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伊藤大臣閣議後記者会見録 (令和6年9月3日(火)16:30~16:46 於:環境省第一会議室)

1.発言要旨

 奄美大島におけるフイリマングースの根絶宣言について御報告を申し上げます。
 本日、鹿児島県奄美大島において、科学的検証の結果を踏まえ、特定外来生物であるフイリマングースの根絶を環境省として、宣言したことを御報告申し上げます。
 環境省では、特定外来生物であるフイリマングースの防除事業を平成12年度から継続してきましたが、平成30年5月以降はマングースが捕獲されない状況が続いておりました。こうした状況について、本日10時より鹿児島県奄美大島で開催された「奄美大島におけるフイリマングース防除事業検討会」において、科学的な検証に基づき、根絶が達成されたと判断されました。奄美大島のような面積が大きい島における長期間定着したマングースの計画的防除による根絶は、世界初の大規模事例でございます。世界の希少種や世界自然遺産の保全に貢献し得る成果だと考えております。
 他方でマングースが人為的に持ち込まれなければ、奄美の生き物への被害も4半世紀にわたり、関係者が苦労する必要もありませんでした。外来種による被害の予防の3原則、「入れない」「捨てない」「拡げない」の遵守について、改めて国民の皆様に呼びかけたいと思います。
 最後に、本防除に関係した全ての方々、特に奄美マングースバスターズ等の捕獲事業者、地域の皆様に心より感謝申し上げます。
 以上でございます。
 
 

2.質疑応答

(記者)幹事社のテレビ朝日、屋比久と申します。
 2点質問いたします。1点目は今御説明ありました、奄美のマングース根絶宣言に関連しまして、環境省が沖縄県北部で実施をしている第3期沖縄島北部地域におけるマングース防除実施計画について質問です。この計画では、令和8年度までに完全排除を目標としていますが、現在の作業状況の進捗状況と令和8年度までに完全排除を達成できる見込みがあるかの見通しを教えてください。
 2点目は先週台風10号が上陸して、九州や近畿などを中心に被害をもたらしました。それ以前にも7月下旬の北日本における豪雨など、7月から8月にかけて日本列島の広い範囲で大雨による被害が出ています。こうした異常気象とも言われる現象がここ数年頻発して専門家などからは、気候変動、地球温暖化の影響が指摘をされています。環境省として、近年の異常気象と気候変動の関連をどのように捉えていて、今後どのような対策が必要と考えているのか教えてください。
 この2点、お願いいたします。
(大臣)ありがとうございます。
 まず1点目の件でございますけれども、沖縄島北部のやんばる地域では、依然としてマングースが生息しております。しかしながら、近年の捕獲数は、捕獲数が最も多かった平成19年度の10分の1程度まで減少しており、低密度な状態を維持できております。これにより、ヤンバルクイナや各種カエル類等の分布が回復するなどの成果が上がっているところでございます。令和8年度中の完全排除については、予定の捕獲圧がかけられないなどの課題があると聞いておりますけれども、引き続き、やんばる地域からの完全排除に向けて、防除を進めてまいりたいと考えております。
 次に、気候変動に関する御質問がありました。2023年に公表されたIPCC第6次評価報告書の統合報告書によると、気候変動は既に世界中の全ての地域において、多くの気象と気候の極端現象に影響を及ぼしているとされております。また、台風についても、2021年にIPCCが発表した予測では、地球温暖化の進行に伴い、非常に強いものの割合の増加やピーク時の風速の増加が指摘されております。
 今般の台風5号、10号と気候変動の関係性についてですが、今後の分析を注視したいと考えておりますけれども、いずれにせよ、気候変動の脅威から国民の生命と財産を守るためには危機感とスピード感を持って、対策を進めることが必要でございます。
 このため、環境省としては、2030年度温室効果ガス46%削減、50%の高みに向けて挑戦し、その先、2050年ネットゼロに向けて緩和策に率先して取り組むとともに、気候変動適応法の下、政府一体となって適応の取組を強化してまいりたいというふうに考えております。
 
 
(記者)朝日新聞の市野です。
 マングースに関連してお伺いします。
(マングースについては)今回の成果を強調されていると思います。ただ、国内では、ほかの外来種の問題、アライグマであったり、ブラックバスなどもあるかと思うんですけども、今回の得られた知見というものを政策的な手法でも、予算でもどのようにほかの外来種対策に活かしていかれるお考えか、その点についてお聞かせください。
(大臣)ありがとうございます。
 奄美の話が出ました。奄美大島に生息する在来種をモニタリングしておりまして、このアマミノクロサギを始めとした希少で固有な動物を含む多数の在来種において、個体数の回復が見られております。こうした在来種の回復には、マングースの防除が大きく貢献したものと考えております。
 また、世界自然遺産の価値を保全する上で、マングースを始めとする外来種は、主要な脅威の1つと認識されておりまして、この根絶は遺産価値の維持にも貢献するものと思います。
 奄美大島における特定外来生物のマングースの根絶は、世界的にも前例のない規模での成功事例であり、我が国としてはこの成果により得られた知見を国内外に発信し、他地域の対策にも貢献してまいりたいと思います。
 どうしてこのマングースの根絶が奄美で成功したかということでありますけども、まずは4半世紀にわたり、諦めずに努力を続けたことが最も重要な要因と考えております。そして、科学的観点からは、モニタリングを実施しながら、効率的な捕獲わなの設置や探索犬の導入など、地道な努力を続けた賜であったと思います。その上で、捕獲の専門家集団であるマングースバスターズを始め、地域住民、関係行政機関、財政当局も含め、奄美大島のすばらしい自然への強い思いを踏まえた、諦めずにやり遂げるとの不屈の意志が重要だったというふうに考えております。
 さらにもう少しお話しさせていただければ、外来種はマングースだけではありません。外来種対策については、令和4年に外来生物法を改正し、ヒアリをはじめとする侵略的外来種について、水際対策の強化や早期防除等を実施しているほか、飼育しているアカミミガメ等の放出を禁止するなど、総合的な対策に取り組んでおります。例えば、生物多様性国家戦略の目標であるヒアリの定着を阻止するという目標は、現時点で達成してございます。また、国際的には、G7や日中韓の枠組みで取組の共有や協力の方向性を議論するなど、昆明・モントリオール生物多様性枠組の目標達成に向けた取組を進めております。その上で、我が国の外来種対策の中期的な総合戦略である外来種被害防止行動計画の見直しを今年度中に行うべく、検討を進めております。
 外来種など人間により持ち込まれたものによる被害は、日本の生態系を脅かす4つの危機の1つでございます。自治体、企業等の多様な主体の連携の下、今後も成果を踏まえながらさらなる対策の強化を図ってまいりたいですし、今回のことによって得られた知見についても、世界にしっかりお伝えして、世界中でこういう問題が解決できるようなことについて、日本の環境省としても貢献してまいりたいと、そのように考えております。
(記者)ありがとうございます。ちなみに、今回の冒頭で出していただいたこの3原則なんですけど、現地の会見でも植田局長が、あまり知られていないという話を自虐的にお話しされていたんですけど、例えばこういう標語とかをどのように今後発信されていくかとか、そのようなお考えが何かありましたらと思ったんですけど、いかがですか。
(大臣)標語の発信の仕方はそれぞれあると思いますけれども、持込みをしそうな人とか地域にこういうポスターなどを貼ることもありますし、今の時代でありますからSNS等の活用というものもありますし、今回の記者会見もその1つの方法だろうと思います。
 
(記者)毎日新聞の山口と申します。
 引き続きマングースの件をお聞きしたいんですが、マングースが奄美大島に入ったのが1979年に30頭。この半世紀余りで非常に増えて、減らしたということで、その間、希少動物への価値観とかも大きく、島民の方や日本全国で変わったりとか、人の価値観も大きく変わった半世紀かなと思うんですけれども、この一連の50年近くの、増えて、減ったという事業を通じて人間が学んだことといいますか、教訓といいますか、どういったところが非常にこの事業を通じて学べたことなのかなというのを、大臣としてどうお考えでしょうか。
(大臣)これは私の私見になりますけれども、外来種が入る理由というのは幾つかあると思うんですよね。ペットで入ってくる場合、ヘビなどの防除に役に立つのではないかという場合、ヒアリみたいに貿易等に伴って入ってくる場合もあると思うんです。その50年の間に人的・物的往来は幾何級数的に増えましたので、外来種が入ってくる可能性、蓋然性は非常に高まったわけでありますので、逆にこの外来種が入ることによって国内の生態系が脅かされるという危険性について、幅広く国民の皆様に、あるいは関係の皆様に周知するということがより重要だと思います。特に、ペット等で入れて、飼えなくなったので放置するというようなことがないように、生物、生き物に対しては、非常に社会的責任感を持って扱うということが私は必要だろうと思います。
 
(記者)日経新聞の大高と申します。
 話は変わるんですけれども、今日、内閣官房のほうで排出量取引制度の具体的な制度設計の議論が始まりました。日本の長年の歴史を踏まえると、ようやくここまで来たなという感想がある一方で、目標設定の仕方が、企業に自主性を委ねる形でしたり、取引価格に上限を設定したりと、産業界にあまり負担をかけないようにというような制度設計を進める方向になっていますが、環境省として、この制度設計にどのように関わっていかれるお考えか、お聞かせください。
(大臣)本日よりGX実行会議の下にカーボンプライシング専門ワーキングチームが設置されまして、排出量取引制度を含む成長志向型のカーボンプライシングについて、制度の具体的な設計について議論が開始されたところでございます。ワーキンググループは、経済、エネルギー、環境等の分野の専門家から構成されておりまして、今後、産業界、有識者からのヒアリングを通じて、本格稼働後の制度の在り方や具体的な設計について論点整理が行われるところだと思います。環境省としては、関係省庁と緊密に連携、協力しながら、カーボンプライシングをめぐるこれまでの様々な知見を活かして、貢献してまいりたいと思います。
 ここからは私の私見になりますけれども、物事というのは、必ずゼロ、イチではなくて、バランスの問題だと思うんですね。環境を守りながらも、国民の経済生活も守らなければなりません。その中で、専門家の議論の中で具体的な制度設計がされるものだと思いますので、必ずしも経済優先の結論が出るというふうには、私は考えておりません。
 

会見動画は以下にございます。
https://youtu.be/a-UABgK7eKY?si=oYL3dbPPmJLTnSuf
 

(以上)

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