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財政制度等審議会財政投融資分科会
議事録

令和6年7月29日
財政制度等審議会


財政制度等審議会財政投融資分科会議事次第

令和6年7月29日(月)14:00~16:09
財務省第3特別会議室(本庁舎4階)

  • 1.開会

  • 2.副大臣挨拶

  • 3.議題

  • 官民ファンドのフォローアップ

質疑・応答

  • 「財政投融資の在り方に関する議論の整理」のとりまとめ
  • 大学ファンドの状況報告

質疑・応答

  • 令和5年度財政融資資金運用報告書

令和6年度政策コスト分析

質疑・応答

  • 4.閉会

配付資料

資料1

官民ファンドのフォローアップ

財政投融資の在り方に関する議論の整理

資料3

大学ファンドの状況報告

資料4ー1

令和5年度財政融資資金運用報告書のポイント

資料4ー2

令和5年度財政融資資金運用報告書

資料4ー3

政策コスト分析(令和6年度)の概要

資料4ー4

財政投融資対象事業に関する政策コスト分析(令和6年度)

出席者

分科会長

百合

赤澤財務副大臣

窪田理財局長

森田審議官

吉住財政投融資総括課長

村松資金企画室長

天井財政投融資企画官

原井管理課長

横山計画官

伊藤計画官

土居丈朗

野村浩子

丸田健太郎

家森信善

渡辺

臨時委員

有吉尚哉

岡田章裕

冨田俊基

山内利夫


14時00分開会

〔翁分科会長〕それでは、ほぼ予定の時間となりましたので、ただいまから財政制度等審議会財政投融資分科会を開会いたします。

議事に移ります前に、本日は赤澤財務副大臣にご出席いただいております。開催に当たりまして、赤澤財務副大臣よりご挨拶を頂戴したいと思います。

〔赤澤財務副大臣〕皆さん、こんにちは。ご紹介いただきました財務副大臣の赤澤でございます。財政制度等審議会財政投融資分科会の開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げたいと思います。理財局の担当をしております財務副大臣ということでございます。委員の皆様におかれましては、財政投融資制度などにつきまして、これまで充実した議論を賜っておりまして、誠にありがとうございます。

本日は、「財政投融資の在り方に関する議論の整理」として報告書のとりまとめを賜るほか、「官民ファンドのフォローアップ」及び「大学ファンドの状況報告」、「令和5年度財政融資資金運用報告書」、「令和6年度政策コスト分析」につきまして、報告などがあるものと伺っております。皆様におかれましては、活発なご議論をよろしくお願いいたします。

また、このたび、理財局の人事異動がございまして、私にとって旧知の窪田理財局長が戻ってまいりましたので、ご紹介させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

〔翁分科会長〕ご紹介をお願いいたします。

〔窪田理財局長〕理財局長になりました窪田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。人事異動がございましたので、理財局の体制についてご紹介させていただきます。お手元の資料にありますように、審議官の森田、財政投融資総括課長の吉住、管理課長の原井、計画官の横山、同じく計画官の伊藤、財政投融資企画官の天井、資金企画室長の村松でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。

それでは、議事に移ります。本日は4つと多くの議題をご議論いただく予定としております。一つ一つが重要な議題ですが、2時間と時間が限られておりますので、議事の進行にご協力いただくとともに、ご質問、ご意見などはできるだけ簡潔にお願いできればと思います。

それでは、「官民ファンドのフォローアップ」に移ります。国土交通省及び海外交通・都市開発事業支援機構の方々が入室されますので、しばらくお待ちください。

(JOIN関係者 着席)

〔翁分科会長〕それでは、横山計画官、国土交通省及び海外交通・都市開発事業支援機構よりご説明をお願いします。

なお、資料1のうち、5ページにございます有識者委員会のメンバーの部分については、正式手続前になりますので、本日、この内容に言及いただくことは差し支えございませんが、このページの公表は後日とさせていただきますので、ご承知おきください。

それでは、ご説明よろしくお願いいたします。

〔横山計画官〕7月に計画官に着任しました横山です。よろしくお願いいたします。本日は、官民ファンドのうち、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構、通称、JOINについてご議論いただきます。本来であればJOINにつきましても、5月末までに投資計画の進捗状況を公表し、6月17日に行われた本分科会において、他の官民ファンド3機関とともにご議論いただくべきところでしたが、一部の個別案件に関する裁判で係争中の事項に関する情報が含まれていたということで、国交省及びJOINのご判断として、投資計画の進捗状況の公表を見送られていたということで、6月の本分科会でのご議論は延期させていただきました。

その後、7月1日に改革工程表2018を踏まえた投資計画の進捗状況(2023年度末)が、国交省及びJOINから公表されたことを受け、本日の分科会でご議論いただくという運びになりました。

本日は、国交省の田中国際統括官、JOINの武貞社長にお越しいただいております。投資計画等の進捗状況や、今後の見直し等について、国交省及びJOINからご説明をいただくということでございます。皆様におかれては、大所高所からご議論を賜れれば幸いでございます。

それでは、よろしくお願いいたします。

〔国土交通省田中国際統括官〕国土交通省国際統括官の田中と申します。JOINについてご説明申し上げます。

資料1になります。JOINの2023年度決算におきましては、資料の1・2ページにございますように、複数の個別事業につきまして損失処理を行ったことにより、約799億円の当期純損失を計上し、累積損益は約955億円を計上しております。このため、改革工程表2018を踏まえた投資計画に基づく累積損益計画額を大幅に下回る結果となりました。

これまでのJOINの支援事業につきましては、JOINにおいて適正なプロセスとの判断に基づいて支援決定したものでございまして、国土交通省におきましても、支援基準に照らして認可を行ってきたと考えております。また、認可後におきましても、JOINからの事業の状況報告を受けまして、必要な指導などを行ってまいりました。

しかしながら、今般、多額の損失計上に至ったことは、国土交通省といたしましても大変重く受け止めておりまして、そのため、今後は国土交通省に有識者委員会を設置しまして、個別事業に係る損失計上や公表の在り方を含め、JOINの役割、在り方、経営改善策等の幅広い論点について、検証、検討していただくことといたしました。

この委員会につきましては、後ほどご説明いたしますが、まず損失計上の詳細をはじめ、具体的な投資計画の進捗につきまして、JOINから説明いたします。

〔海外交通・都市開発事業支援機構武貞代表取締役社長〕海外交通・都市開発事業支援機構社長の武貞でございます。本日はよろしくお願いいたします。

最初に、今般、巨額の損失を計上することになり、誠に申し訳ございませんでした。今後、本分科会での委員の皆様のご意見や、後ほどお話があります有識者委員会の意見を真摯に受け止め、経営改善に努めていく所存でございます。

それでは、資料についてご説明申し上げます。

まず1ページをご覧ください。2023年度末の投資計画の進捗状況でございます。2023年度決算では、当期純損失を799億円計上いたしました。損失計上した主な事業について、以下、ご説明申し上げます。

まず、ブラジル都市鉄道整備・運営事業でございます。当初は4つの事業で構成されておりましたが、現時点では、リオデジャネイロの近郊鉄道1会社の運営事業となります。旅客需要が現状もコロナ禍前の需要の半分までにしか回復しておらず、さらには、地域の治安悪化による鉄道施設の破壊、盗難の頻発や、州政府の財政悪化による営業補償金の不払い等により、現地の事業環境は著しく悪化しております。

日本政府からも累次にわたり、州政府や連邦政府に対し善処を求めていただきましたが、しかるべき対応が得られず、日本企業としても撤退やむなしとしていることから、今般、出資額全額の約81億円につき損失計上をしたものでございます。

続きまして、ミャンマーにおける都市開発3事業でございます。これらはいずれもクーデター発生前に支援決定した案件で、工事進捗率が70%を超えている案件もございますが、クーデター発生後、工事を中断しております。情勢が正常化し、工事を再開することができれば、事業の継続は可能であること。また、昨年の時点では、2023年8月までに実施予定でありました総選挙を契機に、非常事態宣言の解除等、現地情勢の改善が期待されていたため、減損せずと判断し、監査法人においてもこれが適正と判断していただいておりました。しかしながら、昨年8月に予定されていた総選挙の実施の見通しがつかなくなったこと等から、当面の間、工事の再開が見込めず、現時点で、将来的な実質価格の回復時期を見通すことが困難と判断し、監査法人と協議の結果、投資額及び債務保証履行分の全額を減損することとしたものでございます。

次に、テキサス高速鉄道事業でございます。当社は、2015年に投資決定し、随時、追加支援してまいりました。本事業は、アメリカ連邦政府による新幹線導入に関する技術認証や環境認証を取得する等、高速鉄道開発事業の検討を進めてまいりましたが、コロナ禍等の影響で資金調達が進まず、テキサス・セントラル社、事業主体は債務不履行に陥っております。

昨年8月に、アムトラック、全米鉄道旅客公社が提携可能性を表明する等、事業自体は、ゆっくりながら進捗しているものの、現時点では、JOINの投資対象であるテキサス・セントラル社からの債権回収に向けた道筋時期が不確実であることから、今般事業主体への既往の出融資について、会計ルール上の整理に従い、約417億円を損失として計上いたしました。

一方で、アムトラックは、昨年12月に、米国運輸省より、高速鉄道開発検討に係る補助金の承認を獲得し、また、本年4月の日米首脳会談において、成果文書であるファクトシートに本事業が記載される等、JOINとアムトラックの間で、今後の案件推進に関するフレームワークという文書に調印して、事業自体の検討は引き続き進捗しているところであります。今回、会計上、減損はするものの、事業が全損する場合には、担保の実行等も踏まえまして、相応の金額の投資回収が見込まれるところ、アムトラックともその方向で協議を継続しているところでございます。

続きまして、2ページをご覧ください。投資計画の進捗状況についてご説明いたします。2023年度の投資額は772億円、損失計上した結果、当期純損失は799億円であり、累積損益は955億円となっております。2019年策定の投資計画において、設立以降20年間、2014年から2034年度までの投資計画、いわゆるJカーブを作成いたしましたが、今般の累積損失の状況を踏まえ、2024年度以降の投資計画等につきましては、今後、国土交通省が設置する有識者委員会における検証・検討の上、改めて作成させていただきたいと思います。

既存事業につきましては、有識者委員会の議論と並行いたしまして、案件管理体制の強化や政府機関等との連携の強化、広報の強化等に着手しており、さらなる損失の回避と、既存案件のさらなるバリューアップを図ってまいります。

次に、3ページをご覧ください。2023年度の新規案件組成の状況や見通しにつき、ご説明いたします。2023年度は、デジタルや脱炭素等のポストコロナの投資ニーズを踏まえつつ、合計4件の新規案件の支援決定を行いました。また、合計8件、約772億円の出融資を行いました。また、新規案件組成に向けて、前年度に引き続き地方セミナーを行うとともに、国内外の政府機関や企業等とのMOUを新たに5件締結いたしました。

民間事業者からは引き続き多くの相談が寄せられておりますが、今般の損失計上を踏まえ、国土交通省が設置する有識者委員会での検証の結果が出るまでは、新規支援決定を見合わせることとしております。

次に、4ページをご覧ください。既存案件の状況や見通し、足元の収益性の状況についてご説明いたします。今般、損失として計上した事業のうち、ブラジル都市鉄道整備・運営事業につきましては、日本企業連合としても撤退を余儀なくされたものでございます。一方、個別事業に係る損失のうち約712億円につきましては、現時点での状況を踏まえ、会計ルールにのっとって損失を計上したものであり、いずれも継続中の案件でございます。他の既存事業と合わせ、引き続き事業価値の向上に努めてまいりたいと思います。

また、既存案件につきまして、2023年度に4事業、累計5事業で、売却や余剰資金による減資等を行ったほか、現時点で13事業につきましては、現地事業体が単年度黒字を達成し、うち7事業からはJOINに対して配当が行われるという状況になっております。

なお、2024年度は、現時点で約301億円の出資等を実施済みで、年度内に最大、別途90億円の出融資を行う見込みでございます。

足元の収益性の状況につきましては、2023年度は、投資案件の売却による利益が18億円、一方、配当金利も過去最高となる13億円強を計上することができました。

以上、投資計画の進捗状況につきましてはご説明申し上げました。今般の多額の損失計上につきましては真摯に受け止め、国土交通省に置かれる有識者委員会での検証・検討結果を踏まえ、経営改善など対応してまいりたいと思います。ありがとうございました。

〔国土交通省田中国際統括官〕続きまして、5ページの有識者委員会につきまして、ご説明させていただきます。改めまして、今般の多額の損失計上につきまして、所管官庁として大変重く受け止めておりまして、抜本的な対応策を取ることが必要な事態であるとという認識をしております。そのため、今回、国土交通省に有識者委員会を設置いたしまして、幅広い論点について検証・検討をいただくということにしております。

有識者委員会の構成でございますが、官民ファンド、金融実務、海外プロジェクト等の専門家の方で構成いたしまして、第三者の視点から専門的に検証・検討していただくものでございます。

また、この財投分科会の委員でございます土居委員、山内臨時委員、丸田委員にもご参画いただきながらご議論いただきまして、議論の状況については、節目において財投分科会にも報告し、年内を目途にとりまとめを行うこととしております。

第1回の委員会は7月末と記載してございますが、恐らく8月の初めになるかと思います。JOINの現状や今後の進め方についてご議論いただくということになります。

第2回におきましては、JOINのニーズや役割におきまして、JOINのパートナー企業などの関係者や、JICA、JBIC等からのヒアリングを行いまして、第3回におきましては、今般、損失計上いたしました個別事業の検証を行うということにしております。これまでの第3回までの議論については、10月を目途に開催する第4回で論点整理をいたしまして、その後の財投分科会においても報告申し上げる予定でございます。第5回以降は、それまでの議論を踏まえてご議論いただきまして、年内に最終報告をとりまとめることを想定しております。

この委員会につきまして、議論の内容については、会議の都度、記者ブリーフの実施を考えておりますほか、可能な限り、議事概要や資料を公表することによりまして、会議の透明性の十分な確保に努めてまいります。

委員会の検討・検証の結果につきましては、国土交通省といたしましても、それを踏まえて適切に真摯に対応してまいりたいと考えております。

以上で説明を終わります。

〔翁分科会長〕ご説明ありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明を踏まえまして、20分程度で委員の皆様からご意見、ご質問をお願いしたいと思います。こちらの会場にいらっしゃる皆様は名前の札を立てていただき、オンラインの方は挙手ボタンを押すか、チャットでお示しください。

なお、ご発言の際に、資料を引用される場合には資料番号と該当ページをおっしゃっていただくようお願いいたします。

それでは、岡田委員、丸田委員、お願いいたします。

〔岡田委員〕読売新聞の岡田です。本日はありがとうございます。今、日本の企業全体を見ますと、株式市場は好調で、上場企業が株主に対する説明責任というのを積極的に果たして、それが海外からの評価にもつながっているんだと思います。この官民ファンドというのは、そうした意味で言えば、対外的な説明機会というのがそうした上場企業と比べて少ない中で、この財投分科会というのは、議事録も作成されますし、非常に貴重な説明の場だと思います。

私、昨年の4月から委員を務めていますけれども、JOINがこんな深刻な状態になっているというのは、もうほとんど知る、察知することができませんでした。広報とか適切な開示の仕方はこれから考えていくということですけれども、あまりに唐突な感じを受けているんですけれども、これまでどうした考えでこうした巨額の損失が出るということを、表にしてこなかったのか、監査法人からお墨つきを得たという通り一遍の説明だけで、はい、そうですかというふうに簡単に納得できるのかと。こちらの財投分科会では、委員の皆様方も、ほかの官民ファンドで10億、20億、改善した、改善しないということで、一喜一憂しながら真摯な議論が交わされていると思いますけれど、そうした議論を横目で見ながら、こうした巨額の損失が積み上がっていったということを一体どう考えるのかということ。これから議論はされるということですけれども、改めて、どうした解釈でこうなったのかというのを教えていただければと思います。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。質問の答えを最後に国土交通省、また、JOINからお願いしたいと思います。

それでは、丸田委員、お願いします。

〔丸田委員〕丸田でございます。ご説明ありがとうございました。過去どのような判断で投資をしてどのような経緯でこのようなことが起こったのか、過去の決算も含めて妥当だったのか、さらに、既存のポートフォリオの精査を踏まえて今後の組織をどうしていくのかといったことを今後、有識者会議で議論するというのが前提だと思っておりますが、財投の視点では、今、岡田委員からもございましたし、今回の財投の在り方に関する議論においても触れられていますが、財投としてのモニタリングという意味で課題が残る案件だったのではないかと感じております。その意味では、今回の有識者会議等での議論を踏まえて、モニタリングの改善について具体的なポイントが出てくるものと期待しています。

例えばその一例として、投資残高について、昨年は、テキサスの案件で約250億円という説明でしたが、実際にはその後、プットオプションが行使されて、エクスポージャーが約400億円に増えて、損失が拡大しているかと思います。こういったリスクに関する情報も、昨年の資料では十分開示されていなかったように感じています。これらの点も含めて、サプライズで大きな損失が生じる前に、しっかりモニタリングをしていくためにどのようにすれば良いのかというところは十分な議論が必要と感じています。

以上でございます。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。

それでは、オンラインで、冨田委員、お願いいたします。

〔冨田委員〕ありがとうございます。重複を避ける形で短く質問させていただきます。突然の累積損益の大幅悪化というご報告いただいたわけですけども、これは民間の共同出資されている事業者、民間出資者に対しても同じ状況なんでしょうか。つまり、報告が今回のように遅く、突然なされたかどうかということです。

2点目は、資料の8ページの注にあるんですけども、個別案件についての出資額、そして、回収額については公表できない旨、書いてあるんですけども、これは今後ともそうなんでしょうか。それはどういう事情からなんでしょうか。お教えください。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、有吉委員、お願いします。

〔有吉委員〕有吉でございます。ご説明、どうもありがとうございます。私からは3点ほど、主にガバナンスやリスク管理の観点からのコメントを差し上げたいと思います。

今後の有識者委員会の検証の中では、個々の案件の当否ということも議論の対象になるのだとは思いますが、そういったことよりも、やはりガバナンスやリスク管理の在り方に問題がなかったかという体制面を中心に検討を進めていただくことを強く期待いたします。そういったガバナンス面には、いろいろ論点があると思いますが、特に一つ申し上げるとすれば、社外役員の方々が、アドバイザーというだけではなくて、中立的な立場から十分な情報を得て、ブレーキ的な役割をしっかり果たすことができていたのかどうかということについて、過去の活動を検証していただいて、場合によっては、選定方法であるとか、社外役員の方々が参加する会議体の運営に関して改めるべき点がないかどうかといったことをぜひ議論していただきたいと思います。

それから、2点目としまして、有識者委員会の検証結果が出るまでの期間についても、新規支援決定は見合わせる一方で、減損が生じた2事業を含む既存案件についての追加投融資はあり得るということだと理解しております。事業継続のために支援が必要となるという場合があることは、十分理解するわけでありますが、JOIN自身が、その役割であるとか在り方について抜本的に検証されているという状況を十分踏まえていただいて、例えば関係当事者から追加融資してくれという要請があれば、それだけでホイホイとお金を出すということではなくて、この期間において追加投融資を行うかどうかということはぜひ慎重に判断していただいて、当否を決めていただきたいと思います。

それから、3点目、若干瑣末な点と捉えられるかもしれませんが、今年の6月25日にJOINのウェブサイト上で、新たに支援決定に関するプレスリリースが公表されております。こちらは過去に支援決定していたものが公表可能な段階になったために、このタイミングで公表されたというふうに理解しているわけですが、ただ、プレスリリースのタイミングがあまりにもひどいと思います。すなわち、新規支援決定は見合わせるという決定をなさった当日に、過去において支援決定をしたという案件の情報を公表すると、このこと自体、理論的に問題があるとか、法的に問題があるとかということではないと思いますが、レピュテーションリスクの点を踏まえて十分に判断されたのかどうか、非常に疑問を感じるところでありました。経営陣の方々におかれまして、こういったレピュテーションリスクのような点も含めたリスク、それから、危機管理ということについて、もっと意識を高めて、今後は業務運営を行っていただきたいと思います。

私からは以上でございます。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。

それでは、野村委員、お願いします。

〔野村委員〕3点お伺いしたいと思います。これまでの委員のご質問と重なるところもありますので、簡単に。

1点目は、最初に岡田委員がおっしゃったように、情報開示の在り方について、そのお考えをお伺いしたいと思います。ホームページ上でプレスリリースも公開されていますが、その情報開示のタイミング、それから、当分科会への報告のタイミング、そして、損失計上のタイミング、このような情報開示のタイミングについてどのような経営判断がなされてきたのか。遅れがあったという指摘もなされているところですけども、それについてどうお考えかということを伺いたいと思います。

それから2点目、今、有吉委員からもご指摘ありましたように、リスク管理について、これはもう明らかにリスク管理を強化する必要があるという、そういう状況でございますが、今後、出融資の基準ですとか、事前の審査の見直しなどをどうなされていくのか。それから、ガバナンス面でやはり課題があったのではないかと思われますので、組織体制、経営体制の見直し含めて、どのようにガバナンス強化を検討されているかということをお伺いしたいと思います。

3点目、これは今申し上げた2点目に関連することですけども、2023年度の投融資額、出融資が772億円ということで、当初計画の投融資計画額145億円をはるかに上回る額が実行されております。これは以前からのプロジェクト組成が実った結果でもあるのかもしれませんが、昨年から非常に危ういプロジェクトの状況が見えていた中で、これだけの計画額を上回る出融資がなされたということにやや驚いておりまして、リスク管理がどのようになされているのかということも改めて伺いたいと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、一旦こちらで、大変貴重なご質問やご指摘いただいておりますが、これについてのご回答をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

〔国土交通省田中国際統括官〕それでは、まず国土交通省から全体的なところをお答えいたしまして、JOINに補足をしていただきたいと思います。

まず、多くの皆様から、公表のタイミングの問題点をご指摘いただきました。公表のタイミング、どのように公表していくべきかというところにつきましては、今後、有識者委員会でもしっかりとご議論いただく大きなポイントかと思っておりますけれども、損失につきまして、今まで隠していたというわけではございませんで、それぞれの事業について、きちんとした理由で今年度の計上になったというところでございますので、簡単にそこだけ少しご説明させていただきます。

まず、ブラジルの案件につきましては、これはコロナ禍前までは黒字をずっと続けていたものでございまして、コロナ禍に入ってからも、当初は州政府がきちんとお金を出して、継続できていたというところでございますが、コロナ禍に加えて、治安の悪化、それからリオ州政府からの資金拠出がされなくなったというような状況の変化が、昨年以降、急に進展したというところでございまして、2022年度の決算までは、そこまで深刻な状況ではなかったので損失計上をしておらず、その後、様々、州政府とも交渉していたにもかかわらず、なかなか状況の改善がもう見込めないところになったということで、今回の損失計上に至ったというものでございます。

また、ミャンマーにおける都市開発3事業につきましては、2021年2月のクーデター発生以降、工事、建設が中断していたものでございますが、2023年8月に予定されていた総選挙等によりまして、現地情勢の改善や事業の再開の可能性が見込まれていたということもございましたので、2022年度決算においては損失計上しなかったものと承知しております。

テキサス高速鉄道事業につきましては、2023年度中に事業主体のテキサス・セントラル社の既存債務の取扱いについて、関係者間で協議が行われまして、JOINの債権の保全が合意される可能性が見込まれなかったというところで、2022年度決算においては、損失計上しなかったと承知しております。JOINにおきましては、毎年度決算において会計ルールにのっとって損失計上の要否について適切に判断はしておりましたが、先ほど申し上げましたように、今回の一連の問題については有識者会議でもしっかりとご議論いただくというところかと思っております。

ガバナンス等、改めるべき点、それぞれの個別の事業の検証につきまして、有識者委員会の中でご議論させていただきますので、しっかりとそこでJOINの組織の在り方を含めたご議論をいただこうと考えております。

〔海外交通・都市開発事業支援機構武貞代表取締役社長〕説明のタイミングにつきましては、国土交通省からお答えいただいたとおりでございます。

財投としてのモニタリング、おっしゃるとおりで、少し動きが、大きく動くということで、この辺につきましては、もう少し小まめなフォロー等を引き続き考えていきたいと思いますが、その点も踏まえまして、有識者会議でご議論いただければと思います。

それから、冨田先生からお話がありました民間出資者のところでございますが、こちらのほうにつきましても、確かに私どもの減損のタイミングというのが民間出資者とイコールではないのでありますが、現時点でまだ減損されていないところ、それから、私どものほうは、全額減損しておりますが、減損額が企業によって違う等々、民間パートナーとの間でもまた処理が違っております。また、この辺につきまして、特に民間事業者からはあまり詳細な数値を開示しないでほしいというようなご議論がありまして、今般、こういう形で、民間事業者の了承を得てから開示したということになっております。

それから、ガバナンス、あるいは、先生からいただきましたガバナンスリスク管理体制の件につきましては、結果といたしまして、こういう形で大幅損失を出したということで、問題がないとはとても言える状況ではございませんので、考えていきたいと。今後、有識者委員会も踏まえ議論させていただきたいと思います。

社外役員の役割につきましては、JOINといたしましてはかなり社外役員に権限を与えられておりまして、基本的には全ての案件の重要な処分につきましては、社外役員をメインといたしましたJOINの事業委員会で決定するということで、もちろん新規支援決定のみならず、一部売却、それから、主要な内容の変更等々も全て社外役員の方々も入れました事業委員会で決定しているという状況で、また、新規支援決定に関しましては、最低でも2回、個別の説明を入れまして、最低でも3回、多い場合では5回、6回と事業委員会でご議論いただいて決めているという現状でございますが、やはりこういう事態に達したということで、社外役員の方々も踏まえまして、さらなる社外役員によるガバナンスの強化を含め、有識者会議でご議論させていただきたいと思います。

それから、有吉先生から言われました既存案件の追加投融資につきましても、今般12月末までということは既存案件からも実はいろいろご要請はございますが、新規にというか、金銭負担を伴う、たとえ既存案件の増資等につきましても、金銭負担を伴う新規の支援決定につきましては、今般、12月まで控えるということで、皆様にはご連絡しております。既に契約をして、スケジュールが決まっているものにつきましては、約定どおりの出資金の支払いというのを検討しておりますが、これは既存の案件、それから、既存の必要な追加投融資でありましても、JOINは新規支援決定を行わないという旨、各所にご連絡させていただいております。

また、今後につきましては、やはり問題案件につきましても、追加の出融資により債権回収額が拡大、最大化できるというような例もございますが、そういう場合につきましては、有識者委員会の議論が終わってから、また十分に関係者間で議論を尽くした上で、再度検討、新規として検討したいと思っております。

また、プレスのタイミングにつきましては、誠に申し訳ございません。ちょっとここは思慮が足りませんで、たまたま個別案件につきまして関係各社で合意した日付が、新規支援決定停止という発表のタイミングと重なってしまいまして、本当にここは配慮が足りませんで申し訳ございませんでした。今後、プレスのタイミング等をもう少しレピュテーションリスクに配慮してやっていきたいと思います。ただ、民間事業者、我々メインではなくて、特に個別案件のプレス、対外公表につきましては、民間パートナーの了解を得てからというところにつきましてはご理解いただければと思います。

最後、野村先生から言われました情報開示の在り方につきまして、もちろんタイミングにつきまして、今後、有識者委員会も踏まえて、見直し、検討していきたいと思います。また、リスク管理体制の強化、基準の見直し、ガバナンス体制、これはおっしゃるとおりでございまして、こういう事態を引き起こしたということも踏まえまして、どこに問題があったのか、どこを修正していくべきなのか。これは私ども手前みそではもう済まない話でございますので、しっかり有識者委員の皆様にもご議論いただきまして、また、社外役員の皆様とも議論した上で、何とか体制の強化、再生というのをやっていきたいと思います。

2023年度につきましては、すみません。おっしゃるとおりで、2023年度に、先ほど国交省から説明がありましたように、急にいろいろな案件がガタガタ、後半にかけて急に危うくなってきたという一方、2023年度の新規支援決定とか、出資実行といいますのは、2022年度に議論していたものでございまして、ちょうど2022年度に議論していたものの支援決定のタイミング、出資のタイミングと、逆に2023年度に問題案件の問題が認識されたというタイミングが重なってしまいまして、この辺につきましても少し配慮が足りなかったというか、もう少し全体を見直しながらスケジュールの改善に努めていくというふうに考えております。

以上でございます。

〔翁分科会長〕ご説明ありがとうございました。ガバナンスにつきましては、有識者会議でこれからしっかり議論していただくと思うんですけれども、当時の議事録とか意思決定プロセスとか、そういったものもしっかり検証していただいて、今後に生かす形にしていただきたいと思いますし、あと、第三者委員会としてできたのですから、国土交通省とJOINの関係ですね。支援決定とか、そのモニタリングにどういう関与をされていたのかについてもしっかり検証していただく必要があると思います。

また、あと、このJOINの体制、世界中にいろいろやっているわけですけども、本当にここはオペレーショナルにしっかりと投資案件をフォローできる体制になっているのか。商社などですと、もうハンズオンでしっかり現地に張りついて、こういったものをモニタリングしているわけですけれども、そもそも論として、そういうオペレーショナルな体制などについてもしっかりもう1回見ていただく必要があるかなと個人的にも感じております。

大変貴重なご意見やご質問ありがとうございました。もし追加でご質問、ご意見ございましたら、今日、時間の関係で、ここで一段落させたいと思っていますので、事務局までお寄せいただければと思います。

それでは、ここで国土交通省、海外交通・都市開発事業支援機構の皆様にはご退席いただきたいと思います。どうもありがとうございました。

(JOIN関係者 退席)

〔翁分科会長〕海外交通・都市開発事業支援機構につきましては、皆様より大変活発なご意見をいただき、ありがとうございました。理財局におきましては、委員の皆様のご意見も踏まえながら、今後の財投計画や、今回の対応につきまして、しっかり取り組んでいただければと思っております。

続きまして、次のテーマであります「財政投融資の在り方に関する議論の整理」につきまして、吉住財政投融資総括課長よりお願いいたします。

〔吉住財政投融資総括課長〕財政投融資総括課長の吉住でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

先ほどは貴重なご意見をいただきまして、大変ありがとうございました。皆さんのご意見は、今後の財政投融資計画の編成に生かしてまいりたいと考えております。

それで、この白い冊子でございます財政投融資の在り方に対する議論の整理の報告書でございます。この報告書は、前回、6月17日の分科会においていただきましたご意見、そして、その後、事務局にお寄せいただきましたご意見を踏まえまして、皆様とやり取りをさせていただきながら修正させていただきました。修正におきましては、ガバナンスに関するご意見や、政策効果をよく見るべきといったご意見等々をいただいたところでございます。そうしたご意見を踏まえ修正いたしたものを、本日、最終報告書として、この白い冊子として提示させていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

〔翁分科会長〕今、この報告書を当分科会の報告書とさせていただきたいということでございますけれども、ご異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、赤澤財務副大臣に本報告書の受領をお願いしたいと思います。報道関係者が入りますので、そのままお待ちください。

(報道関係者 入室)

〔翁分科会長〕それでは、ただいまより、赤澤財務副大臣に報告書をお渡しいたします。

(報告書手交)

〔翁分科会長〕それでは、ここで、赤澤財務副大臣から一言いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

〔赤澤財務副大臣〕財務副大臣の赤澤です。翁分科会長をはじめ、委員の皆様におかれましては、財政投融資の在り方について大変充実した報告書をとりまとめいただき、厚くお礼を申し上げます。どうもありがとうございます。

前回の報告書から5年が経過いたしまして、スタートアップ支援やGX、サプライチェーン強靱化など、新しい課題が出てきている中、国による産業支援の必要性が高まっている状況の中で、財政投融資の役割はより一層重要となっていると考えてございます。

今回の報告書では、財政融資について、経済社会環境の変化に伴う新たな資金ニーズに応えていくべきこと、また、産業投資について、リスクマネー供給の担い手としての役割が高まっていることを踏まえ、一層の運営改善、それから、ガバナンス強化に取り組むことや、財源平準化や必要に応じた資金調達の仕組みについて、対応を検討することが適当であり、これらについて、法令改正も含め、必要な具体的対応について検討していくことを求めるなどのとりまとめをいただきました。速やかに取組の着実な実施、具体的な対応策の検討に着手してまいります。

最後に、委員の皆様におかれましては、今後ともご指導を賜りますよう心からお願いを申し上げ、私のご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、報道関係者の方々はご退出ください。

(報道関係者 退室)

〔翁分科会長〕赤澤財務副大臣は、ほかの公務のために、ここでご退席されます。どうもありがとうございました。

〔赤澤財務副大臣〕すみません。今日はどうもありがとうございました。

(赤澤財務副大臣 退席)

〔翁分科会長〕続きまして、「大学ファンドの状況報告」に移ります。内閣府、文部科学省、科学技術振興機構の方々が入室されますので、しばらくお待ちください。

(大学ファンド関係者 着席)

〔翁分科会長〕それでは、文部科学省及び科学技術振興機構よりご説明をお願いいたします。

〔科学技術振興機構喜田運用業務担当理事〕本日はありがとうございます。科学技術振興機構運用業務担当理事の喜田でございます。

まず、私からは、2023年度の運用実績につきまして、ご説明を申し上げます。

3ページ、制度設計になりますが、基本的には、長期運用、国際分散投資、投資規律の徹底、これに基づいて運用しております。

4ページでございます。こちらが運用実績の概要となります。まず2023年度の市場環境でございますが、欧米では高いインフレで利上げが進みました。結果、金利は上昇しましたので、債券価格自体は下落しております。一方で、経済、企業業績のほうは堅調でございましたので、株高で、日米あるいは欧州との金利差が広がりましたので、円安もあったということでございます。

それで、収益額、収益率について、右下をご覧いただきますと、資産全体で9,934億円、10%でございます。期初から10兆円で運用する初年度になりました。そうした中では一定程度の利益が確保できたかと思います。上のほう、まず実現損益、当期純利益につきましては、経費等々控除後で1,167億円でございます。それから、2ポツに行っていただきまして、前年度の利益剰余金が681億円ございますので、国際卓越研究大学等への助成財源としましては、1,848億円、1,800億円強というのが昨年度までのところで蓄積されたものでございます。

それからあと、未実現損益、有価証券の評価差額金でございますけれども、こちらは7,361億円となりました。

資産構成割合をご覧いただきますと、短期資産が5.8%で、22年度末、1年前の末は27.6%、2兆7,000億円ございましたので、投資を進めたということになります。内訳を見ていただきますと、グローバル債券で65.7%、グローバル株式が25.7%、オルタナティブが2.8%で、我々、いわゆるリスク量を与えられておるのですが、そのためのレファレンス・ポートフォリオというものがございます。こちらのほうはグローバル株式が65%、グローバル債券が35%という構成でございますので、こちらよりはリスクを抑えた運用をしております。これは運用初期ということで、基本的には元本の毀損等々を防ぐため、立ち上げ期の慎重な投資を進めております。

右下を見ていただきますと、リスク量の推移ということで、薄い上の段がレファレンス・ポートフォリオが抱えるリスク、それに対しまして、濃い紺色の数値が実際のポートフォリオのリスクで、少しずつ増やしておりますが、レファレンス・ポートフォリオのリスクに対しましては、5割程度で進捗をさせているというのが現状でございます。

5ページ、運用方針・スケジュールでございますけども、こちらも状況は変わっておりません。2021年度末から運用を開始しまして、2023年度というのが、先ほど申し上げたように、10兆円規模で投資を開始したということでございます。あとは2026年度末までの可能な限り早い段階で3,000億円の運用益の達成、それから、基本ポートフォリオ構築というのが10年以内のなるべく早い段階というところで、不変でございます。

私からのご説明は以上になります。

〔文部科学省松浦大臣官房審議官〕続いて、7ページをご覧ください。文部科学省から、国際卓越研究大学の選定状況と今後の助成に関するスケジュールについてご説明いたします。

まず、第1期公募における選定のポイントやスケジュールについて記載しております。ページ下部のスケジュールにありますとおり、昨年4月から、有識者会議、アドバイザリーボードにおける審査を開始し、昨年9月に東北大学が認定候補として選ばれた旨を公表したところです。その後、東北大学の計画の磨き上げなどを経て、先月、東北大学の提案が認定、認可の水準を満たし得ることを公表いたしました。今後は、10月の改正国大法の施行後、東北大学からの正式な申請を受けた認定、認可の手続を行い、来年度から始まる東北大学の計画に対して今年度中に東北大学への助成を開始する予定です。

また、第1期公募の認定、認可の手続が終わり次第、令和6年度中に次の第2期公募を開始する予定としております。

次に、8ページをご覧ください。こちらのページは、過去の財投分科会においてお示しした資料を基に、令和5年度末時点の運用実績を書き込み、助成に向けた会計処理の流れをまとめております。当期純利益が1,167億円であったところ、今回は、令和4年度からの繰越欠損金がありませんでしたので、1,167億円を目的積立金とする財務大臣協議を行い、助成財源とする予定です。この場合、1,167億円とバッファとして積み上げている681億円の合計1,848億円の3分の1となる616億円が今年度の助成額の上限となります。実際の助成額は、正式には関係府省が参加する会議体にて今後決定いたしますが、大学への助成額の見込みについては、現在のところ、百数十億円となっております。

詳細については21ページをご覧ください。これは助成の考え方ですけれども、公的資金を除く外部資金獲得額の直近5年間の平均、今年度の助成で言いますと、令和元年度から5年度までの平均として算定し、計画初年度の令和7年度分として、先ほど申しました百数十億円を見込んでおります。また、今後、博士課程学生に対する大学ファンドからの支援として、年間200億円程度を見込んでおり、助成に向けて必要な運用益は確保されているものと認識しております。引き続き必要な運用益の確保に向けてJSTとともに取り組むとともに、運用益の範囲内での助成を進めてまいります。

説明は以上です。

〔翁分科会長〕ご説明どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明を踏まえまして、委員の皆様からご意見やご質問をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

それでは、野村委員、お願いいたします。

〔野村委員〕ご説明ありがとうございました。2点お伺いしたいと思います。

1つは、当面の助成額を運用益の3分の1程度というルールをつくられたことはよいと思いますが、この3分の1程度という根拠ですね。いろいろシミュレーションされたと思うのですが、どういう前提で3分の1程度というルールをつくられたのかということをお伺いしたい、その根拠をお伺いしたいということが一つです。

もう1点が、やはり今後、この大学ファンドの助成を継続していくという継続性が非常に大事かと思います。採択された大学にとってみれば、助成額が毎年、非常に上下するとか、年によってはゼロになるということになると、研究計画もままならないと思います。博士課程の200億円というのも、去年は出たけど、今年は出ないということがあってはならないので、その継続性が大事かと思います。それに当たって、最後のページにあります、大学独自の基金との組合せで、継続性の確保をめざすのか。この全体の仕組みがいま一つ分からないので、それについて説明していただければと思います。

以上です。

〔文部科学省松浦大臣官房審議官〕最初の質問ですけれども、3分の1の根拠といったところは、きちんとした説明になるかどうかはあれですけれども、基本的にはこの3,000億円を毎年、まず大学助成の原資として確保すると。仮に運用益が出ない場合でもきちんと出せるように、さらにバッファとして2年分を積むという考え方で、これは最終的にそういったところにまずもっていくことを目標としております。そういう意味では、3,000億円とともにバッファを積み上げて、全体としては3倍分ぐらいの原資を持っておきながら、その3分の1を常に助成し続けると、そういった考え方をまずとっております。

あと、独自基金との関係ですけれども、大学ファンドからの助成は、明確にどういうものに使うかという使途をあらかじめ決めているわけではなくて、かなり大学の自律性とか自主性を確保しながら、大学側で独自の財源も含めて柔軟に執行していくといったところを意図しております。そういう意味で、独自基金と大学ファンドの関係というのを事細かに決めた上で助成しているわけではありませんけれども、基本的には大学側はいろんな財源を組み合わせて、大学の体制強化計画、これはきちんと認定、認可の基礎となっており、それを踏まえて、自主性とか自律性を極力、この制度の中で重視して、執行していくという考え方で運用しております。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

そのほかいかがでしょうか。土居委員、お願いいたします。

〔土居委員〕これは意見です。野村委員が今ご指摘なさったように、運用益が出ているというときはいいんですけども、運用損が出てしまったときということになると、当然、配分可能なものが少なくなるというわけで、もちろんバッファが大きくなれば、そこはバッファで、年度間の平準化というのはできるかもしれませんけども、必ずしもそのような十分なバッファにはまだ達していないというのが現状だと思います。

そういう意味では、確かに国際卓越研究大学の数を増やしていくというようなおつもりがあるやに報道等では聞いておりますけれども、配分可能利益があまり大きくない状況の中で大学の数を増やすということになると、当然ながら、1校当たり配分される額が減ってしまうということになったりするということなので、確かに大学側は、研究資金が欲しいということは分かるんだけれども、あくまでも、大学ファンドの立てつけとしてしっかりとバッファを確保していただいた上で、運用益を生かしていくということでやっていただかなければいけないと思います。

先ほどとりまとめられた当分科会の財政投融資の在り方に関する議論の整理の7ページにも、資金運用による運用益が十分に確保されていないにもかかわらず、大学への助成が優先されていないかどうかということをきちんとモニタリングを行っていくべきだとはっきり明記しております。そういう意味では、もちろんこの分科会でご報告をいただくことも当然ですけれども、資料3の8ページに書かれているような形で、616億円は出せる上限であるんですけども、上限目いっぱい、毎年のように出すみたいなことで当面の間はいいのかと。むしろ逆にバッファをしっかり蓄えていくことに注力するということで、そして、バッファが目標に達することになって初めて、もっと大学への助成に回せるということになるわけだから、そこで、国際卓越研究大学の数を少し増やすとかということがあり得るというような順番なのではないのかなというふうには、私の意見としては思います。

私からは以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。何かコメントございましたらよろしくお願いいたします。

〔文部科学省松浦大臣官房審議官〕ご意見ありがとうございます。まず、大学ファンドとしては、対象校は数校にとどめ、かつ、年間の支出上限は3,000億円と、これは文科大臣決定で決めております。こういった大枠の中で、今ご意見のあったことも踏まえて、適切にこの制度を運用してまいりたいと思います。

〔翁分科会長〕そのほかいかがでございますか。

岡田委員、お願いいたします。

〔岡田委員〕岡田です。本日、説明ありがとうございます。こうしたまとまった資金、ファンドでの運用の関連で、最近、耳目をひいた例で言えば、公的な組織ではありませんけれども、農林中金が巨額の損失を出したことが話題になっていました。こちらの方針でもダウンサイドリスクを抑制し、保守的なポートフォリオ構築とありますけれども、一般に、農林中金が今年すごく話題になりましたけれども、何年も前から、すごく世間で危険性が話題になっていたという報道でもなかったようには記憶していますけれども、今年、ドーンと損失が出たと。そうした点で、何がしか今後の運用に関して参考になるようなところがあるのかどうか。組織が全然違うので、全く違う面があるかと思いますけれども、その辺り、今後のダウンサイドリスクを抑制しつつ、一定の利益を上げていかなきゃならないというところで、その辺りで何かお考えがあれば教えていただければと思います。

〔科学技術振興機構喜田運用業務担当理事〕JSTの喜田でございます。私からのコメントとしては、まず運用立ち上げ期でもございますので、リスクのバランスはかなり配意してやっているつもりでございます。今、農林中央金庫の例がありました。私は農林中央金庫出身でございます。農林中央金庫はやはり債券が多いということで、基本的にはリスクをかなり抑えた運用ということかと思います。長期系列で見ますと、株、為替、債券、それから、クレジットとございますけども、債券のリスクが低いということだったんですが、金利がかなり上昇したということでございます。

これは大学ファンドも、先ほどご説明した資産構成割合を見ますと、グローバル債券65.7%ということで、結構多くございます。ここはリスクの、いわゆる取れるリスクの範囲というのが少し違ってきている部分もありますけれども、かなり為替の円安に助けられた部分はございます。我々としましては、どんな局面でも、なるべく運用初期は極力、例えばリーマンショックのように、景気に強烈なストレスがかかって、金融市場にストレスがかかって、いわゆる株式、それから、クレジット等々が毀損するケースであっても、今度は逆に、今回も一部そうでしたけれども、景気がかなりよくて、株は上がっているんだけれども、金利のほうが上昇して、それがトータルの全体の損失要因にもなり得るというところであっても、双方、ストレステストも、まず過去の状態を確認して、同じように双方の金利上昇のケースであったり、景気後退のケースであったりのところでバランスを欠いていないかというのをチェックしております。

さらに、追加的には、いわゆるフォワードルッキングにどのようなことが起きるかを検討しまして、そこでもストレスをかけて、バランスのほうはチェックしているつもりでございます。今後ともリスクバランスを確認しながら、特にバッファとの兼ね合いで、今回、それなりのバッファはありますけども、まだ初期でございますので、バッファの積み上げ等々も確認しながら運用を適切にやってまいりたいと思います。

以上でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

家森委員、お願いいたします。

〔家森委員〕ありがとうございます。まず、去年10%の利回りを出していただきまして、ありがとうございます。ただ、目標が3%プラス物価上昇ですから、今で言えば、5%ぐらいをターゲットにしていて、1年目はマイナスで、今年は10%です。上にぶれるのはいいともいえるかもしれませんが、それだけターゲットからぶれているということになろうかと思います。その観点で、12ページにあるように、この委員会でも何度も議論した運用監視体制についての質問です。収益が上のほうにぶれるのは幸せではあるんですけれども、逆に言えば、それだけリスクを取っている可能性がある、過大なリスクを取っている可能性があるということなので、この運用・監視委員会等ではどのような議論が行われているのか、そこを少しご紹介いただけますか。

〔科学技術振興機構喜田運用業務担当理事〕ご質問ありがとうございます。まず、今、ご質問、コメントいただきましたとおり、目標、ポートフォリオのリスクから考えた目標リターンというのは、4.5%に対して10%というのは、いわゆる通常の期待リターンではないと。それを大きく上回ったリターンが出ていると。これはもうご指摘のとおりでございます。

昨年度につきましては、かなり極端なケース、つまり、インフレで金利がかなり上昇する、さらに円安が進むというかなりマーケットとしては通常よりも激しい動きだったかと思います。そうした中で、運用・監視委員会におきましては、定期的に四半期の報告、それから、年度の報告をさせていただいておりますが、現段階で、我々のリスクテイクについて過度であるというようなご意見は賜っておりません。逆に慎重にやっているということで、ある程度リスクを取れる余地なり、あるいは、長期運用の観点から本来、適切なポートフォリオバランスはどういうものがあるのかというところに、かなりご意見をいただいているという状況でございます。

〔翁分科会長〕そのほかいかがでしょうか。

先ほど為替についてコメントがございましたけれども、現状の為替リスクに対する対応方針、ヘッジ方針、こういったところはどういうふうに考えておられて、ヘッジコストとかそういったものは、グローバル債券とかグローバル株式とかそういった区分の収益額のところに反映されているんでしょうか。コスト分がですね。それらについてちょっと教えていただきたいと思います。

〔科学技術振興機構喜田運用業務担当理事〕ありがとうございます。まず、昨年のドル円で申し上げますと、円安が13%進行したということで、我々、円から投資していますので、仮に全てがドル資産であったら、もうそれだけで13%プラスになると。当然ながら円のコストはありますけれども、運用資産側でいくと、そういった状況でございます。

ポートフォリオについては、ご説明を先ほど申し上げたとおり、10兆円の初年度ということで、短期資産を大分減らして、運用を進めてまいりました。結果的に、外貨建ての資産が多いものですから、為替リスクがかなり大きくなります。ですので、ある程度、為替リスクをヘッジすることで、いわゆる為替の変動があったときに、先ほどのご質問でもありましたけども、いわゆる円高ストレスがあったときに、極端にやられないようにということで気をつけております。

ヘッジ方針につきましては、ある程度、円安がかなり進んだところでは高め、それから、円高に大分行ってくれれば低めというのがございますけども、それでも、なお、リスクバランスがございますので、ある程度はヘッジをするということでございます。現段階で、2023年度末の外貨に対してどのぐらいヘッジしているかというと、今、ヘッジ率が49%、ほぼ半分ヘッジをしているという状況でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

先ほど土居委員もおっしゃいましたけれども、まだ初期の段階ですので、しっかりとバッファを積み上げていくということがまず重要でして、そろそろ1校目が出てくるということでございますけれども、しっかりと運用を行っていただきたいと思います。

すみません。渡辺努委員から質問があるということですので、恐縮ですが、オンラインでよろしくお願いいたします。

〔渡辺委員〕渡辺です。よろしくお願いします。私は、在籍しているのは東大なんですけれども、まだ東大はいただけていないんですけれども、学内で今議論になっているのは、授業料を上げるかという話は非常に大事な議論になっていまして、要は、自分たちで収入を何とか確保するということを考えるべきかどうかということが議論されているわけです。もちろん寄附金を集めるという話も、先ほど出ましたけれども、大事なわけですが、一方で、授業料を上げるというのも収入を確保するという点では大事なのではないかというふうに、私は個人としては、大学のメンバーとしては思っております。その観点で、例えば授業料をしっかり上げるというのは、この助成金を受け取る資格云々というところにどのように関連するのかというのをお聞かせいただければと思います。

それからもう一つ、先ほど為替レートの話がありましたけれども、私は文系なんですが、理系の先生たちのお話を聞いていると、例えば機械設備を買うとかというときには当然、海外からドル建てのものを買うことになりますので、円で確定させることというのが必ずしも意味があるとは、100%そうだとは思えないんですが、その辺のところで、大学が必要としているお金のどれぐらいがドルでデノミネートされているのかというようなことを踏まえて、助成金の運用を考えるということというのは将来的には可能性があるんでしょうか。

2点、お聞かせいただけたらと思います。

〔文部科学省松浦大臣官房審議官〕まず1点目について、文部科学省からお答えします。国際卓越研究大学制度は、国際卓越研究大学になろうとしている大学が体制強化計画案を策定し、その大学と体制強化計画案について、きちんと認定、認可の水準に達しているものを認めていくという制度でありまして、体制強化計画と授業料、特に資金調達の一手段ではあると思いますけれども、一義的には、授業料を上げる、上げないというのは、国際卓越研究大学になるための体制強化計画に連動していないと思いますので、審査において、特に考慮はしないものと認識しております。

〔渡辺委員〕よく分かりました。2点目お願いします。

〔文部科学省松浦大臣官房審議官〕この大学への助成は、基本的には、体制強化計画を実現するために、25年なら25年間、全体の計画として認めて、それを運用益に応じて、かつ、大学側は大学の資金、外部資金の獲得額に応じて支払っていくという考え方なので、各大学が各年度に、実際、為替レートの変動も含めて、幾ら経費がかかっているかといったことは、特段、大学の助成額の計算に特に影響しません。逆に、先ほど別の委員の質問にもお答えしましたとおり、大学側は、大学ファンドからの助成以外の自主的な財源も含めて、可能な限り、自主的、自律的な形で運営をしていくといったことが期待されますので、仮に為替レートで大きく経費が上がったとしたら、そこは大学側の自主努力で何とかそこを克服していくということになるかなと思います。

〔渡辺委員〕つまり、その分の大学が負っている為替リスクというものについては、このファンドが引き受けるということはないということですね。大学が自らその為替リスクを取るべきだということですね。

〔文部科学省松浦大臣官房審議官〕はい。そのとおりでございます。

〔渡辺委員〕分かりました。ありがとうございました。

〔翁分科会長〕土居委員、お願いいたします。

〔土居委員〕渡辺委員のご指摘は大変重要なものだと私は認識しました。というのは、為替リスクは当然、財政投融資絡みでもいろいろあるわけで、実際、国際協力銀行の資金調達を外国為替資金特別会計で手助けしたことがありました。もちろん、ただで一般会計とか、財政投融資特別会計とか、そちらがリスクを肩代わりするような形でやるというのはよろしくないとは思うんですが、正当なリスクの交換を、片や、外国為替資金特別会計には外貨があり、もちろんJSTで運用しているところで、外貨で運用しているというのもあるかもしれませんけれども、そこで何かうまく、財投特会にとってもメリットがあり、かつ、国庫、国家財政全体としてもメリットがあるような形で為替リスクを上手に交換するというような方法を何らかの形で検討していただくといいのかなというふうにも、ちょっと空想かもしれませんけれども、思った次第であります。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。少し考えていただければと思います。

そのほかにはよろしいでしょうか。それでは、この辺りで本件につきましての質疑を終了したいと思います。

ここで、内閣府、文部科学省、科学技術振興機構の皆様にはご退席をいただきます。どうもありがとうございました。

(大学ファンド関係者 退席)

〔翁分科会長〕それでは、続きまして、「令和5年度財政融資資金運用報告書」及び「令和6年度政策コスト分析」につきまして、吉住財政投融資総括課長及び村松資金企画室長よりご説明をお願いいたします。

〔吉住財政投融資総括課長〕改めまして、財投総括課長の吉住でございます。どうぞよろしくお願いします。

それでは、議題4といたしまして、令和5年度財政融資資金運用報告書についてご説明させていただきます。

この報告書は、財政融資資金法第12条において作成、及び、年度経過後4か月以内に審議会に提出しなければならないと定められていることに対応するものでございます。

関係資料といたしましては、資料4-1、4-2の2種類がございます。4-1は、報告書のポイントをまとめた資料でございまして、4-2の白い冊子としてとじてあるものが運用報告書の本体でございます。本日は、最初の4-1の運用報告のポイントといった資料に従いましてご説明させていただけたらと思っております。

それでは、資料4-1の2ページをおめくりいただけますでしょうか。財政投融資計画の執行状況というところでございます。この執行状況でございますが、下のグラフで見ていただきますと、令和5年度の運用額は、一番右端の棒グラフとなっております。財政投融資計画全体、すなわち財政融資、産業投資、政府保証の合計の運用額は、この左側の橙色の10.8兆円、財政融資資金に限って申し上げますと、水色の8.0兆円となっております。

執行率は、その上のグラフとなりますが、財投計画全体の執行率は52.0%、財政融資の執行率は46.9%という形になっております。これはコロナ前の平成26年、30年度に比べますと、若干低い数字という状況になっております。

どうしてこのような状況になっているのかということでございますが、それは次の3ページをご覧いただけますでしょうか。この3ページは、主な機関の運用状況の概要を示したものでございまして、年度内運用額を大きい順に10機関並べてございます。資料のちょうど真ん中ぐらいに、日本政策金融公庫といった欄がございます。この欄をご覧いただきますと、日本政策金融公庫の計画は、計画額としては6兆円を超えているという状況でしたが、執行率は、その右にございますように、12.4%という形になっておりまして、さらにその右、運用残額が5.3兆円といった形になっておりまして、運用残額の7割以上は、この残額で説明ができるといった状況となっております。

この運用残の理由は、もちろん新型コロナ感染症対策等のために、企業の資金需要に対応できるように十分なバッファを確保したということでございますが、結果としてちょっと積み過ぎたのではないかといったご議論もあろうかと思いますので、少し補足の説明を申し上げますと、令和5年度の計画といったものを作成いたしましたのは当然令和4年の12月でございますが、令和4年の10月末の経済対策におきましても、「コロナ禍からの需要回復を図りつつ、新型コロナ感染症の感染拡大、あるいは物価高等に引き続き万全を期す」といった旨が決定されておりまして、こうした状況を踏まえた当時の状況といたしましては、やはり十分な計画規模を確保する必要があったと考えております。

しかしながら、新型コロナ感染症の位置づけといったものが、年が明けまして、令和5年5月に5類感染症、つまり、通常のインフルエンザと同等に変更になりまして、これに応じまして、コロナ関連の資金需要に落ち着きが見られたこと等から、こうした結果となったものでございます。もちろん、これはあくまでも計画の運用残という形でございますので、実際に財政融資資金が出ていったわけではございませんので、その裏づけとなります財投債の発行につきましても、財投債の当初の発行計画額は12兆円と考えておったんですけども、結論といたしましては3.1兆円の発行と、つまり、9兆円は発行しなかったということでございますので、運用残がございましても、その資金がだぶついているといったことはございません。

また、令和6年度計画におきましては、日本政策金融公庫の財投計画額は4兆円となっております。この4兆円は、賃上げ支援でございますとかスタートアップ支援を含めての4兆円ということでございまして、令和5年度の6兆円から減額しておりまして、一定の精査がなされたものと考えております。

それでは、さらに1ページおめくりいただきまして、資料の4ページをご覧いただきますと、これは財政投融資計画の残高の推移でございます。令和5年度末時点の残高は、一番右側、146.7兆円となっております。内訳は、上から政府保証分が24.3兆円、産業投資分が7.0兆円、財政融資分が115.3兆円となっております。

先ほどご手交いただきましたとりまとめにおきましても、政策的意義があり、収益性が見込められる分野の支援について、財政投融資の活用が望ましい旨のご提言や、経済社会情勢の変化に伴う新たな資金ニーズに適切に応えていくべきといった趣旨のご提言をいただいたところでございまして、こうしたとりまとめにおけるご提言を踏まえながら対応を図ってまいりたいと考えております。

それでは、若干駆け足で恐縮ですが、1ページおめくりいただきまして、資料の5ページでございます。これは財政融資資金の短期運用実績についてでございます。資料の上段の表の合計というところをご覧いただけたらと思います。その真ん中ぐらいが5年度中の運用額という形になっておりますが、令和5年度中の財政融資資金の短期運用額は合計162兆円という形になっております。残高がその右側ですけど、6兆円という形になっております。運用額や回収額の数字でも非常に大きくございますが、これは交付税特会への貸付けが、例えば数日程度で回す、年金特会の貸付け回収は1か月程度の期間で繰り返すといった形になっておりますので、運用実績といたしましては累積で計上されるため、162兆円程の非常に大きな規模となっております。先ほど申し上げましたように、実際の残高という形では6兆円という形になっているところでございます。

その右下をご覧いただきますと、財投債の発行残高、預託金残高という形になっております。右側、このグラフをご覧いただきますと、一番右端でございますが、令和5年度末における財投債の発行残高は、前年度末比で6兆円減少の94.6兆円、預託金残高は37.9兆円という形になっております。預託金残高が若干増加しておりますが、これは防衛力強化資金といったものがつくられまして、その預託がなされたことが主な増加要因でございます。

それでは、次の6ページをご覧いただけますでしょうか。令和5年度における財政融資資金勘定の損益についてでございます。貸借対照表を見ていただきますと、令和5年度の決算は、赤で囲んでいるところですけど、324億円の損失といった形になっております。これにつきましてご説明申し上げますと、従前は、過去の高い金利の長期貸付けといったものが残っていたものでしたから、利益を計上していたんですけれども、近年は、長期貸付けの残高自体が減少いたしまして、利益が減少していること。そして、令和3年度以降におきましては、運用利回りと調達コストの金利差が逆転したといったことが生じまして、損失が出ております。

運用利回りと調達コストの金利差が逆転した理由につきましては、財投改革後の平成13年度から18年度にかけまして、当時、それなりに大きくございましたデュレーションギャップを解消するために、20年債といったものを発行、利率2%程度で発行いたしまして、それが残っておりまして、調達コストが下げ止まっているという状況になっております。しかしながら、平成18年度発行の20年債の影響も今後数年間で、もう20年経過しますので、解消されるものと見込まれております。

なお、この損失は翌年度に繰り越しまして、金利変動準備金から補足して処理することになりますが、令和5年度末における金利変動準備金は1兆494億円という形になっております。

次が7ページでございます。財政融資資金勘定の将来推計等でございます。これは令和5年度末の実績を基に、将来剰余金の推計を分析したものですが、令和6年度以降、当面は単年度損失が継続する可能性がございますが、それも次第に解消され、ストックベースにおきましては、安定して繰越利益のプラスといったものを維持する見込みということが、このシミュレーションによって見て取れるところでございます。

最後、8ページでございます。駆け足で恐縮ですが、8ページをご説明申し上げますと、財政投融資の使途別分類と呼んでいるものでございます。これはどういう使い方をされているかというところでございまして、資料下段の円グラフ、合計10兆7,557億円と書いてあるところをご覧いただきますと、令和5年度の運用状況は、総額のうち、社会資本が最も大きく、3.5兆円程度、そして、海外投融資等が3.2兆円、そして、産業・イノベーションという形で続いております。

左側は推移を示しているんですけど、令和4年度ですと青色の部分、教育の部分が非常に大きかったんですけども、これは大学ファンドに対する資金貸付けを実行したものでございまして、令和5年度は、そういった影響が減少しておりまして、今申し上げたような社会資本、海外投融資等というのが大きく、そして、その次、産業・イノベーションという形となっております。

それ以降のページにつきましては、参考資料でございますので、資料のご説明は割愛させていただきます。

私からの運用報告についてのご説明は以上でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

続きまして、村松資金企画室長、ご説明お願いいたします。

〔村松資金企画室長〕では、次でございますが、資料の4-3の令和6年度政策コスト分析について、ご説明させていただきます。

まず1ページをご覧いただきまして、令和6年度政策コスト分析の概要につきまして、ご説明申し上げます。

冒頭、補足でございますが、昨年の説明資料におきましては、当年度の政策コストの総額を前年度と比較するという形で説明してございましたが、差の内容が単に前提金利の違いで説明できてしまうということや、各機関に固有の内容が見えないということで、昨年の当分科会におきましても、各委員の皆様から貴重なご意見を頂戴いたしましたので、今回、資料の構成を抜本的に見直しまして、11ページにわたり改定を行ってございます。

1ページ目につきましては、主要な機関につきまして、コストの特性に応じたグループ分けをした上で、事業の社会・経済便益や政策コストの実質的な変動要因など、機関ごとに評価を行うための情報を開示するよう、改善を図ってございます。

まず、ヘッドラインのところでございます。まず、6年度の計画を踏まえました、昨年同様、25機関の政策コストの合計は5.8兆円になってございます。政策コストの分析の総額の5.8兆円につきましては、実際に将来の資金移転に伴う財政負担を示すものではないことに留意が必要でございます。また、受益者負担を軽減するための財政政策として、当該事業への支援の度合いを表す結果とも言い換え可能でございます。従いまして、機関の財務の健全性に問題があるものを示すものではないということ、それから、その額の大小をもって単純に比較することは適当でなく、その事業の社会・経済便益等と併せて総合的に評価すべきでございます。

まず政策コストの大きい主な機関といたしまして、A、B、Cという形で分けてございます。Aにつきましては、出資金の機会費用を超過する利益の確保が見込めないグループ、道路機構、日本公庫、国際協力機構、森林機構等がございます。Bの、補助金を超過する利益の確保が見込めないグループといたしまして、鉄運機構がございます。一方、マイナスのコストとなる主要な機関といたしましては、出資金の機会費用を超過する利益の確保が見込めるグループとして、政策投資銀行や都市再生機構がございます。

下の表でございますが、これらの機関の政策コストと、右側には、政策コストと対比して捉えるべき事業の便益について記載しております。AとBのコストの大きい機関におきましても、右側の各機関が任意に試算いたしました事業の社会便益を見ますと、道路機構、森林機構、鉄建機構においては、政策コストを上回る事業の便益があることが確認できますほか、事業系では、B/Cとかを計算しておりますが、定量的な評価が困難な日本公庫、国際協力機構、病院機構におきましても、国民や社会経済に対して一定の貢献を果たしていると評価できるところでございます。

次のページでございます。先ほどの主要な機関につきまして、事業の状況が捉えられますよう、経年比較分析としまして、前提金利の変動による影響を除いた上で、政策コストが昨年度から大きく増加した機関とその要因をお示ししてございます。こちらは財投の償還確実性の確認や財投編成等の活用といった視点で作成してございます。

まず、国際協力機構におきまして、6年度の新規融資に係る金利収支差によりまして、政策コストが昨年度から3,410億円増加しているほか、日本公庫におきまして、直近の実績を踏まえまして、国民一般向け業務における貸倒引当金の見込みを増加させたことなどにより、政策コストが昨年度から2,199億円増加しておりまして、こうした動向に留意が必要としてございます。コメ印のところにつきましては、国際協力機構の補足についてでございますが、機構による支援は、一般的に開発途上国の重い負担とならないよう調達よりも低い金利で貸付をする構造でございまして、グローバルサウスへの支援など事業規模の高まりも受けまして、近年、金利収支差は拡大傾向にございます。

なお、公庫の貸倒引当金の箇所でございますが、こちらは12月に、コロナの分析においても示した数値と同じ貸倒れの率を使ってございますので、当時想定した貸倒れの状況が何か悪化したというわけではなく、あくまで前年度の比較を今回行ったということでご理解いただけますと幸いでございます。

なお、この貸倒引当金につきましては、資料4-4に数値として別途詳細に記載してございますので、必要に応じご確認いただければと思います。これらの数値につきましては、前のコロナ分析での説明と同じように、入手可能な範囲で、直近の数値をカバーしておりまして、過年度の実績、令和2年から4年度の平均値を使用してございます。将来の貸倒れについて一定の確度を持って予測することが難しい中、過年度の実績を用いることで、分析の客観性、信頼性については、一定程度確保できているものと認識してございます。

その下でございますが、各機関の金利上昇リスクが捉えられますよう、感応度分析といたしまして、前提金利が1%上昇した場合に、政策コストが大きくなる機関を示してございます。高速道路機構におきまして、将来、借換えに係る利払費の上昇により、政策コストが8,795億円増加するほか、都市再生機構におきましても同様に、政策コストが7,061億円増加してございまして、両機関におきましては、将来の借換えに係る金利上昇リスクに注意が必要でございます。例えば道路や都市再生機構は、資金回収期間がそれぞれ41年、80年と長い一方で、資金調達は10年、30年となってございます。

なお、融資系の機関につきましては、基本的には貸出しの回収期間と、それに見合う負債の返済期間が合ってございますので、事業途中における資金の借換えが発生せず、感応度分析で将来金利を1%上昇させても資金調達コストは増加しませんが、機会費用は一律の影響が出ますので、コストの感応度分析におきましては、機会費用としての増加としてプラスとして表示されることになります。

以降は参考資料でございますが、4から7ページにつきましては、こちらも従来なかった資料でございますが、1・2ページで記載している内容等につきまして、機関ごとに確認できますよう分かりやすくポイントを絞った形でまとめてございます。

あと、8ページ目につきましても、今回新しく追加しているものでございますが、近年の政策コスト分析を取り巻く状況が分かりますよう、各年度における政策コストの総額の推移を示しております。各年度における政策コストは、前提金利や分析機関等が異なりますので、一概に比較はできませんが、令和2年度以降の推移につきましては、左下の赤枠の箇所及び本文の中で、理由についてはご説明しておりますので、ご覧ください。

なお、事前のご説明の機会で、この資料につきましては、冨田委員より、各年度の政策コストの総額については、当年度の財投によってどれだけ政策コストが発生したかを見る上で重要ではあるが、実質要因の箇所で、4から5年にかけてマイナス、財投側で見ると余剰が発生しているように見える理由につき、ご質問がございました。また、丸田委員からも同様のご質問を頂戴してございます。

実質でマイナスとなっている理由でございますが、まず前提金利の影響を除いた実質増減分析では、1ページの分類で言えば、AやBにジャンルされるところであれば、新年度の事業が追加される関係でコストは増加する一方、Cのような純ざや機関ではマイナスとなりますが、AやBへの財政融資等が大きい関係で、基本的にここのところは、近年、プラスの分析結果となってございます。

一方、そういった要因があるにもかかわらず、マイナスとなっている理由。これは若干テクニカルな理由で恐縮でございますが、令和3年度から4年度、4年度から5年度も同じ理由でございますが、日本公庫(危機対応)の損害担保事業につきまして、コロナ対策ということもあり、かなり保守的に事業費を計上した関係で、例えば2年度では12兆円の予算に対して実績が2兆、3年度につきましては5兆円の予算に対して実績が0.6兆となったため、ここでは欠損金が改善したという分析になってございますので、コストが1.2兆円規模でマイナスとなってございます。

また、令和4年度から5年度につきましては、これに加えまして、自動車安全特別会計の空港整備勘定でございますが、事業収入がコロナ前の水準に回復すると見込んだことから、マイナス2,179億円となっております。よって、これらの要因によってマイナスとなっているものでございます。

最後、9ページにつきましても、ディスクロージャーの充実の観点から、今回、工夫をしたものではございますが、6年度の政策コストの総額5.8兆につきまして、1ページの便益比較等の視点を変えまして、各機関の支援分野ごとの内訳を示してみました。高速道路機構、国際協力機構、日本公庫の政策コストに連動いたしまして、社会資本、海外投融資、中小零細企業の分野におけるコストが高い一方、政策投資銀行や都市再生機構の政策コストに連動いたしまして、産業・イノベーション、住宅分野における生産コストはマイナスとなってございます。

私からの説明は以上でございます。

〔翁分科会長〕ご説明、どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明を踏まえまして、委員の皆様からご意見やご感想も含めてお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

丸田委員、その次に岡田委員、お願いいたします。

〔丸田委員〕丸田でございます。ご説明ありがとうございました。ご質問というよりは意見ということでお話しできればと思います。

まず、財政融資資金運用報告でございますが、今回のご説明で、執行率が下がっている主な理由について、予算策定のタイミングということで理解させていただきました。今後、コロナ融資もかなり落ち着いてきますので、コロナ前の水準に徐々に戻っていくものと理解いたしました。

あと、7ページ目の将来推計で、今期は、主に調達との関係で赤字になっているということで理解しましたし、今後、中央値としては基本的に黒字に戻っていく推計で、剰余金を取り崩し、剰余金がなくなるようなことは想定されていない点、十分理解させていただきました。ただ、今後、金利が上がっていくという前提は、この推計で勘案されていると思うのですが、その中でも、運用・調達環境の変化の程度によっては、今後、この推計分析の結果も変わってくると思いますので、その点を踏まえて今後注視させていただきたいと思います。

後半の政策コスト分析でございますが、昨年は自らの理解不足もあり、わからない点が多く、この場でいろいろご質問させていただいたのですが、今年は資料が改善されて、非常に分かりやすくなりまして、機関ごとの趨勢であるとか、去年とのコストの比較とか、1ページ目の便益との比較も含めて、多面的かつポイントを絞ったご説明で大きな改善がされて、非常に理解が進みました。ありがとうございました。

こちらに関するコメントですが、このコスト分析を拝見すると、日本政策金融公庫のコストが今回、貸倒れも増えて、2,000億円強増えているということで、これは主にコロナ融資の貸倒れが増えていて、一般的に倒産も増えておりますので、コストが増加しているのではないかと推察します。ただ、日本政策金融公庫の政策コストは1兆8,000億円ということで、このうち、かなりの部分がコロナ関係ではないかと推測されますが、かなり大きい金額と感じました。昨年はコロナ関係政策のコストを取り出した分析等もいただきましたが、最終的には、コロナ関係政策の効果と併せて、今後の貸倒等によるコストの増加分を含めた最終コストの妥当性をしっかり見ていく必要があると感じています。仮に、今後政策コストが貸倒れ等でさらに増加したとしても、一般会計からの手当により、特に財投からの資金の回収には影響がない点はご説明いただいたので、その点は安心しております。

最後に、今後、金利が上昇していく中で、特に金利感応度が高い事業、具体的には高速道路であるとか都市再生機構等と思いますが、これらについては便益との比較が重要になってくると思います。具体的に高速道路の便益等はご説明いただいていますので、仮に金利が上昇しても、便益と比べて、マイナスになるようなことは想定されていないと思われますが、一方で、高速道路などのインフラ関連投資は、今後、新規整備の限界的な政策効果が、一般的には低減していく傾向にもあると思いますので、この金利の上昇と得られる便益とのバランスを、今後しっかり見極めていく必要があるのではないかと感じました。

以上、意見でございます。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。

それでは、岡田委員、お願いいたします。

〔岡田委員〕岡田です。運用報告のポイントのところで、3ページ目でご説明いただきましたけれども、日本政策金融公庫の執行率が12.4%と、低いということでありますけれど、そのご説明の中で、積み過ぎだったかもしれないという説明もありましたけれども、積み過ぎることの弊害というのはどう考えていけばいいのか。一般に、こうした経済対策を打つ場合は、政治的な要請として、やはりしっかりやっているということを国民にアピールするために数字を大きく見せたいというインセンティブがあって、その際にこうした政策金融機関の数字というのは積み上がりがちということがあるかとは思いますけれども、そうした積み過ぎの弊害というのがそれなりにあるのか。あるいはさほどないのか。あまりさほどなければ、どうしてもそうなってしまいがちというのはあまり今後も変わらないような気もするんですけれども、コロナ対応のことも今後検証していくというお話であるかとは思いますが、その辺りについてお考えを聞かせていただければと思います。

もう一つ、政策コスト分析の概要で、前年に比べて非常に分かりやすくなって、大変まとまった分析だと拝見しました。その上で、政策コストの合計5.8兆円という数字があって、1ページ目の資料で、いろいろなメリットということで、12.7兆とか2.8兆、3.3兆と数字がいろいろ入っていますけれども、今後、政策コストを見ていく上で、こうした1の資料にある、これを全部数字で足した数字が出ていませんけれども、こうした数字を足したものを下回る限りは大丈夫という考え方になるのか、あるいは、この足し上げた数字と比べれば政策コストのほうは随分数字は低いですけれども、これは相当程度低いということがあるべき姿としてあるのか。今後、金利の変動によってはいろいろなことも考えられますけれども、その辺り、便益とコストの関係をどう見ていったらいいのかという辺りも教えていただければと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

冨田委員、お願いいたします。

〔冨田委員〕ありがとうございます。政策コスト分析、今年のプレゼンテーションの資料、私は大変よくできているように思いました。特に私は前から関心があったのが、資料で言いますと8ページ、昨年度の政策コストの推移というものです。昨年度、5年度の財投計画に比べて、本年度の財投計画。これは2兆2,000億円、政策コストが経年変化で増加しているという姿なんです。しかも、この内訳が、財投機関ごとに説明がついておりまして、例えば政策金融公庫ですと、先ほどお話あったように、経年比較で調整後、2,500億円のコストが増えている。この計数、今、7月なわけですけども、予算の国会審議の参考資料として、1月の通常国会に提出できないのかどうか。これは財投を広く国民にご理解していただく上で、大変重要な資料になっているように思うんですね。先ほどお話あった1ページの資料に要約があって、各機関にコストがどれだけ増加したかという資料なんです。

実は、この政策コスト分析は、日本の財投改革とほぼ同じ時期、少しアメリカのほうが早かったですけども、1990年に、フェデラルクレジットリフォーム・アクトというアメリカの財投改革の法律です。そこで、このサブシティコスト・アナリシスとして政策コスト分析が行われるようになって、それはまさに大統領の予算教書に詳しく出ているんですね。そういうことからもこういうのはやっぱり国会審議の役に立つように、その時期に出したらどうかということが一つです。

もう一つは、これも私、何回も申し上げているんですけども、政策コスト分析という方法を用いて、例えばコロナ対策でもって、企業に対する、中小零細企業に対する直接融資、つまり、政策公庫を通じた直接融資、あるいは、保証協会による保証を使って、民間金融機関が保証つきの融資を行う。これらのコストを相互比較することによって、国民負担がどの程度違うのかということを知ることができるわけでして、アメリカの政策コスト分析でもって、それが行われる以前は、アメリカの財投で行うと国債を発行しなきゃいかん。だけど、民間金融機関を使って信用保証で行うと国債は発行しなくて済む。そういう非対称があったので、それまでどんどん保証による融資が増えていたんです。これをコスト分析を行うことによって、奨学金貸付、学生ローンのコストを比較すれば直接融資のほうは少し安いということでもって、民間銀行による、民間銀行を通じる保証というものが大幅に減っていったんです。だから、そういう代替的な政策手段についてのコスト面からの評価ということに、大きな役に立つだろうということが一つです。

もう一つ、ちょっとご質問ですけども、先ほどご質問、ご説明あった大学ファンドなんです。大学ファンドというのは、先ほどご説明あったように、運用益を国に納付を行うことが想定されていて、それはマイナスの政策コストなわけですね。そういうことを政策コスト分析でどのように表示されているのかということについてお教えいただきたい。つまり、政策コストを、マイナスの政策コスト、つまり、国庫納付をどんどん生み出すことを目標とする機構なわけです。これは私が前から言っているように、無税国家に通じる発想なわけですね。こういうことをほかの機関もやり始めたらどうなるのかということも含めて検討する必要があるだろうということで、大学ファンドの政策コストについてお教えいただきたい。

以上でございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。

それでは、山内委員、お願いいたします。

〔山内委員〕ご説明ありがとうございます。私は、政策コスト分析のほうのみ、コメントとして申し上げたいと思います。ほかの委員の先生方ご指摘のとおり、熟度の上がった分析をされていらっしゃって、とても分かりやすいと感じました。その中で、今回のまとめております議論の整理の中でも触れておりましたとおり、規律ある運営というところで一言申し上げます。

規律ある運営というのは、投資の世界、ガバナンスの世界ではどこでも出てくるのですが、その規律とは何かというのは、総論では合意されるものの、具体的に何を目線にして話せばいいのか分からないということが起こりがちだというふうに、私は個人的な経験として感じております。その意味では、この政策コスト分析で出てきた数字というのを対話の一つのきっかけにしていただきたいと考えております。もちろんこれは仮定の上で成立している数字でもありますので、これを絶対視するものではないと思いますし、また、先ほど岡田委員のご質問からもございましたとおり、便益があってのコスト、コストがあっての便益でもございますので、コストが高いからけしからんとか、切り詰めなければならないという話のみでもないかと思います。かといって、何となくの便益の説明でコストをどんどん積み上げられても困るというのもありますので、バランスはあるものの、ぜひこの規律ある運営の一つのきっかけとして、政策コスト分析の結果というのを使っていただきたいと考えております。

機関の方とご対話いただく際、機関によっては、例えば今示していただいている金利の感応度分析はかなりやっていらして、いや、それはもう分かっていますよという機関もいらっしゃるかもしれないですし、逆に、そうでない機関もいらっしゃるかと思うんですね。財投としての管理を考えたとき、機関側に今まで政策コストの意識があまりなかったかもしれないですし、あるいは実務担当者の方は実は経営数値を豊富に持っているけれども、経営陣や理事の方々が意識をもっていたかどうかというのはまた別の話なので、そういった機関組織の経営に役立てていただく視点から、これからも政策コスト分析を続け、先ほど冨田委員からもお話あったとおり、継続して対話していくことは非常に大切かと思います。そういった視点をご考慮いただけたらありがたいなと考えております。ありがとうございます。

〔翁分科会長〕ありがとうございます。

それでは、土居委員、お願いします。

〔土居委員〕まず、ほかの委員の方からご指摘があった点に関連しての私のコメントも申し上げたいと思うんですけども、先ほど岡田委員が、運用残というか、執行率のことについて言及されました。確かに政治的な癖というか、そういうのはなくはないのかもしれませんが、融資枠なので、多めにあったからといって、先ほど課長からのご説明にもありましたように、その分、財投債の発行を抑制できていれば、特段無駄なコストがかかっているわけじゃないということはそのとおりだと思います。けれども、これは財投だけではない理財局全体のマターなのかもしれませんが、国債発行計画があって、国債発行計画を年度途中に大幅に変えるというのは相当難しいということは、金融機関、金融市場との関係であると。

結局のところ、昨年度の補正予算では、財投債の発行を抑制する代わりに、一般会計で国債を増発したという形で、国債発行計画を大幅に改定しなくても、国債の償還には支障はなかったけれども、ちょっと意地悪く言えば、補正予算の財源になっちゃったという、そういうようなことにもなったりするということは、実は前の局長のときにも私が申し上げていて、そういうような形で、年度内で巨額の補正予算のきっかけになるようなことに使われないようにしてほしいということは申し上げたところなので、今後は、もうコロナも、経済対策としては終わりましたので、そういう意味では、適正に事業規模を見計らいながら、適正に財投債の発行を考えていただいて、それが何か変な補正予算の財源に回るようなことにはならないようにしていただきたいと思う次第です。これは完全な意見です。

それから、もう一つは、冨田委員がご指摘された大学ファンドの政策コスト分析で、ちょうど資料4-3の1ページの一番下に書かれていて、参考という数値でありますけれども、5,544億円ということで試算されているということで、私は、これは大変意義があると思います。残高機関の政策コスト分析は表立っては計算しないということになってはいるんだけれども、あえて残高機関で新規に出融資をしていない平成6年度でありながら、JSTについては政策コスト分析の結果を発表されたということなので、これはとても重要だと思います。願わくは来年度以降も継続してお願いしたいと思います。

ちなみに、このJSTの政策コスト分析が表立ってというか、参考という扱いではあったけど、表立って政策コスト分析の冊子の中に載っている平成4年度の政策コスト分析では2,966億円と書いてあって、それが金利変動の影響もあってか、令和6年では5,540億円になっているというわけですので、しかも、昨年度から118億円増えているということになっているということまで明記されているということですので、これはもちろん当分科会としても、この数字の重みを認識するということはあるとしても、むしろ大学関係者に大学ファンドの機会費用というのはこういう大きさなんだということをきちんと理解していただくと。もちろん、先ほど山内委員が、コストだけ見てはいけないというのは、それはそのとおりなんですけれども、そもそもコストがないという認識を持っておられるような大学関係者おられたりするところがありますので、しかも、機会費用というのは多分に経済学的で、見えないコストを見える化しているようなところがありますものですから、そういう意味では、見える化できたということでもって、大学ファンドの関係される方々に対して、それだけ機会費用があるということを重く受け止めていただきたいという形で、この政策コスト分析を活用していただければと思います。

以上です。

〔翁分科会長〕どうもありがとうございました。

それでは、今までのご意見やご質問に対してご回答をお願いいたします。

〔吉住財政投融資総括課長〕吉住でございます。運用報告についてご回答申し上げます。

岡田委員から、運用残の話についてご質問いただきました。すみません。最初に、冒頭私がちょっと誤解を与えるようなご説明の仕方になって恐縮ですが、私は、「積み過ぎた」というよりは、「運用残の背景はこんな感じではなかろうか」ということをご説明申し上げたつもりだったんですけども、大変曖昧な説明で失礼いたしました。

その上で、必要なものを必要なだけ融資するというのは本当に理想的なやり方だとは思っております。一方で、お話ございましたように、将来が不透明な中で、安心感を与える、あるいは機動的に動いてもらうために、一定の計画規模といったものを確保して見せておくということは、それは当然に必要なことだと思います。

そうした中で、社会経済情勢の変化によって不用が出るといったこともありますでしょうし、以前、この分科会でもご議論ありましたけども、執行率を上げるために何か不要な融資をするみたいな話になると、それはまた逆の話だろうと思っております。したがいまして、土居委員からのご指摘にございましたけれども、状況をよく見ながら適切に編成していくということに尽きるのでございますが、今後ともまたご指導いただければと考えております。よろしくお願いします。

〔翁分科会長〕お願いします。

〔村松資金企画室長〕それでは、まず個別にご回答させていただきます。

まず丸田委員から、コスト分析、改善していてよかったということで、大変ありがとうございます。一つ、その中で、運用報告絡みでいきますと、私はALMも担当してございますが、金利が上がっていく中、運用環境、ALMの話も若干出ておりましたが、我々、モンテカルロで3,000本のパスを発生させていて、絶えず組み替えながら分析してございますので、そこはしっかり引き続き見させていただくということ。

あと、公庫の出資金につきまして、1.8兆円のコロナ関係だということでございましたが、これは実は大宗は出資金の機会費用で説明できてしまっておりまして、コロナ向けで、公庫の国民業務では、4~5兆の出資金の投入がございました。そういうことで、ここでいきますと、1.8兆のうち、出資金が約2.4兆、国庫納付が約6,000億円発生するということでの数字になっております。

次でございますが、岡田委員から、費用便益と、コストの関係をどう捉えるべきか、というご質問がございました。先ほども冒頭、コスト分析についてご説明しましたが、これは概念上のコストでございまして、実際の資金移転を伴う財政負担ではないということでございまして、また、受益者負担の軽減の財政政策として、事業の支援の度合いを表す結果とも言い換えられます。コストの大小で判断すべきものではなく、その事業の社会便益と併せて総合的に評価すべきものでございまして、全体の合計というよりは機関ごとに個別に見ていく必要があろうかと思います。

あと、次は冨田委員からでございますが、予算の通常国会ということでお話もございましたが、こちらは計画決定後に資料をつくる関係で、時期的に合わせるのはちょっと難しいということはご理解いただければと思います。通常ですと1月から作成を開始してございます。

また、先ほどの大学ファンドのコストにつきましては、これは先ほど、土居委員から丁寧にご説明いただいてありがとうございました。こちら、JSTにつきましては機会費用のみでございます。

山内委員からは、規律づけのあるきっかけ、ガバナンスということで、コストを使ってはどうかと大変ありがたいお申出でございます。今回まとめた情報も局内で情報共有していますので、次の財投編成で生かしていきたいと思います。

土居委員からでございますが、大学ファンドのコスト分析、これはとても重要ということでありがとうございます。一義的な前提として残高機関は対象外ではありますが、近年の分科会での大学ファンドに対する意識というのもございましたものですから、今回、参考ということで、下に掲記させていただいてございます。またここは引き続き継続して、機会費用については記述していきたいと思います。

大学ファンドの機会費用につきまして、一般会計出資金の1.1兆円、こちらの機会費用ということでございますので、金利の上昇につれて、機会費用が近年増加しているということでございます。

〔翁分科会長〕ご説明いただきましたが、何か追加はございますか。冨田委員、お願いいたします。

〔冨田委員〕出資金は、ほかの機関と同じように機会費用でいいんですけども、財融の部分についての政策コストをどうするかということをお尋ねしたんですけども。

つまり、大学に対する給付金というのは、運用益から国にJSTが納付するわけですよね。その納付するということは何かと言えば、マイナスの政策コストなわけですよ。国庫に納付をするわけですから。ということで、かなり大きなマイナスの政策コストを計上しないと、つじつまが合わないということを申し上げたつもりなんですけども。

〔村松資金企画室長〕すみません。説明が足らないところがありまして、大変恐縮でございます。JSTにつきましては、将来の市場運用実績等を見通すことが困難なものから、収支見通しを分析の対象には含めていないという事情がございます。他方、残高機関でありながらも、希望に鑑みまして、昨年、今年と出資金の機会費用のみをお示ししているところでございますので、ご理解いただければと思います。

〔冨田委員〕そうしたら、最初から国への納付、研究大学への支援金の配分は前提にしていないというお話ですか。

〔村松資金企画室長〕そういう計算になります。収支見通しをつくってございません。対象に含めてございません。

〔冨田委員〕そうすると、さっきの大学への補助金というのはどこから出てくるんですか。財融で貸した結果、出てくるわけですよね。

〔村松資金企画室長〕こちらは財融で9兆円ほど貸した運用益の中から財源が出てくると理解しておりますので、財投が直接当たっているというものではないものかなと思いますので、申しましたとおり、収支の見通しの分析は今回やってございません。これは例えば今回、産投機関や官民ファンド等もやってございませんが、官民ファンドの収支もやはり将来の見通しを予想することが難しいものですから、こういうところは計算はできないのかなと考えているところでございます。

〔冨田委員〕だけど、官民ファンドのほうは、財融で過去の巨額のものを融資したりしているわけじゃないですよね。しかもほとんどが出資金を出資しているわけですから、極めて不確実性が高いというのも分かるんですけども、これに対して、不確実じゃないということをうたい文句にして、国債を発行して、財投債を発行して、運用するようにしているわけですよね。そこらのつじつまが合っているのかということを僕はお聞きしたかったんですけど。つじつまというよりも、全体の論理の構成ですよ。

〔村松資金企画室長〕政策コスト分析でございますが、一定の前提条件を基につくっているものでございまして、対象が広うございますので、全てをカバーするのはなかなか限界があるのかなと感じるところでございますが、また何か改善すべき点等ないかどうか、勉強してまいりたいと思います。

〔冨田委員〕私にとっては何か大きな疑問が残ってしまったという感じです。すみません。では、ご検討よろしくお願いいたします。

〔翁分科会長〕ありがとうございました。今回、政策コスト分析、本当に充実した資料ではございますけれども、どう活用していくのかとか、どういう課題を残しているのかとか、そういったことも含めて、さらに検討を進めていただいて、一層活用が進んでいくようにしていただきたいと思っております。

少し過ぎてしまいましたが、皆様、本当に貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。この辺りで、この件につきましても質疑を終了したいと思います。また、本日の議事もここまでとしたいと思いますが、もし追加的に何かご意見やご質問がありましたら、事務局にお寄せください。

本日の議事内容につきましては、この後、事務局より記者レクを行います。議事録につきましては、委員の皆様のご了解をいただいた後、財務省ホームページに掲載いたします。

次回の開催日程は、後日、事務局よりご連絡いたします。

本日はご多用中のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございました。これにて閉会いたします。

16時09分閉会

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