厚労省・新着情報

(令和6年8月30日(金)10:35~10:59 省内会見室)

広報室

会見の詳細

閣議等について


大臣:

「近未来健康活躍社会戦略」を公表します。我が国は今、3つの大変革の渦中にあります。第1に、「少子高齢化・人口減少」です。少子高齢化・人口減少が進行する中で、いかにして社会保障制度の持続可能性を高め、社会のダイナミズムを維持・発展させていくかという大変大きな課題があります。第2には、「デジタル化」です。保健・医療・介護分野においても、加速度的に進歩するデジタル化とデータサイエンスを活用して、そして最先端の技術を駆使して社会課題に対応していくことが求められています。第3には、「グローバル化」です。我が国の強みを育み、このグローバル展開に繋げていくことで、世界における我が国のプレゼンスを確実に高めていくということが重要です。こうした大変革時代にある今こそ、この流れに身を任せるのではなく果断に立ち向かい、国民皆保険の持続可能性を確保しつつ、未来に向けてイノベーションと社会のダイナミズムを医療・介護分野に取り込み、人生100年時代を健康で有意義な生活を送りながら活躍できる社会の実現が「待ったなし」の課題となっています。
 本日発表する「近未来健康活躍社会戦略」は、こうした問題意識に基づいて3つの戦略目標を掲げ、近未来の政策方針を打ち出します。第1に、国際貢献と同時に海外市場の活力を日本経済に取り込むことで、戦略的に医療・介護産業を育成することです。第2に、国民皆保険を堅持しつつ戦略的に医療・介護全体としての収入の拡大を目指すとともに、多様なイノベーション・最先端の技術を幅広く国民に還元することです。第3に、国民一人一人が可能な限り長く健康で有意義な生活を送りながら活躍できる社会を実現することです。こうした戦略目標を実現するために、医療・介護DXの更なる推進、医師偏在対策の推進、女性・高齢者・外国人の活躍促進、イノベーションを健康づくり・医療・介護に活かす環境整備、そしてグローバルな創薬エコシステムの構築、アジア諸国を含むインド太平洋地域における医療・介護の好循環の実現、こうした政策を推進していきたいと考えています。本日提出する令和7年度予算概算要求にも必要な施策を盛り込んだところです。また医師偏在対策については、戦略の中で総合的な対策パッケージの「骨子案」をお示ししましたが、今後、関係部局が連携して、年末の対策パッケージの策定に向けて検討を加速化するために、私を本部長として「厚生労働省医師偏在対策推進本部」を設置します。各施策の詳細については事務方にお尋ねください。 
2つ目です。今年度の地域別最低賃金については、昨日まで全国の全ての地方最低賃金審議会において答申が示されました。この結果、今年度の地域別最低賃金は全国加重平均で1,055円、51円の引上げとなり、過去最高の引き上げ額となります。また徳島県の84円・9.4%、岩手県の59円・6.6%の引上げなど、昨年、24地域ですが、昨年を上回る27の地域において、中央最低賃金審議会が示した目安を上回る答申がなされました。さらに地域間格差についても、最高額に対する最低額の比率は10年連続で改善し、額としても過去最大の8円縮小しています。10月以降に発効する最低賃金の引上げは、秋以降、着実に賃金の底上げに繋がっていくと考えられます。また最低賃金を始めとする賃金の上昇は、消費や生産などを増加させる効果も期待され、経済政策としての役割も担っています。このため、最低賃金の引上げを着実に実施するとともに、中小企業においてもしっかりと賃上げが行われるよう、引き続き生産性向上等に取り組む中小企業への支援強化、価格転嫁を含めた下請け取引の適正化などに、関係省庁と連携しつつ一層取り組んでまいります。 
3つ目です。令和6年7月の有効求人倍率は1.24倍と、前月より0.01ポイント上昇となりました。求人・求職の動向や労働力調査の結果をみますと、現在の雇用情勢は求人が底堅く推移しており、緩やかに持ち直しています。物価上昇等が雇用に与える影響に留意する必要があると考えています。私からは以上です。 

質疑

記者:
28日に令和7年度予算の概算要求が公表されました。創薬力強化や医療介護のDX、賃上げの支援など盛り込まれていますが、今回の概算要求で特に力を入れた点や狙いについて教えてください。 
大臣:
令和7年度概算要求に当たっては、少子高齢化・人口減少時代にあっても、国民一人一人が安心して生涯活躍できる社会の実現に向けた施策について、重点的な要求を行うこととしています。具体的には、まず第1に、全世代型社会保障の実現に向けた保健・医療・介護の構築。2つ目には、持続的・構造的な賃上げに向けた三位一体の労働市場改革の推進と多様な人材の活躍の促進、3番目に一人一人が生きがいや役割を持つ包摂的な社会の実現を柱として、ご指摘の創薬力強化や医療・介護におけるDXも含めて、必要な予算を重点的に要求しています。今般要求した内容をしっかり実現できるよう、今後の予算編成過程においてしっかりとこれに取り組んでいきたいと考えています。 
記者:
マイナ保険証についてお伺いします。現行の健康保険証が12月2日に廃止されるまで残り3か月ほどとなりました。厚労省はマイナ保険証の普及の呼びかけを進めていますが、7月時点の利用率は約11%と低迷が続いています。大臣の現状に対する受け止めと、マイナ保険証一本化に向けた今後3か月の取組、また国民への呼びかけがあればお聞かせください。 
大臣:
本年5月から7月まで「マイナ保険証利用促進集中取組月間」と位置付け、集中的な広報展開や医療機関等への一時金による支援などを行ってきました。直近7月のマイナ保険証の利用件数は約2,281万件、利用率は約11%と上昇傾向にあるものの、更なる利用促進の取組が必要です。このため、医療機関等に対して医療DX推進体制整備加算の見直しも踏まえた取組を改めて呼びかけるほか、本日の医療保険部会において、利用実績が低い医療機関等に対する個別の働きかけ、そしてこれまでの周知メッセージに、より国民の不安の解消に繋がるような内容の発信を追加することなどを提案する予定です。マイナ保険証は、より良い医療の提供を可能にするほか、医療DXを進める上でのパスポートです。リアルタイムで薬剤情報の共有が可能になる、救急医療の現場で医療情報の共有が可能になる、患者のカルテ情報を医療機関等が電子的に送受信できるようになるなど、そのメリットが増えていくものです。国民の皆様にはこのマイナ保険証を積極的にご利用いただき、こうしたメリットをしっかり実感していただきたいと考えています。 

  

記者:
9月11日に福岡高裁でB型肝炎の除斥をめぐる裁判期日が予定されています。今、令和3年最高裁判決を踏まえて救済対象を定める議論がなされていますが、厚労省は除斥の新たな起算点となる「治療の中断」と言うには、いったんALT値のほかDNA量も基準値以下にならなければならないと主張しています。一方、原告側はDNA量の証明が患者側にとって大きな負担になり救済対象が絞られてしまうと主張しています。7月3日の旧優生保護法の件については、最高裁大法廷判決で除斥期間の解釈について判例変更がなされていますが、B型肝炎の協議においても旧優生保護法の事件と同様に、広く被害者が救済される方向で取り組む姿勢があるか大臣の見解をお伺いします。 
大臣:
ご指摘の通りB型肝炎訴訟については令和3年の最高裁判決を踏まえた救済範囲の見直しに向けて福岡高裁において原告団、弁護団との協議を進めているところです。訴訟継続中の個別事案にも関わる事柄なのでコメントは差し控えたいと思います。厚生労働省としては引き続き被害者の早期の救済に努めていきたいと考えます。 
記者:
今日、大臣は「近未来健康活躍社会戦略」を公表されましたが、この時期に公表された狙いと、また今自民党総裁選挙が行われていますが、今、立候補に向けた各候補の動きが起きていますが、大臣は率直にどのように見ていらっしゃいますでしょうか。 
大臣:
これはたまたま、昨年9月に厚労大臣に就任し、そして私の考え方というものを省内にも伝え、そしてそれに対してやはりコロナが収束し始めた時期であったがために、各部局ともに新たな改革をすべきということについての共通認識があり、非常に上手くトップダウンとボトムアップが噛み合って、こうした新しい厚生労働省としてはかなり画期的な政策文書というものを厚生労働省として発表することができました。それが今回の事案です。たまたまその時期に総裁選挙が行われるということになったわけで、たくさん多くの方が参加されるようですが、ただ単に誰を選ぶのかということだけでなく、やはり何をするのかということを、この歴史的な転換期においてしっかり議論していただきたい。そうした1つの議論のたたき台にでもこうしたものがなれば、それは、私は、政治家の立場としては極めて好ましいことになるだろうと。大事なことは、単に誰を選ぶのかということだけの議論に終始するのではなく、何をするのかということについての議論というものを、むしろ徹底的にしていただきたいということが私の考えです。 
記者:
現状はやはり、誰が、というところに終始してしまっているような状況が見て取れるということですか。 
大臣:
はい。誰が、というような議論の仕方で進めていきますと、ある意味で単なる人気投票のようなかたちに総裁選挙がなってしまいます。総裁選挙というものは選ばれた方が我が国の総理になるということになる確率が極めて高いわけですので、事実上総理を選ぶことと同じような役割を担っているわけです。したがって内外の時局の我が国が抱えている問題の深刻さというものをしっかり捉え、そして覚悟を持って、何をするか、という政策についてしっかり議論していただくことが、私は総裁選挙の大事な役割だと思っていますので、そうした議論というものをする時期にたまたまこの厚生労働省の政策が発表ということが、それに上手く当たったということです。 
記者:
武見大臣は6月28日の記者会見で、必要な強制措置があっても決しておかしくない旨の見解を述べられた際、最後に、将来より危険な感染症が発生する確率が極めて高うございます、とも発言されました。そう断定できる根拠は何でしょうか。 
大臣:
将来の危険な感染症が発生する確率というものについては、多くの専門家の間で様々な予測がされています。そうした中で一般的な議論として申し上げただけです。 
記者:
例えばビル・ゲイツは一昨年、ドイツのミュンヘン安全保障会議で、我々は再びパンデミックを体験することになる、次はまた違う病原体になるだろうと明言されていますし、今年の1月のダボス会議では疫病Xが議題になったと思います。武見大臣は国際保健分野の要人と非常に密な関係をお持ちですが、何かそういった計画があるようなことはお聞きされていますでしょうか。 
大臣:
別に私はビル・ゲイツと事前に相談したことは一度もありません。私自身の考え方で申し上げたわけです。加えて、今多くの世界のこうした保健・医療に携わる人たちは、また同様な危険な感染症の拡大に対して極めて深刻に受け止め、そしてそれをいかに防止するために国境を越えて各国政府が協力できる仕組みをつくれないかということを考え、このパンデミックアコードといったものを締結できないかということや、あるいは100 Days Missionのように、実際にそうした危険な感染症が発生した場合に、それに対応しうるワクチンを100日以内に完成させ、そして必要な人々に接種できるよう配布するということができるような体制を組めないか等、言うなれば事前の準備、preparednessと、そして予防、prevention、この2つに関して今、極めて重大な関心が持たれているということが国際社会における現状です。したがって、その中で私の所見を述べたわけです。 
記者:
何か根拠があるということではないということですか。 
大臣:
根拠はそうした世界の多くの識者の議論というものが1つの根拠になります。 
記者:
前回の記者会見、8月27日の定例記者会見において、新型コロナワクチンの健康被害について質問いたしましたが、武見大臣は「薬害」という言葉と、また「課題」という言葉を口にされました。しかし厚生労働省のホームページにある武見大臣会見概要では「薬害」という言葉はカットされてしまいました。それに関し2点質問いたします。厚生労働省ではそもそも「薬害」をどのように定義されていますか。また今回の新型コロナワクチンの健康被害は薬害に該当するのかしないのか、どうお考えでしょうか。 
大臣:
私の発言は、実際に言い直した方が正しい内容になります。そして「薬害」という言葉の定義は、実は明確にされているものではありません。新型コロナワクチンを含む予防接種法に基づく予防接種後の健康被害については、不可避的に生ずるものであることを踏まえ、予防接種法に基づく健康被害救済制度による救済を行っています。また新型コロナワクチン接種後の副反応が疑われる症状の報告については、定期的に開催している審議会においてこの評価を行い、安全性を継続的に確認しています。いずれにしても、こうした医薬品による悲惨な被害を再び発生させることのないよう、医薬品の安全性・有効性の確保には最善の努力を重ねていきたいと私は思います。 
記者:
「薬害」の定義はないということですが、例えば厚生労働省は「薬害」という言葉を使っています。中高生向けの教材として「薬害」を学ぼうであるとか、こどもたちにも教えていますが、定義がないということは問題だと思いますが、今後定義付けされるお考えはありますでしょうか。 
大臣:
「薬害」という言葉の定義は一義的に定まっていません。厚生労働省としても一義的な定義を有しているわけでもありません。時代によってもその意味は変化しているということは大体ご存じかと思います。国や企業の法的責任が裁判等において認められているものについては、少なくとも「薬害」と言えると考えます。新型コロナワクチンによる健康被害が薬害に該当するかについてのお答えは、まだこの時点では差し控えておきたいと思います。 
記者:
今後、「薬害」と認定される可能性はありますよね。なぜならば救済制度において7,970件、厚生労働省が認定しています。死亡の認定は777件と、これまでと比べて異常な数字になっていますので、これから「薬害」と認定される可能性はありますか。 
大臣:
したがって最後に言った一言が1番大事です。新型コロナワクチンによる健康被害が薬害に該当するかについては、現時点ではまだお答えは差し控えたいということです。 
記者:
mRNAワクチン接種と輸血の問題について質問します。6月25日の閣議後会見において、新型コロナワクチン接種者が献血した血液がワクチン未接種者に輸血された場合の問題について質問しました。その質問に対して武見大臣からは「mRNAワクチン接種者由来の血液製剤により副作用を生じたとする報告は今のところない。また献血および輸血の際に接種者と未接種者の区別は今のところ行っていない」との答弁をいただきました。しかしながら8月23日に行われた「mRNAワクチン中止を求める国民連合」主催の「レプリコン差し止め訴訟緊急記者会見」にて、先ほどの武見大臣の答弁を含め改めてこの輸血の問題について質問をし、東京理科大学名誉教授の村上康文氏より「新型コロナワクチン接種者由来の血液が未接種者に輸血された場合、さまざまな健康被害のリスクはある」旨の説明をいただきました。健康被害のリスクが想定される以上、それを確認、分析するための調査を実施するべきであると考えますが、いかがでしょうか。 
大臣:
血液製剤の安全性については、医薬品医療機器等法に基づき、医師や製造販売業者から常に国内外の情報をまずは収集するというところです。これまで新型コロナワクチン接種者の献血血液由来であることを原因として血液製剤の副作用が生じたとする報告は承知していません。今後も引き続き血液製剤の安全性についてはしっかり確保することに努めていきたいと考えています。 
記者:
武見大臣は、今のところmRNAワクチン接種者由来の血液製剤による副作用の報告はないとおっしゃいますが、接種者、未接種者の区別が行われていない現状で、接種者、非接種者いずれかに特定した報告はそもそも不可能だと考えますがいかがでしょうか。 
大臣:
これは引き続き血液製剤の安全性の確保に努めるということで、厚生労働省の中ではそうした対応をしっかりさせていきたいと考えます。 
記者:
医師偏在について、スライドの4ページのこちらのメニュー以外にも広がる可能性というものはあるのでしょうか。と言うのも、大臣は4月の番組で地域ごとの割当制について指摘されていたと思いますが、そちらについては今どのようなお考えかお聞かせください。 
大臣:
私はやはり、この医師の偏在の問題というものは特に過疎地等における適切な医療の提供ということを考えたときに極めて深刻な問題になっており、しかも傾向としてはその深刻度がますます深刻化する過程の中に今あるということを大変強く懸念しています。そうであるが故にあのような発言を私はあえてさせていただいたということです。更なる医師偏在の是正を、したがって進めなければなりません。総合的な対策パッケージの骨子案をお示ししたところでもあり、これに併せて関係部局が連携して検討を加速化するために省内に、今申し上げた「厚生労働省医師偏在対策推進本部」を設置します。私が本部長としてこの全体の指揮を執ります。そして事務次官や医務技監、そして医政局、保険局長らを参画させ、速やかに第1回を開催し、年末までに総合的な対策のパッケージの策定に向けて検討を進めてまいります。更なる詳細についてはぜひ事務方の方にお尋ねください。 

(了)

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