする、あるいは1年なら1年という期間を決めて弁護士事務所から派遣される。これに対して、場合によっては10年ぐらいその企業に勤めてその企業から給料をもらうなど、様々な雇用形態が出てきている印象があります。卒業生の方々が、今、どういう状況なのかが分かれば教えていただきたいというのが1点です。
 もう一つは、法科大学院を修了しても、例えば、法曹にならない、あるいは合格できなかったという方々も、企業や官公庁で働くようなパスにこういった取組がつながっていけばと思います。こうした方々の中には、就職する際、法曹資格がないまま官公庁や私企業を選択される方が結構いらっしゃるのかどうか。
 以上の2点お伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
【松下座長】  榊先生、お願いします。
 
【榊教授(神戸大学)】  ありがとうございます。
 1点目の御質問ですが、例えば、事務所からプロジェクト単位で派遣されるタイプについては、正直、大学として把握できておりません。大学として組織的に把握することができるのは、登録状況から行っている会社を調べる、あるいは報告をもらって把握するところまでですので、普通に企業に勤めて給料をもらうタイプの人が多いことは分かっていますけれども、それと違うタイプの方がどれぐらいいるかについては把握できていないというのが正直なところです。
 2点目、合格していない人、あるいは合格したけど法曹にならない人ですが、確かにそういう人にとってのキャリアパスの一部にはなっているだろうと思います。ただ、こちらについても、合格されていない方、あるいは弁護士登録されていない方については大学として把握することができないので、個人的なつながりによる情報の把握はできますけれども、そこまでというのが正直なところです。
 以上です。
 
【富所委員】  どうもありがとうございました。
 
【松下座長】  ありがとうございました。
 議題の議事の1については、今、中川委員が挙手されているのを確認して、ほかはいらっしゃらないように思います。議事の1については中川委員の御発言が最後ということで、中川委員、お願いいたします。
 
【中川委員】  ありがとうございます。
 私、神戸大学の教員ですのでこの授業もずっと傍から見ていますけれども、神戸大学方式の一番の特徴は、先ほど清原委員が非常に的確に御指摘されましたが、コクリエーションだと思います。講師が15名ぐらいいて、かつ、ばらばらではなく、PDCAサイクルを回しながら、かつ、毎年よくなっています。
 榊原先生への御質問ですけれども、どういう秘訣があるのか、他大学がこれをやろうと思ったらどうすればいいのか、ここが一番難しいところだと思います。大学側のアレンジは大変ではありますがどうにでもなりますけれども、何といっても講師側が自分たちで授業をつくって伸びていくという、この状態をどのようにしてつくってこられてきたかを榊原先生にお伺いしたいと思います。
 
【松下座長】  それでは、榊原先生、お願いいたします。
 
【榊原講師(神戸大学)】  ありがとうございます。中川先生がおっしゃったとおり、講師陣で自律的に連携をしていまして、チームというわけではありませんけれども、実際にはチームみたいなものがあるような感じです。ほかの講師の先生もよくおっしゃるのが、母校愛みたいなものがあり、1年に1回自分の母校に戻れるというので非常にありがたいと言いながらやっていますけれども、必死で準備するということもありまして、物すごく負担ではあります。
 ただ、毎回毎回、学校側から非常に速いスピードで授業のアンケート結果を頂けるので、それを見ますと、さっき井上先生から効果のアピールがちょっと足りないのではないかという御指摘がありましたけれども、二、三十人の学生さんに対するアンケート結果を見ますと、授業の前と後で意識が変わったか、企業内法務に対する認識が変わったかという質問項目に対して、相当変わったと言っている人が多く、効果を感じます。全然自分たちが思っていたものと違う、ロースクールの授業がこんなに実務で活かせるんだとか、あとは、キャリアについての意見も非常に多くて、インハウスロイヤーになろうと思ったとか、キャリアについての自分の決定を少し変えようと思うということがかなり具体的に書いてあります。卒業してすぐではなくても、将来、インハウスロイヤーになってみたいとかですね。選択の幅が提供できたということで、すごくやりがいを感じるし、リアクションがすぐに分かります。ほかの講師陣もそういったことをよく言っていまして、そうすると、それがもっとできるように自分たちのパーソナルなエピソードを伝えようと思って、講義の内容をアップデートしたりアップグレードしているので、チーム全体でも個々の先生でも自律的に、「次の年はもっとこうしよう、ああしようと」か、ほかの人がそういう話をしていると、「いや、自分もだ」みたいな感じになっていくという相乗効果につながっていると思います。
 
【中川委員】  そうしますと、なかなかメンバー選びは難しそうですね。経営法友会にお願いすればいいという感じではありませんね。
 
【榊原講師(神戸大学)】  そうですね。講師陣も「こういう人の話を聞かせてあげたい」というのがあって、女性の講師が減ってきたら女性を足そうとか、若手のベンチャーに行った人の話を聞かせてあげたいとか、海外の経験がもっと聞きたいのではないかというとそういう話ができる人ということで、常に私もいろんなところで神戸大のOB・OGでいい人がいないか目を光らせていて、いい人がいたら「よかったらどうですか」と声をかけて回るということを中核メンバーのみんながやっています。そういった先生を推薦していくということで、企業内法務経験者だったらいいというものではなくて、そういうインハウスになりたいと思うような話ができる人という基準で私などは依頼しております。
 
【中川委員】  どうもありがとうございます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 
【松下座長】  なかなか真似ができないという話を、今、伺ったような気もします。
 それでは、先ほど確認したとおり御発言のための挙手はないと見ていますが、大丈夫そうですかね。
 それでは、どうもありがとうございました。議事の1については取りあえず以上とさせていただいて、続きまして資料2について、お待たせいたしました、橋本佳幸京都大学大学院法学研究科教授より10分程度御説明をお願いいたします。
 
【橋本教授(京都大学)】  京都大学の橋本でございます。私からは、本法科大学院の教育活動に関しまして、法政策共同研究センターと連携した取組について簡単に御説明いたします。全体の構成につきましてはスライドに掲げておりますので、そちらを御覧いただければと思います。
 早速、内容に入らせていただきます。まずは概要からです。
 法政策共同研究センターは、2021年の4月、先端的法政策課題について学際的・国際的共同研究を行うための拠点として設立されました。現在のセンター長は、本法科大学院等特別委員会の委員でもある土井真一教授です。
 設立の背景につきまして、現在の日本あるいは世界は、科学技術の急速な進歩、グローバル化の進行、地球環境の変動、急速な少子高齢化といった社会システムの変化によりまして、幾つもの先端的な法政策課題に直面しています。これらの法政策課題に対応するため、社会実装につながる新たな法制度を構想することが、法学・政治学の喫緊の課題となっております。本センターの設立はこういった課題に取り組むことを狙ったものです。
 次に、本センターの目的です。先端的な法政策課題について学際的かつ国際的研究に取り組み、法制度の設計・運用の提案、あるいは国際ルール・国際標準の構築等に向けた役割を果たすこと、さらには新しい学問領域を担う次世代の研究者を養成することを目的としております。こういった目的を実現するために、センターの事業としましては、文理融合を含む学際的な研究・教育、国際的な共同研究・発信、研究者と実務家の共同研究・教育等、これら三つを柱としています。
 これらの事業の中心となる研究活動について説明しますと、センターでは、現在、四つの研究ユニットがそれぞれの研究課題に取り組んでいます。なお、四つのユニットは固定的なものではございませんで、センターが取り組む法政策課題に応じて適宜組み替えることを予定しております。
 各ユニットの現在の研究内容につきましては、スライドに記載のとおりです。人工知能と法ユニット、医療と法ユニット、環境と法ユニット、少子高齢化社会と法・政治ユニット、この四つがそれぞれ、法制度の設計・運用についての学際的・国際的研究を進めています。
 また、センターでは、研究活動その他の事業を遂行するために、ユニットを横断する組織として三つのセクションを置いております。
 一つ目の文理融合実証研究セクションは、データ・サイエンスや実験社会科学の手法を用いた学際的な共同研究を駆動して、法政策に関する実証的な方法論に基づく研究を推進する組織になっております。数理法学、実験法学を扱う専門家が既に配置されていますほか、フィールドワーク法学、設計法学の専門家につきましても配置を予定しています。
 二つ目の法文化国際研究セクションは、研究成果の国際的発信力を強化するための組織になっております。国際的な拠点の形成に向けた連携、あるいは若手研究者の国際交流の推進を担っております。
 このほか三つ目に政策実務教育支援セクションがございまして、法科大学院や公共政策大学院の実務家教員が所属しております。
 さて、以上に説明しましたセンターの設立や研究活動といったものには、これからの法曹が果たさなければならない役割も示されていまして、法曹養成を目的とする京都大学法科大学院での教育活動にとりましても重要な意味を持っています。といいますのも、法曹の基本的な職務は法的紛争の予防及び解決ですけれども、これからの法曹は、これらの基本的な職務におきましても国際的な視野を要求されることになります。たとえ国内紛争でありましても、国際ルールや国際標準を意識した解決が必要になってまいりますし、紛争当事者が企業ですと、その紛争が国境を越えて法的あるいは経済的な影響を及ぼす可能性が高いことに留意して行動する必要がございます。
 また、今後の法曹の職務は、既にある法律、あるいは法制度の適正な運用にとどまるものではありません。AIをはじめとする科学技術の進展によりまして、何らの法ルールも存在しないような分野において、諸外国とも連携しつつ、公正かつ効率的なルールや標準をつくり出すことが求められる場面も大変多くなっております。
 こうした場面でエビデンス・ベースでの政策決定を行うためには、前提となる事実に関する実証研究や、ある制度を採用した場合の効果に関する経済分析といったものが必須となってまいります。そうしますと、法律家にも今後は、理系分野を含む他の学問分野の知見や分析手法を活用する能力が要求されることになると思われます。
 ところが、これらに必要な国際的視点や法政策的視点、学際的知見は、予備試験や司法試験の合格で担保されるものではございません。ここには、法曹資格を得た後の活躍を見据えて行われる法科大学院での教育こそが、その役割を果たすべき領域だと考えられるところです。そこで、京都大学法科大学院におきましては、センターと連携して法政策研究の成果を法科大学院での教育に還元し、また、学際的な視点を法科大学院の教育活動に取り入れる取組を始めました。
 これまでの具体的な取組としまして、法科大学院では、センターに配置される教員が担当する先端的・学際的科目を幾つか新規に開講しており、あるいは今後開講予定です。
 一つ目の「法律家のための経済学」は、2024年に経済学専攻の教員が新規で着任して当該科目を担当しております。二つ目の「環境法1、2」も、同じ24年4月に環境法専攻の教員が着任して授業を担当しております。環境法はこれまで非常勤講師で開講しておりましたけれども、今後、安定的に当該科目を開講できるということで、大変安堵しています。
 これ以外に、今後、センターに配置される教員による新規開講が具体的に見込まれている学際的な科目がございます。法と心理学に関する科目、データ・サイエンスの基本を学ぶ科目、法のデザインをデザイン工学から学ぶ科目、こういったものにつきましても新規に教員を得て開講したいと考えています。最後に挙げましたような今後の開講見込みの科目まで揃う段階になりますと、法科大学院生が在学中に文理融合的な実証研究手法を学ぶことが可能になりまして、科学技術等の発展に対応した法制度の設計・運用、あるいは先端的法政策課題に取り組む能力を在学中に身につけることができるようになると思います。
 このほか、センターにおきましては各研究ユニット等で開催されております講演会や研究会、国際シンポジウム等を法科大学院生にも開放しまして参加を促しています。最近の例を幾つかスライドに掲げております。
 法科大学院の学生には、こういった研究集会等への参加を通じて先端的な法政策課題についての知見を獲得し、また、グローバルな法的課題への関心を抱いてもらいたいと、法科大学院としては考えています。
 最後に、今後の拡大可能性としまして、将来的に可能性があるセンターとの連携の取組のアイデアを二つ掲げております。あくまでアイデアの段階でございまして、現時点でこれらの取組を具体的に検討できているものではございません。・ 
 一つ目は、センターと協力して、先端的課題を経験するようなエクスターンシップを実施するというものです。センターと共同研究を実施している企業の研究開発部門や環境保護に取り組むNGO組織といった、先端的な課題に向き合う現場への短期のエクスターンシップを実施することができれば、それらの課題に法学がどういった形で貢献できるのかを体得することができて、教育上も有用であろうと考えられます。
 もう一つは、センターと共同研究をしている海外の研究者によるセミナー、シンポジウムなど、法科大学院の学生が国際的な研究集会・研究活動に参加する機会をさらに拡大することです。また、こちらは少し時間かかりそうですけれども、将来的にセンターの活動の国際的な展開と組み合わせることができれば、共同研究を行う大学との間で法科大学院生の短期留学制度といったものも考えられるかもしれません。
 最後に、展望について少しだけ書いております。
 京都大学法科大学院におきましては、「様々な分野で指導的な役割を果たす創造力ある法曹を養成する」という教育目標を掲げています。今御説明しましたようなセンターとの連携による取組が期待どおりの成果を上げますと、本法科大学院の教育を通じて、法曹資格を有し、かつ、先端的な法政策課題に取り組む能力を有する者を養成することができるようになりまして、こうした我々の教育目標の実現に一歩近づくことになります。また、学生にとりましても、そういった能力を在学中に身につけることができますと、将来のキャリアの選択肢が広がることになりますので、法科大学院で学んで、そこを修了することの付加価値も高まるかと思います。
 さらに、連携しているセンターにとりましても、法科大学院の修了者が実務家としてセンターでの共同研究に参画して法政策研究に寄与することが期待されます。既に現時点におきましても、センターの活動につきましては未修者を含む法科大学院出身の弁護士の方に多数関与していただいておりまして、省庁、民間企業や、医学研究科等の他の研究科などと連携を深めています。センターと法科大学院との連携が進みますと、一層こうした形での実務と理論の架橋が加速されるものと考えられます。希望的にすぎるかもしれませんけれども、法科大学院としましてはこういった成果が上がるようにセンターと連携した教育上の取組を進めていきたいと考えています。
 私からの御説明は以上のとおりでございます。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの橋本京都大学大学院法学研究科教授からの御説明につきまして、御質問、御所感等があればお願いしたいと思います。繰り返しで恐縮ですけれども、御発言1回当たり二、三分めどで、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、御発言の希望の方は挙手をお願いいたします。
 それでは、大貫委員、お願いいたします。
 
【大貫委員】  橋本先生、どうもありがとうございました。中央大学の大貫と申します。大変興味深い試みを拝聴いたしました。
 法政策共同研究センターは様々なことをなさっていますけれども、文理融合、国際、それから実証研究などの観点から研究されていて、敷居を越える、際を越えるということが一つのコンセプトだなと思いました。私の知るところ、京都大学というのは学際融合教育研究センターなども持っていらして、学際融合研究の最先端を走っておられますが、まさにそれを反映したような研究センターだと拝察いたしました。この研究センターと共同して行う教育は、うれしいことをおっしゃってくださいましたけれども、法科大学院教育によってのみ身につけられるということで、法科大学院の教育のよさをアピールできるのではないかと思いました。これは感想でございます。
 小さい質問ですけれども、2点お尋ねします。通しページで26ページに、実際に先端的・学際的科目を開講したということが書かれております。法律家のための経済学、それから環境法1、2とありますが、中央大学においても学際的な科目を開講しておりますが、なかなかこれは難しいところがございます。この1、2というのを既にやっていらっしゃって、始まったばかりのようですが、どのような工夫をされているのか、どのような苦心があるのかをお教えいただけないでしょうか。
 この質問と密接に関わるのが、環境法1、2というのはこれまでも法科大学院にはこの科目があったはずですので、とりわけ連携した教育活動ということでこの二つの科目にどのような特色が現れているのか御教示いただけると幸いでございます。
 それからもう一つ。これで三つ目になりますかね。27ページにこれまでの取組として幾つかのシンポジウム等が挙げられていますけれども、これに法科大学院生が参加したときの評価はどのようなものであったのかをお教えいただけないでしょうか。
 以上3点です。よろしくお願いいたします。
 
【松下座長】  ありがとうございました。それではよろしくお願いします。
 
【橋本教授(京都大学)】  御質問どうもありがとうございます。
 まず、26ページに示した開講科目、「法律家のための経済学」と「環境法1、2」について御質問いただきました。
 「法律家のための経済学」ですけれども、この科目は後期開講でありまして、現時点で履修者が何名といったデータはございません。今年の後期に初めて開講していただくものでございます。
 もう一つの「環境法1、2」は、昨年度でいきますと、「環境法1」は20名程度、「環境法2」は10名程度の履修者がございます。一昨年までは「環境法」と「環境政策と法」が「環境法1」「環境法2」に対応する科目として開講されておりまして、新しく環境法の専任の先生にセンターに御着任いただくことを前提に、昨年度から「環境法1、2」という科目に組み替えました。そういう意味では、そこが成果ということになると思います。
 組み替えた科目の内容ですけれども、「環境法」と「環境政策と法」というもともとの組合せですと、「環境法」が私法を中心とする科目、「環境政策と法」がいわゆる環境公法を中心とする科目になっておりまして、どちらの科目についても非常勤をお願いして対応してきたのですが、現在の環境法を取り巻く状況を見たときに、環境法を私法分野を中心に研究している教員が担当することが適当なのかといった観点から環境法の構成を見直しました。
 また、講義科目としては「環境法1、2」が開講されていますけれども、さらに「環境法事例演習」という科目が実務家担当の演習科目として開講されておりまして、そちらの内容につきましても、従来ですとどちらかというと私法寄りだった教育を、担当者を全て入れ替える形で思い切った内容の組替えを行っていただきました。
 以上が二つ目の御質問へのお答えになるかと思います。
 三つ目の御質問は、27ページ目、講演会、研究会等への参加の状況ですけれども、スライドに人数を書き込んでおりませんことには理由がありまして、全体として何名出席していたか、つまり、教員、学生を含めて何名いたかは事務部でも把握できておりますけれども、研究科の学生と法科大学院の学生の内訳までは把握できておりませんでした。こちらは、もう少しデータをしっかり取っておくべきであったところですけれども、現状、どの講演会に何名法科大学院から学生が参加しているかは残念ながら数字がございません。
 
【松下座長】  ありがとうございました。大貫委員、よろしいでしょうか。
 
【大貫委員】  どうもありがとうございました。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。
 ほかの委員からの御発言はいかがでしょうか。私のほうでは取りあえず挙手は確認できておりませんが。
 それでは、大貫委員、お願いいたします。
 
【大貫委員】  発言ではなくて、土井先生がセンター長をされているということなので、もし可能であれば補足的な説明を頂戴できるとうれしいです。
 以上です。
 
【松下座長】  ということですが、土井先生、突然振ってもよろしいでしょうか。
 
【土井座長代理】  センター長を務めております土井です。
 先ほどの大貫先生の御質問に対して少し補足ですが、環境法の担当の先生とお話ししている中では、従来、司法試験の選択科目ということもあって、環境法の試験に向けて授業を充実させていく必要があるとお考えのようですけれども、それを超えた部分もしっかりしていかないと、今後の環境法、あるいは環境法政策への適切な対応は無理だろうとお考えのようです。例えば、アメリカの主要なロースクールなどに比べても、エネルギー法、あるいは気候変動法を含めて、環境問題全体を見渡してそういう課題に取り組んでいく授業が少ないと認識されておられるようですし、実際、環境の問題を取り扱っていくことになると、法学内部で閉じるわけではなくて、当然、自然科学の先生方の研究等とも結びつけていかなければならないことを認識されております。今後、どのような形で、ロースクールで提供する環境系の科目を展開していくのかについて御検討いただいている段階です。
 それから、27ページのところに上がっている研究集会等への法科大学院生の参加ですが、数の問題につきましては先ほど橋本教授から御説明のあったとおりですけれども、私もこの中では人工知能技術及びその法的問題への適応に関する連続講義に何回か出ておりました。これはChatGPTを含む生成AIがどういう構造を取っているのか、AIを利用することによって、例えば、企業のコンプライアンスに関する問題についてどういう応用が可能かなど最先端の授業をされておられました。法解釈学や司法試験の問題には全く関係のない授業ですけれども、それなりの法科大学院生が実際に出席していましたので、このような分野に関心を持っている学生もいると思います。
 また、法政策的課題と申し上げましたけれども、同時に、企業からすると、そこはビジネスチャンスのあるフロンティアになりますので、最先端の状況を認識しながら、そこに対してどのような法的規律を課していくのか、あるいは別の言い方では、どのような法的サービスを提供することによってその分野を切り開いていくのかという視点は非常に重要になります。今ここに出ているような課題は、法科大学院の教育課程で扱うべきなのか、次の教育課程で本格的に取り組むことにして、法科大学院では、そちらに学生の関心を引きつけていくためのイントロダクション的なものを提供していくことが重要なのか、しっかりと役割分担を考えなければならないと思っていますけれども、法曹、あるいは法学研究者の視野を広げていくことは、法学研究にとっても法律実務にとっても重要なことだと思って、センターの活動を行っています。
 以上です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。自分が学生のときにこういう授業があったらなとつくづく思いましたけれども。
 御発言御希望の挙手は私のほうでは現時点で認識していませんが、御発言はよろしいでしょうか。
 すみません、私が先を急ぐようなことばかり申したので皆さん御遠慮されているのかもしれませんけど、それでは、必要に応じてまたこの議事に戻ることもあり得るということで、次に進ませていただいてよろしいでしょうか。
 それでは、次の議事の2に進ませていただきます。
 議事の2は、法科大学院教育を担う教員(研究者)の養成・確保についてです。
 それでは、資料3に基づいて事務局から御説明をお願いいたします。
 
【保坂専門職大学院室長】  事務局でございます。資料3関係を御説明させていただきます。
 資料3-1、通し番号で31ページとなります。
 法科大学院教育を担う教員研究者の養成・確保につきましては、今期の初めに事務局から提出させていただきました、主な論点案に含まれていたものです。昨年12月に関連のデータを出させていただきましたが、今回、議事として設定させていただきました。
 資料3-1の総論の部分は今期の初めの主な論点案から抜粋したものです。以下、四つの各論を設定しております。
 各論の一つ目、高度専門職業人の養成を目的とし、議論と実務を架橋する高度な教育を行う法科大学院において、教員(研究者)の養成に関する取組を行うことの意義について、法学研究科の修士課程・博士前期課程との役割分担を踏まえ、どのように考えることが適当かという論点案を設定しております。
 以降、三つはより具体的な論点案となっておりまして、二つ目が、法科大学院のカリキュラムにおいて、学生に法学研究科への関心を喚起するとともに、研究者としての素養・適性・能力を見いだすために、どのような取組・工夫が考えられるか。
 三つ目は、法科大学院において、より効果的・効率的に取組を進めていくことを目的として、複数の法科大学院間や法学研究科(他大学も含む)の修士課程・博士前期課程とどのような連携の可能性が考えられるか。また、博士後期課程との円滑な接続のために、どのような方策が考えられるか。
 四つ目は法科大学院修了後、一定期間の実務期間を経る中で、法学研究者や法科大学院の教員への関心を抱いた者などに対し、博士後期課程への進学を後押しするためにどのような取組・工夫が考えられるか。
 こういった論点案を、今日の御審議の参考として御用意をしております。
 続いて、資料3-2、33ページを御覧ください。以降、御参考として2種類の資料を用意しております。
 一つ目は34ページ以降になります。文部科学省では、盛山大臣の下、産業界や大学関係者、博士課程学生の方とも議論を重ねまして、本年3月に「博士人材活躍プラン~博士をとろう~」を取りまとめました。
 36ページに意義・目的をまとめております。社会がより高度化かつ複雑化する中、大学院教育において博士人材が必要な力を身につけられるようにするとともに、社会全体で博士人材の価値を共有しながら、国内外の様々な場で活躍できる環境を構築することにより博士人材の増加を図ることが必要としております。このため、文部科学省において、大学関係者、産業界の方々とともに関連の取組を進めていくこととしております。内容につきましては適宜御参照いただければと思います。
 続いて二つ目、52ページを御覧いただければと思います。こちらは昨年12月、大学分科会の下にある大学院部会において取りまとめられました「人文科学・社会科学系における大学院教育の振興方策について(審議まとめ)」の概要となります。
 人社系の大学院は学位取得までの期間が長く、体系的・組織的な教育研究の取組が十分とは言えない、修了者のキャリアパスが見えにくく、多様な活躍の場と機会が可視化・定着していないなどの現状にあります。社会的評価や認知の不足、大学院教育そのものへの課題への対応として、以下、53ページや54ページにあるように、具体的な方策がまとめられております。こちらも適宜御参照いただければと思います。
 ただいま御紹介した2種類の資料は、博士課程の出口を特に意識をして取りまとめられております。法科大学院教育に関して御審議をいただく本委員会におきましては、特に入り口の段階、すなわち法科大学院において博士後期課程への接続を念頭にどのように取り組むかという観点から御審議いただければと考えております。
 資料55、56ページにおきましては、これからこの後御発表いただきます京都大学の取組も含め、その他の大学における取組例も記載をしておりますので、御参照いただければと思います。
 事務局からは以上です。よろしくお願いいたします。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。
 それでは続きまして、資料4について、再びですが、京都大学大学院法学研究科の橋本教授より御説明をお願いいたします。
 
【橋本教授(京都大学)】  では、再びとなりますが、本学での法学研究者養成の取組について御説明いたします。全体の構成は先ほどと同様にスライドに掲げておりますので、そちらを御覧ください。
 内容に入りまして、まずは取組の概要からです。
 京都大学大学院法学研究科・法科大学院におきましては、特定研究学生制度などの各種の取組を組み合わせて実施することによりまして、これまで比較的安定した水準で法学研究者・法学教員の養成について成果を上げております。
 その経緯につきまして、研究者養成の取組は、平成23年度からの「法科大学院制度下における実定法学後継者養成のための全国的拠点の形成プロジェクト」に始まります。法科大学院制度の発足後、研究者養成の実績がある主要な大学におきまして、法科大学院修了後に博士後期課程に進学して法学研究者を目指す者がほとんど現れなかった、そういった危機的状況を受けまして、このプロジェクトにおきましては、全国の大学において実定法学後継者を得ることができるように、京都大学の法学研究科が法学研究者の養成拠点となることを目指したものです。その後、このプロジェクトは平成29年度からの「国際競争力・貢献力ある法学研究者養成拠点の形成プロジェクト」に引き継がれております。また、令和3年度以降におきましては、4月に新設されました法政策共同研究センターによる若手研究者支援事業も組み合わせて実施しています。
 続いて、目的につきまして、これらの取組を通じまして、我々法学研究科・法科大学院は、特に実定法学の研究者について、法科大学院を経て3年の博士後期課程に進学して博士学位を取得してから教職・研究職に就く、こういった研究者養成のプロセスを確立することを目指しております。こういったプロセスを確立することによりまして、理論と実務の双方に精通した法学研究者を養成して、次世代の法学教育・法科大学院教育の担い手となってもらおうと考えています。
 これを実現するための中心的な取組が、博士後期課程進学についての強力な経済的支援策でありまして、特定研究学生制度と呼んでおります。以下、その内容を御説明いたします。
 特定研究学生は、法科大学院を修了して京都大学大学院法学研究科の博士後期課程に進学・編入学する学生から採用されます。実定法学に限っておりませんで、基礎法学の専攻でも採用されます。また、京都大学法科大学院からの進学者だけではありませんで、ほかの法科大学院からの編入学者もこの制度の対象になります。これまでの採用状況ですけれども、特定研究学生としての採用を希望して認められなかった者はございません。
 特定研究学生としての採用期間ですけれども、こちらは、原則、博士後期課程の3年間となっております。もし3年以内に論文を完成することができなかった場合につきましては、1年間に限って採用期間の延長が認められます。また、出産・育児、病気、留学などの理由で休学する場合につきましても、採用期間の停止・再開といった仕組みを設けまして、学生それぞれの事情に配慮しています。
 次に、経済的支援の内容につきまして、特定研究学生に採用されますと、スライドの①から④までの支援を受けることができます。
 まず一つ目、リサーチ・フェローを委嘱されて自分の研究計画に関連する研究プロジェクトを遂行することによって、月額単価の支払いを受けます。また、二つ目としまして、オフィス・アシスタントとして雇用されまして、法学未修者教育の補助業務を行うことで給与の支払いを受けます。これら①と②を合計しますと、平均して年額300万円以上になります。これに加えまして、③の研究活動経費と④の語学研修費ということで、合わせて年額100万円の配分がございます。さらに、特定研究学生制度とは別になりますけれども、特定研究学生に採用されますと学費免除の要件を満たしやすくなりますので、京都大学から大学院の授業料について全額免除または半額免除を受けることが通例です。
 以上のとおりで、特定研究学生に採用されますと、その場合の経済的な処遇状況というのは特定助教に採用された場合とそれほど遜色ありませんで、期間中、研究に専念することができるようになっております。
 続いて、博士後期課程での科目の開講等について御説明します。
 博士後期課程におきましては、法科大学院から進学・編入学した1年次生のために、外国法についての導入科目を開設しております。博士論文は、多くの場合、外国法を素材として研究を進めることになりますけれども、法科大学院からの進学者あるいは編入学者は、法科大学院の在学中、外国法あるいは外国文献に触れておりません。そこで、それらの学生が外国法研究に取り組む手助けとなるように、「外国法概論」及び「外国法文献読解」という科目を開講しております。
 まず、「外国法概論」ですけれども、こちらは比較法的研究の基礎知識と手法を身につけるためのものでありまして、英米法概論、ドイツ法概論、フランス法概論が開講されてきました。現在は担当者の関係でフランス法概論だけが開講されております。
 二つ目の「外国法文献読解」ですけれども、こちらは外国語の専門文献の読解力を向上させる科目でありまして、新入生の指導教授がそれぞれの学生のために開講しております。事実上、ほぼ個別指導となっています。
 また、法科大学院から博士後期課程に進学あるいは編入学した学生につきましては、国際的な研究活動への参加の機会も提供されております。二つ掲げておりますが、ウィーン大学との国際共同セミナー、こちらは毎年夏に開催されておりまして、継続的に大学院生が参加しております。また、法政策共同研究センターの若手研究者支援事業から、短期在学研究のための旅費の支援を受けることができる制度も、新しく設けたところです。
 続いて、課程の修了後につきまして、博士後期課程の修了者、つまり博士学位の取得者は、京都大学の特定助教、任期付の助教ということで特定助教と呼んでおりますが、特定助教に採用されまして、その任期中に他大学等の教員ポストに応募することになります。もちろん、修了後直ちに京都大学准教授、または他の大学の教員に採用される場合もございます。
 特定助教の任期は原則3年、必要があるときは1年の延長が認められまして、ポストに余裕があればさらに1年の延長が認められます。特定助教につきましては、法学未修者教育の補助の業務と試験監督の業務を行ってもらっています。それ以外は基本的に研究に専念すればよいことにしておりまして、授業等の業務はございません。
 なお、特定授業のポストにつきましては、法政策共同研究センターからも若手研究者支援事業の枠組みによってポストの提供を受けています。また、センターの若手研究者支援事業との関係で言いますと、特定助教も先ほどの特定研究学生と同じように短期在外研究のための旅費の支援を受けることができまして、外国で開催されます学術研究集会への出席、あるいは外国の研究機関での意見交換、資料収集などのための経費の支援を受けられます。
 今度は進学の前の段階に戻りまして、法科大学院の在学生に対する進学の働きかけにつきまして、法科大学院では理論系の科目、あるいは英語科目を開講することで研究への関心を促し、また、研究者志望の学生のニーズにも応えています。
 まず、「○○法理論演習」、例えば、民法理論演習や憲法理論演習ですけれども、そういった科目は大学院の授業科目を法曹養成専攻との共通科目として開講するもので、法科大学院の学生が修士課程・博士後期課程の大学院生と同じ授業に参加する形になります。従前は3年次を対象に開講しておりましたけれども、司法試験の在学中受験が開始されたことに伴いまして、昨年度から、2年次後期から履修を認めています。
 二つ目の「リサーチ・ペーパー」は、一部の、といっても数はかなり多いのですが、一部の選択科目について、1万字程度のリサーチ・ペーパーを提出して、合格した場合に単位を認めるという仕組みになっております。学生が自ら新しい問題を発見して、それに取り組むことを通じて研究の面白さを味わわせて、また、論文作成の訓練をさせるという科目になっております。
 三つ目は、英語による授業科目ということで、スライドに挙げました科目を専任の外国人教員によって開講しておりますほか、同志社大学法科大学院から提供される集中講義として「外国法演習」も開講しております。「外国法演習」につきましてはアメリカの大学教員が担当しております。
 続きまして、進学に関する情報提供ですけれども、法科大学院の学生に対しましては、法学研究者という進路を具体的に意識させるために、進学説明会の開催や進学案内パンフレット等による情報提供も積極的に行っています。
 まず、研究者養成制度の説明会を年2回開催しております。説明会におきましては、博士学位取得の割合や研究者への就職状況など進学後の見通しを数字で示すと同時に、また、特定研究学生や学位取得後間がない助教との懇談の場も設けまして、学生側の漠然とした不安を払拭するように努めています。
 二つ目の進学案内のパンフレット、「法科大学院から博士後期課程への進学案内」というパンフレットでは博士後期課程への進学に関連する情報をまとめまして学生に提供しております。また、特定研究学生制度につきましてはウェブサイト上でも詳しく紹介しているところで、博士後期課程の編入学を志望する他の法科大学院の学生さんに対する広報としております。
 続きまして、成果に入らせていただきます。本法科大学院から法学研究科法政理論専攻博士後期課程に進学した者の数ですけれども、平成23年に特定研究学生制度を導入していますので、そこから現在までの14年間で数えますと、54名が進学しています。1年当たりで言いますと平均で3.71名という数字になります。
 次に、学位の取得者ですが、法科大学院から法政理論専攻博士後期課程に進学あるいは編入学した者の学位取得状況はスライドの表のとおりです。
 まず、法科大学院から進学・編入学した者の総数が54名。在学中の者は除いております。そのうち学位を取得した者は40名で、中途退学した者が14名です。学位取得者40名のうち、在学期間3年で取得した者が28名、3年を超えて在学して取得した者が12名となっております。また、中途退学者が14名おりますが、うち3名は研究職への就職、つまり、いずれかの大学に教員のポストを得て就職したために退学された方です。
 続いて就職状況に移ります。法科大学院から法政理論専攻博士後期課程に進学・編入学した学生につきまして、学位取得後の就職状況をまとめますと次のような数字になります。
 まず、修了者の2割程度は、修了後、直ちに教員に採用されておりまして、京都大学の准教授に3名採用されていますほか、ほかの大学で教員をされている者もいます。残りの8割も、まずは京都大学で特定助教の職を得ておりまして、その特定助教の任期、例えば3年の間に他大学の助教や講師、あるいは准教授に採用されています。なお、スライドにウェブのリンクを付けておりますが、最近の修了者の就職先や、その後の異動状況につきましてウェブサイトで紹介させていただいております。
 最後に課題と展望ということで、まずは課題に触れております。2点掲げております。
 特定研究学生制度による経済的支援をはじめとしまして、各種の方策は研究者志望の法科大学院生には十分に訴求力があるだろうと考えております。ただ、研究者の進路と弁護士などの実務法曹の進路をてんびんにかけている法科大学院生にとりましては、必ずしも魅力的ではないとも言えます。つまり、同期生が社会人になる中で、一人だけ学生、あるいは無職の身分が続くことになりますし、また、教員におきましても、博士論文が必ず書けてよい就職先がある、そこまで断言して保証することまではできません。
 二つ目として、法科大学院を中退する学生、あるいはそもそも入学してこない学生に対するアプローチが問題となります。
 法曹コースの設置と司法試験の在学中受験の開始に伴いまして、法曹を志望する学部学生の多くは法科大学院に進学して司法試験の合格を目指すようになっています。他方で、目的意識がとてもはっきりしている学部学生の中には、学部の入学直後から予備試験の合格を目指す者もおりまして、そのため、法科大学院を経由して博士後期課程に進学させるといった研究者養成のルートだけですと、一部の学生を取りこぼしてしまいます。
 これらの課題につきましては、現在可能な一定の方策も講じているところでありまして、まず、二つ目の課題との関連でいきますと、法科大学院を中退した場合にも博士後期課程への編入学ができるように博士後期課程の出願資格を広げております。また、テニュアトラック制というものが適用される助教ポストを設けまして、特に優秀な法科大学院の修了者、あるいは中退者、さらに学部学生などをそのまま助教に採用することができるように仕組んでおります。
 また、一つ目の課題との関係でいきますと、先ほど御説明しました法政策共同研究センターとの連携を生かしまして、法科大学院の学生の研究関心を高めることに努めております。先ほどの御説明と重なりますけれども、センター所属の教員に法科大学院において先端分野・学際分野の科目を新規開講していただいたり、あるいは、センターで開催される研究集会・講義等を法科大学院学生にも開放して自由に参加してもらっています。
 最後に、今後の展望あるいは目標としまして、京都大学大学院法学研究科・法科大学院におきましては、以前からの取組にこういった施策を組み合わせることによりまして、研究者養成について次世代の法学研究・法科大学院教育のために従来以上の成果を実現したいと考えています。
 私からの御説明は以上のとおりです。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの事務局と橋本教授からの説明につきまして、御質問、あるいは御所感等があればお願いします。時間の関係もありますので、手短にお願いをいたします。
 それでは、清原委員、お願いいたします。
 
【清原委員】  ありがとうございます。それでは、まず事務局に御質問させていただきます。
 保坂さんから説明いただきました31ページの、法科大学院教育を担う教員(研究者)の養成・確保についての論点案、大変よくまとめていただいてありがとうございます。
 法科大学院開設20年、そして、この間、法曹コースの開始や在学中受験などの大きな変革の中で、改めて継続性・発展性の観点から「教員(研究者)の養成・確保」は重要な課題です。総論のところに遠慮がちに、「何らかの課題が見られる場合には、これに対応するための方策としてどのようなものが考えられるか」と書かれていますが、私はぜひ、この特別委員会では、積極的に課題を発見して提案をしていく姿勢を共有したいということが第1点です。
 そこで質問ですけれど、実は本日は併せて55ページ以降に、この取組の一環として東京大学等をはじめとする各大学の取組を紹介してくださっています。この間、「法科大学院公的支援見直し強化加算プログラム」の取組の中で、このような「教員(研究者)の養成・確保」について一定の加算の方向性というか、そういうのはございましたでしょうか。あればうれしいですが、ない場合には、私たちが特別委員会で検討することによって、ぜひその内容として、将来的に「教員(研究者)の養成・確保」についても積極的なプラスの加算があればいいなと思ったものですから、1点確認をさせていただきます。
 2点目は、橋本先生、御説明ありがとうございます。橋本先生に2点御質問させていただきます。
 31ページの論点案の観点から質問させていただければと思います。一つは、本当にありがたいことに、この間、法学研究者への関心を高めるために、法科大学院から博士課程に進学する学生を一貫して支援してくださいました。通し番号の31ページです。
 京都大学におかれても、教育補助員としての経験を重ねることで、研究者の学びだけではなくて、教育も経験できるような配慮をされたりしていろいろやってこられました。特に、私の経験でも、私は法学研究科政治学専攻の修士課程(現在の博士前期課程)から社会学研究科の博士課程に円滑に移行できたおかげで専攻を変更しても学びが順調でしたけれども、この法科大学院から法学研究科の博士課程への移行を円滑化する上で、特に配慮されたことはどんなことでしょうか。
 また、私が気にしておりますのは、法科大学院の教員は司法試験に合格していることが望ましいとされているのか、いや、研究者として博士学位を取れば司法試験に合格していなくても学生には受け入れられるのか。要するに、司法試験合格と博士の学位との関係についてコメントがあれば教えていただければと思います。
 2点目は、最後の〇の実務者の博士後期課程への進学への後押しです。
 本日紹介があった神戸大学の取組でも、OB、OGの方がチームとしてよりよい教育をしてくださっています。その方の中から、京都大学の場合もそうだと思いますが、ぜひ法科大学院の教員になりたいといった場合、この各論の最後の〇ですが、「実務経験を経る中で博士後期課程へ進学していただいて教員になっていただく」というルートも、もっともっと開かれていいのではないかなと思います。当初、多くの実務家に教員となっていただきましたけれども、より一層、実務経験者が正式な教員になれるルートについて、取組の中でヒントをいただければありがたいと思います。
 以上2点です。よろしくお願いします。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、事務局、そして、続いて橋本先生からお願いいたします。まず、事務局、お願いいたします。
 
【保坂専門職大学院室長】  事務局です。法科大学院公的支援見直し強化加算プログラムにおいて、法学系の教員養成に関するような取組も対象になっております。実際、今回の55ページ、56ページの資料は、今回の資料5-9で法科大学院公的支援見直し強化加算プログラムの審査結果をお付けしていますけれども、基本的にはこちらに書かれているものから持ってきたものです。
 加算プログラムについてはこれまで5年計画でやってきまして、令和6年度からまた新規5年が始まるということになっております。各大学院に御協力いただきまして、現在、計画の内容の公表に向けて作業中ですけれども、これからの5年間の計画でも対象にするように臨んでおります。
 以上です。
 
【清原委員】  よかったです。確認できて助かりました。ありがとうございます。
 
【松下座長】  それでは、橋本先生、続けてお願いできますでしょうか。
 
【橋本教授(京都大学)】  2点御質問いただきました。
 まず1点目は、司法試験に合格していることと博士学位の関係について御質問いただきました。
 私は民法を担当しておりますが、実定法学、とりわけ民法で言いますと、法科大学院を修了したにもかかわらず司法試験に合格していない方が民法の教員になることは考えにくいと思います。法科大学院で教鞭を執る以上は、当然、司法試験の合格は、絶対とまでは言いませんが、合格しておくべきものと、個人的には考えております。基礎法の分野では事情が違うのかもしれませんけれども。
 2点目は、実務経験を経た上で博士の後期課程へ進学するルートについての御質問でした。そういう場合は博士後期課程への編入学となりますが、先ほども御紹介しました「法科大学院から博士後期課程への進学案内」という学生向けのパンフレットにも、修了後にもし研究者になりたいと思った場合には、そういう道があるのでぜひ使ってもらいたいという説明をしています。
 具体的には2つのやり方がありまして、まず、本法科大学院から博士後期課程に進学する場合には学内成績が良ければ書類選考で進学できる仕組みになっていますけれども、修了後2年以内ですと、そういった書類選考による編入学の道がなお認められるという形で編入学しやすくなっています。これが1つ目です。
 2つ目は、博士後期課程に社会人特別選考で編入学していただくというものです。こちらは、司法修習後、2年以上の実務経験がある方に、実務経験を踏まえて博士論文を執筆していただくための仕組みとなっています。弁護士の方が在職のまま論文を執筆して学位を取得されることを想定しています。こういったルートを使って研究者の道に進んでいただくことも可能になっています。
 
【清原委員】  御丁寧に御説明をありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。
 
【松下座長】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして中川委員、お願いいたします。
 
【中川委員】  中川です。事務局に一つ、それから京都大学に三つ、それぞれ短い質問をさせてください。
 まず、事務局へです。先ほど清原委員から御発言のあった加算プログラムにおける教員養成の取扱いに関係して、事務局から御説明いただいた盛山大臣プロジェクトと申しますか、実務における博士号の意義づけといいますか、そこはもう少し重要なのではないか。そういうプロジェクトと同じようなものとして私たちはトップロイヤーズプログラムという実務家向けの博士号というのを何年かやっていて、なかなかうまくいっていますけれども、それが法科大学院の学生にもちょうどいい研究への意義づけといいますか、実務と研究がちょうど重なる部分を、実務家向けの博士課程プログラムなんですが、それを法科大学院生にも聞かせるということをやって、実務と関係しながらも一つの研究の意義づけという感じで扱っています。それは法科大学院の加算プログラムとしてカウントされるのかを、ちょっと技術的ですけど質問させていただきたいと思います。
 続いて、京都大学への質問ですけれども、まず一つは、特定研究学生――すなわち、ニアリーイコール博士課程後期への基本的には法科大学院からの実定法分野を中心とする学生の数だと思いますが、毎年3.7名ぐらいとおっしゃられたと思います。この数は京都大学さんから見て、全国に研究者を配給するというか、そういったお立場だと思いますけれども、足りているとお考えかどうか。いろいろ法分野は増えていく一方ですし、それに対して3.7名で、法学の分野的にも数量的にも、教員が十分供給できる人数と感じられるかどうか。直感的な話になるかと思いますが、それが1点目です。
 2点目は、特定研究学生の財源です。プロジェクトがあるとおっしゃられたと思いますが、これは申請して取れるか取れないか分からないという感じでやられているのか。それだと結構これは厳しい綱渡りだと思いますけれども、財源をどのように確保されているかというのが2点目です。
 3点目は、私たち神戸大学でも研究者を希望する学生は一定数毎年いますけれども、もちろんお金の問題もありますが、最大のネックは、不安感なんですね。研究者というものが何なのかがよく分からない。他方、平気な顔と言ったらおかしいですけれども、別にそんな不安感を持たずに博士課程後期に入ってくる学生もいます。そういう人は、よく聞くと、大体親族に研究者がいます。だから、不安なんて全然感じたことがなかったと。私自身もそうですけれども、そういう人がいます。ただ、親族に研究者がいる人は非常に珍しいと思いますので、その意味では一般学生の不安、法科大学院であれば周りが全員実務に行くという中で、研究者の道を目指すことへの不安をどのように払拭されているか。説明会は年2回ということですけれども、説明会だけで十分なのか。私たちも説明会をやっていますけれども、「それは成功者の話でしょう」という感じで冷ややかに見られてしまいます。成功者バイアスが入っているという感じでですね。そういうことでなかなかうまく伝わらないんですけれども、どうやって不安を払拭されているのかということが3点目の質問です。
 以上です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。
 それではまず、事務局からお願いいたします。
 
【保坂専門職大学院室長】  事務局からお尋ねのあった部分についてお答えいたします。基本的に公的支援見直し強化加算プログラムの中で、特に加算分については、本委員会等での御審議も踏まえながら、事務局にて評価対象になる取組を示しつつ、大学からの御提案をかなり幅広くいただいて、その御提案を評価の対象にするという方針で進めております。
本日配付しています資料5-9の中に各大学院の取組の資料も入っておりますけれども御質問いただいた神戸大学に関しましては、先ほど御紹介いただきましたトップロイヤーズプログラムの取組も含めて、トータルでの次世代型実務家教員の養成ということに関して御提案をいただいていまして、これを評価の対象にしております。
 以上です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。
 続いて、橋本先生にお願いいたします。
 
【橋本教授(京都大学)】  3点御質問いただきました。
 1点目が、特定研究学生の数がこれで研究者を養成する上で十分なのかという御質問でございまして、私どもでも平均3.71という数字で十分であるとは考えておりませんで、もう少し上げたいと思っています。
 御質問を受けて、法科大学院の修了生が出た一番最初の年度の数字を確認したのですけれども、当時は助教の制度がございまして、法科大学院から研究者の進路に進んだ者は、助教と進学者を合わせますと7名でした。正直なところその程度の数字は欲しいところではありますが、実際に学生が来てくれるかといいますと、3.71という数字も、必ず達成できるかと言われると断言はできない状況です。最低限、現状維持ができるようしたいと考えています。
 2点目は、財源についての御質問でした。平成23年度からのプロジェクトですが、これは機能強化経費としていただいております。29年度からのプロジェクトも同じで、機能強化経費としていただいていますが、それが令和3年度に基幹経費化されています。さらに令和3年度以降ですと、法政策共同研究センターにかなりの予算がついておりまして、そこの財源から、先ほど御説明しましたとおり、例えば助教のポストを出していただくという形になっております。逆に言いますと、その分だけ研究科の経費での負担が軽減されることになりますので、そういう形で財源を確保しています。
 ですので、基幹経費化されたことと、法政策共同研究センターが設置されたことで、財源面につきましては比較的安定的に運用できるものと理解しています。
 3つ目の御質問、研究者志望の学生の不安感をどう解消しているのかということですが、これは実際の数字をありのまま示すしかないと考えまして、先ほど御説明しましたような進学案内のパンフレットを用意しております。特定研究学生に採用された場合には月額幾らもらえるのかという金額ですとか、特定研究学生の採用を申請して認められなかった者がいないということも数字で示しています。パンフレットには、さらに、博士論文が書けた人、書けなかった人の割合、これまでの学生の博士論文のテーマといったものも示しておりますし、就職状況につきましては、必ず京都大学の特定助教に採用されるとだけ書いてもあまり意味がございませんので、特定助教に採用されてから何年以内にどういった大学に就職していて、かつ、何年後には例えば准教授に昇進しているといった、大学教員になろうとした場合にどういったステップでのキャリアアップが見込まれるかをなるべく具体的に数字で示すといった形で不安感の解消に努めています。
 そのほか、説明会におきましては、先ほども御紹介しましたけれども、助教と懇談させて生の声を聞かせる、そのときには我々教員は入らないことにして、不安があれば何でも聞いてくださいという形で学生の不安を拭うように努めています。
 さらに、○○法理論演習などの科目では、少しでも研究に関心があって、また、成績を見ても大丈夫そうな学生がいれば、こちらから声をかけて説得するということもやっております。
 私からは以上です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。中川委員、よろしいでしょうか。
 
【中川委員】  どうもありがとうございました。大変詳細に説明いただいて、よく分かりました。ありがとうございます。
 
【松下座長】  ありがとうございました。
 私の確認したところではあと6人の方から御発言の希望があるようです。もうちょっとで12時ですけれども、本会の冒頭でお話ししたとおり、延長をお認めいただきたいと思います。
 それでは、加賀委員、お願いいたします。
 
【加賀委員】  橋本先生、京都大学の御紹介、誠にありがとうございました。私の質問は一つだけです。
 今日の橋本先生の御報告は法科大学院から博士後期課程のルートによる研究者養成と理解をしておりますけれども、それは、従来の法学研究科の博士前期課程、そして後期課程という進み方の代わりにこのことをつくられているのか、あるいは、前期課程から後期課程に進学することも当然あるということもあってなさっているのか。その上で、もし前期課程、後期課程という研究者養成があるんだったら、そちらの人数的なものとの対照というのはどうなっているのかを教えていただければ助かります。
 以上です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。橋本先生、可能でしょうか。
 
【橋本教授(京都大学)】  実定法の分野では、基本的に、法科大学院から博士後期課程へのルートをたどることが望ましいと学生に対して説明しています。基礎法学や国際法、憲法などですと、修士課程から博士後期課程というルートを現在でも予定していますけれども、ほかの分野に関しましては、基本的に法科大学院を経由することを推奨するという形でやっております。実際にも、憲法を除きますと、七法系の科目について修士課程から博士後期課程へ進学した日本人の学生は、記憶にございません。
 
【加賀委員】  分かりました。ありがとうございます。
 
【松下座長】  ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 それでは、次に田村委員、お願いいたします。
 
【田村委員】  ありがとうございます。
 私は実務家、弁護士ですので、論点案の各論の一番最後、一定期間の実務経験を経る中で、法学研究者、法科大学院の教員への関心を抱いた者に対してどうやって後押しをしていくかという点について、所感というか、コメントさせていただければと思っています。
 この論点案全体を見ていまして、この論点案の求められている先にあるものは何かということを考えますと、大学院の研究力を高めていく、実務経験を経た者を大学院に迎えて、今でもロースクールには実務家教員がたくさんいますが、本来ルートの大学教員を養成し確保していきつつ、大学院の教育改革も含めて進めていくことが重要なんだろうなと思っていますし、また、今、少子化社会は約束されていると言われていますので、親会でも言葉でよく出る知の総和の向上を果たしていくという視点が必要になっていくと思っています。そういった中で、実務経験豊富な社会人を大学院に迎え入れることで、横の流動性といいますか、そういったものをどう果たしていくのかということが重要なんだろうと思います。
 私自身は20年弱前に地方の法科大学院で実務家教員をしていました。そういった私の周りにも、学生の中には物事をとことん突き詰めるようなタイプのいわゆる研究者向きの学生が一定数おりましたが、当時も今もそうだと思いますけれども、研究者の先生方は教務・校務で大変忙しい、なかなか多忙でマッチングがうまくいかないという状況の中で、普通に司法試験に合格してしまって実務家になっていったという状況が現在でも続いているのではないかと思っています。
 実務家になると、当然、顧客ができます。顧客ができれば、よほど大きなバックグラウンドのある事務所がなければ転身は難しいと思いますが、その一方で、少数ですけれども、私の周りでも数年たって国の任期付公務員になった弁護士もいまして、キャリアというのがいろいろ変化してきていることをこの20年弱で感じています。
 なので、効果的な方法かどうかは別としましても、バックグラウンドになる法律事務所では、海外留学や法整備支援、あるいは国際業務支援など、いろいろ業務を多展開していますので、そういった法律事務所に対して研究者へのステップアップが図れるようなキャリア支援のサポートみたいなものを考えていただけないかと思っています。また、任期付公務員で、国、金融庁、消費者庁、財務省、国税庁といったところには一定数の実務家が働いていますので、こういった国の機関での活躍推進とそこからの人材発掘というのは、当然、考えていくべきだと思っています。
 迎え入れる大学院でも、今日、橋本先生から特定研究学生制度という非常に有益な制度を御紹介いただきましたが、同時に、修了した後のポスドクの処遇向上のためのサポートもそうですし、さらには、いろいろ議論はあると思いますが、学生がもっと短期で博士課程を修了できるような何か方策も考えていいのではないかと思います。
 私はこれから学際的な学問分野はますます重要になっていくと思いますし、橋本先生の一つ前の報告でも、社会システムの変化でいろんな先端的な法政策課題が増えてきた、文理融合、法文化国際研究、政策実務教育支援という横断的なユニットの話がありましたので、まさに一定の実務経験を踏まえた者の中で研ぎすまされた者たちは、こういったところで役割を果たしていけるのではないかと思っています。
 少し意味は違いますが、レイトスペシャライゼーションという言葉があります。実務経験を踏まえて、いろんな幅広い視野を経て自分で学問分野を決めていけるようなシステムをつくっていかなければ知の総和は増えていかないんだろうなと思って皆さんのお話を伺っていました。
 以上です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。御質問というよりは、本委員会全体に対するコメントということでよろしいですか。
 
【田村委員】  そのとおりです。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして前田委員、お願いいたします。
 
【前田委員】  ありがとうございます。神戸大学の前田です。
 私からも質問というよりはコメントをさせていただきたいと思います。
 今、田村委員からもお話がありましたし、先ほど来話が出ていますとおり、一旦実務経験を経た方を大学にもう一度戻して研究者の道を選んでいただくというのは、非常に重要なことだと思います。もちろん在学生に対して様々な広報をして、京都大学でも平均3.7名程度の方が研究者になってくださっていることがありましたけれども、さらにそれを増やそうとしたときに、一旦実務家の道を選んだけれども研究したいというニーズを取りこぼさないことがすごく重要だと思っております。
 私の専門は知的財産法ですが、実務家と研究職をてんびんにかけた上で実務家の道を選んだけれどもやはり研究者に興味があるという人は、実務に比較的近い分野であればあるほど多いという実感があります。実際に私の周りを見ても、一旦実務家を経験して研究者になった人がある程度いらっしゃいます。
 そういった方に研究者という道を選んでいただくためにどうすればいいかという話ですけれども、先ほど中川委員からもお話がありましたとおり、漠然に研究ということ自体に興味はあっても、研究者という職業に対する不安感というのはかなりあると思っております。今、各法科大学院などが在学生に向けて、研究者という選択肢を具体的にイメージしてもらうための様々な企画をされているわけですけれども、そういったものを卒業生などの弁護士等に開放して広報していくことは方策としてあり得ると思います。また、一旦、大学から出てしまうと気軽に教員に研究者という選択肢について相談する機会もなくなってしまうと思いますので、そういう窓口のようなものを用意していくことは必要かもしれないと思っております。
 あと、一旦実務の道を選んだ人が研究の世界に戻ってこようとするときに、完全に仕事を辞めて一気に研究世界に飛び込むのはなかなかハードルが高い面もあると思います。実際、神戸大学でも社会人向けの博士課程、弁護士向けの博士課程のトップロイヤーズプログラムをやっておりますけれども、これは働きながら博士号を取れるプログラムです。そこで博士号を取得する中で、研究者という職業についても具体的なイメージを持って研究者になりたいという希望を持つに至る人が一定数いるように感じておりますので、社会人向けに働きながら研究者を目指す道筋も拡充させていく必要があると感じた次第です。
 私からは以上です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。御発言の冒頭にありましたとおり、コメントとして受け取らせていただきます。
 それでは、続きまして佐久間委員、お願いいたします。
 
【佐久間委員】  よろしくお願いします。橋本先生、ありがとうございました。紹介がありました中教審の大学院部会の審議まとめに関わっていたこともありますので、その観点で申し上げます。
 事務局から、この議論に関しては入り口を中心にというお話がありました。出口は厳密に言うと法科大学院の問題ではなくなってしまうので当然そうだと思いますけど、結局、審議まとめの趣旨も、大学院に入れたからにはきちんと出せということだと思うし、また、今日は橋本先生にお越しいただいているので、出口のことも含めて申し上げます。
 人社系の大学院に関して、今、何が問題になっているかというと、結局、出口ですよね。修了するまで何年かかるんだみたいな話と、あと、修了した後どうするんだということが審議まとめでも指摘されていて、当然、研究者の養成は絶対に必要なことだと思いますけど、修了年限の問題であるとか、また、どの程度の規模で受け入れるのか、さらに受け入れた後の出口のことも、当然、見合いで考えなければいけないわけで、そこら辺のところが重要なことになると思っております。
 また、法科大学院じゃないほうの大学院については、法学研究科に限ったことではありませんが、人社系の大学院全般に関していろいろ問題が指摘されているわけですから、それ自体が抱える問題についても考えなければなりませんし、当然、法学研究科の博士前期課程で勉強している学生が後期課程に上がってくることもあるので、それと今回の話がどう絡んでくるかということもトータルで考えないといけません。そういったことを考えることを通して、法学研究科、法科大学院の双方に当然課題があるわけですけど、トータルで両方がよくなる方向に向かえればと思っております。
 このことに関連して、橋本先生から簡単に少しコメントをいただければと思いますけど、先ほど出口に関してはかなりいい結果が出ているようなことを伺いましたが、京都大学さんは現状でおおむねうまくいっているという認識でいらっしゃるのでしょうか。また、先ほど規模という問題がありましたが、規模を大きくしていったときにうまくいく見込みはお持ちでしょうか。あと、法学研究科の前期課程、後期課程、法科大学院をトータルで考えたときに、大学院や課程間の接続に関して何か課題と考えられていることがあればコメントをいただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【松下座長】  ありがとうございました。
 それでは、恐縮ですが、橋本先生、お願いいたします。
 
【橋本教授(京都大学)】  3点御質問いただきました。
 まず、現状の成果についての認識ですけれども、3年間で博士論文が完成できる割合や就職状況につきましては、法学研究科の博士後期課程の中でも、法科大学院修了者以外の学生の修了率や修了後の進路と比べますと、法科大学院を修了して博士後期課程に進んだ特定研究学生のほうが格段に、3年での修了率や修了後の就職の状況がまさっていますので、明らかな成果が上がっていると考えています。
 次に、規模を拡大した場合にどうかという点ですけれども、我々が考えていますのは、本来なら進学してもらいたい学生を逃している、そこを何とか進学させたいということですので、規模を拡大してもそういう方が進学する限りは全然問題ないと考えています。
 3点目の法科大学院教育と博士後期課程教育の接続における課題ですが、これに関しましては、学生に進学してもらわないことには始まりませんので、進学者を確保する、優秀な方に何とか大学に残ってもらう、そこが最大の課題だと認識しています。
 
【佐久間委員】  ありがとうございます。
 
【松下座長】  佐久間委員、よろしいでしょうか。
 
【佐久間委員】  もう時間もありませんので。
 
【松下座長】  どうもありがとうございました。
 それでは、大貫委員、お願いいたします。
 
【大貫委員】  時間のないところ恐縮です。中央大学の大貫です。橋本先生、再びプレゼンテーションをありがとうございました。大変参考になりました。私がこれから申し上げることは意見です。実は、田村委員と前田委員と同じ方向の議論です。
 事務局の論点案にも、一定期間の実務経験を経て研究者の道に戻るということが言及されていますが、もちろん、京都大学のシステムもそうですけれども、法科大学院教育を担う教員(研究者)の養成ということですと、博士課程における養成が多分メインだと思います。しかし、先ほど橋本先生のプレゼンでは、課題としてテニュアトラックということが挙げられていて、直ちに助教に採用するという道も考えるべきだとありました。現状では、博士課程を出てというルートが強いでしょうけれども、私としては一旦実務に就いた方がもう一回戻ってきてくださるというのは大変いいことなのではないかと思っています。これは理論と実務の架橋という観点からも大変望ましいことではないかと思っています。
 しかしながら、そのように戻ってきてくださるためのいろいろな制度なり仕組みのしつらえが必要だろうと思います。言うまでもないことですが、最初は経済的支援という問題があると思います。京都大学は基本的に博士課程の後に助教ですけれども、ロースクールが終わって直ちに助教で採用して研究を続けてもらうというルートも私はつくるべきではないかと思っています。それから、博士課程で研究してもらう際の給付型奨学金の制度等の充実は不可欠だろうと思います。この点で、京都大学は先進的に、平成23年からですか、特定研究学生制度を設けて厚い経済的支援をしているのが非常に勉強になりました。
 入学者選抜に関して申し上げますと、これは実務家の人と話したときの印象ですけれども、要するに博士課程に入学するには語学の負担がある、語学の試験が結構なハードルとして存在するということを言われました。かつては2か国語でしたけれども、現在は1か国語で入れるところも多いし、京都大学は学内者であれば書類選考のみだと聞いていますけど、ここは入る前の外国語の習得というのは大分ハードルが低くなっていると思います。
 本日の橋本先生のプレゼンでも、大変興味深かったんですけど、京都大学は博士課程に入ってから外国語の手ほどきをするということが書いてありました。ですから、一つは博士課程に進学するときの外国語の負担を軽減していくこと、それから、京都大学のように入ってからきちんと教育をするということがなされて、さらにそれが外に発信されるべきではないかと思っております。
 最後に、実務家の方が研究を志す機会について先ほど田村委員がるる御説明されましたけど、まさに実務の営為の中で見つけ出すんだろうと思います。ただ、より積極的に研究への誘いの機会を設けてもよいのではないかと思います。例えば、法科大学院に実務家と研究者の共同の研究の場を設けることを考えられていいのではないかと思います。先ほど前田先生も気軽に相談する機会がなくなるとおっしゃっていました。ですから、法科大学院のところで実務家と研究者の共同研究会――実は、私、設けていますけれども、そういう場で切磋琢磨する、議論する場を設けていれば、中川先生がおっしゃった不安感の払拭にも対応できるし、前田先生がおっしゃった気軽な相談の機会ということにもなると思います。こういう研究の場も積極的に設けていく必要性があるのではないかと思った次第です。
 以上です。意見です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。御意見ということで承りました。
 それでは、酒井委員、お願いいたします。
 
【酒井委員】  酒井です。延長をしているところ恐縮です。先ほどの前田委員の御発言とも重複するところがありますけれども、意見、御提案等々として3点、手短に発言できればと思います。
 まず、1点目ですけれども、研究者登用については、まだまだキャリアがベールに包まれていることが大前提の大きな問題なのではないかと感じています。現在、法曹志願者増加の観点から、法曹になるためのプロセスや、なってからのキャリアプランについては相当な情報が発信をされていると理解しておりますが、一方で、研究者になるに当たって、博士課程には行かないといけないんだろうなという程度の最低限のイメージがある人は多いと思いますけれども、そもそも研究者の市場がどの程度開かれているのか、どのように就職・転職やキャリアアップなどが図れるのか、率直な収入面など、まだまだ学生には分からない点が多いのではないかと感じております。橋本先生から説明会の実施やパンフレットの作成などに尽力をしておられるとの御説明がありましたけれども、非常に重要と感じました。
 さらに申し上げると、説明会となりますと積極的に足を運ぶことが前提になると思いますので、ある程度研究職志望が視野に入っている学生に対する発信に限定されるところがあろうかと思います。より裾野を広げていくという観点からは、大学の垣根を越えるような形で研究職のキャリアに関する情報を発信する、手の届きやすいウェブサイトなどで発信されることが重要になってくるのではないかと感じています。
 もう1点ですけれども、キャリア選択に当たってはライバルが強いという問題が、どうしても法科大学院からの進学ですと付きまとうと感じております。研究者としてのキャリア選択が顕在化するのは、法科大学院卒業時点と法曹として勤務した後のキャリアチェンジのタイミングの大きく2点だと理解していますけれども、前者の場合は司法試験合格後、弁護士としての就職や任官が大きく現実化するときに、あえて研究者を選ぶのかどうかという局面になってくると思います。後者について、弁護士であればほかの事務所に転職をする、独立するか、インハウスロイヤーとして転職するかという有力な選択肢が立ち現れる中で、あえて博士課程への進学を有力な選択肢に加えていく働きかけが必要になろうと思います。
 まず、ロースクール卒業試験なんですけれども、そもそも司法試験に合格をするとすれば、せっかく合格したんだから法曹になろうという引力が強く働くのは当然だと思いますし、非常に収入も見えやすいところがあると思います。そもそも実務家になるために勉強してきたんだから、実務家になってそれを生かしたいと思うのは自然な思考の流れだと思うので、研究者としてのキャリア形成に法科大学院での学びや司法試験に合格をしているという成果が生かせるという強い発信がありますと、プラスなのではないかと感じました。
 また、研究者からの博士課程進学については、これは前田委員からも御指摘があったところかと思いますが、そもそもどうやって戻ったらいいのかという入り口が非常に見えにくくなっているところもあると思いますので、しっかりと整理した情報がクリアに発信をされていることが重要だと感じました。
 あと、突き詰めていきますと、モデルが見えにくいというのが一つ大きな問題としてあるのではないかと思っています。法曹志願者増加の観点からは、いろんな職域の弁護士がこういうふうに活躍していますよという発信などがかなり多方面からなされているので、キャリア学習を担当しておりますと、目標になる弁護士がいる、それに向かって努力をするということがすごく学生のモチベーションなっているという実感があります。既にロースクール卒業をされている研究者の方もおられれば、法曹経験を経てのキャリアチェンジ組の研究者の先生方もおられると理解をしていますので、なり方やこういう仕事ができますよとかいう抽象的な説明ではなくて、こういう人がいるということを積極的に見える形で発信をしていただくことがすごく近道だという印象がございましたので、3点目の意見として述べさせていただきたいと思います。
 私自身もかねてから発信していまして、法学研究者養成は非常に重要な課題と思っておりますので、よい形で改善に取り組んでいきたいと考えております。ありがとうございました。
【松下座長】  ありがとうございました。御意見ということでよろしいですね。
 今のところ、現時点で挙手をされている方には御発言いただきましたが、青竹委員、もし御発言がございましたら手短に可能でしょうか。
 
【青竹委員】  一度挙手させていただいたのですけど、ほかの委員の御質問と重なりましたので大丈夫です。ありがとうございます。
 
【松下座長】  よろしいですか。どうもありがとうございました。
 
【青竹委員】  御報告ありがとうございました。
 
【松下座長】  それでは、延びているところで恐縮ですけれども、最後の議事の3、法科大学院教育の動向について、事務局から説明をお願いいたします。
 
【保坂専門職大学院室長】  事務局です。資料5と資料6に関しまして、要点を御説明させていただきます。法科大学院教育の動向について、更新のあった直近の数字について御紹介します。
 資料5-2、75ページを御覧ください。上下段で志願者数や入学者の状況について記載をしております。上段の志願者数の推移につきましては、前年を1,000名以上超えて志願者数が増加し、また、入学者数に関しましては、令和6年度は2,076名となりまして、平成27年以来、9年ぶりに2,000名を超えました。志願者数・入学者数ともに回復傾向にあると思っております。
 資料5-4、81ページを御覧ください。これは令和6年度の入学者に関する選抜の状況を図示したものです。左から志願者数、受験者数、合格者数、入学者数となります。志願者数、受験者数ともに1,000名以上の増となっております。特に青枠で示しております、5年一貫型選抜については、法科大学院と連携協定を結んでいる法曹コース出身者を対象とした選抜の状況です。上段が今年度の直近のもの、下段が前年度となっていますが、志願者数、受験者数、合格者数、入学者数ともに増加していることで、一定程度安定して運営・運用されているのではないかと考えております。
 なお、左側の法曹コースと赤字でお示ししている箇所ですが、前年が40コース70協定でございましたけれども、令和6年4月現在で42の大学でコースが設けられまして、連携大学院との間で74の協定が結ばれたということで、連携協定の数が若干増加しております。また、右下、社会人経験を有する方は373人、非法学部出身の方は337人に入学していただいております。
 資料5-9について、加算プログラムの審査結果が出ておりますので資料として付けております。今回、この審査結果は令和5年度までの5年間の総括という形になっています。また、令和6年度以降の新規5年間の分については、先ほども御説明したとおり、現在、公表に向けて作業中でございまして、また公表になりましたら本委員会でも御報告をさせていただければと思います。
 最後に資料6です。審議経過と今後のスケジュールを示しております。おおむね2年間のうち、特に昨年度は法科大学院20年の歩みを俯瞰するということで、主に二つの論点について御議論いただきました。
 一つは関係の団体――法務省、日本弁護士連合会、経営法友会にお越しいただきましたけれども、その方々から法科大学院修了生の活躍の状況や評価、また、今後の法科大学院教育に寄せる期待等を御発表いただきました。もう一つは、令和元年の制度改正の状況を的確に把握分析をすることが本委員会の大きなミッションとなっておりまして、こちらに関連する議題を設定しまして、文部科学省による調査結果等を基に御審議をいただいてまいりました。
 本日から当委員会も2年目に入りまして、今後は法科大学院の特色・魅力について、当面扱っていくということと、もう一つの令和元年改正の状況に関しましては、これも昨年度に引き続きまして調査を実施しまして、その結果を基に御審議をいただき、課題が見られる場合にはその対策等についても御審議いただきたいと考えております。最終的には前期と同様に審議のまとめをしていただいて公表したいと考えておりますので、後半もよろしくお願いいたします。
 以上です。
 
【松下座長】  ありがとうございました。
 既に時間をかなり過ぎておりますけれども、ただいまの事務局からの御説明について何か御質問等あればお願いいたします。いかがでしょうか。
 特に挙手はないと拝見しておりますが、それでは、取りあえず御質問等はないということで、以上とさせていただきます。
 それでは、どうもありがとうございました。司会の不手際で大幅に延長になってしまい、既に何人かの委員は退出をされていらっしゃいますけれども、それでは、以上で本日の議事を終了したいと思います。今後の日程については事務局から追って連絡をさせていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

 
以上

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高等教育局専門教育課専門職大学院室法科大学院係

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