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小里農林水産大臣就任記者会見概要

日時 令和6年10月2日(水曜日)11時29分~12時23分 於: 本省第2特別会議室
主な質疑事項
  • (大臣から)農林水産大臣就任にあたって
  • 就任に際しての意気込みと抱負について
  • 水田政策をめぐる状況について
  • 総理からの指示について
  • 食料・農業・農村基本法の改正を踏まえた今後の進め方について
  • 地域計画の策定について
  • 森林政策に関するビジョンについて
  • 海業(うみぎょう)の全国展開について
  • スマート農業について
  • 子牛価格の下落について
  • 米政策について
  • 鹿児島出身としての思いについて
  • 政策形成のあり方について
  • 能登半島地震や大雨に対する対応について
  • 信連と農協の役割分担について
  • 災害時のセーフティーネットについて

冒頭発言

大臣

  このたび、農林水産大臣を拝命した小里泰弘です。どうぞよろしくお願い申し上げます。私は、農水省の最も大事な使命・役割は、国民の皆様に安心・安全な食料を安定的に供給していくことであると思っています。そのために、食料安全保障の強化・確立に全力で取り組んでまいる決意です。具体的には、先の通常国会で成立した改正食料・農業・農村基本法に基づく新たな基本計画を今年度中に策定します。基本計画の策定にあたっては、世界の食料をめぐる情勢の変化、気候変動等による自然災害の多発、栽培適地の変化があります。そして、人口減少による需要の急減、農業従事者の問題。昭和の世代で日本の農業を中心となって担っていただいた方々、団塊の世代といった方々が、これからさらに減少して現場から引退されます。そういった担い手の問題は、農業従事者の確保が大きな課題としてあります。こういった課題を背景として、新たな基本計画ではしっかりと中身を詰めてまいります。
  第一に、食料安全保障の強化、環境と調和のとれた食料システム、みどり戦略を中心にしっかり確立してまいりたいと思いますし、農業の持続的発展として、農業経営者、農業者の皆様が、将来を思い、希望を持って従事していける環境を作っていきたいと思います。
  農村の振興は、地域政策を含めてしっかりあたってまいります。特に、輸入依存度の高い、別の観点から言えば食料自給率の低い品目(麦、大豆、飼料作物等)をしっかりと増産をしてまいります。また、水田政策の見直しにもしっかり当たってまいりたいと思います。
  初動の5年間を農業構造転換集中対策期間と位置付け、集中的、計画的にあたってまいります。農業者の所得向上、地域の活性化は、特にこの1年間、総理補佐官として地域活性化を担当して、色々な現場を回ってヒントを集めてきました。そういったところをしっかり横展開してまいります。持続的な食料供給に必要な合理的なコストを考慮した仕組みの法制化も次期通常国会に関連法案の提出に向けて作業を急いでまいります。
  森林・林業分野については、2050年のカーボンニュートラル等の実現に向け、林道等の整備、森林の循環利用、いわゆる「伐って、使って、植えて、育てる」といった概念のもと、再造林を中心にしっかり進めていきたいと思います。林業経営体の育成及び集積・集約化、CLT等の活用など、川上から川下まで総合的に施策を展開してまいります。
  水産分野については、ALPS処理水の海洋放出を受けた一部の国・地域による科学的根拠のない輸入規制に対し、関係省庁とも連携して、国産水産物の消費拡大・販路拡大等に努め、支援策等も講じてまいります。
  また、水産資源管理の着実な実施、海洋環境の変化を踏まえた新たな操業への転換、養殖業の成長産業化を進め、「海業(うみぎょう)」の全国展開を図ってまいります。地域の所得向上と雇用機会の確保を図ってまいります。我が国の農林水産業・食品産業は、国民に食料を安定的に供給する役割を果たしながら、地域の経済を支え、国土を守り、文化を守っていくという、重要な役割を果たしています。
  我が国の農林水産業・食品産業が、次の世代に着実に継承され、食料安全保障が確保されるよう、2万人の(農水省)職員の皆さんの力をお借りしながら全力で当たってまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

質疑応答

記者

  小里大臣は、これまで副大臣や党の農業関係の役職を歴任してきたと思いますが、大臣に就任されるということで、改めて意気込みと抱負を伺います。

大臣

  農政、漁業、水産行政を含めて、私にとってはライフワークです。鹿児島の中山間地の農業地帯で生まれ育ってまいりましたし、実家はもともと農業・林業であり、子供の頃から現場で勉強してまいりました。こういったところをしっかり未来に繋げていきたいという思いは人一倍のものがあると思います。政界に入ってからも、農林水産分野を自らの最大の柱として位置付けて取り組んでまいりました。私にとって本望の仕事・職務です。
  ただ、国内外の情勢が大変厳しい課題の中、大きな正念場でやるのが農林水産行政であると思います。地域、現場の声を大事にしながら、国民の皆様のご意見をいただきながらしっかりと農林水産業、食品産業を未来へと繋げてまいりたいといった決意を申し上げます。

記者

  水田政策の見直しについてお話がありましたが、総裁選を通じて石破総理は、水田活用を含めた米政策について、とりわけ世界でお金を出して米の生産量を減らしている国はないと、政策路線に否定的な考え方を示しました。それを踏まえて、どのように水田政策に関する見直しを行う考えか伺います。
  加えて、今後5年間を(農業構造転換)集中対策期間にするというお話がありましたが、今後どのように進めている考えか、現状について説明をお願いします。

大臣

  米政策をめぐる話ですが、私が国会議員になった当初から最も大事な農業・農村の存続に関わる課題として取り組んできました。まずは、水田を水田としてしっかり生かしていく方法はないかといったところからですが、例えば、飼料用米を中心とした、新たな需要と供給のあり方を踏まえた政策を展開してきたところです。そういった中で石破総理のお話がありました。石破総理は、従来減反は無い方が良いということで、私が農林部会長の時に当時の石破幹事長から、そういった指摘・指示もいただきました。需要に応じた生産自体は、石破総理もこれを否定しているわけではなくて、むしろお考えの中心にあると。食料安全保障の強化を図る観点等からも、将来にわたって安定して運営ができる水田政策の在り方をあらかじめ示すことが出来るように、総合的に検討したいと思います。今年度中に策定する基本計画の見直しの中で、水田政策についても、しっかりと構築したいと。
  集中対策期間ですが、令和7年度の概算要求において、今回の基本法の改正を踏まえ、初動の5年間を集中対策期間として位置付けています。これを加速していくために、2兆6,389億円を要求した上で、食料安全保障の強化、国土強靭化、TPPといったところは、事項要求として予算編成過程で、改正基本法に基づく施策を的確かつ着実に推進するため、補正予算も含めてあらゆる機会を捉えて必要な予算の確保に努めてまいります。

記者

  今の回答を少し確認させていただきます。減反について言及がありましたが、昔言われていた減反は、自治体に対して量を割り当てて、それが守れなければ、何らかのペナルティをかけるという厳格な意味での減反と思います。安倍政権における米改革以降においても国が米の生産目安や目標水準を掲げて実現させるように、飼料用米、えさ米を含めた転作を奨励していくという意味では、減反的なものが続いてきたのではないかと有識者から言われている状況と認識しています。今回の米政策の見直しは、石破さんが農水大臣時代の持論でもあった、減反廃止といった意味で国が生産調整を何らかの形で行うという見直しも含めたものなのか確認させてください。

大臣

  減反と需要に応じた生産は全く概念が違うわけです。一例だけ申し上げますと、従来、飼料用米を中心とした需要に応じた生産、水田フル活用を進めてまいりました。これを議論した当時に戻って考えると、水田を水田として使っていくために飼料用米、米を米として作っていこうと。これを進めていけば、不作付け地まで生産・作付ができるわけです。その意味では、減反どころかむしろ増反になると。そういう議論もしたことを思い出しました。基本的に2つの概念(減反と需要に応じた生産)は違うということはご認識をいただきたいと思います。そして、総理ご自身が、需要に応じた生産を基本に置いておられると思いますので、そこを踏まえながら、日本の農地が活きていくように取り組んでまいります。

記者

  石破さんが総裁選でおっしゃっていたのは、輸出をかなり意識してお話しされた部分が多かったのかなと認識しています。輸出をどう強化していくかということについて、今回の米政策の見直しの中のテーマとして位置付けられるかどうか、確認させてください。

大臣

  当然、農政における大きな戦略の一つとして、農林水産物の輸出促進はあるわけで、米についても、輸出がさらに拡大をしていくように、色々なご意見を伺いしながら総合的に支援をしてまいりたいと考えています。

記者

  最後に、失礼な質問になって恐縮ですが、かつて、一部週刊誌報道で女性問題について報じられたことがあったと思います。この問題について、大臣の資質について考える国民もいらっしゃるかもしれません。改めてこの問題についてご説明いただければと思います。

大臣

  閣僚として、しっかりと緊張感を持って、その職務を遂行してまいりたい。その一念であります。

記者

  今年、農政の大転換という重要な時期に大臣に就任ということで、減反の話もありましたが、今回大臣に就任するにあたって、首相から何か具体的な農政に関する指示がありましたら、お願いします。

大臣

  色々ありますが、まずは全閣僚に対して地方をしっかり守っていくようにとの指示はありました。当然、農業、漁業、林業の振興にしっかり取り組んでまいりたいと思います。個別の指示としては、改正(食料・農業・農村)基本法に基づき、食料安全保障の確保、環境と調和のとれた食料システムの確立、農業の持続的な発展、農村の振興。また、強い林業づくり、漁業・水産業の振興、儲かる強靱なスマート農林水産業を実現してほしいということ、自給率と自給力それぞれ目標を設定して達成に向けた施策を実施すること、農林水産物の輸出促進、多面的機能の維持、豚熱等に対する万全の対策、ALPS処理水の問題、全国の水産業への生業(なりわい)支援をご指示いただきました。しっかり踏まえて、取り組んでまいりたいと思います。

記者

  基本法については25年ぶりの大改正ということで、冒頭の挨拶でも基本計画策定について言及されましたが、農業、食品産業、関連産業とも、大変関心があるテーマと思いますので、改めて計画策定に向けた意気込みを聞かせてください。

大臣

  本年6月に公布・施行された、食料・農業・農村基本法の改正法による新たな農政の実現に向け、施策を具体化するために、今年度中に基本計画を策定します。今回の基本計画は今後5年間の施策の方向性を定める極めて重要な計画です。実効性があり、現場にしっかり届くものになるよう努めたいと思いますし、食料自給率を含む食料安全保障の確保に対する目標や、改正基本法に定められている施策の具体化について、審議会において議論いただいた内容をもって、党の議論をしっかり伺いながら前に進めていきたいと思います。

記者

  人と農地の問題について、地方農業の将来を描く地域計画の策定期限があと半年ほどに迫っていますが、改めてこの取組の重要性と、現場の市町村や農業委員会に対する期待などについて、コメントをいただければと思います。

大臣

  現在、全国の市町村で(地域計画の)策定が進められています。いわば、地域の将来ビジョンともいうべきものです。地域農業の将来設計図として、しっかり策定して、前に進めていきたいと思います。本年度末までに、全国1,632市町村のうち、約2万2,000地区で、策定いただく予定です。7月末時点において、約1万8,000地区で、協議の場の設置が行われています。さらに4,400地区で、目標地図の素案が作成されています。一部作業が遅れている地域もありますが、今後12月末までに、目標地図の素案を作成し、3月末までに地域計画の策定を終了できるよう各市町村としっかり連携を図って進めていきたいと思います。来年度以降は、策定された地域計画によって、地域の課題が見える化されてきます。これに応じて、農業用機械・施設の導入充実を通じた生産基盤の強化に努めていきます。特に、新規就農や集落営農の支援等、人・農地の政策の後押しを大胆に進めてまいります。

記者

  これからの森づくり、森林整備に関するビジョンについて、先ほど2050年カーボンニュートラルに向けて、総合的な取組をされていくとお話がありました。これまでの取組を拡充、発展、加速化させるという意味だと思いますが、昨年閣僚会議を新設して、スギ花粉症対策を強化されています。特にスギ人工林の植替えを加速化させるという取組もされていますが、これが全体的な森づくりのビジョン・取組と、どう整合性をとって継続・発展していくのか、考えを聞かせてください。

大臣

  国産材の安定的かつ持続可能な供給がまず大きな前提としてあります。2050年カーボンニュートラルが大きな課題としてあるわけです。その前提で、この森林の循環利用、いわゆる「伐って、使って、植えて、育てる」基本理念をもとにして、取り組んでまいります。
  先ほど申し上げた、総理補佐官として農山漁村地域活性化を担当し、一年間で全国53市町130か所以上の現場を回りました。その中で、森林の循環利用を大きなテーマとして視察したところです。モデル的にこれに取り組んでいる現場があって、中には再造林率100%という現場もあり、モデル的な事例を見て回ったところです。そういったところをしっかり横展開していきたいと思います。
  花粉症対策(初期)集中対応パッケージで、スギ人工林の伐採、植替え、スギ材利用の加速化をしていきたいと思います。こういった中で、林業経営体をしっかり育成していくことが大事です。森林の集積・集約化に向けて、次期通常国会への関連法案の提出を目指しています。森林資源の循環利用を大きなテーマとして、しっかり取り組んでまいります。

記者

  補佐官として農山漁村地域活性化を担当されていましたが、水産関係では、先ほどお話しされた海業(うみぎょう)を非常に大きな地域施策として地元からも非常に期待が高く、まさにこれから全国展開を図る段階ですが、意気込みと展開に向けた言葉をいただければと思います。

大臣

  海業(うみぎょう)、新たな概念ですが、今やっと知られつつあるかなと。私の総理補佐官としての全国行脚の中でも海業を大きなテーマとして地域を見て回り、本当にいい展開をしているところがありました。地域資源の価値をしっかり評価して、その魅力を活かしていこうというのが海業です。
  モデル事例としては、典型的な都市部に近いところでの海業の事例もあるし、割と苦労しながら開拓しておられる海業もあり、私の地元でも始まっているところですが、こういったところを参考にしながら、国の支援策として、足りないところがあれば、それは充実・強化をしながら、大胆に海業の全国展開を進めてまいります。

記者

  米政策について、石破首相が先の総裁選の中で、米の生産調整を見直して、米の増産に舵を切るべきだと主張されて、それに伴う米価の下落に対しては、直接所得補償という表現を用いて対応すべきだとおっしゃいました。これは今までの農水省の政策とは若干ちょっと違うところもあるのかなと感じるのですが、改めて今後の水田政策の見直しに関連して、どのように水田政策の見直しを進めていくのか、考えを聞かせてください。

大臣

  民主党政権において展開された、戸別所得補償制度、これはいろいろお考えになって進められたことだと思っていますけれども、例えば、この農業者の創意工夫、日々の努力にブレーキをかけることにならなかったかというような、一つの問題提起もあります。また、農地の集積・集約化が進まないという、実際、あの期間において、農地の集積・集約においてほとんど横ばいでした。そういったところも懸念をされましたし、生産性の向上が阻まれることになるのではないかと、いろいろなご指摘があったところです。農業者の所得向上を目指していく、これは我々がこれからしっかり励んでいかないといけない最大のテーマであると思います。そのために、直接支払いといったところを中心にしながら、総合的にご意見、また与党のご意見もお伺いしながら、進めてまいりたいと思っています。

記者

  確認なのですけど、今のお話ですと、その水田政策の見直しの検討の中で、直接支払いも検討に入るということでよろしいのでしょうか。

大臣

  水田政策に限らないと思いますけれども、稲作だけではなくて、全体をしっかりとらえていきたいと思います。

記者

  今のニュアンスですと、主食用米も含めてそういう直接支払対象になりうるようなニュアンスも受けるかと思うのですけど、今まで農水省としては、主食用米の直接支払いというのは、先の通常国会でも否定されてきたかと思うのですが、そういったことも視野に。

大臣

  今回はあらゆる先入観を排して、総合的に、農家が意欲をもって、農業に従事して、生産を高めていくことができる。そして、農家の所得向上に繋がると。そういった政策をしっかり模索をしていきたいと思っています。

記者

  スマート農業に関して、昨日、スマート農業技術活用促進法が施行されるなど、徐々にスマート農業を広げていく動きは進んでいると思いますけれども、スマート農業に関してどう思われているか聞かせて下さい。

大臣

  スマート農業を語ると多くの時間を要するのですけれども、全国行脚の中で、スマート農業を大きなテーマとして見聞を広げてまいりました。スマート農業と言えば、総理の指示で、持続可能で強靱な儲かるスマート農林水産業を実現して欲しいという指示があります。しっかりとスマート化を図って、効率的な生産というものを進めてまいりたい。大規模な農地がないとできないとか、中山間地においてはなかなか難しいというご指摘もあります。それぞれの地域に応じたスマート農業のあり方があると思います。特にドローンを使った農薬の散布等々は、技術の習得が難しいというのがありましたけれども、そういった場合は、技術を持った専門的なところが運営して、委託という形で地域の農家から受けてやっていると。一例にすぎませんけれども、いろいろな工夫をしながら各地で、それぞれの現場に応じたスマート農業が進んでいます。しっかりこれを横展開していきたいと思っています。

記者

  子牛価格の下落が続いており、農家の経営が非常に厳しく、廃業する農家も増えています。これまでの国の政策では不十分という声も聞かれますけれども、畜産県から選出された大臣は、どんな手を打っていきたいと今後考えているかお願いします。

大臣

  まさに、畜産県から選出された議員として、日頃、競り市とか現場を回りながら、最も心を痛めている問題の一つです。現在、この枝肉価格の低迷、そして、配合飼料価格の高止まり、これを大きな背景として、肥育農家の購買意欲が減退しているということが大きな要因としてあります。その結果、肉用子牛の取引価格が昨年と比べて大幅に下落をしています。このため、政府与党で必死の議論をしながら、各種対策をつくり出してきたところです。一つには肉用子牛生産者補給金で経営の下支えを行うほか、子牛の平均売買価格が60万円を下回った場合に、生産者に支援する臨時の対策、緊急対策を講じてきているところです。こういったことをしっかり取り組んでまいりたいと思いますし、繁殖の雌牛が高齢化して、その結果子牛が価格の低迷に繋がる大きな要因となっているということもありますので、こういったところはまた支援を新たに今年から、対応してきているので、こういった対策を中心に、引き続き、価格の動向を注視しながら、繁殖農家の経営安定を図ってまいりたいと思います。そして、和牛枝肉相場、ここが大事な課題ですけれども、物価上昇に伴う消費者の皆さんの生活防衛意識、なかなか高級品に手が届きにくいといったようなことが背景となりまして、枝肉相場も軟調に推移しているということです。このため、さらなる輸出拡大に活路を求めてまいりたいと思います。米国・EU・イスラム諸国等への輸出の促進、新たな輸出先国の開拓、こういったところに関係省庁一体となって取り組んでまいります。さらにまた、国内需要についても、これを促してまいりたいと思っています。1頭フルセットでの販売の拡大や、サーロインなどの高価格帯部位の需要開拓に取り組む場合に支援を行っているところです。今後もこうした取組の実施状況をしっかりとらえながら、現場にしっかり届いていく、そういう対策を心がけてまいります。

記者

  米政策に関して、先ほど「先入観を排して」というコメントがありました。これは、今の非主食用米、餌米、飼料用米中心に交付金を手厚く配分して、主食用米の価格をある程度コントロールするということでしょうか。結果的に維持するという大きな政策の枠組みそのものも、俎上に載せるということ、そこまで視野に入っているという見解なのでしょうか、改めて確認です。

大臣

  例えば、輸出の話がありましたけれども、主食用米を輸出していく、輸出の拡大を図っていく、その中においても、支援を工夫しながら総合的に考えていくので、そういう意味で、品目を問わず、今までの概念から脱却をして、それぞれの現場の方々のご意見、党のご意見を聞きながら、どうすれば効果的に農業者の所得が上がっていくかということを念頭において考えていきたいと思います。

記者

  今、輸出については、新市場開拓米としてすでに支援していますけれども、その延長線上の中での話という理解でよろしいですか。

大臣

  今年度中に改正(食料・農業・農村)基本法に基づきまして、基本政策を見直すという中に入っております。水田政策もその中でしっかり検討してまいりたいと思います。

記者

  (大臣は)鹿児島のご地元かと思います。先ほど、地元への思い、畜産県としてお述べになっていましたが、鹿児島というと、JA全中の山野会長も鹿児島ですし、与党には森山幹事長もいるということで、非常に農政の世界で鹿児島の皆さんご活躍だなと思うと同時に、北国や、米どころに対しても、十分な目配りをしていただけるのか、施策の優先順位として、劣後するようなことがあったりしないだろうか、鹿児島目線の農政にならないかというような懸念も感じなくはないのですが、この点のご見解、意気込みを伺えればと思います。

大臣

  もちろん鹿児島とかどことか、地域を限定して、政策を作るわけではありませんし、全国民にとっての食料の安定供給、ここをいかに確保していくか。その前提で、全国の農業者のみなさんに対して、しっかりと希望を持って将来に繋げていくことが出来る、そういった政策をお届けしてまいりたいと思います。

記者

  先ほどの政策全般の話で、環境に配慮してより持続可能な方向に農林水産業を持って行こうという話が多かったと思いますが、これについて、いかにウォッシュを防いでいくかの意気込みをお聞きしたいのですが、ウォッシュというのは、例えば表面上は何か「活動していますよ」「取り組んでいますよ」というふうにしながら、実際にそれが足りていなかったり、例えば水産分野で批判されているところでいうと、「自主的に漁を休んでいますよ」としていながら、科学的な後ろ盾がなかったり、もともと漁が休みだったり、市場が休みの日に休んでいるだけであったり、藻場を漁師さんが「作っていきますよ」と言いながら、実はあまり科学的な後ろ盾が無い方法でやられていたり、そういうところへの批判が最近でています。実際に環境への配慮とかをいかに後ろ盾をつけてやっているか、証明していくか、もしそういう方向性で何か、思うところや、意気込みがあればお聞かせ下さい。

大臣

  環境の変化に対応した行政の在り方ということですか。

記者

  中身があるものとないものをいかに差別化していくかということなのですが。効果が上がっているのかどうか、ということをお聞きできれば。

大臣

  あらゆる政策には政策目的というものがあるので、現場の実態に照らして、それぞれの政策が作られなければならなりません。また、それが目標とおり、その用途に従って活用されているかどうかということは当然、検証しながら、さらなる推進に向けて取組んでいかなければならないと思います。

記者

  先の能登の大雨や地震を踏まえて、能登への対応と、農家への対応を農水省としてどのようにされていくのか。 また、先日、農林中金の検証会合が始まりましたけれども、農林中金のあり方や、信連や農協の役割分担について、どのように考えていらっしゃるでしょうか。

大臣

  能登半島については、新年早々からあのような災害に見舞われまして、現場の方には総理補佐官として取り組みをしてきたところです。先般、最後の視察として輪島に総理に同行してお伺いしました。何とか困難を克服して、復興に向けて頑張っておられる姿が徐々に見られました。その直後に、また、大雨ということで、ご存じのような状況が現出をしたわけです。本当に現場の暮らしにとって、大変深刻な事態が重なってしまったと思い、しっかり対応してまいりたいと思います。これまでに1月25日に政府として策定した、被災者の生活と生業支援のためのパッケージに基づいた、数次にわたる予備費での措置とともに、MAFF-SAT(農林水産省・サポート・アドバイスチーム)をフル稼働させるなど、各種支援をきめ細かく展開をしてきたところです。
  復旧・復興の状況については、農業については、奥能登地域の営農再開面積、前年の水稲作付面積の約8割となっています。氷見地区のパイプラインの復旧事業等にも私も視察に行きまして、お見舞いを申し上げてきたところです。そういったところが、仮復旧をもって作付けも行われました。野菜についても、秋作では前年比約8割の作付けを行ってきたところです。林業については、被災した木材加工流通施設等のうち、約7割の施設で営業を再開したところです。漁業についても、この前視察の折にいろいろ伺ってきましたけれども、能登の北部地域の漁獲金額は、前年同期比で約7割となっております。輪島では、11月からズワイガニ漁の本格操業を行っています。秋冬シーズンの操業体制は震災前と同水準を目指しているところです。このような中で、今回の停滞前線や低気圧の影響で、石川県能登地域を含む北陸地方や、東北地方の日本海側では、(9月20日以降)記録的な大雨となりました。農林水産関係の被害については、現時点で調査中ですが、MAFF-SATとして職員を被災自治体に派遣するなど、支援を行ってきたところです。引き続き、今回の大雨の被災地が、能登半島地震からの復旧・復興の途上であることも踏まえながら、被害状況を把握し、被災自治体とも緊密に連携し、適時、的確に対応してまいりたいと思います。
  農林中央金庫の対応について、農水省としては、農林中央金庫における有価証券運用などについて、同金庫からの報告やヒヤリング・立ち入り検査等の通年のモニタリングを通じて、状況の把握・指導を行ってきたところです。農水省としては、引き続き、金融庁と連携し、金融市場等の動向が同金庫に与える影響を的確に把握するとともに、有価証券運用を含め、同金庫における適切なリスク管理体制の構築等に向け指導してまいります。

記者

  信連と農協の役割分担については、どのようにお考えでしょうか。

大臣

  状況について、事務方から説明を聞いた上で、考えたいと思います。

記者

  災害が頻発している状況で、防災、減災、そういったハード的な対策も重要ですけれども、災害が起きてしまった時のセーフティーネット、これも欠かせないとされています。収入保険、農業共済のほか、農業保険についてお考えをお聞かせ下さい。

大臣

  収入保険については、全般的な農家のセーフティーネットとして、基本にあります。それぞれの共済等も含めて、加入状況を改めて検証して、あるべきセーフティーネットの確立に取り組んでまいりたいと思います。

報道官

  それでは、大臣の就任会見を終わります。

以上

 

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