文科省・新着情報

1.日時

令和6年7月18日(木曜日)14時30分~16時30分

2.場所

オンライン会議(Zoomを用いて開催)

3.出席者

委員

伊香賀委員、五十嵐委員、上野委員、金子委員、木部委員、酒向委員、塩﨑委員、下條委員、高橋委員、恒川委員、鶴見委員、出口委員、土井委員、西尾主査、両角委員

4.議事要旨

【西尾主査】  皆さま、こんにちは。それでは、定刻となりましたので、ただいまから今後の国立大学法人等の施設の整備充実に関する調査研究協力者会議(第2回)を開催いたします。
 本日は御多用のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 初めに、事務局からオンライン会議の注意事項の説明、欠席をされている委員と配付資料等の確認をお願いいたします。
【松田計画課整備計画室室長補佐】  事務局を務めさせていただきます、文教施設企画・防災部計画課整備計画室で室長補佐をしております、松田と申します。よろしくお願いいたします。
 初めに、ウェブ会議の注意点を御説明いたします。

  • 音声が聞き取りづらい場合がありますので、御発言の際はゆっくりはっきりと御発言ください。
  • 発言時以外はマイクをミュートにしてください。
  • 御質問などありましたら、その場で発言の御希望があることが分かるよう挙手機能を御使用ください。挙手機能をオンにされた方に主査から指名していただきますので、御発言はその後でお願いします。

 また、本日は大村委員が御欠席でいらっしゃいます。なお、大村委員の代理として愛知県政策企画局企画調整部長の河合泰様に御出席いただいております。
 資料は、事前にPDFでお送りしているものを画面共有しながら御説明いたします。配付資料の確認については、各自、議事次第を御確認ください。なお、資料1につきましては、精査中の情報を含むため、委員限り・非公表の資料とさせていただきます。つきましては、画面共有はいたしませんので、委員の皆様におかれましては、お手元の資料を御覧いただければと思います。議題(1)の説明に当たり、資料1を開いてお待ちいただければと考えております。
 それでは、西尾主査、議事の進行をよろしくお願いいたします。
【西尾主査】  まず、今回から新たに酒向委員に御参画いただくことになりましたので、事務局から御紹介をお願いいたします。
【松田計画課整備計画室室長補佐】  御紹介させていただきます。このたび、一般社団法人日本経済団体連合会より、前回まで御参画いただいておりました池田様に代わりまして、新たに教育自然保護本部長でいらっしゃいます、酒向里枝委員に御参画いただくこととなりました。
 御参画いただくに当たり、酒向委員よりコメントをいただけますと幸いです。
【酒向委員】  ありがとうございます。ただいま御紹介にあずかりました、酒向と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 先生方の御意見を伺いながら、私なりの意見発信をさせていただければと思っております。どうぞよろしく御指導いただければと思います。以上でございます。
【西尾主査】  ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議題に入ります。本日の議題は、(1)「第5次国立大学法人等施設整備5か年計画(令和3年~7年度)の進捗状況について」(2)有識者(上野委員、恒川委員)によるプレゼンテーション、(3)「ワーキング・グループの設置について」、(4)「その他」を考えております。
 まず初めに、議題1、第5次国立大学法人等施設整備5か年計画の進捗状況について、事務局から説明をお願いいたします。
 
(資料1非公表により、議題(1)略)
 
【西尾主査】 次の議題に移ります。それでは、議題2の有識者の先生方からの御発表に移りたいと思います。現行の5か年計画で提示したイノベーション・コモンズ共創拠点の実現に向けて、昨年度まで、国立大学法人等の施設整備の推進に関する調査研究協力者会議で議論を行いました。その協力者会議に御参画いただいておりました上野委員より、協力者会議で取りまとめた報告書の内容を振り返る形で、これまでの共創拠点に関わる議論全体のポイントについて御発表いただきます。
 その後で、昨年度までの協力者会議に御参加いただいておりました恒川委員より、現場から見た共創拠点化の視点として、名古屋大学における共創拠点の取組事例について御紹介をいただきます。
 二つの御発表は、今後の本委員会の議論に大変参考になるものと考えております。
 まずは、上野委員から御発表いただき、続けて、恒川委員から御発表をどうかよろしくお願いいたします。
【上野委員】  ありがとうございます。ただいま御紹介いただきました上野でございます。今からパワポを共有したいと思いますが、見えていますでしょうか。
【西尾主査】  見えております。
【上野委員】  では、これに沿って御説明させていただきます。
 私が今回、事務局から依頼されましたテーマですけども、共創拠点化の推進に関する議論の取りまとめのポイントというものでした。
 私自身は都市計画や建築計画の専門的な立場から、大学の施設整備とかキャンパス計画に関わってきましたが、その経験からキャンパス全体を様々なステークホルダーによる共創拠点としていくためには、産業界との連携というのはもちろんなのですが、地域と大学の連携が不可欠であるということを実感しています。
 今回の発表では、地域や地方自治体が大学キャンパスと共通する課題を抱えているということを改めて説明するために、タイトルを「キャンパス・地域の老朽改善と共創拠点化」というタイトルをつけました。どうぞよろしくお願いいたします。
 この画面は先ほど小林室長からお話があったもののダイジェスト版ですけれども、第5次施設整備5か年計画では、施設整備の方向性として、キャンパス全体をイノベーション・コモンズに転換していくことが方向性として掲げられていることは、皆さん御承知のとおりかと思います。
 一方で、先ほどからも話題に上がっています、整備内容は総面積860万㎡で、所要経費1兆5,000億円を使って老朽改善とかライフライン更新などを行っていこうというものです。この中で、整備総面積の91%を占めるのが老朽改善の785万㎡です。現5か年計画中にこの改善を行うことが難しいというのが、先ほどの御説明からもほぼ間違いないことではないかと思います。
 これらを受けて、大学の施設部署というのは非常に大きな悩みを抱えていて、大学施設部署として差し迫った課題である老朽改善に、施設整備費補助金をつけてほしいというのが本音だと思います。かつ、それとキャンパスの共創拠点化をどのように結びつけていくのか、こういうテーマに沿っていないと、なかなか予算がつかないということを実感されていて、それぞれの大学で大変苦労されているのではないかと思います。
 第1回目の会議で発言させていただいたのですが、毎年約1,000億円程度の予算では、整備の大部分を占める老朽改善を実現していくのは、はっきり言って不可能で、少なくとも毎年1,500円程度、あるいはそれ以上、いわゆる施設整備補助金として確保していくという大きな提言というか、提案を国に対して、あるいは財務省に対してしていくことが重要じゃないかと考えています。
 もう一つの大学部署の悩みですけれども、足りない施設整備費補助金を補うために、多様な財源を獲得していかないと駄目だと言われているわけですよね。だとすると、どうしたら別の財源を確保できるのか、これが大学施設部署の大きな悩みでもあります。先ほどの資料にもありましたけれども、多様な財源がどういうふうに使われているのかというのが、老朽改善とかライフライン改修との関係でいうと、整理できない、難しいというお話がありましたけども、多様な財源も必要なのだというストーリーを展開するためには、そこら辺のデータ整理を何としてでもやらないとまずいのではないかなと思いますし、この部分をもう少し丁寧に説明していく必要があるのではないかと感じております。
 このスライドですけれども、老朽改善を含めた大学キャンパスの施設整備は、計画的な施設マネジメントが重要であるということは言うまでもないことです。この問題は、地域の自治体、ここにおいても全く同様で、自治体が保有する公共施設の老朽改善、あるいは適正配置ということが差し迫った課題になっています。その背景にあるのが、人口減少とか高齢化といった地方都市が抱える社会課題になります。
 そうした施設とかインフラの総量適正化を図りながら、地域を知識基盤型の共創拠点、いわゆる知の拠点に転換していくことで、こういった社会課題を解決する方法が見えてくるのではないかと私は考えております。大学としては、町のようにキャンパスをつくり、キャンパスのように町を使うことで地域との一体化を図り、地域としてはキャンパスのように町をつくり、町のようにキャンパスを使うということで、地域課題解決の担い手を増やしていくきっかけをつくることができるのではないかと思います。
 このスライドは私が建築学会などで、あるいはいろいろなほかの回答で使ってきたスライドなのですけれども、大学には、低炭素社会の実現とか、高齢化、少子化、人口減少による都市の衰退ですとか地方都市の衰退、農山漁村の疲弊という社会課題の解決や、SDGsの推進というのが求められています。これを解決するために大学が重要な役割を示すということなのですけども、左側の日本地図にある赤丸は、国立大学の所在地を示したものです。国立大学が公立大学、私立大学、高専とも連携しながら、その周辺地域を自立型社会とする役割の一端を担っていくということが重要ではないかと思います。
 昨年の有識者会議や、第1回会議資料にも紹介されていました東広島市と広島大学のTown&Gown構想を改めてここで考えてみたいと思います。金子委員にお話を聞くのが一番良いと思うのですが、時間の関係もあるので私が簡単に説明させていただきますが、東広島市次世代学園都市構想を実現するために、スマート協創コンソーシアムを形成する多くの企業と連携しながら、研究開発や人材育成を行って、社会に実装していきましょうという内容になっています。
 この実現を支える施設の一つが、下に示してあるフェニックス国際センター、未来CREAという建物ということでございます。多様なステークホルダーを巻き込んだソフト、ハードの一体の検討体制をつくって構想を実現するということが、昨年度までの有識者会議でも重要なことだと話されておりますが、それを実現したすばらしい事例だと思います。
 この体制を継続しながら社会に実装していくというのは、まだまだ時間がかかることだと思いますけれども、それを大学全体でずっとサポートして、何とかして実現させようという姿勢がキャンパスの共創拠点化ということにつながっていくのではないかと思っております。
 東広島市と広島大学の事例は、Town&Gown構想と名づけられていますけれども、もともとはイギリスのオックスフォード大学設立を契機にした、町、Townと、大学を象徴するGown、この両者の対立戦いをバトルとして表現して、使われたものでした。その概要は、ここではあえて説明しませんが、現在ではバトルではなくて、Town&Gown Partnershipというような形で使われるようになっています。
 上段はオックスフォード市のマラソン大会を大学と連携して行った事例ですけれども、下の段、この部分はハーバード大学とMITが、両大学のあるアメリカマサチューセッツ州のケンブリッジ市に対して、それぞれTown Gown Reportというものを毎年提出していることの紹介になります。
 大学の教育研究の継続、発展、変化に伴って、学生用ハウジングの増設ですとか交通路線の見直しなど、これはごく限られた事例なのですけども、大学と自治体が協力し合って、町そのものを発展させていこうというようなものになっています。これらの成果もあって、キャンパスの周辺に企業が集積していくことになって、人口10万人のケンブリッジ市が、川を挟んだ80万人のボストン市よりも商工業税が多いというような結果になってきています。
 日本においても、広島大学のように自治体と一緒になって社会課題を可決する試みをもっと増やしていくことで企業立地を誘致するとか、新産業を創造するということができるのではないかと思っております。
 これまでの会議ではあまり話題にはしていなかったのですけれども、地域自治体とそこに所在する複数の大学の連携ということを、新潟県の長岡市を事例として御紹介したいと思います。長岡市は人口が27万5,000人で、新潟第2の都市ですけれども、幕末維新の戦争の後、学問や芸術を教え、優れた人材を育成するということで、町の歴史を形成してきたと言われております。被害のお見舞いとして、米100俵をもらったところ、それを飢えに苦しむ家臣に配るのではなくて、それをお金に代えて子供たちのための学校をつくろうということで、米100俵の精神ということで戯曲などにも取り上げられて有名になりました。
 長岡市には、国立長岡技術科学大学のほか、公立長岡造形大学、長岡大学、長岡崇徳大学、長岡工業高専のキャンパスがあります。これらのキャンパスはどれも市の中心部にあるわけではなくて、中心の長岡駅からは離れている場所に存在しています。これらを何とか一緒に市と共同でまちづくりを考えていけないかというようなこともあって、長岡市では2011年にまちなかキャンパス長岡をというものを設立して、さらに地域の再開発をきっかけにしながら、昨年、ミライエ長岡というものを市の中心部につくっております。
 長岡市は右下にある、アオーレ長岡というものがありますけれども、市役所を駅前に整備しているんです。このときに、市民に開かれた広場の空間をつくったり、広場に面して視認性の高い議場をつくったり、あるいは展示会やプロバスケットボールの試合ができるアリーナをつくったりして、これまでの公共施設とは違う試みをしてきたことで知られています。
 ちなみに、アオーレ長岡は隈研吾さんの設計になります。市役所の機能はアオーレ長岡以外に、その近くのビルを借りて分散していたりします。町の人たちが使いやすいような形で周知しているのですけども、その中で、まちなかキャンパス長岡というものとか、ミライエ長岡を設立しています。
 
 米百俵プレイスというのが各大学の連携の中心になっていますが、この場所だけでは、なかなか大がかりな研究を進めるということはいかないので、今後は各大学のほうに共創拠点をつくっていくということが必要ではないかという検討、あるいは、そういう活動を展開していると聞いております。
 これらはいろいろなところで示していますので、キャンパスを生きた実験場として使っているポートランド州立大学の事例とか、ソーラー発電場をキャンパスにつくっているスイス連邦工科大学ローザンヌ校の事例などでございます。
 こういったように、イノベーション・コモンズのさらなる展開をどうしていけばということになりますけれども、最後のページは昨年の有識者会議でまとめられたものですけれども、今年の新たな有識者会議では、ここにまとめられているポイントをより具体的に整理しながら、先ほどの、今年度までのどのぐらいきちっとできているのかとか、その辺のデータの整理も含めながら、より実効性の高い5か年計画、予算をもっともっと要求する必要があれば、そういうことも併せて考えていく議論ができればよいと考えます。
 私見になりますけれども、私の発表は以上でございます。ありがとうございました。
【西尾主査】  上野委員、これまでの委員会で議論したことをまとめていただき、また、今後につないでいただく貴重な御発表をいただきましたことに心より御礼申し上げます。
 続きまして、恒川委員から御発表をお願いいたします。
【恒川委員】  よろしくお願いします。私からは、「共創の場を実現するキャンパス・施設の計画~名古屋大学の現場から見た視点」というテーマでお話しします。私は名古屋大学の施設・環境計画推進室に所属しており、その室で実際に行っていること等、現場の視点から御紹介していきたいと思います。
 今日の話は大きく3点ほどポイントがあります。まず、共創の場づくりの視点ということで取組のポイントとして、マスタープランの紹介をします。次に、共創の場のデザインとマネジメントとして、名古屋大学の事例、これまでの会議等でも取り上げていただいている事例も含め、5つの事例について紹介します。
 それから3つめに、5つの事例いずれの過程でも、多様なステークホルダーをどうまとめていくのかが非常に重要なポイントなので、特に現場でどういうことが起こってきたのかをお話ししていきます。
 右の図は、一昨年の調査協力会議のレポートに出ている「イノベーション・コモンズ実現のための取組のポイント」という図ですが、これは非常に重要な図だと思っております。左側に共創の前段階から基本計画、施設整備、運営活用という時間軸があり、ソフトとハードそれぞれについてどういうポイントがあるのかが書かれていて、右側の縦軸に一貫したポイントが書かれています。
 特に、この図の赤い線や枠で囲ったところが重要で、その辺りのポイントについて、事例をお見せしながら話をしていきます。例えば、上のほうの「大学等の目指すビジョンの共有、共創の考え方の明確化」や、その下「多様なステークホルダーを巻き込んだソフト、ハード一体の検討体制の構築」というあたりが重要なポイントかと思います。
 これは最新の名古屋大学のキャンパスマスタープランで、今日、御紹介する建物が写真で出ています。これらの建物が建っている位置というのが、少し見にくいですけど、上のほうの淡い水色のラインの上にあって、ここを「グローバル最先端研究の軸」と言っています。主に理系の施設があるこの軸沿いに、共創拠点を整備していくということをマスタープランでうたっています。これが全体としての施設整備の柱になっているのです。
 どうしてこういうことを書いたかというと、右下の東海国立大学機構のミッション、ビジョン、バリューというものがあったからです。本学は岐阜大学と一緒になって東海国立大学機構になりましたが、その東海国立大学機構として、「Make New Standards for The Publicをミッションに掲げ、知とイノベーションのコモンズとして、地域と人類社会の課題解決への貢献を目指します」ということを重要なミッションにしているのです。
 「コモンズ」という言葉を、大学の経営陣がよく使って、構成員にメッセージを発信しております。そのコモンズというものを、キャンパスの中ではどう展開していくのかをマスタープランに位置づけようということが、このキャンパスマスタープラン2022でも非常に重要な視点だったのです。マスタープラン2022をつくり始めた頃は、まだイノベーション・コモンズという言葉自体、文部科学省から強く言われていなかったのですが、完成間近の段階では、文部科学省からの発信もあって、こういう形で整備していったわけです。
 実際、この写真のように「グローバル先端研究の軸」としている通り沿いに、今日御紹介する幾つかの建物が建っていて、それらの建物は全て屋外、屋内が連続するような形で共用空間を持ちながら、見る/見られるような関係ができる場所をつくって、先端研究拠点がつながっていくようにしています。
 ここからは5つの事例を紹介します。まず、最初に減災館、先ほどの図の軸沿いにある建物です。今、文部科学省では、重点事項の中に「地域の防災拠点をつくる」ということがうたわれております。その先駆けになったとも言える建物で、2014年にできたものです。当時はイノベーション・コモンズという言葉はありませんが、ここでやろうとしたことは、減災連携研究センターという組織が地域と連携をしながら、いかに地域の防災力、減災力を上げていくのかということです。実際に地域の自治体の職員たちがここに入って一緒に働いています。研究員として、インフラの企業や地域の自治体、様々な防災関連の方々がここに入っている。なおかつ、ここで多彩な人材育成のプロジェクトを企画したり、ギャラリーがあったり、市民の方が集まる減災カフェがあったり、あるいは、自治体の方が市民向けに発信をしたり、そういうことを、この組織図の左側にあるような、国、県、自治体、それから、右側の大学内の様々な研究組織、名古屋市と愛知県と連携した「あいち・なごや強靱化共創センター」という組織もつくって、それらが一体となって、減災の研究をしながら、地域の減災力、防災力を上げていくという取組を継続的にしています。
 実は、ここは名古屋大学の中で一番人が集まっている施設でして、博物館やギャラリーよりも人がたくさん集まって、様々な活動が展開されています。こういう取組を継続していくことが共創拠点化につながっているということが大事です。このときも、実際には工事費が足りなくて、いろいろな方々に御協力いただき、建物を造ったという苦労した経緯がありました。
 これは、C-TECsという窒化ガリウム等を使った開発をしている、ノーベル賞を取られた天野浩先生が拠点長を務められている建物です。これも企業の方が下半分に入っていて、隣には窒化ガリウムを使ったエネルギー変換の研究拠点として、巨大なクリーンルームを持つC-TEFsという建物があります。C-TECs上階には、こういったオープンなスペースがあって、研究者たちがフリーアドレスで席を決めないで(研究して)います。
 ここでは、別の研究室の方々が混じり合うような形で使うということをやりました。これも大事なことは、コンセプト、共創の仕掛けをどうつくるのかということを、リーダーである天野先生を中心に、若手の研究者たちが集まってどうしたらここで研究が活性化するのかを考える。そこでは枠を超えようとか、企業との連携を図りましょうとか、研究室間の垣根を取りましょうという議論があって、フリーアドレスやこうした空間が実現しています。その後の運用の段階も含めて、みんなで想いを共有しながら議論して、継続しています。スライドの右下に三森弘とありますけど、これは私ども推進室のメンバーでして、彼が入居者の中に入ってつなぎ役のようなことをしています。つなぎ役をしながら、こういう場所をデザインしています。
 それから、NIC:National Innovation Complexという建物です。ここでは、右下の共創スタジオだけ紹介をさせていただきます。これは経産省の補助金でつくった、IDEA STOAというスタジオで、多様な人材がここに来てコラボレーションをしています。ここは主として学生が使い、イノベーションを起こしたい、起業をしたいというような学生たちがいて、そこに産学連携本部が指定管理者として雇った兄貴的な存在の運営者がいて、ファシリテーターになりながら、この場所を活性化していくイベントを継続的にやっています。
 これは、TOIC:Tokai Innovation Complexという建物ですけども、これも経産省の予算で、新しい起業家を目指すような人たちが集まるための場所となる施設です。つい最近できたところなので、運用はこれからですけども、愛知県がいまつくっている起業家のための施設・ステーションAIともうまく連携や棲み分けをしていくことを狙っています。
 こういう建物は全て、空間的にはオープンスペースをどうつくるのかを重視していまして、どうやって活動を見せるのか、どうやって交流を誘発させるのかということを空間的に位置づけて、ソフトとハードが一体となるようなつくり方をしているのが特徴になります。こういう一連の取り組みをデザイン・マネジメントと言っています。
 こうした場をつなげる役として、中間支援組織が重要ではないかと思っています。発注者を代表して、ステークホルダーをつなぎ止める役であったり、発注者と利用者をサポートして、設計者や施工者との間をつないだり、複雑なプロジェクトをどうつなぎ合わせていくのかということを考える。なおかつ、それをつくるプロセスから使うプロセスまで継続的にやっていくには、教員、あるいはURAが必要ではないかと思っています。
 例として、イタリアのボローニャ大学の例を挙げています。ソフト、ハードが一体となった取組をしていくこととか、企画や立案を担う人材をつくっていく。そういう人たちが、市民、大学、自治体から一緒に組織をつくって、まちの中、大学の中で様々な取組を行っています。
 こういった事例は、国内にもたくさんあります。先ほど御紹介あった広島大学の事例などもそうですけども、こういった中間支援的な役割を担う人が、非常に重要なんじゃないかと思っているわけです。
 最後に、今建設中の東海機構プラットフォームという建物が、キャンパスの真ん中にできます。手前に豊田講堂があって、通りを挟んだ反対側に、地下鉄の駅から直結する屋上庭園を持つ地下の施設をつくります。大学と地域・企業が共創する場、まさに共創する場をつくろうというプロジェクトが動いています。
 これは、今工事中ですが、先ほどから話に出ているように、お金の面では大変苦労していまして、施設整備補助金をもともといただいていますが、足りない分を大学債で補うということをしています。それでも物価高騰に追いつかないということもあって、それをどうするのかが大問題です。これをつくるに当たっては、様々なステークホルダーが関わるということもあり、それらの人たちを巻き込む、ワークショップなどをやりながら、コンテンツをどうするのかずっと練ってきて、設計者を選定しました。
 設計者の選定に当たっても、今までの国の仕組みではなかなか難しいところを様々なことを考えて、一流の建築家が応募したくなるコンペを企画して、それで選ばれた建築家のデザインよって、名古屋大学の中心の新たなシンボルになるような建物ができようとしています。
 これが完成後のパースですけども、このちょうどど真ん中、キャンパスの真ん中にこういうオープンスペースが生まれます。なおかつ、大学の様々な場所を結んでいくオープンなスペースや、ウォーカブルなスペース、開かれたキャンパスの象徴となるようなコモンズをつくろうとしています。今年度末に建物が竣工する予定なので、また皆さんにぜひ見ていただく機会があればと思っております。
 ただ、現実には、どう運用するかが大問題になっていまして、どういう運用にするのか、その運用資金をどうするのかという課題に対して、いろいろ苦労しながら進めているところです。私からの発表は以上になります。
【西尾主査】  恒川先生、名古屋大学における素晴らしい実例をお示しいただきまして、ありがとうございました。
 先日、最後に御紹介いただいた建物の工事現場のすぐ横まで直接行く機会があり、素晴らしいものができつつあるということを実感いたしました。また、先生からは、こういったプロジェクトを進める上で、組織体制がどうあるべきか、という点についても、示唆に富むお話をいただきまして、ありがとうございました。
 上野先生も言っておられましたけれども、ただ今、上野先生、恒川先生からいただいた貴重な御発表の内容を基に、今後の次期の5か年計画に向けての議論につなげることが重要かと思っております。そういった観点も含めて、皆様方から御質問、あるいは御意見、コメント等をいただければと思いますので、何なりと御発言いただければと思います。いかがでしょうか。
 それでは、塩﨑委員、どうぞ。
【塩﨑委員】  ありがとうございます。大変貴重なプレゼン、ありがとうございます。大変勉強になりました。
 実は、附属病院の整備状況、一番初めに御案内がありましたとおり、病院のところは各大学病院も一生懸命努力はしていますけども、文教施設の皆さんのおかげで非常に進捗してきております。ただ、これも法人化後20年、何とか収益を拡大することで、再開発でここまでやってこられたのですけども、コロナ前から費用がかかる医療が大変増えておりまして、増収しておりますが残念ながら減益となっています。
 こういう中で、ついに令和5年度の病院経営も、全国的に法人化、初めて赤字転落になっております。そういう意味では、今後ちゃんとお金が返せるのかと、再整備をどうしていくのだということが大きな曲がり角になっています。
 減益傾向というのが、実は高難度医療が大学病院に集中することで、非常に強化されているところでございます。一方、先ほどお話もありましたけど、実は骨太の方針で、今回のワーキング・グループの中の御報告にもありましたけども、海外との共創が可能な分野、そこにしっかり注力していくことが必要だと。特に創薬、ここの分野については、ぜひ大学病院でも努力するようにというような形での記載もございました。
 実は、大学病院も難病と希少疾患の診療データが非常に集中しておりまして、ぜひこれは大学病院の治療だけではなくて、臨床研究の成果を活用すると、これは創薬で活用するというような視点で今後いかないと、実は収益獲得だけで何とか再開発するというのも限界だなと思っています。
 続きましては、大学病院の研究分野、ここにも、ぜひ国、自治体、製薬企業、いろいろな、多様な、言わば財源投資をしていただいて、ぜひとも学外の創薬の研究者も、先ほどお話もありましたけども、競合できるような大学のイノベーション拠点としていろいろな施設を使っていくという意味では、新しい再開発の手法の検討を今回のワーキング・グループでぜひお願いしたいなと思っております。
 前回、資料だけではなくて、科学的エビデンスのある予防医療の拠点としても、実は新たな財源の可能性があるのではないかというような御発言をさせていただきました。こういう意味では、大学及び大学病院の研究拠点の可能性を大きく広げていくということが今後、ワーキング・グループにとっても大事かなと思いますので、その点をぜひ御検討いただければと思っています。
 以上でございます。
【西尾主査】  ありがとうございました。国立大学の附属病院がとうとう昨年度の決算で60億円程度の赤字が計上されております。そのような中で、ただ今、お話しいただきましたように、イノベーション・コモンズの一つの考え方として、病院とも絡めた施設整備を、今後、ワーキング・グループ等でぜひ考えていただければと思います。
 酒向委員、どうぞ。
【酒向委員】  ありがとうございます。お二人の御説明をいただきまして、大変貴重な活動と、共創拠点というものへのイメージが大変よくつかむことができました。ありがとうございました。
 上野先生の冒頭の御説明にあったと思うのですけれど、ベースとなる施設整備の費用というものが、まず、基本として必要であるという考え方は非常に共感するところがありまして、先ほど高橋先生も同じことをおっしゃっていましたが、外部資金を取る前段階として、アクティブな資金を取るための基盤の予算が支弁されていないというところがベースとしてあるということについては、財政の健全化の中で予算が厳しいことが分かるのですが、必要なものについては「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」ということが「経済財政運営と改革の基本方針2024」に書いてあることを踏まえて、老朽化やライフラインの更新についてきちんと支弁することをきちんと訴えていくことが、まず、基本としてあると思っています。
 そうでないと、お金がないから共創拠点をつくっているように見えてしまうのです。そういうわけではなくて、価値を共創するというか、みんなでつくり出していくと。大学を知の拠点として、コアにしながら、まちづくり全体を高めていくというのが多分、イノベーション・コモンズの考え方なのではないかと聞いていて思ったのですけれど、予算がつかないから、回線が足りませんとか、老朽化対策ができません、だからイノベーション・コモンズですと、産学連携でキャンパスの共同拠点化をするのです、共創拠点化すれば別に施設整備のための国の予算は要らないでしょう、というような、そんな論調になってはいけないと思うので、それはそれ、これはこれという形で、進めていくことが大事ではないかと思いました、というのが1点です。
 あとは、そうはいっても、文部科学書関連の予算以外のものもいろいろな支弁ができるのではないかと思っています。私はたまたま自然保護も担当しているのですけれど、緑の拠点、都市の緑化、先ほどの省エネ対策という話もありますし、いろいろな工夫もしながら、お金を取ってこられるというところも可能性としてあるのではないかと感じました。
 感想めいたところでございますが、以上でございます。
【西尾主査】  ありがとうございました。最初の方でおっしゃっていただいたように、国費がなかなか充当していかないから、イノベーション・コモンズで産学連携や、地方公共団体との連携で何かを資源化し、その元で資金獲得をしていくという考え方はおかしいのではないかということは、非常に重要な視点だと思っています。イノベーション・コモンズを展開するためのシーズとなるものを、きっちりと大学から研究成果、教育成果として生み出すための基盤となる施設等が本当に大丈夫なのかというところをまず議論していった上で、イノベーション・コモンズの整備があるという考え方は重要だと思います。
 さりながら、後半でおっしゃっていただいたように、財源を多元化していくというのは大事ですので、最近の重要な観点として、GX化にどう資するか、あるいはカーボンニュートラルにどう資するかということを打ち出して、外部からの資金も獲得していくという両面的な作戦で向かう必要があると思っています。そのようなことを進めるに当たっても、何とぞ経団連から様々な観点で御支援いただけますとありがたく思っていますので、よろしくお願いいたします。
 五十嵐委員、どうぞ。
【五十嵐委員】  ありがとうございます。いつも申し上げているハード、ソフト一体改革、一体的に推進して整備をされていくという点が重要だと思いますので、端的に何点か申し上げます。
 ハードの観点で申し上げますと、老朽化に対応するのは不可避なことだと思います。ただ一方で、人口減少の中ですから、施設数や広さを維持するというだけではなくて、設備や機能の維持・高度化は考えつつも、凝縮させるというか、減らすことを考えることもマネジメントの選択肢として必要なのではないかと思います。
 今日頂いた資料の老朽改善整備の中の最後のほうにも、老朽化した設備・施設の一定割合を取り壊し、とあります。取り壊すのもいいのですけれど、凝縮させるというか集約する、そういうことが必要ではないか、と思います。
 お金については、例えば公共施設整備のやり方として、ローカルPFIというのがあります。PPP/PFIの中でローカルPFI。これによって、地域の企業がなるべくそこに参加するとか、あるいは地域の資源というか地域産材を使うとか、あるいは地域の人材育成など、そういうことを踏まえてローカルPFIというのは非常に盛んになりつつあるし、商工会議所としても進めようとしているのですけれども、国立大学でもこういうやり方を当てはめられないのかと考えました。
 それから、もう一つ、これも国立大学に当てはめられるのかどうか分かりませんけども、企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)という制度がありますよね。
【西尾主査】  はい。ございます。
【五十嵐委員】 これも活用できないかなと考えます。
 それから、もう1点、ソフトの面です。いつも申し上げていることですが、産業界と連携しようとしていただいているわけですから、より実効性が強化されるように、教員の皆さん、あるいは事務局の皆さん、大学のそういう方々に、その意識を持っていただきたいと。日常業務的にいろいろ仕事はお忙しいとは思うのですけども、どうしてもそれに集中していると、視野がそこにだけになりがちになります。物事を広く考えていただくということを、そういう時間もなかなかないのかもしれませんが、俯瞰して見ていただきたい。産業界でも、大学でも、そういう人が必要なので、共創拠点の活動が活発になるように、そういうソフトの面をよろしくお願いしたいと思います。
 あまり今日の議題には関係なさそうだったのですけれども、あえて問題提起いたしました。
【西尾主査】  重要な課題だと思います。ありがとうございます。
【五十嵐委員】  よろしくお願いいたします。
【西尾主査】  貴重な御意見、御示唆をいただきましてありがとうございました。
 それでは、鶴見先生、お願いいたします。工業高等専門学校のお立場等から御意見をいただければと存じます。
【鶴見委員】  上野先生の発表のところで、長岡市の事例がありました。長岡市は、実は長岡高専、長岡技科大というのは、同じ国立の学校で、しかも長岡技科大は御存じのように、高専からの進学者で定員を満たすという、そういう少し特殊な大学ですが、もともと結びつきが強いところで、そのほかに長岡の中心部の周りに幾つかの大学があって、もともとここは長岡大学と長岡高専とか技科大の間でもともと連携があったところでした。そういうところが恐らく、長岡の駅前に、中心部に集まりやすいというのでしょうか、協力しやすい場所がつくれたという理由なのかなと思います。
 実は高専の場合には、新しくコモンズをつくろうとした場合に、そういう予算的なもの、財源的なものというのは非常に乏しいといいますか厳しいので、なかなか簡単にできないのです。その場合に大学間、それから長岡市が協力し合って、町なかに何らかの形でコモンズのようなものをつくっていけるのであれば、必ずしもキャンパス内に整備するのではなくて、普通のものとして整備していく、これも一つのつくり方ではないかと思います。
 私が今いる北九州市も、実は同じような構造になっていまして、北九州市は真ん中にありますが、その周りに九州工業大学、それから九州市立大学、それから北九州高専というように周りを大学に囲まれています。北九州市立大学は今度、町なかに旦過市場という、火災が起きて整備をし直していますが、そこに新しい学部をつくるというように計画を聞いています。
 我々もキャンパス内で整備し切れない場合、市の援助を受けながら、町の中心部にそういった拠点をつくることで、やはり活性化につながる、地方の活性化につながっていくというふうに期待できるかなと思っております。これが高専、大学の連携で地方を活性化する、少子化に対応していくということにつながってくるのかなと考えております。
 以上でございます。
【西尾主査】  貴重な御意見ありがとうございました。実を言いますと、昨年度までの委員会でも、キャンパス内にこだわるのではなくて、まさに今、先生がおっしゃったようにキャンパス外で整備をするという話も出ておりましたが、もう一歩進んで、他の高等教育機関と連携をして、コモンズのようなものを設けていくということは、今後、重要な方向であると思います。次期の5か年計画のところで、いただいた御意見を反映していくことが大事かと思っております。どうもありがとうございました。
【鶴見委員】  ありがとうございます。
【西尾主査】  下條委員、どうぞ。
【下條委員】  恐れ入ります。皆さんがおっしゃったことは非常に同感であります。特に上野先生の地域を中心にして、地域大学が中心になってその地域を変えていくというのはぜひやっていただきたいと思います。そういうメッセージを、逆にその地域の大学に向けて出していただけると、また状況は変わるのかなと思っております。
 それから、もうひとつだけ、忘れそうなので言っておきますと、例えば青森にも、実は八甲田の中に東北大学の植物園があったり、あるいは浅虫に実は東北大学の海洋研究所があったり、いわゆる国立大学の施設が結構地域にもあって、これがまた、忘れられそうで、結構運営が苦労しています。
 代表的な例が京都大学の花山天文台ですけども、お金がないとだんだんと苦しくなって、彼らはクラウドファンディング等、非常に頑張っておられる。そういう意味でも、ぜひその地域にある国立大学の研究所を忘れないでいただきたいということをお願いしたいと思います。以上です。
【西尾主査】  おっしゃっていただいたように、地域大学が中心になって地域との連携を図り、その地域を変えていくという発想は重要と考えます。また、忘れさられようとしている研究拠点などをどう盛り上げていくかを考えることは、重要な視点かと思います。どうもありがとうございました。
 先ほどより、広島大学のことが多々出ておりますが、金子先生、何かコメントと御意見ございませんか。
【金子委員】  すいません、ありがとうございます。いろいろまとめていただいたのを、自分たちはやりながら取り組んでいるので、きれいな形で人にまとめて伝えるというのは非常に難しいのですけれど、外から見てこういうふうに見ていただいていたのだということで、逆に、非常にありがたかったです。やっていて重要なことは、一つの新しい建物を造ったり、新しいイノベーションの何かをやるときの資金調達するのは投資によるものになり、地域と企業も含めて、大学にこういう投資をするとどういうリターンがあるのかということをどのように説明して、それのリターンに対して誰がお金を負担するのが望ましいかというようなことを、もう少し一般化したり、いろいろ取り組んでいます。しかし、こういうものがある程度誰でもできるような、何かマニュアルというか、ガイド的なものができると、今は大分かなり条件の整った資金調達ができると思います。例えば大きな大学だと資金調達も比較的簡単だし、かなり都心にあったりするといろいろな条件がいいと思いますが、我々みたいな立地だと、かなりそこを工夫して説明しないとなかなか難しいなというのを感じていまして、ワーキング・グループにも入れていただきましたので、そちらのほうでは、ぜひそういう細かな話も一緒に触れさせていただきたいなと思って聞いておりました。
【西尾主査】  金子先生からは、これまでも繰り返し、投資することの意義について、どのように説明するかが非常に重要なのだということをおっしゃっていただいております。そのことをどう上手く進めたら良いかという指針を、次の5か年計画において提示していくことは重要だと思っております。金子先生には、その点に関して、是非ともご尽力いただけますとありがたく、何卒よろしくお願いいたします。
【金子委員】  ありがとうございます。
【西尾主査】  木部先生、何か御意見ございませんか。
【木部委員】  どうも貴重な御報告ありがとうございました。いろいろな計画、特に名古屋大学の計画は、市民と一緒につくるという、とてもすばらしいものだと思ったのですが、新しいものをつくるときには、これをどのように持続的に運用していくかということが問題になります。
 それと、大学の新しい建物に学部、大学院の教員、学生さんがどのように関わっていくというお考えなのか、そこをお伺いしたいと思いました。
【西尾主査】  せっかく建てた建物をサステナブルに有効利用し、さらに学生等も巻き込むといった点について、恒川先生、いかがでしょうか。
【恒川委員】   ありがとうございます。先ほど一つだけ紹介をしましたけど、IDEA STOAという施設などでは、そのための人を雇っています。この施設をちゃんと維持して企画、運用していくというような人を雇って、なおかつ、その人自身がベンチャー企業を立ち上げた人であると。そういう人たち、学生たちの兄貴的な存在として、次のイノベーションを起こすためのアドバイスをできるような人たちを雇っています。
 なので、大学の教員や職員の方々、それぞれお忙しい中で、もちろんお金がかかることではあるのですけども、維持していくための組織なり体制というのが大学の中にできないと、こういうものを維持していくのは難しいなということは思います。
 一つの研究プロジェクトをベースにして、共創拠点ができていくことが多いのですけども、そういうプロジェクト自身は期限が来て終わってしまうことも多いので、終わった後、継続するのを大学自体が保証することはなかなか難しいというのが実感としてあって、いつも問題になっています。継続的にできるような予算なり体制を持っていればいいですけれど、なかなかそういうことができないところは、私どもも悩んでいるところです。
 減災センターのように、自治体の方々が継続的に常に入ってくれているようなものというのは継続しやすいのですけども、そうじゃないテンポラリーな組織の場合にはなかなか難しいなというのがあって、困っているところでもあります。
【西尾主査】  木部先生、いかがですか。
【木部委員】  ありがとうございます。とてもすばらしいので、これを持続して活用するとよいと思います。各部局の先生方もお忙しいし、学生さんもお忙しいかもしれませんけれども、部局と別のものではなくて、大学の中にこれが溶け込んでいく、それから市民の中にも溶け込んでいくとよいと思います。何か分からないけどあそこで何かやっているというものではなくて、大学の人がみんな、この施設を自分の中に取り込んでいくようになるとすばらしいと、理想論かもしれませんが、そう思います。
【西尾主査】  おっしゃるとおりで、大学内に新たな建物ができたときに、学内の構成員、市民の中に自然に溶け込んでいくような場所にするための仕掛けが必要で、放置しておくだけではなかなかそうならないと思っております。今後、そのような場所にするためのノウハウの蓄積が重要になると思いますので、そのような点に関する記述が、次の5か年計画のどこかに入ったら良いと思っております。そのことについては今後議論していきたいと思います。ありがとうございます。
 伊香賀先生、どうでしょうか。
【伊香賀委員】  国立大学の今までの議論の中で、少し御議論が弱かったのがカーボンニュートラル化への対応という点についてでございます。老朽化とか、施設をまずは維持改善するだけで予算対応が厳しいということは非常によく理解できたのですけれども、カーボンニュートラルに向けて、今、大学が模範を示すということで、文科省がリーダーシップを取って動いている中で、よりカーボンを減らすといいますか、そういうのをもっと徹底する。それから再エネをもっと導入するという部分が、さらに予算といいますか、財政を圧迫するという部分を、正面からといいますか、どう考慮していくかという部分がもう少し議論、検討しないとまずいのではないかなと思いました。
 意見としては、そこの部分だけ少し接続のところが気になっております。
【西尾主査】  分かりました。先生の御意見にうなずいておられる方は多くいらっしゃいまして、その点について、国立大学等は範を示していく立場でございますので、今後、議論を深めていいきたいと思います。どうもありがとうございました。
 出口先生、いかがでしょうか。
【出口委員】  どうもありがとうございます。出口です。今の伊香賀先生の御発言に一つ関連する点をまず、申し上げたいと思うのですが、私も全く同感でして、今、特に国立大学、旧国立大学は新築の建物に対してのZEB化は今、進められていると思います。ただ、私ども東京大学もそうなのですが、多分ほとんどの大学が老朽化した建物、築年次が数十年たっている建物がほとんどだと思いますので、それをどのようにしてカーボンニュートラルに対応していくか。もちろんゼロにはできないと思いますけれども、どうやって数十%エネルギー消費量を下げていくのかというのは喫緊の問題かと思っておりますので、それに対しての方策というか、方法論をぜひ示していく必要があるかなと思っています。私どもも、ぜひそういうことを率先して進めていきたいなということを思っております。
 あと、先ほども大学病院のことが議論になりましたけれども、建物単位で見てみると、大学病院というのは特に24時間稼働している施設でありますので、CO2の排出量とかエネルギー消費量の観点からしてみると、大学病院というのは非常に大きなパイを占めていることになると思いますので、ただ、大学病院によってはエネルギーセンターを持っていて非常に効率よく運営しようとしている仕組みというか、ハードを持たれているところもありますので、それをさらに効率よく運営するための仕組みなり、ソフトウエアというか、方法を導入していくことを研究していくべきかと思っております。
 それから、再エネの調達に関してなんですけども、これも必須になってくると思っております。特に東京に立地している大学は、東京都のキャップアンドトレードという制度がございまして、それが2025年から向こう5年間キャップのレベルを大幅に下げることになっていますので、それに対しての対応が今喫緊の課題となっておりまして、再エネの調達も、地元の大手の電力会社からグリーンエネルギーを購入するということでよいのですけれども、場合によっては、国立大学が地域で連合することによって、より安い再エネを調達していく方法を検討していくということも私は重要じゃないのかと思っておりますので、できたらそういう座組というか、連合することによって少しでも安い再エネを調達していく方法を考える必要はあるかと思っております。その辺もぜひ議論の俎上に上げていただければと思います。
【西尾主査】  どうもありがとうございました。特に最後におっしゃいましたことは、電子ジャーナルの購入の問題と似ているところがあると思います。今後議論していくべき観点、また、アイデアを出していくべきことを御示唆いただきまして、誠にありがとうございました。
 愛知県の河合様、何かございますか。よろしいですか。
【大村委員代理(河合)】  愛知県の河合でございます。今日は大村知事の代理ということで参加させていただいております。ありがとうございます。
 全体を通しまして、私たち自治体という立場ですので、皆さんいろいろ地域との連携とか、いろいろなことを御議論いただいておりまして、すごくありがたいなと強く思った次第でございます。地域との共創というか、そういった言葉もたくさんお聞きしまして、この分野、いろいろ、まだまだ我々も大学の皆様と連携できることはたくさんあると思っておりますので、また、こういった御議論を御期待申し上げたいと思っております。ありがとうございます。
【西尾主査】  ありがとうございます。ぜひ知事会のほうからも強力な御支援をいただけますよう、よろしくお願いいたします。
【大村委員代理(河合)】  よろしくお願いいたします。
【西尾主査】  御発表いただきました委員以外の方々からは、一通り御意見、御質問、などいただいたのですが、さらに、御意見、御質問、コメント等お持ちの方はいらっしゃいませんか。よろしいですか。どうもありがとうございました。
 それでは、これから残された時間で、議題3等について駆け足で進みたいと思います。議題3、ワーキング・グループの設置について、事務局から説明をお願いいたします。
【松田計画課整備計画室室長補佐】  事務局でございます。資料4-1、ワーキング・グループの設置について御説明させていただきます。なお、資料4-1は資料4-2と資料4-3の概要をまとめた資料になりますので、資料4-2と資料4-3の説明は割愛させていただきます。
 資料4を御覧ください。こちらは、協力者会議の下にワーキング・グループを設置する趣旨、検討内容、実施方法を示した資料になります。
 まず、設置趣旨としましては、第1回協力者会議で提示した論点や各委員からの御意見等を踏まえ、特に共創拠点化の推進と戦略的な施設マネジメントについて、より具体的かつ専門的見地から検討を行うため、協力者会議の下に共創拠点化の推進に関するワーキング・グループと、戦略的な施設マネジメントに関するワーキング・グループの2つのワーキング・グループを設置したいと考えております。
 これらのワーキング・グループにおける検討テーマとしまして、共創拠点化の推進に関するワーキング・グループにおいては、現行5か年計画の評価として、効果の把握を含めた進捗状況の評価や、将来需要の推計と対応策等の整備内容についての検証を行うとともに、共創拠点化の観点から、これらの評価などを踏まえ、イノベーション・コモンズの実装化に向けた課題と方向性を検討することを考えております。
 また、戦略的な施設マネジメントに関するワーキング・グループにおいては、現行5か年計画の評価として、財源の多様化や全学的体制の強化、適切な維持管理、カーボンニュートラルなどの取組状況の評価など、戦略的な施設マネジメントへの取組についての検証を行うとともに、戦略的な施設マネジメントの観点から、これらの評価などを踏まえ、イノベーション・コモンズの実装化に向けた課題と方向性を検討することを考えております。
 実施方法としましては、各ワーキング・グループで整理した検討事項について、協力者会議に報告したいと考えております。
 資料4、2ページを御覧ください。こちらは、各ワーキング・グループの委員構成案を示した資料になります。まず初めに、共創拠点化の推進に関するワーキング・グループについて、協力者会議とのつなぎ役としまして、協力者会議から御参画いただきたい委員を五十音順で御紹介させていただきます。
 一般社団法人キャンパスとまち計画研究所代表理事、千葉大学名誉教授、上野武委員。
 広島大学理事・副学長(グローバル化担当)、金子慎治委員。
 青森大学ソフトウエア情報学部教授、下條真司委員。
 名古屋大学大学院工学研究科教授、恒川和久委員。
 なお、金子委員は大学経営とグローバルの観点、下條委員はデジタルと地方大学の観点でも御参画いただきたいと考えております。
 また、協力者会議以外の委員を五十音順で御紹介いたします。
 国立大学法人のキャンパス計画の観点から、大阪大学サステイナブルキャンパスオフィスキャンパスデザイン部門准教授、池内祥見委員。
 国立大学法人の施設実務の観点から、電気通信大学総務部長(施設担当)併任施設課長、牧村恭子委員。
 国立大学法人のキャンパス整備に関わっておられます、千葉大学大学院工学研究院教授、キャンパス整備企画室室長、安森亮雄委員。
 続きまして、共創拠点化の推進に関するワーキング・グループについて、協力者会議とのつなぎ役としまして、協力者会議から御参画いただきたい委員を五十音順で御紹介いたします。
 一般社団法人キャンパスとまち計画研究所代表理事、千葉大学名誉教授、上野武委員。
 名古屋大学大学院工学研究科教授、恒川和久委員。
 東京大学執行役・副学長、大学院新領域創成科学研究科教授、出口敦委員。
 また、協力者会議以外の委員を五十音順で御紹介いたします。
 国立大学法人の施設マネジメントに対する民間企業の視点から、プロパティデータバンク株式会社代表取締役会長、早稲田大学大学院創造理工学研究科客員教授、板谷敏正委員。
 国立大学法人の財務の観点から、東海国立大学機構理事、名古屋大学副総長(財務・施設・Development Office・広報ブランディング担当)、木村彰吾委員。
 国立大学法人の施設実務の観点から、三重大学施設部施設企画課長、近野由貴委員。
 建築・都市計画及びカーボンニュートラルの観点から、立命館大学理工学部建築都市デザイン学科教授、近本智行委員、以上の先生方に御参画いただきたいと考えております。
 説明は以上になります。
【西尾主査】  説明どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明の資料4-2、4-3につきまして、質疑を行いたいと思いますが、資料の内容について、御意見、御質問はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、資料4-2、資料4-3のとおり決定したします。ありがとうございました。
 この委員会の委員の方のなかでワーキング・グループの委員にも御就任いただきます先生方にはワーキング・グループにおいて、さらに審議を重ねていただくことになりますが、何卒よろしくお願いいたします。
 それでは、最後に議題4、その他について事務局から説明をお願いいたします。
【松田計画課整備計画室室長補佐】  今後のスケジュールについて、御説明させていただきます。資料5、今後のスケジュール案を御覧ください。
 本日開催しました協力者会議が7月18日の第2回調査研究協力者会議になります。次回の第3回協力者会議は、令和6年11月19日火曜日、10時から12時。また、第4回協力者会議を令和7年1月17日金曜日、13時半から15時半、第5回協力者会議を令和7年3月26日水曜日、10時から12時に開催したいと考えております。
 また、各協力者会議の開催方法はオンラインを予定しております。
 本日設置されましたワーキング・グループにつきましては、令和6年12月にかけて複数回開催する予定でおります。
 また、次回の第3回協力者会議の議題としましては、中間まとめ骨子案について御審議いただきたいと考えております。また、有識者による発表などを考えております。
 年明け以降の協力者会議の議題につきましては、第1回協力者会議で御説明させていただきました内容から変更はございませんが、改めて御説明させていただきますと、第4回協力者会議の議題につきましては、各ワーキング・グループからの検討結果の報告と中間まとめの素案を御審議いただきたいと考えております。その後、第5回協力者会議において中間まとめの案を御審議いただき、公表したいと考えております。
 説明は以上になります。
【西尾主査】  ありがとうございました。何かスケジュール等についての御質問等ございませんでしょうか。
 本日も皆様方から本当に貴重な御意見の数々をいただきまして、ありがとうございました。先ほど事務局から御説明がありましたように、本日いただきました御意見はワーキング・グループの議論に反映いただき、それをさらに深めていただくということになっております。その観点からも、皆様の有意義な御意見、本当にありがとうございました。
 本日は、閉会とさせていただきたいと思いますが、閉会の前に、事務局より事務連絡等ありましたらよろしくお願いいたします。
【松田計画課整備計画室室長補佐】  本日の会議の議事録につきましては、改めて委員の皆様へ照会させていただきますので、御確認いただければと思います。御確認いただいた後、文部科学省のホームページにて公開させていただければと思います。
 事務局からは以上になります。
【西尾主査】  それでは、改めまして、本日、誠にありがとうございました。
 これにて閉会とさせていただきます。今後ともどうかよろしくお願いいたします。
 
―― 了 ――

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