厚労省・新着情報

年金局総務課首席年金数理官室

日時

令和6年9月4日 10時00分~12時00分

場所

全国都市会館 第2会議室

出席者

(委員)
 翁部会長、小野委員、駒村委員、佐藤委員、庄子委員、寺井委員、枇杷委員、山口委員

議題

  1. (1)令和6(2024)年財政検証結果について
  2. (2)その他

議事

議事内容
○村田首席年金数理官 定刻より少し早いですけれども、皆さんおそろいですので、ただ今より、第101回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
 審議に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。
 本日準備している資料は、議事次第、委員名簿、座席図のほか、
資料1「令和6(2024)年財政検証結果の概要」
 資料2-1「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し-令和6(2024)年財政検証結果-」
 資料2-2「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し(詳細結果)-令和6(2024)年財政検証結果(財政見通し等)-」
 資料3-1「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通しの関連試算-令和6(2024)年オプション試算結果-」
 資料3-2「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通しの関連試算(詳細結果)-令和6(2024)年オプション試算結果(財政見通し等)-」
 資料4-1「令和6(2024)年財政検証関連資料マル1」
 資料4-2「令和6(2024)年財政検証関連資料マル2年金額の分布推計-」
でございます。
 次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。
 本日は、野呂部会長代理から御都合により欠席される旨の連絡を受けております。
 御出席いただきました委員の方が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを御報告申し上げます。
 なお、山口委員につきましては、オンラインでの御参加でございます。
 また、前回の部会開催以降に事務方の異動がございましたので、御紹介させていただきます。
 年金局長の間でございます。

○間年金局長 7月に年金局長を拝命いたしました間でございます。先生方、どうぞよろしくお願いいたします。
 この数理部会は、社会保障制度審議会の時代から大変伝統のある審議会でございますけれども、公的年金制度全体の年金財政の安定性について、確認が進められるようにしっかり取り組んでまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○村田首席年金数理官 大臣官房審議官の武藤でございます。

○武藤審議官 武藤でございます。よろしくお願いいたします。

○村田首席年金数理官 それでは、以降の進行につきましては、翁部会長にお願いいたします。

○翁部会長 おはようございます。
 委員の皆様には御多忙の折、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日の議題は「令和6(2024)年財政検証結果について」でございます。
 カメラの方がいらっしゃいましたら、ここで退出をお願いいたします。
 社会保障審議会年金数理部会においては、公的年金制度の安定性の確保に関し、財政検証時における検証(ピアレビュー)を行うこととされています。
 このたび公的年金各制度の令和6(2024)年財政検証の結果が公表されました。今後、年金数理部会においてピアレビューを進めていくこととなりますが、まずは本日、今回の財政検証の概要について、年金局数理課の佐藤課長より御説明いただきます。
 それではお願いいたします。

○佐藤数理課長 数理課長でございます。
 5年に一度の公的年金の財政検証が、本年7月3日に公表いたしましたので、私のほうから御報告をさせていただきたいと思います。
 資料について、まず、大部になっておりますので、構成からの説明させていただきます。
 まず、資料1が、全体の概要となります。
 資料2-1が、現行制度に基づく財政検証結果。
 資料2-2が、100年に及ぶ財政見通しとなります。
 資料3-1が、一定の制度改正を仮定したオプション試算の結果。
 資料3-2が、また、その財政見通し。
 資料4-1が、関連資料となります。
 資料4-2も関連資料でありますが、今回の財政検証で初めて実施した年金額の分布推計の結果となっております。
 この年金額分布推計によりまして、モデル年金では確認できなかった実態が明らかになったと考えているところであります。
 具体的には、近年、女性や高齢者の労働参加が大きく進展しておりますが、これが将来の年金、特に女性の年金によい影響を与えているということが定量的に明らかになったということであります。詳しくは、資料の中で説明させていただきます。
 まず、資料1で概略を説明いたします。資料1の1ページを御覧ください。
 こちらは、財政検証の枠組みを示しております。一番上が、2004年に導入された財政フレームでありまして、保険料水準を固定し、国庫負担と積立金を合わせて固定された財源の中で年金給付を行う仕組みであります。
 その中で、今後100年の将来を見据えまして、長期的に財政が均衡するまで年金水準を調整する仕組みとして、マクロ経済スライドが導入されたというものであります。
 財政検証は、2004年に導入された財政フレームのもと、年金財政の健全性を検証する仕組みとして、少なくとも5年ごとに実施しているというものであります。
 具体的には、直近までの人口や経済の動向を織り込みまして、100年にわたる財政の見通しを作成しまして、マクロ経済スライドの調整がどこまで必要かという見通しを示すというものであります。
 また、財政検証はマクロ経済スライドの開始や終了の判断にも使われるというものであります。財政検証で直ちに給付水準調整を終了しても問題ないと、そういう見通しが示されれば、実際にマクロ経済スライドによる調整を終了するということであります。
 さらに、財政検証において、継続的に公的年金の給付水準を示す指標として導入されたのが、モデル年金の所得代替率ということであります。定義式については、この下のほうにあるとおりであります。
 このモデル年金の所得代替率におきまして、次の財政検証、つまり5年以内に所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合には、給付と負担の在り方について再検討し、所要の措置を講ずるという旨が法律に規定されているものであります。
 このため、財政検証におきましては、このモデル年金の所得代替率において給付水準をお示しするということとされておりまして、これが50%を下回るかどうかというものが、これまで注目されてきたというものであります。
 続いて、2ページを御覧ください。財政検証の諸前提をお示ししております。
 財政検証で重要な前提は、人口、労働力、経済の3つということであります。それぞれ専門家が客観的に作成したものを用いるということになっております。
 また、将来は不確実でありますので、幅を持って見るために複数の前提を設定しているというところであります。
 人口につきましては、社会保障・人口問題研究所の将来推計人口を用いております。これまで財政検証では、出生率、死亡率のみ複数の仮定を置いているというところでありましたが、近年、外国人の入国超過が大きな水準になっているというところでありまして、将来、日本の人口にも影響を与えるようになってきたものであります。
 このため、今回は外国人の入国超過についても複数の前提で実施しているというものであります。
 続いて、労働力につきましては、労働政策研究・研修機構、いわゆるJILPTという独立行政法人の作成した労働力需給推計を用いております。3つのシナリオを用いているというものであります。
 経済の前提につきましては、年金部会の下に経済前提に関する専門委員会を設置いたしまして設定しているというものであります。
 今回、労働力と組み合わせまして、4つのシナリオを設定しているというものであります。
 このうち、上3つのケースにつきましては、内閣府が経済財政諮問会議でお示しした2060年までの長期推計における3つのシナリオと、TFP上昇率や労働力につきまして同様の仮定を設定しているというものであります。
 さらに、年金につきましては、最悪のケースも想定していくということで、1人当たりゼロ成長ケースも加えているというところであります。
 この1人当たりゼロ成長ケースにつきましては、TFP上昇率は過去最低水準が続きまして、労働参加が現状から全く進まないという、かなり控え目な想定を置いているというものであります。
 財政検証の公表後、標準ケースはどれかと尋ねられたわけですが、私どもといたしましては、中庸的な2つのケースを中心に幅で見ていくということが基本ではないかと考えているところであります。
 上から2つ目の成長型経済移行・継続ケース、こちらは、実質1%以上の成長を仮定しているところでありまして、将来の目指すべき姿ではないかと考えております。
 ただ、将来は不確実でありますので、年金制度を考えていく上では、こういったケースだけでなく、過去30年投影ケースのような将来も想定して、幅で考えていくというものではないかと考えているところであります。
 続いて、3ページを御覧ください。
 こちらが、財政検証のメインの結果となります。
 経済、労働力につきまして、4つのシナリオにおいて、将来の所得代替率の見通しを示しているものであります。
 なお、人口につきましては、中位推計を仮定しているというものであります。
 足元、まず、2024年度において所得代替率は61.2%となっております。5年前の2019年度の所得代替率は61.7%でしたので、この5年間でマクロ経済スライド調整等の影響によりまして、0.5%ポイントほど低下しているというものであります。
 その下の枠内が、マクロ経済スライド調整の終了がいつになって、その後の所得代替率が、どのような水準になるかをお示ししたものというものであります。
 実質1%以上の成長を仮定しております、上2つのケースにつきましては、それぞれ56.9%、57.6%となっておりまして、50%を大きく上回っているというものであります。
 一番上のケースと2番目のケースで、所得代替率が逆転しておりますが、この理由は、注2のほうに記載しておりまして、賃金を上回る実質的な運用利回り、いわゆる運用利回りのスプレッドと呼んでおりますが、こちらが逆転しているというものであります。
 同様の結果は、前々回の財政検証においても生じていたというものであります。
 続いて、過去30年投影ケースにおきましては、50.4%なっておりまして、将来にわたり50%を上回る水準となっております。
 一方、1人当たりゼロ成長ケースにおきましては、2059年度に国民年金の積立金がなくなりまして、完全な賦課方式に移行せざるを得ない状態になるというところであります。
 その後の保険料と国庫負担だけで賄うことできる水準が、所得代替率37から33%程度となっているというものであります。
 なお、1人当たりゼロ成長ケースで、このような状況になる大きな要因といたしましては、2つ目のポツに記載させていただいております。
 このケースでは、物価や賃金の上昇率が低いため、マクロ経済スライド調整が十分に発動しないという状態が続くということになります。
 その結果、給付水準が高止まりいたしまして、積立金がなくなる見通しとなっているというものであります。
 その結果、2059年時点ではマクロ経済スライドの未調整分、キャリーオーバーというものでありますが、こちらを見ると21.7%となっておりまして、仮に名目下限を撤廃いたしますと、2063年度に調整を終了して50%は下回りますが、45%程度の所得代替率と試算しております。
 このように、上3つのケースにおきましては、所得代替率50%を上回って、前回と同様のケースと比べても所得代替率は大きく上昇が見込まれるというものであります。
 ただ、1階の基礎年金と2階の報酬比例のバランスというものを見てみますと、前回と同様に、調整終了年度が大きく乖離しているということが見られまして、基礎年金の水準が大きく低下しているというところであります。
 こちらについては、次の4ページを御覧いただければと思います。
 こちらは、所得代替率とモデル年金の見通しにつきまして、中庸的な2つの成長型経済移行・継続ケースと、過去30年投影ケースで確認したものということになっております。
 上段の成長型経済移行・継続ケースを見ていただきますと、比例の終了年度を確認いただきますと、2025年度以降、調整不要ということになっております。
 一方、基礎年金については、2037年度までマクロ経済スライドが続きまして、基礎年金のみ13年間調整を続けるという見通しになっているものであります。
 一方、下段の過去30年投影ケースにおきましても、比例のマクロ経済スライドは2026年度には終了して、2027年度以降、調整不要というものであります。
 一方、基礎年金は、2057年度まで調整が続きまして、基礎年金のみの調整が長く続くという見通しになっています。
 すなわち、いずれのケースにおきましても、基礎年金だけの調整が長く続くということになっております。
 また、比例につきましては、仮に制度改正を行わなければ、両ケースとも2027年度には比例の調整は不要ということになります。
 つまり、何も制度改正を行わなければ、2027年度の年金額改定において、マクロ経済スライドの終了の判断というものが必要になってくるということを意味しているということであります。
 続いて、モデル年金の見通しを確認いただきたいと思います。
 こちらは、年金額が物価で2024年度に割り戻しました実質額で示しております。つまり、この年金額が上昇しているということは、年金の伸びが物価の伸びを上回りまして、年金の購買力が増加していることを示しているものであります。
 以下、財政検証の資料で年金額を示す際は、全ての物価で割り戻した実質額でお示ししているところであります。
 上段のケースを御覧いただきますと、こちらは、実質賃金上昇率の仮定が1.5%と、少し高めのものになっておりますので、実質賃金の上昇に伴いまして、年金の実質額も上昇しているところであります。
 比例につきましては、調整不要のため、実質賃金の伸びと等しく伸びているというところでありますが、基礎年金はマクロ経済スライド調整により賃金の伸びを抑えられるということになりまして、所得代替率は低下するということになりますが、このマクロスライド調整中も、物価の伸びを上回っているということでございまして、足下、夫婦2人で13.4万円の基礎年金は、調整終了時の2037年度には13.6万円と増加しているところであります。
 一方、下段の過去30年投影ケースを見ていただきますと、こちらは、実質賃金の伸びは0.5%と低めになっているところでありますので、マクロ経済スライド中の年金は、実質額が低下することになっております。
 比例で見ますと、調整が2026年度に終了するため、その後、実質賃金の伸びに伴いまして増加するところでありますが、基礎年金のほうは調整が終了する2057年度には、夫婦2人で10.7万円、1人当たりで言いますと、5.3万円まで低下することが見込まれているところであります。
 つまり、このケースでは、所得代替率が低下するだけでなく、購買力で見ても基礎年金は大きく低下することが確認されたところでありまして、改めて基礎年金の水準低下が大きな課題であることが確認されたものと考えております。
 続く5ページ以降が、オプション試算の結果となります。
 5ページは、オプションのメニューでありまして、5つのオプションについて試算しているところであります。
 以降、基本的には2つのケース、成長型経済移行・継続ケースと、過去30年投影ケースで結果を示しているものであります。
 続いて、6ページを御覧ください。
 こちらは、まず、さらなる適用拡大を行った場合のものであります。
 どういった試算をしているか、お示ししておりますが、まず、上の四角囲みで4つのパターンを示しております。
 1が、下の図の黄色で示したAの部分を適用対象としたものとなります。
 こちらは、全世代型社会保障構築会議においても、早急に行うべきとされておりまして、適用拡大の懇談会でも、他の事項に優先して対応すべきとされた部分であります。
 具体的には、週20時間以上の短時間労働者に対する企業規模要件を撤廃した場合、この対象者70万人に、5人以上の個人事業所の非適用業種を撤廃した場合の対象者20万人を加えて、計90万人を対象とした場合となります。
 続く2が、先ほどの1に緑色のBの部分を加えたものになります。
 Bの部分は、週20時間以上の短時間労働者に対する賃金要件を撤廃した場合、いわゆる106万円の壁と言われているものでありますが、こちらをなくした場合の対象者が110万人となります。1と合わせて200万人が対象になっております。
 なお、この賃金要件の撤廃でありますが、最低賃金が引き上がった場合でも同様の効果が得られるというものであります。
 つまり、全国全ての都道府県で最低賃金が1,016円を超えてきますと、週20時間働けば、月収8.8万円を超えてくるということになりますので、こうなると実質的に賃金要件撤廃と同等の効果が得られることになっております。
 したがって、Bの部分も記載は、賃金要件撤廃または最低賃金の引上げとさせていただいているものであります。
 続いて、3の部分ですけれども、2にCの部分を加えたものになります。Cの部分につきましては、5人以下の個人事業所で70万人が対象となります。2と合わせて270万人を対象としたものとなります。
 最後の4は、最も広く10時間以上働く被用者は全て対象としたもので、860万人が対象となります。ここまで拡大すれば、被用者のほぼ全てをカバーすることができるということであります。
 続く7ページを御覧ください。その試算結果となります。
 現行制度と比べまして、90万人ベースの1だと、所得代替率が1%程度上昇するということであります。
 適用拡大が進むほど効果が大きくなりまして、4では3.6%、5.6%ポイントの上昇となります。
 いずれのケースにつきましても、基礎年金が上昇いたしまして報酬比例は変化なし、または低下するということで、全体として上昇する見通しとなっているというものであります。
 その結果、4の場合でありますと、結果として基礎と比例の調整期間は一致しているということであります。ただ、これが一致しているのは結果的なものということでありまして、今後、社会経済状況が変化すれば、5年後の財政検証では再びずれるということもあり得るものであります。
 続く8ページを御覧ください。
 こちらは、基礎年金の拠出期間を45年に延長して、それに応じて給付の増額も図るという見直しを行った場合というものであります。
 こちらは、先日の年金部会で、今回の結果を踏まえますと、第1号被保険者の保険料負担を求めてまで導入する状況にはないと、年金局長より発言がありまして、事実上の見送りを言わせていただいたものでありますが、ただ、決して基礎年金を充実するという意義がなくなったものでありませんので、次々回の改正も含めて、引き続き検討課題であり続けるというものと考えておりまして、今回もオプション試算を実施しているというものであります。
 試算結果を見ますと、現行制度と比べて5年間保険料の拠出期間が延びますので、所得代替率もそれに応じて、40分の45ということになりまして、7%ポイント程度上昇が見込まれるものであります。
 なお、四角囲みで書かせていただきますけれども、40年分で比較しますと、所得代替率は、おおむね現行と同じ水準となっているものでありまして、年金財政への影響は軽微であるということであります。つまり、所得代替率の上昇は、保険料拠出期間の延長によるものと考えていただければと思います。
 9ページを御覧ください。こちらは、45年化のイメージと試算の前提を整理したものとなります。
 1号被保険者で言いますと、保険料の拠出が5年間延長されまして、現在の価格で計算しますと、5年間で約100万円の負担増ということになりますが、その分給付が増えまして、年10万円の増加と、こういった前提で計算しているものであります。
 また、延長した60から64歳の期間についても、2分の1国庫負担はきちんと導入されるという前提で試算しているものであります。
 続いて、10ページを御覧ください。
 こちらは、マクロ経済スライドの調整期間を一致した場合、1階と2階のずれをなくした場合ということになりますが、こういった場合の効果を見たものとなります。
 上段のケースで見ますと、基礎、比例ともに足元から調整不要となっておりまして、所得代替率は現行制度より3.6%上昇、足元の所得代替率61.2%が維持される見通しになっております。
 一方、下段のケースでは、2036年度で基礎、比例ともに調整を終了することができまして、所得代替率は現行より5.8%上昇して、56.2%となる見通しとなっております。
 比例の所得代替率は2%ポイント程度低下するというものでありますが、基礎年金の上昇が、それを上回りまして7.7%ポイント上昇しているところであります。
 続いて、11ページを御覧ください。
 こちらは、65歳以上の在職老齢年金の仕組みを撤廃した場合の結果となります。
 在職老齢年金の仕組みを撤廃いたしますと、一定の収入以上で働く年金受給者の給付が増えるということになります。
 それが、2030年度では5200億円、2040年度では6400億円と見込んでおります。ただ、その分マクロ経済スライド調整が長引くということになりまして、将来の所得代替率が低下することになります。その影響が、マイナス0.5%ポイントとなっているところであります。
 続いて、12ページを御覧ください。
 こちらは、標準報酬の上限を引き上げた場合の影響ということであります。
 現在、標準報酬の上限は、平均の2倍を基準に定められておりまして、65万円となっているところであります。この上限に該当する者が、約6%ということであります。
 そこで上限の設定ルールを見直しまして、上限該当者が4%、3%、2%と、そのようにした場合の影響を試算したものであります。
 この場合、足元での上限は、それぞれ75万円、83万円、98万円となるものであります。この上限を引き上げますと、上限該当者及びその事業主の保険料負担が増加します。
 一方、上限該当者の将来の年金給付も増加するところであります。
 さらに、それに加えまして、年金財政にもプラスの影響があるところでありまして、マクロ経済スライド調整が短縮し、それによって全体の給付水準も上昇するところであります。すなわち、所得再分配を拡大する効果があると言えるものであります。
 それぞれの影響を試算しております。例えば、75万円まで引き上げた場合ということで見てみますと、保険料負担は労使計で4300億円の増。上限該当者の給付は10年間該当した場合は、年6.1万円増加いたしまして、それに加えまして、全体の給付水準も所得代替率で0.2%ポイントの上昇があると、そういう試算をしているところであります。
 以上が、オプション試算結果ということになります。
 続く2枚、13ページ、14ページにつきましては、今回財政検証で初めて行った年金額分布推計の概要ということになります。
 こちらは、65歳時点の年金額につきまして、その平均や分布が、世代によってどう変化していくかというものを試算したものとなります。
 初めにもお話ししましたが、これによってモデル年金では確認できなかった実態が明らかになったと考えております。
 モデル年金につきましては、年金の加入期間を固定して、どの世代も同じと仮定しております。つまり、夫は厚生年金に40年間加入して、妻は3号として40年間加入し、つまり、妻には2階分の年金がないと仮定しているところであります。
 ただ、実態といたしましては、女性や高齢者の労働参加は進展しておりまして、2号被保険者の数も増えてきているというところであります。
 この結果、厚生年金の加入期間は、若い世代ほど長くなっていくと、特に女性につきましては、その延伸が大きいと考えられるところであります。
 その結果、厚生年金の加入期間は若い世代ほど長く、特に女性の延伸が大きいということになりますので、これに伴って、厚生年金の加入期間が延伸しまして、若年世代の年金の上昇要因、また、若年世代の低年金の減少要因となると考えられます。
 この年金額分布推計は、この効果について、具体的な数字で初めて確認したというものであります。
 13ページが成長型経済移行・継続ケースの結果となります。
 左上が男性と女性の1人分の、個人の平均年金額となります。それぞれ2024年度で65歳、50歳、40歳、30歳の世代が65歳になったときに受給する年金額について、物価で2024年度に割り戻した実質額で見ているというものであります。
 夫婦で考える場合は、男性、女性それぞれの合計として考えることもできると思っております。
 このケースにつきましては、実質賃金が1.5%となっておりますので、賃金の伸びに応じまして、男性、女性ともに平均年金額の上昇が見込まれるというものであります。
 左下のグラフで、モデル年金や実質賃金の伸びと比較しておりますので、こちらを御覧ください。
 男性の平均につきましては、モデル年金とおおむね同じ伸びとなっているところでありますが、女性の平均はモデル年金の伸びを上回りまして、賃金と同じか、それを上回る伸びとなっているところであります。
 さらに右側で、2024年度で60歳、50歳、30歳の世代が65歳で受給する年金の分布を確認しております。
 男性、女性ともに低年金が減少して、分布の山が高いほうにシフトしているというものであります。
 特に女性は、低年金の減少の効果が大きくて、分布の山も大きく右側にシフトしているところであります。
 1994年生まれ、現在30歳の女性の分布を見ますと、厚生年金の加入期間の延伸によりまして、男性の分布に近づいているということが確認できるかと思います。
 続く14ページが、過去30年投影ケースの結果ということであります。
 このケースでは、実質賃金の伸びが0.5%と低いことから、年金の伸びも先ほどのケースに比べて小さくなっているというものであります。
 平均年金額を見ますと、男性は若干減少ということになっておりますが、女性の年金額は、マクロスライドの調整期間中も上昇いたしまして、購買力の増加が確認できるというところであります。
 左下のグラフで年金の伸びを確認いたしますと、先ほどのケースと同様に、男性の平均はモデル年金と同様の伸びということになっておりますが、女性の平均は、モデル年金を上回って賃金と同様の伸びを示しているところであります。
 右側の分布を確認してみますと、男性の分布は、真ん中のほうに寄っているところでありますが、女性については、この場合も低年金が減少して、分布の山を上方にシフトして、男性の分布に近づいているということが確認できるものであります。
 以上が、今回の財政検証の概要ということになります。
 続いて、資料2-1以降で、概要で取り上げられなかった部分を中心に、補足的に説明していきたいと思います。まず、資料2-1を御覧ください。
 まず、前回の財政検証の比較を確認いただきたいと思いますので、ページは飛びまして、6ページを御覧いただきたいと思います。
 6ページが、成長型経済移行・継続ケースでの前回との比較となります。こちらは、前回のケースI~Ⅲと比較しているというものであります。
 前回と比べますと、調整期間は短縮いたしまして、調整終了後の所得代替率も大きく上昇しているというものが確認できるかと思います。
 続いて、7ページが過去30年投影ケースでの比較ということになります。
 前回のケースIV、Vと比較しているというところであります。経済成長の前提が、おおむね似たもの同士を比較しているというものであります。
 こちらで見ていただきますと、前回と比較しまして、調整終了年度は大きく変化していないところでありますが、調整終了後の所得代替率は、前回45%前後だったものが50%を上回る水準まで上昇しているということであります。
 調整期間が変わらないのに所得代替率が上昇しているということになっておりまして、こういったことになっている要因ですが、つまり調整のスピードが緩やかになっているということであります。
 この要因といたしましては、前回より女性高齢者の労働参加が進展したということになります。
 その結果、公的年金の被保険者数の減少が緩やかになりまして、それを基準として行います、マクロ経済スライド調整のスピードも緩やかになったというものであります。
 このように、前回の同様のケースと比較いたしまして、将来の給付水準が大きく上昇する結果となっているところでありますが、このようになった結果としては、大きく2つの要因が考えられると思っております。
 1つが、女性や高齢者の労働参加が想定を超えて進展してきたということでありまして、その結果、保険料を納める被保険者数が大きく増加しております。
 もう一つが、想定を超えた積立金運用の結果でありまして、将来の給付に充てる積立金が大きく増加したというところであります。
 続きまして、ページを飛んでいただきまして、14ページを御覧いただきたいと思います。
 これまで人口につきましては、中位推計で確認いただいたところでありますが、人口の前提が変化した場合の影響を確認したものということになります。
 出生率が高位、低位となった場合、また、死亡率が高位、低位となった場合、外国人の入国超過がより増えて25万人になった場合、減少して前回推計ベースの6.9万になった場合ということにして、それぞれ影響を試算しているものであります。
 どの要素も高位のほうになれば、所得代替率は上昇しまして、低位になれば低下するというところであります。
 成長率1%程度を仮定しております、上2つのケースで見ますと、どの要素で見ても、低位になっても55%を超える所得代替率を確保しているところであります。
 一方、過去30年投影ケースで見ますと、低位になれば、いずれの要素も50%を下回りまして、46%、47%台となっているところであります。
 将来それぞれの要素がどのように動くか、確定的なことを申すことはできないわけですが、下の表に直近の実績を確認しているので御覧いただきたいと思います。
 出生率の2023年の実績は1.20で、中位の2023年の仮定値1.23を下回っているというところでありますが、一方、死亡率につきましては、2022年の実績は仮定値より高位のほうにずれているところであります。
 また、外国人の入国超過の実績も中位の仮定より高く推移しているところであります。
 つまり、年金財政の関係で言いますと、足下の実績は、出生率はマイナスの方向に動いていますが、一方、死亡率と外国人の入国超過はプラスの方向に動いているというところであります。
 続いて、参考資料となりますが、16ページを御覧いただきたいと思います。
 労働参加の進展によりまして、厚生年金の被保険者数の推移を見たものとなっております。
 一番下の赤い部分が厚生年金の被保険者の実績と、将来の見通しとなっております。
 こちらは、実績で厚生年金の被保険者が増加しているというところであります。
 その結果、公的年金の被保険者の占める厚生年金被保険者の割合を見ていただきますと、2000年の53%から直近では70%弱まで上昇しているというところであります。
 さらに、この傾向を将来に織り込みまして、2040年には労働参加進展シナリオでは79%、漸進シナリオでは76%まで上昇が見込まれているところであります。
 こういった傾向を反映いたしまして、今後、受給者となる世代の65歳時点の厚生年金期間は延伸が見込まれるということであります。
 続いて、19ページを御覧いただきたいと思います。
 こちらは、今回の所得代替率が上昇した要因を確認しているものであります。上段を御覧いただきたいと思います。
 こちらは、2023年度において、前回の財政検証の見通しと今回の財政検証の足下として使用しました、2023年度の実績見込みを比較したものであります。
 まず、被保険者数を比較いたしますと、女性や高齢者の労働参加の進展によりまして、厚生年金の被保険者は、前回の見通しより約260万人増加しているところであります。
 一方、3号被保険者は、約60万減少しているところでありまして、年金財政にプラスの影響があるところであります。
 その結果、収支状況も改善しているところであります。運用収入を除いた収支差引残を見ますと、前回の見通しでは1.5兆円の赤字と見込んでおりましたが、実際には0.3兆円の黒字に転換しているところであります。こちらは、被保険者数の増加によって保険料収入が増えた影響であります。
 つまり、足下では積立金を活用しなくても、保険料と国庫のみで支出を賄える状況になっているものであります。
 さらに、積立金のほうを見ていただきますと、運用が好調であった結果、2023年度末の積立金は前回の見通しを、約70兆円を上回っているところであります。
 こういった要素を今回の財政検証に反映させた結果、前回より所得代替率の改善が確認されたというものであります。
 続いて、ページは飛びまして、28ページを御覧いただきたいと思います。
 今回の改善要素となりました、労働参加の状況と将来のシナリオについて確認いただきたいと思います。
 就業者数と65歳以上人口の見通しを示しているものであります。灰色の点線が、前回、最も労働参加が進むケースの就業者数の見通しというものでありました。
 黒の実線の実績が、前回の見通しを上回ったということから、今回の見通しは、前回の見通しをさらに上回って、真ん中のケース、労働参加漸進シナリオでも、前回の最も高いケースを上回る見通しになっているというところであります。
 また、左下に65歳以上人口、高齢者1人当たりに対する就業者数を見ております。こちらを御覧いただきますと、2023年では、1.9人で1人を支える姿ということでありますが、労働参加進展シナリオでは、2060年度でも、1.5人で1人を支えるということであります。高齢者1人当たりの支え手が約2割減るという見通しになっております。
 よく人口で見て、2人で1人を支える御神輿型が2060年頃には、1人で1人を支える肩車型になるということが言われますが、労働参加の進展によって、その影響はかなり緩和されていることが確認できるものと考えております。
 続いて、29ページを御覧ください。
 今回の労働参加のシナリオにつきまして、人口との比較を行ったものであります。
 2023年現在の就業者数を見ていただきますと、ちょうど20から64歳の人口とほぼ同じ大きさとなっているところであります。
 つまり、現在は平均してみますと、20から64歳まで働く社会になっていると言えるものであります。
 ただ、過去にさかのぼって約10年前の就業者数を見ていただきますと、20から59歳人口と同じとなっております。つまり、この10年で就業期間が5年延びる変化を生じたというものであります。
 一方、労働参加進展シナリオの2040年での就業者数を見ますと、おおむね20から69歳人口と同じということになっております。
 すなわち、労働参加進展シナリオというのは、2040年には平均してみると、20から69歳まで働く社会となりまして、就業期間が5年延びるシナリオになっているということであります。
 続きまして、また、ページが飛びまして恐縮ですが、36ページを御覧いただければと思います。
 こちらも今回の改善要素となりましたのを、積立金運用の長期的な実績を確認したものであります。
 GPIFを含めまして、国内外の市場運用を行っている年金基金につきまして、実質的な運用利回り、つまり賃金を上回るスプレッドと呼ばれるものにつきまして、10年平均を取って分布を見たものということになります。
 今回の財政検証の前提は、赤い点線1.7%以下で設定しているところでありますが、国内外の年金基金の実績を見ていただきますと、おおむねこの水準を上回っていることが確認できるものであります。
 以上、資料2-1の説明でありまして、続いて、資料3-1を御覧いただきたいと思います。
 こちらは、オプション試算の結果となります。こちらも概要を補足して説明したいと思います。
 まず、4ページを御確認いただきたいと思います。
 こちらは、適用拡大によりまして、年金額にどのような影響があるかを確認したものであります。
 現在、30歳の世代につきまして、65歳となる2059年に受給する年金額の変化をモデル年金と平均年金額と年金額の分布で確認しているものであります。
 モデル年金を見ていただきますと、適用拡大が進むごとに上昇いたしますが、内訳を見ると、基礎年金が上昇する一方、比例については過去30年投影では低下しているところであります。
 こちらは、マクロ経済スライド調整が基礎年金は短縮して、比例が延長する効果が現れているというものであります。
 真ん中の平均年金額を見ていただきますと、適用拡大が進むごとに上昇して、さらに年金額分布を見ていただきますと、適用拡大が進むほど低年金が減少しているということが確認できるかと思います。
 この平均年金額と年金額分布は、今回初めて行った年金額分布推計からの結果となっております。
 こちらも改正の影響におきまして、モデル年金で見ることができなかった効果を確認できるということであります。
 というのも、モデル年金につきましては、適用拡大の対象者を仮定しておりません。したがって、現れてくる効果につきましては、マクロ経済スライドの調整期間の変化によるものだけということになります。
 一方、平均年金額や年金額の分布につきましては、マクロ経済スライドの調整期間の変化の影響に加えまして、この適用対象者の2階の給付が充実すると、こういった影響も含まれるというものであります。
 つまり、適用拡大の本来の効果を確認できるようになったと考えているものであります。
 続いて、ページがまた飛びまして、10ページを御覧いただきたいと思います。
 こちらも、45年化につきまして、先ほどと同様に、年金額の変化を確認しております。
 こちらは、基礎年金が増加する効果によりまして、モデル年金、平均年金額、いずれも増加いたしまして、分布を見ましても低年金が減少しているということが確認できるところであります。
 続いて、12ページを御覧ください。
 45年化につきましては、国庫負担が増加するという課題があるところでありますので、その規模を確認したものであります。
 国庫負担につきましては、制度の施行後、緩やかに増加していくことになりまして、最終的には、2070年度で見ますと、1.3兆円ほど国庫負担が増加する見通しになっているところであります。
 続いて、14ページを御覧ください。
 こちらも調整期間について、年金額の変化を確認したものであります。
 モデル年金は基礎が上昇して、比例が低下するところでありますが、基礎の上昇幅のほうが大きくて、全体で年金額が上昇しているところであります。
 下段の過去30年投影ケースの場合を見ていただきますと、基礎年金は、2059年には夫婦2人で10.8万円まで低下するところでありますが、調整期間の一致によって14万円まで上昇する、1人当たり7万円まで上昇するところであります。
 また、真ん中の平均年金額で見ましても、上昇が見られるということでありますし、分布を見ても、低年金の減少に効果が大きいことが確認できるかと思います。
 続いて、17ページを御覧いただきたいと思います。
 こちらは、調整期間一致によって厚生年金の受給者について、賃金水準別に年金額にどのような影響があるかを見たというものであります。17ページは、成長型経済移行・継続ケースで見ております。
 このケースの場合、比例の低下がなくて基礎が上昇するということでありますので、全ての受給者について年金額が上昇するところであります。
 続いて、18ページを御覧いただきたいと思います。
 こちらが、過去30年投影ケースで同様の結果を見たものであります。
 この場合は、極めて高所得者の方のみ、比例の低下が基礎の上昇を上回って、年金額が低下するということでありますが、この対象は、個人で見て年収1080万円以上の方のみということになります。
 年収1080万円というのは、ボーナス2回の場合の標準報酬の上限に該当しております。したがいまして、このような方ほとんどいないということになりまして、現在の厚生年金受給者の中で該当するのは、0.1%未満というところであります。
 さらに、19ページを御覧ください。
 調整期間一致につきましても、基礎年金の水準が上昇するということでありますので、その2分の1国庫負担の増加が課題になるというところであります。
 国庫負担につきましては、基礎年金のマクロ経済スライド調整が終了した後に、徐々に増加していくところであります。すなわち、過去30年投影ケースで見ますと、2036年度に調整が終了した後に、国庫負担が増加していくというものであります。
 その規模を見ていただきますと、成長型経済移行・継続ケースでは、最大では1.4兆円、過去30年投影ケースでは、最大2.6兆円になっているところであります。
 続いて、ページが飛びまして、29ページを御覧ください。
 こちらは、マクロ経済スライド調整の名目下限措置撤廃と、平成28年改正に導入されましたキャリーオーバー制の効果について確認したものとなっております。
 実質1%以上の成長を仮定します上2つのケースで見ますと、物価賃金の上昇率が高いということでありまして、マクロ経済スライドは十分に発動する環境となっているところであります。
 こういった場合は、効果が確認できないところでありますが、過去30年投影ケースで見ていただきますと、名目下限措置撤廃により、1.7%ポイント、キャリーオーバー制導入によって、1.6%ポイント所得代替率の上昇効果が確認できるところであります。
 また、1人当たりゼロ成長ケースのような極めて成長率の低いケースでも、名目下限撤廃措置を行えば、マクロ経済スライド調整によって財政均衡を図ることができて、所得代替率は45.3%になるというものであります。
 物価や賃金の極めて低い状況では、名目下限措置撤廃の効果があることが確認できたというものであります。
 続きまして、資料が変わりまして、資料4-1を御覧いただきたいと思います。
 財政検証に関連した資料を集めております。こちらもピックアップして説明させていただきたいと思います。
 5ページを御確認いただきたいと思います。
 モデル年金につきましては、20から59歳まで年金に加入して、65歳より受給するということを前提にしているところでありますが、公的年金は個人の選択によりまして、就労を延長して、さらに受給開始時期を繰り下げると、こういったことを行った場合、年金額を増加させることができるという仕組みがあります。この効果を確認した資料となっております。
 右側の過去30年投影ケースで見ていただきたいと思います。
 比例は、就労延長と繰下げの効果によりまして、年金額は増加しますし、基礎年金は繰下げの効果によって増加するところであります。
 マクロ経済スライド調整が終了する2057年度で見ますと、モデル年金は21.1万円ということでありますが、75歳まで就労して受給開始時期を繰下げますと、39.3万円まで年金額を増加させることができるということであります。
 基礎年金につきましても、夫婦2人で10.7万円だったものが19.6万円、1人分でいいますと9.8万円まで増やすことができるというところであります。
 所得代替率につきましても、年金額の増加に応じて上昇いたしまして、94%まで上昇するというところであります。
 続いて、6ページを御覧ください。
 今ほど見ていただきましたとおり、公的年金は個人の選択で給付水準を引き上げることができるというところであります。
 そこで、この資料は、過去30年投影ケースで所得代替率が50.4%まで低下する若年世代につきまして、何歳まで就労して年金を繰り下げると、今の高齢者と同じ所得代替率になるかというものを試算したものであります。
 赤囲みにありますとおり、66歳10か月まで就労して、その時点で受給開始すれば、今の高齢者と同じ61.2%の所得代替率になるという結果になったというものであります。
 一番下を見ていただきますと、現在20歳の世代でいいますと、65歳の平均余命は、今の高齢者より3年延長することが見込まれております。
 そうしますと、受給開始時期を66歳10か月まで遅らせたとしましても、平均的な受給期間は、今の65歳の世代より1年延長されることになります。
 このように、マクロ経済スライド調整が進んだとしても、平均余命の伸びに応じて就労を延長して、繰下げ受給を選択すれば、若年世代の年金は充実を図ることができる仕組みになっているということであります。
 さらに、ページは飛びまして、29ページを御覧いただきたいと思います。
 こちらは、調整期間一致につきまして、財政構造の補足説明ということになります。
 こちらは、過去30年投影ケースで調整期間一致の効果を分解して見ているというものであります。
 所得代替率の変化を見ますと、基礎年金が7.7%上昇して、比例が2.0%低下して、全体で5.8%上昇するところであります。
 基礎年金の上昇が大きいというわけでありますが、この半分、3.9%は国庫負担の増加により賄われるということであります。
 残りの下の図の左側の網掛けの部分ですけれども、こちらが保険料と積立金で賄われる部分ということになりますが、こちらは2階から1階に財源が移転されることになりまして、1階が3.9%上昇し、2階が2.0%低下して、差し引きで1.9%の上昇となっているところであります。
 この部分で所得代替率が上昇しているのは、調整期間一致には世代間の分配を調整する機能もあるところであります。
 すなわち、2階の調整が長引くということでありまして、足元の受給世代の2階の給付に充てられていた財源が、将来の受給世代の1階に充てられることになります。
 この結果、マクロ経済スライド調整後の給付水準が上昇する結果になっているものであります。
 続いて、資料が変わりまして、資料4-2を御覧いただきたいと思います。
 こちらは、今回初めて行いました年金額分布推計の詳細資料となっております。
 まず、推計方法について御説明したいと思います。2ページを御覧ください。
 まず、基礎データにつきましては、2021年度末の個人単位で、1号被保険者期間、2号被保険者期間、3号被保険者期間、全てを通算した被保険者記録を新たに年金機構より5分の1抽出して提供いただいて使用しているものであります。
 この1号期間、2号期間、3号期間を通算した記録が今回初めて入手できたということで、今回このような年金の分析推計を行うことができるようになったというものであります。
 推計対象は、2024年度に65歳の世代から20歳の世代まで、65歳に到達したときに受給する個人の老齢年金の年金額を推計しているものであります。
 ※を御覧いただきますと、この際、老齢年金として計算しているのは、繰下げ、繰上げ、こういったものを選択せずに、65歳で裁定された場合の本来額を推計しているというものであります。
 したがいまして、繰下げを選択いたしますと、年金額が、この分布推計からさらに増加するというものであります。
 また、この本来額には、世帯に着目して支給される加給年金は除外して計算しているものであります。
 推計方法につきまして、3ページ、4ページを御覧いただきたいと思います。
 まず、3ページですが、財政検証本体のマクロ試算と連携して、整合的になるように計算しているものであります。
 被保険者数を例に挙げて、こちらを見ておりますが、左側のグラフは、先ほど見ていただきましたものですが、近年、2号被保険者の割合が上昇し、将来は、さらに上昇が見込まれるというものであります。
 財政検証は、これを織り込んで若年世代ほど2号被保険者期間が延伸するということが見込まれるわけですが、年金額分布推計についても、完全にこの財政検証の枠組みの中で計算しているというものであります。
 具体的に申しますと、被保険者数の総数が、このマクロ計算で決まっている中、誰が制度間で移動するかを、分布推計のシミュレーションの中で決定して、個々人の加入履歴をシミュレーションしているところであります。
 したがいまして、マクロ計算との整合性を持つことによりまして、分布推計におきましても2号被保険者期間が延伸する結果となっております。
 それが、さらには平均年金額の上昇要因、低年金の減少化要因となっているところであります。
 また、2号被保険者の標準報酬総額や1号被保険者の納付月数の総数についてもマクロ計算と完全に整合性を取る、つまり、完全に一致させることを行っております。
 この結果、年金総額も財政検証と同じになるように計算されているものであります。
 続いて、4ページを御覧ください。具体的なシミュレーションの方法をお示ししております。
 まず、シミュレーションの出発点は、2021年度の実績ということになります。
 したがいまして、例えば50歳の方で申し上げますと、20から50歳までの30年間は、既に加入履歴の実績があるということであります。この実績を用いて、まず、シミュレーションをしてということになります。
 つまり、50歳の方でいいますと、30年間の加入履歴を基に65歳まで、残り15年間をシミュレーションで推計して加えて、65歳時点の加入履歴を作成して、その加入履歴から、個人の年金額を計算するというところであります。
 したがって、50歳の方でいいますと、加入履歴のうち3分の2は実績から計算されているということになります。
 シミュレーションにつきましては、当年度の加入履歴を基に、1年間で制度間をどのように移動して、また、報酬がどのように変化するかというものをシミュレーションいたしまして、1年後の加入履歴を推計しているということであります。
 このシミュレーションを1年ずつ繰り返して、65歳到達時点の加入履歴を計算して、それを基に、個々人の年金額を計算して、さらには、その年金額を集計して分布をつくっていると、そして、推計を行っているところであります。
 続いて、7ページ以降が推計結果ということになりますが、概略で紹介できなかった部分を紹介したいと思います。7ページを御覧いただきたいと思います。
 こちらは、現役時代の加入類型を男女別に見たものとなります。
 青が厚生年金期間中心で、20年以上厚生年金期間がある者を示しております。
 紫が1号を中心、黄色が3号中心、緑がどの期間も20年に満たない方ということになります。
 男性につきましても厚生年金中心の方が増えてきているところでありますが、女性の変化が顕著となっております。
 65歳の世代を見ますと、女性につきましては、厚生年金中心と3号中心がほぼ同じ、3分の1強ということになっておりますが、若年世代ほど厚生年金中心が増加していくということになりまして、労働参加進展ケースで見ますと、8割近くまで増えていくことになります。
 一方、3号中心で見ますと、約1割に低下するということになります。
 こういった変化によりまして、女性の年金が充実していくということであります。
 続いて、9ページ、10ページが厚生年金の加入期間の分布になりますので、こちらを御覧いただきたいと思います。
 9ページが、男性の分布ということになります。
 男性の分布をご覧下さい。現在65歳の1959年生まれ、50歳、30歳と比較しておりますが、男性については、もともと厚生年金期間が長い方が多いということでありますが、さらに長い方が増えていき、短い方が減っていくということになっております。
 この結果、男性につきましても、低年金は若年世代ほど減っていくことが見込まれるということであります。
 続いて、10ページを御覧いただきますと、女性のものになります。
 女性で言いますと、65歳の世代につきましては、1から10年という短い期間の方が多いということになっておりますが、30歳の世代を見ますと、30年以上という長い方が多くなっているということであります。
 こういった変化によって、女性の低年金が減少して比較的高い年金を受給する方が増加していくということであります。
 11ページから14ページは、年金額の分布や伸びについて見たものでして、概要で見ていただいたものになります。
 続いて、15ページ以降が、制度改正によって平均年金額や分布がどのように変化するかを示したものということになります。
 こちらも、30歳の世代につきましては、既に御覧いただけたというものでありますが、30歳の世代だけでなく、50歳、40歳の世代についても見ておりまして、男女別により詳細な結果が見られるようになっております。
 一例を御覧いただきたいと思います。適用拡大の効果について、男性と女性で比較して見たいと思います。効果が見えやすい、適用課題2で見ていただきますと、22ページと23ページになります。御覧いただきたいと思います。
 22ページが男性の効果で、23ページが女性の効果となります。比較して御覧いただきますと、適用拡大の対象者数が男性より女性のほうが多いということでありますので、効果についても、女性のほうが、効果が大きいということが確認できるかと思います。
 また、45年化や調整期間一致についても同様の資料がありますので、詳細を御確認いただければと思います。
 長くなりましたが、私からの説明は以上とさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

○翁部会長 御説明ありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問や御意見などがございましたら、よろしくお願いいたします。どこからでも結構でございますので、御質問がございましたら、挙手をお願いいたします。
 寺井委員、お願いいたします。

○寺井委員 御説明ありがとうございました。
 説明していただいて内容がよく分かったとともに、今回は、女性と高齢者の労働参加が進んでいる現状の影響にフォーカスした説明となっていまして、私、非常に興味深く聞かせていただいて勉強になりました。その感想がまず1つです。
 それから、質問が2つございまして、概要にあります、在職老齢年金制度に関する11ページなのですけれども、ここの3行目に、在職老齢年金の見直しによる就労の変化を見込んでいないというただし書きがございまして、試算の便宜上と書かれてはいるのですけれども、財政計算の手法上、就労が変化する、労働参加が進む、あるいは経済に与えるプラスの影響みたいなものがあると、それを織り込んで、所得代替率への影響が、今、マイナス0.5%となっていますけれども、それをどれぐらい取り戻すことができるのかということを、財政計算で計算するのは難しいということなのかなというのを確認させていただきたいのが1つです。
 もう一つは、終了期間の一致を行った場合というのがあったと思うのですけれども、すみません、これは10ページでした。
 比例と基礎の数値は、代替率でしょうか、合っていますかね、その変化を見ますと、移行・継続成長型経済ですと、比例部分は変化がなくて、基礎年金部分で高まっていると。
 ところが、過去30年投影ですと、比例部分の代替率が少し落ちていると、その代わり基礎年金部分の代替率が大きく上がっていると。
 これは、プラスマイナスがあって合計すると、全体で調整期間の一致を行った場合、代替率が改善されるということなのだと思うのですけれども、制度をこのようにもっていくには、少し反対もあるのかなという感じがしていまして、例えばなのですけれども、比例部分の代替率が減らないで済むようなシナリオというのは、大体どこぐらいまでなのかと、先ほど説明をいただいて、いろいろなパターンをされていましたけれども、もし、ここが閾値で、そこを超えるか下がるかすると、比例部分と基礎年金部分の利益の相反が強くなるみたいなものが、もしあれば教えていただきたいなと思いました。
 以上です。

○翁部会長 ありがとうございました。
 それでは、お願いいたします。

○佐藤数理課長 御質問ありがとうございます。
 まず、在職老齢年金の制度の見直しによって、就労の変化は見込んでいないということでありますが、在職老齢年金については、働いている高齢者にペナルティーをかけるべきではないと、そういったことから見直しの御意見があるのですが、一方で、これによって就労が抑制されているかということにつきましては、アンケート調査をやると就労を調整しているという結果が見られるわけです。しかし、実証研究とかを見ていますと、なかなか就労が抑制されているという研究結果というのは、我々は見つけることができなかったということです。そういったこともありまして、どのぐらい就労の変化があるかというのを見込むのは非常に困難でありまして、今回財政検証では変化を見込んでいないというところであります。
 あと、調整期間の一致を行った場合の話ですが、まず、成長型経済移行・継続ケースで、比例の低下がないということですが、こちらは、調整なしになっているから、そういった結果になっているというところであります。
 調整期間を一致させた場合、基礎、比例ともに調整なしということになっていますが、潜在的には、もう少し高い給付を出すことが可能な結果になっておりまして、ただ、そういった現行の仕組みがないので、調整なしということになっているところであります。
 あと、ご質問の比例の低下をなしにするためには、結局調整なしにしなくてはいけないということになりますので、かなり財政がよくならなければ、そういうことにはならないということです。調整が必要な状況においては、必ず基礎が上がった分、比例が下がるという関係になります。ただし、基礎年金は半分国庫負担ですので、基礎年金の上昇のほうが大きいと、そういう構造であります。

○寺井委員 分かりました。ありがとうございます。理解できました。

○翁部会長 ありがとうございました。
 それでは、ほかにいかがでしょうか。
 枇杷委員、お願いします。

○枇杷委員 ありがとうございます。御説明ありがとうございました。
 最初は、感想的なことですけれども、非常に立体的にいろいろなシナリオのシミュレーションを御提示いただきましたので、将来の投影というのが非常によくできているということが感じられます。と同時に、これを普通の人に理解をしてもらう大変さというのを、これからいろいろ議論しなくてはいけないのかなということも感じました。
 それで、質問は2つなのですけれども、1つは、今回提示いただいた年金額の分布推計についてです。
 分布の示し方については、1号、3号、それから通常の2号の加入者の方と並べて、同じグラフの中で表示されているという理解をしておるのですけれども、よりミクロ的にというか、属性別に課題を発見するという観点で見ると、群団別の分布というのがあると、より少し新たな発見ということとか、メッセージが、もしかしたら出るのではないかと思いまして、そういう御検討というのは可能なのかどうかということと、もしそういうことの意義について何かお考えがあればというのが1点です。
 もう一つは、これは単純な質問なのですけれども、資料の2-1の29ページで、就業者数と人口の関係がありまして、こちらのグラフを見ると、20歳から69歳人口の点線よりも、労働参加進展シナリオの人数のほうが多くなっているということで、ということは、大学生である20歳代前半ぐらいの人は働いていないという前提も考えると、70歳以上の人が相当働いているというシナリオになっているということなのかなと思っているのですが、そういう理解でよいのかということを確認させていただければと思います。
 以上です。

○佐藤数理課長 まず、後者のほうからお話をさせていただきますと、先生おっしゃったとおり、こちらは、70歳以上で就業している人も含めますので、70歳以上の働いている人も相当いるということだと考えております。
 分布推計のほうにつきましてですが、1号とか2号とか3号、こういった群団別にという話ですが、まず、被保険者期間というのは、ずっと1号だった人とか、ずっと2号だった人、ずっと3号だった人というのは少なく、多くの方は1号、2号の期間が混ざっています。したがって、どの人がどういう属性なのか切り分けるためには、工夫が必要だというのが1点あります。
 それと、世代による一番大きな変化は、それぞれの群団ごとに見て、例えば2号の群団が、今、65歳と30歳でどう変わるかという変化ではなくて、一番大きな変化は、群団の構成が変わっていくということだと思っております。2号中心の人がどんどん増えていくと、それが一番大きな変化ですので、分けて見ると、逆にそこが見えなくなってしまうのではないかということも考えております。こういうことから、今回、このような示し方をさせていただいたということであります。

○枇杷委員 ありがとうございます。
 最初のほうの質問については、これは働き方の選択がそれぞれある中で、一個人の目から、例えばフリーランスの人から見たときに、有用な情報がそこにあるのではないかと思って見るとの想定からお聞きしました。ただ、年金財政全体を考える上で必要かと言われると、あまり必要ではないということも理解できたし、技術的な課題も理解できました。

○翁部会長 ありがとうございました。
 それでは、駒村委員、お願いします。

○駒村委員 私は年金部会で1回お聞きしていますので、2回目の拝見をさせていただきまして、改めてよく分析されているなと思ったわけですけれども、一方で、幾つかやはり質問が出てきています。
 まず、6つほどあって、かいつまんでお話ししますと、1つは、過去30年投影ケースというのを、一般の人向けにどう説明をすべきなのかという点であります。人によっては、コロナやリーマンやバブルやアジア通貨危機を過去30年で経験したけれども、そういうことが今後起きても、年金は大丈夫というイメージをしているような方もいます。しかし、正確には、過去30年投影ケースは、成長会計で分析の中で、過去30年の投入量、生産性の状態が、仮に今後30年も続いてもというような意味合いのはずです。厚労省は、過去30年投影ケースをどのように対外的に説明しているのか、まず1つ目の質問であります。
 2つ目は、資料4-1ですが、運用利回りと賃金で割り引いて、現在価値を計算していると。財政の見方というのは、いろいろな見方があって、運用利回りで見るのと、賃金で割り引いて見るのと、考え方はあるだろうと思います。
 質問は、年金の水準をどのように評価して国民に説明していけばいいのかという話で、1つはモデル年金というのがある。ただし、モデル年金の50%代替率というのは、あまり意味のないものであって、モデル年金の代替率は、変化率を着目する点で意味があるということだと思います。
 一方で、実質年金という表現がある。これは物価で割り引いたものという表現です。年金が未来の世代の現役労働者に対しての一定の生計を維持するという理解を考えたときに、今のCPIで、遠い未来の価値を割り引くというのは、これは、実額計算上は仕方がないのですけれども、年金の実質価値を表現しているのだというような説明は、これは少し慎重でなければいけない。CPIは現在の消費バスケットの構造で構成されていますので、未来の消費バスケットはまた違うわけです。そういう意味では、実質額という説明ではいいのですけれども、あたかも同じ生計費、購買力を維持しているかのような理解は不正確ではないか。その辺は少し正確な議論が必要ではないのかなと思いました。
 
 次に、資料4-2なのですけれども、これは、今回、大変重要なシミュレーションということでありますけれども、やはりこのシミュレーションについては、技術的な評価をするためには、まだ情報が十分ではないのかなと思っています。
 5分の1抽出というのは、どのように抽出されたのか、その抽出の基本統計量はどうなっているのか、将来部分の予測について、遷移確率は、どのように想定しているのか、この辺が、少し説明がないと、この辺はまだ評価が難しい。ただ、技術的には大変難しいのだろうと思います。マクロの推計値とミクロの推計値が合うように、設定していると思いますので、かなり技術的には難しいことをやられていると思いますけれども、きちんと評価するためには、ここのより技術的な情報が、御提供いただきたいなと思っています。
 次に、可処分所得の比率で所得代替率が計算されていますけれども、この可処分所得の計算は、従来と同じなのでしょうかということで、税の社会保険料を何パーセントで調整しているのかというのと、分母は、短時間労働者の賃金は入っていないのか、入っているのかという点を確認したいと思います。
 次に、各世代別の年金加入期間が出されていて、例えば、1974年生まれは43.6年、1994年生まれは44.3年と出ているのですけれども、1959年生まれ、つまり、今回もう既に65歳になっている方は、加入期間は何年で想定されているのか、ちょっと確認をさせてもらいたいと思います。
 最後に、これもシミュレーションをいろいろ細かく拝見していると、少しよく分からない部分がありまして、30年ケースの適用拡大で、現在、50歳の方の平均年金額の変化が、ケースIIIの270万と、ケースIVの860万で、平均額の変化が逆になっている。
 ケースIIIだと、この50歳で、30年ケースで見ると、14.1万円なのですが、ケースIVで適用拡大をすると逆に13.9万円と下がると。適用拡大すると増えると思っていたので、なぜ下がるケースがあるのかなと、少し分布を見ても、若干この50歳代は、やや下がって、分布が左に動いているようにも見えるので、この辺、理由を説明いただければなと思います。すみません、細かいところもありますが、よろしくお願いします。

○翁部会長 よろしくお願いします。

○佐藤数理課長 すみません、たくさん質問がありまして、もし抜けていれば、後で指摘をいただければと思います。
 まず、過去30年投影ケースをどのように説明するかという話かと思いますが、過去30年投影ケースの名称の由来というのは、TFP上昇率の過去30年間の分布を見まして、上から80パーセンタイルに相当するものが0.5%ということで、過去30年のTFP上昇率をおおむねカバーしているということで、こういった名称とさせていただいているところであります。
 すなわち基礎になっているのは、生産性でして、生産性が過去30年と同じような形でいけばという形で考えているところであります。
 ですから、将来どういうことになるか、はっきりとは分からないですけれども、経済のベースになっているのがTFP上昇率、生産性だろうと考えて、ベースになっている生産性がずっと過去と同じような形でいけば、こういった状況になりますよという説明ではないかなと考えております。
 あと、年金の水準について、物価で割り戻す実質年金額と所得代替率があるが、どういったもので見ていくのかと、どのように説明していくのかという話かと思いますが、我々としては、所得代替率と年金の実質額を両方で見ていくべきだと考えております。どちらか1つでいいかということではないと思っております。
 所得代替率というのは、モデルを1つ設定してみておりますが、それとともに賃金に対する比率のことですので、そのとき、そのときの現役世代の生活水準に対して年金の水準がどのぐらいかということを示すものでもあると考えています。
 そういった意味では、ある意味、賃金で割り戻したものと似たような性格だと考えているところです。
 一方、実質年金額というのは、物価で割り戻しているということで、あくまで購買力を見ているということです。
 将来、現役世代も賃金水準が上がれば、購買力が上がっていくかもしれません。この場合、実質年金額が横ばいであれば購買力は同じですが、年金は現役世代の生活に追いつかないということになりますので、そういったことも留意しながら、この所得代替率と年金額を両方で見ていくということだと考えております。
 3点目が、年金額分布の詳細な計算方法ですが、まだ、きちんと整理できておりませんので、こちらは、きちんと整理して、より詳しいものがお示しできるようにしていきたいと思っております。
 その次が、所得代替率を計算するときの可処分所得の計算はどうかということですが、可処分所得割合については、2023年度の家計調査を基に、家計調査の可処分所得割合から81.3%というものを設定して計算しているということです。
 あと、所得代替率の分母に短時間の人が入っているかどうかということで、こちらは、厚生年金被保険者全体を見ておりますので、あくまで男性の厚生年金の被保険者の男性の賃金ということで、短時間も含めて計算しているというものであります。
 次の点が、いまいち、すみません、私は理解ができなかったのですが、加入期間がという話、すみません、もう一度、御質問を。

○駒村委員 世代別の公的年金加入期間が、1974年生まれが43.6年、1994年44.3年という数字が出ているのですけれども、その足元の1959年が何年で加入期間が想定されていたのかなというのが見えないので、この辺の金額を計算するときには、加入期間というもの、足元の数字が実際はあるのではないかと思いますので、そこを何年で想定されているのか、40年で想定されてやっているのか、現実の今の想定、1959年生まれの男性は、年金の加入期間の数字が、どこかに出ていなかったようにも見えたので、そこは後でもいいですので、確認ということであります。
 最後にもう一個は、適用拡大のシミュレーションの平均値が逆に下がっているというのは、一体どういうことだったのかということであります。
 期間のほうは、また後で教えていただければ問題ない話で、むしろシミュレーションの結果のほうが興味深いところです。

○佐藤数理課長 すみません、年金分布推計で適用拡大すると、年金額が下がるところがあるというお話ですね。多分、50歳の世代だけだと思いますけれども、こちらは、過去30年投影ケースの話だと思いますけれども、適用拡大をすると比例の調整期間へ延びるという効果があります。その結果、比例の年金額は適用拡大で下がって、それで50歳の世代は、一部低下する人がいるということがあります。その効果が現れているのかと思っております。

○駒村委員 結構です。ありがとうございます。

○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、庄子委員、お願いします。

○庄子委員 御説明ありがとうございました。
 たくさんの計算をなさっていて、特に今回は年金額の分布推計などのところも充実されたというところで、この御努力には敬意を表したいと思います。
 それで、私の質問は、細かい話ではないのですが、資料1では5ページに記載されているオプション試算の内容について、この試算内容を実際に実施することを想定した場合には、これは全て法改正が必要であって、政省令レベルで見直すことができるものはないと理解してよろしいでしょうか、というのが1つの質問です。
 それから、2点目は年金数理部会の事務局にお伺いしたいのですけれども、今後ピアレビューをしていく対象なのですけれども、これは、現在の制度を将来投影したものをレビューするのか、それとも、このオプションのところも含めて、全体を網羅して見ていくのかというところを確認したいと思います。
 以上でございます。

○若林年金課長 年金課長でございます。
 1点目の御質問につきまして、結論から申し上げますと、法令改正が必要であると受け止めております。
 5ページにオプション試算が5つございますが、適用拡大の件もそうですし、それから基礎年金の拠出期間の延長など、それぞれについて厚生年金保険法または国民年金法の改正が必要になります。
 それから在職老齢年金制度についても、制度自体を廃止するとなると当然法改正になりますし、基準額を引き上げる場合でも、通常の改正であれば政令でできますが、そもそもの基準額を引き上げる場合は法改正になります。
 それから、標準報酬の見直しについても、現行のルールの範囲内で引き上げるということであれば法改正は不要ですが、ルールそのものを見直すということであれば、必ず法改正が必要になります。

○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、事務局、お願いします。

○村田首席年金数理官
 ピアレビューについてですが、こちらは公的年金制度の安定性の確保に関して、財政検証時に検証するということで、基本的には現行制度が中心になると考えておりますが、検証の内容によって、先生方のこれからのご議論次第ですけれども、必要に応じてオプション試算の結果や分布推計の結果を入れながらやるということはあるかなと思っております。
 これから皆さんで御検討いただきたいと思っています。

○庄子委員 ありがとうございます。
 オプション試算を、網羅的に見なければならないわけでではないということですね。

○村田首席年金数理官 そうでございます。

○庄子委員 ありがとうございました。

○翁部会長 ありがとうございます。
 そのほかは、いかがですか。佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員 御説明ありがとうございました。
 私も寺井委員のコメント同様、ビッグピクチャーが明確に示されていて、とても勉強になりました。
 その上で、感想に近いコメントと確認に近いコメントが1点ずつあります。
 1点目は、資料2-1の19ページなのですけれども、この表は大変よくまとまっていて、今回の経済状況の変化というところで、上段の3番目にある積立金残高、運用も大きく貢献したということが、なかなか取り上げられていないのですけれども、その効果がここにはきちんと掲載されていて、とてもよいと思います。
 2点目は、確認に近いコメントなのですけれども、資料4-1の5ページ目です。いろいろな年金の水準についてシミュレーションを行うときに、実質というときには、物価を考慮した実質ということで、税金のところは、分母の可処分所得については考慮があると思うのですけれども、水準については給付ということなので、恐らく税金や保険料の考慮がなされていないと思います。この5ページの受給開始を繰り下げて就労を延長した場合に、随分年金水準が増えるように見えるのですけれども、これはよく新聞などの報道にもあるように、実際の受取金額は、いろいろな天引きがあるので、さほどでもなかった。ですので、このシミュレーションは、そういう効果によって手取りが減少するみたいな、そういう注記もあってもよいのかなと、こんなにもらえるのという誤解を招きかねない数字なのかなと思いましたが、その理解で合っていますでしょうか。
 以上です。

○佐藤数理課長 確認の点については、委員御指摘のとおりだと思います。年金額はずっとグロスで示しております。つまり、ここからは社会保険料や税金が天引きされるということであります。天引き前の数字で表しておりますので、そういう御理解で大丈夫です。

○佐藤委員 ありがとうございました。
 マクロ的な出生率とか経済情勢というのは、個人のコントロールの域を超えていますので、それでいいと思うのですけれども、この部分については、個人が選択できる部分なので、そういう注記もあったほうがいいのかなと思った次第です。ありがとうございます。

○翁部会長 ありがとうございました。
 小野委員、お願いいたします。

○小野委員 ありがとうございます。
 私も年金部会の委員ですけれども、財政検証のたびに資料が充実してきておりまして、すばらしい仕事だと思いました。
 特に今回は、コホートごとの分布推計によりまして、給付の十分性の検討には、被保険者の動向の経年変化というものを考慮すべきだというメッセージを発せられたことというのが、非常に重要なことだったと思っております。
 これは前置きとして評価をさせていただいた私の感想ですけれども、3点ほど確認をさせていただきたいと思います。
 まず、被用者保険の適用拡大の試算でございます。例えば、資料1の6ページを見ますと、学生を除く20時間から30時間の方の4割弱ぐらいが、賃金要件を満たしていないと見えるわけです。
 昨今、最低賃金が上昇していますので、遠からず月8.8万円の要件というのは無意味になりまして、110万人というのは、急速に減少していくものだと思っておりました。
 そこで確認なのですけれども、この8.8万円という賃金要件は、厚年法の本則に規定されているものなので、名目額で固定して検証しているという理解でよろしいでしょうかということです。
 それとも、財政検証のたびに賃金水準に応じて改定されることを想定していらっしゃるのでしょうかということです。
 同じようなことですけれども、2030年代半ばに、最低賃金1,500円以上ですか、こういった想定をした試算もありましたけれども、この1,500円というのも名目値ということで、想定していらっしゃるのかということも含めて、第1点お伺いいたしたいと思います。
 次は、分布推計に関してですけれども、私の稚拙な知識で恐縮ですけれども、シミュレーションの方法ということで、今、整理中ということだったと思いますけれども、私が推測しますに、性別と年齢と被保険者種別及び年度ごとに異なる被保険者種別の遷移確率というのを、本体検証と整合的に設定した上で、各個人の標本ごとに対応する遷移確率を刻んだ、言わばルーレットを回すような作業を繰り返して、結果を得るのだろうなと思いました。
 そのような理解でよろしいのかということと、これを行った場合に、大数の法則がどの程度効くかとか、あるいはこのルーレットを回すためには、一様乱数をつくらなくてはいけないのだろうと思うのですけれども、この辺りで留意された点などがあれば教えていただきたいということが第2点です。
 最後に、これは、お答えしづらいのかもしれないのですけれども、結果の評価と、今後の問題の立て方についてということになると思うのですけれども、最近、就職氷河期世代と年金問題というのが、よく取り上げられるようになってきたなという感じを持っています。
 確かに、この世代というのは、初職非正規等が、他の世代よりも多かったのだろうとは思いますので、被用者保険の被保険者期間が極端に長い人たちは、多少の影響はあると思いますけれども、この年金額の分布推計、特に40歳とか50歳の辺りの人たちの分布推計を見ても、他の世代の趨勢から極端に外れるようなことというのは、どうもないように思います。
 この辺り、分析とか御見解があれば、お教えいただきたいということです。
 以上3点でございます。

○翁部会長 ありがとうございます。
 よろしくお願いいたします。

○若林年金課長
 最初の適用拡大の関係で短時間被保険者の要件8.8万円ですけれども、こちらは、厚生年金保険法の本則に記載がございまして、第12条に適用除外の規定があります。
 ここで、以下のものは適用除外であるとして、労働時間は週20時間未満、報酬8.8万円未満、学生であること、という裏からの書き方ではありますが、8.8万円という数字自体は厚年法本則に記載がございます。

○佐藤数理課長 それで、財政検証でどのように見込んでいるかということで言いますと、8.8万円未満に該当する人の割合を固定しています。ですから、賃金が上がっていくと、実際には、この8.8万を超える人が増えていくのかもしれませんが、そこは財政検証の中では見込んでいないということであります。
 実際に5年たって、それを超える人が増えて適用になれば、それは、当然織り込んでいきますが、将来の見込みとしては、見込んでいないというところであります。
 続きまして、分布推計については、先生、おおむねおっしゃったとおりです。乱数を発生させて推計しているわけですけれども、被保険者数で言いますと、まず、マクロの試算に合わせるということで、1号から2号に移る人、また1号から3号に移る人、1号のまま人、それぞれトータルで何人になるかというのをまず計算して、その中で、誰が1号に移るか、2号に移るか、3号に移るかというのを、乱数を発生して計算していると、そういうやり方をしています。まず、乱数を発生させて、後で合わせに行くというより、まず総数を決めて、その中で誰が移るかというのを決めていると、そういうやり方をしております。
 あと、就職氷河期のお話ですけれども、分布推計の結果を見ていただきますと、確かに厚生年金の被保険者期間を見ていきますと、氷河期世代の人でも、決して上の世代に比べて短くなっていると、そういうものは見えないわけです。しかし、いろいろな統計を見ていると、例えば就職氷河期の方は、先生がおっしゃったように、初め非正規の方が多かったということもあって、賃金水準を見ると、上のコホートより低いという状況も見られます。
 ですから、全く影響がないというわけではないと思っておりまして、厚生年金の加入期間だけを見ると、ある程度確保できますが、賃金水準が低いことによって、2階部分の年金が低いとか、そういった影響は、やはりあるのではないかなと考えているところであります。
 以上です。

○小野委員 どうもありがとうございました。

○翁部会長 ありがとうございました。
 山口委員、何かコメントはございますでしょうか。

○山口委員 ありがとうございます。
 1点コメントです。今、小野委員が御質問されたところで、資料の1の8ページで、今回は基礎年金の45年化は見送るということだったのですけれども、若い世代は、女性も就労参加が進んで、厚生年金に入る期間が増え、長期的にもらえる年金の額は上がっていく見通しとのことですけれども、もうある程度の年齢に達していて、これから働くとしても、あまり賃金の上昇は見込めないといったときなどに、給付水準が上がる方法という点では、こういう方法も選択肢にならないのかと思いました。
 今回分布推計をお示しいただいたので、どのような加入の推移になっていくのかということが、より見えるようになったので、理解がしやすくなったと思います。
 以上です。ありがとうございます。

○翁部会長 ありがとうございます。
 追加的にございますか。
 駒村委員、どうぞ。

○駒村委員 今、小野委員がおっしゃった、氷河期世代の話というのは、少し丁寧に見ておかないといけないのかなと思います。
 先ほども議論がありましたように、初職からしばらくの間、かなり向かい風で厳しい状況にあった。東大の玄田さんなどは、最近はd何回ジュニア、氷河期世代もいろいろな仕事に就いていらっしゃるという研究も出てきています。
 ただ、年金というのは、積分で金額が決まりますので、先ほど事務局が言ったような部分でハンディがあると思います。
 さらに、気をつけなくてはいけないのが、この世代が、例えば1974年世代は、1学年200万人いる世代なのですね。前の世代が百数十万人に対して、倍とはいかないですけれども、物すごい数の人になる。
 この人たちが、老後もマクロ経済スライドで、実質年金額が下がるようなことが80代半ばまで続いてしまうと、一体どういうことが起きるのか。あとは未婚率が、この世代は3割近く出ていますので、男性ですけれども、それを考えると、夫婦でという想定で、前の世代と同じようなイメージで考えていってもいけないと。
 そういう意味では、単に年金だけではなくて、人口的な構成のインパクトとか、結婚状態、婚姻状態とか、こういったことも踏まえて、このマクロ経済スライドの基礎年金部分をどのタイミングで止めなければいけないのかという話を、ちゃんとやらなければいけないと。団塊ジュニア世代は就職できたからもう大丈夫だとか、そんなようなイメージで議論してはいけないのではないかなと思います。
 この辺は、政策論で、この数理部会の場はないので、政策論はまた年金部会でやると思います。けれども、先ほどの議論があったシミュレーションの話の詳細について、今日、小野さんの遷移確率がどう発生するのかというのを説明いただいて、事務局も説明いただいたので、かなり様子が分かってきましたので、これも丁寧に情報を数理部会に出していただく必要がある。先ほど事務局が、分母に短時間労働者も入った所得代替率になったと説明されましたか、そうすると、少し従来の想定とは違う感じなのかなという感想です。従来も短時間労働者を賃金も分母の計算に入れていましたか。

○佐藤数理課長 それは同じであります。

○駒村委員 分かりました。ありがとうございます。

○翁部会長 大変貴重な意見をありがとうございました。
 私からも御質問をさせていただきたいのですけれども、まず、資料1の最初の2ページのところで、先ほどの御説明では、高成長ケース、成長型経済移行・継続ケース、過去30年投影ケースは、内閣府60年の見通しと一致させているというお話がありましたが、そうだとすると、年金財政における経済前提に関する専門委員会で設定している部分というのは、どこになるのですか。その付加価値の部分というのは、この4通りの中の一番下のところに反映されているのではないかと思うのですけれども、内閣府のをそのまま沿っているのであれば、どういう議論がされて、どこに委員会の付加価値があるのかということが、ちょっとわかりにくかったのですが、まず、そこを教えていただけますか。

○佐藤数理課長 内閣府の前提を用いているのは、TFP上昇率と、労働力の見通しです。労働力は全く一緒ではないですけれども、おおむね同じ設定をしているというところであります。
 そこから、実際に、年金の財政検証に使う運用利回りとか賃金上昇率、それをどう設定していくかというのは専門委員会で御議論いただいて、その中で経済モデルを用いて推計して設定しているというところであります。
 ですから、あくまでシナリオのベースになる前提のところを内閣府の推計と合わせているというところで、それ以降をどのように計算して、賃金や運用に設定するかは、専門委員会で御議論いただいて、決めているというところであります。

○翁部会長 前提とおっしゃると、生産性と、それから、そこでは労働参加率と出生率が3つのポイントだったと思うのですけれども、そのうち、それを全てが反映されているわけではないのですか。

○佐藤数理課長 労働参加とTFPは、基本的には同じ設定です。
 それで、出生率は、内閣府は高位とかを使っていたりするのですけれども。

○翁部会長 はい、1.8、1.64、1.36。

○佐藤数理課長 それでやっているのですけれども、専門委員会のほうでは中位でやっております。

○翁部会長 全て中位ですね、それは、高成長も、2番目も3番目も全部中位でやっているのですね。

○佐藤数理課長 そうです。ただ、出生率の影響は、2060年ぐらいまでの推計ですとそれほど大きくないと考えておりまして、全部中位でやっているというところであります。

○翁部会長 オプション試算をやっているので、そこは、検証はできるのですけれども、前提のところは確認させていただきたかったということです。多分、生産性や出生率とかは、全て内生的に関係しているので、それが整合的になっていればいいのだが、ということを確認したかったということです。まず、そこが第1点です。
 それから、8ページのところで、これは、今日大変多くの議論が出てきた大事なところだと思っているのですけれども、今回、これを検討するのを断念した経緯というのは、どういうことだったのですか。

○若林年金課長 年金課長でございます。
 説明ぶりは、7月3日の年金部会における年金局長の発言として議事録で確認できますが、私なりに御説明申し上げますと、年金部会では、問題意識として、基礎年金の将来の水準が低下する問題があるということは、議論を開始した時点から論点として挙げられておりました。
 それに向けた対応として、調整期間の一致であったり、45年化であったり、適用拡大を通じた対応について、昨年一通り議論をしていただいております。
 その上で、財政検証結果を踏まえて、これから年末の取りまとめに向けた議論を行うに当たって、今申し上げた幾つかある手法をどう評価するかというところで、今回そういう判断をしたということでございます。
 どういう判断かと申し上げますと、財政検証結果を踏まえると、総じて、将来の所得代替率は、今日の御説明のとおり改善効果が見られる一方で、基礎年金については、給付水準の低下が見込まれているところです。これを踏まえて、来年の改正を見据えて何を優先して議論していくかという中で、先ほど申し上げた幾つか手法があるうちの45年化については、もちろん政策手段として非常に大切な手段ではあるのですが、他方で、そのためには60代前半の第1号被保険者の方に追加の保険料負担をいただくことになります。
 これを計算しますと、大体5年間で100万円ぐらいでして、45年化する場合にはこの負担をお願いすることになります。
 ということを考えると、その負担をお願いしてまで、45年化というのを来年の改正で議論していく必要があるのかというところについて、今回の財政検証結果を踏まえると、そこまでの必要性といいますか、そうではないのではないかという判断、これは事務局の方で省内でも議論をしているわけですが、その旨を御説明させていただきました。それに対して年金部会で御議論もありましたが、こういった経緯でございます。
 ということで申し上げますと、基礎年金の水準低下の問題自体がなくなったわけではございませんので、引き続き、調整期間の一致であるとか、適用拡大を通じて基礎年金の水準が上がるという効果が確認されておりますので、それ自体継続して議論していきたいと思っております。
 加えまして、さらに将来を考えた場合に、政策手段としての45年延長というのがなくなったということではありませんので、その先のこと、これはまた5年後の結果も見据えながら、引き続き課題としては取り上げて議論してまいりたいと考えております。

○翁部会長 分かりました。
 大変ここは重要な論点で、駒村委員も小野委員も、また、山口委員も長期的な展望に立った議論が必要という趣旨のご発言だったと思いますが、避けて通れない課題かなと思っています。数理部会でもいろいろな観点から議論ができたらとは思っております。
 それから、低年金の解消というのは非常に重要ですし、今日お話を伺っていても、いかに長く、いかに多くの人が労働参加していくかということが、年金を支えるという意味でも大きなテーマでもあると思いましたので、この点は大事だなとは感じております。
 それから、もう一つ、これに関してテクニカルに教えていただきたいのですけれども、このオプションというか、この給付増額の議論と、それからマクロ経済スライドの調整期間の一致というのは、同時にやっていった場合というのは、国庫負担がどのようになるのかという議論はしているのでしょうか。
 先ほど、もう一つのオプション試算のほうで、資料の3-1の19ページで、こちらの国庫負担の見通しの変化というのをやっておられましたけれども、そこの整合性について教えていただけますか。

○佐藤数理課長 今回、オプションでも、基礎年金の45年化と調整期間の一致を組み合わせた試算というのも行っておりまして、国庫負担につきましては、おおむねそれぞれ行った場合の合計になると考えていただいてよいかと思います。

○翁部会長 合計ですね。

○佐藤数理課長 はい。

○翁部会長 分かりました。
 最後の質問なのですけれども、12ページの、標準報酬月額の上限見通しをやった場合に、そこに当たる方々の年金の給付増になるということは分かったのですが、同時に所得分配にも貢献するのだという御説明がありました。そこのロジックを、もう一回具体的に確認させてください。

○佐藤数理課長 厚生年金の保険料、18.3%でありますが、こちらは1階と2階を合わせてトータルで保険料を取っております。
 この上限を引き上げた場合、増えた報酬の18.3%、保険料が増えるわけですが、給付の増というのは、基礎年金は変わらずに報酬比例だけ増えることになります。そうすると、基礎年金は変わらない分、全体の財政にプラスになるということになりまして、マクロ経済スライドが短縮して、将来の所得代替率が上がると、そういう効果があるということです。
 つまり、高所得者の保険料負担が増えて、それで全体の給付が上がるということですので、所得再分配効果が拡大するという意味があるかと考えております。

○翁部会長 その点で、今回は3つだけ見通しが書いてあるのですけれども、高所得者に対する給付増をどこまで上げるかという問題はあると思うのですけれども、もう少し上限撤廃の金額を大きくするとか、そういう可能性は、所得再分配をさらに強めるという意味では、保険の性格を失う面もあるのですけれども、これは98万までに、一応この3通りにしたという根拠のところは、どんな感じで設定されているのですか。

○若林年金課長 標準報酬月額の議論につきまして、これは、もう一つ健康保険の上限というのがございます。これは、月額139万円です。同じ被用者保険なのですが、2倍ぐらい違うという現状です。
 これは、なぜ年金のほうが低いかというところの経緯にもよるのですけれども、1つの考え方として、当時から言われておりますのは、高くなればなるほど、年金の場合は給付も高くなりますので、将来の年金額が高くなるという効果は当然生じます。65万円を130万円にすれば、極端な話、厚生年金は2倍になります。
 という将来の給付水準として、ある意味、年金の格差が広がることになるわけですけれども、そこがどこまでが適正かというものがございました。ここが医療圏と違う点です。
 現在のルールは、実は平均的な標準報酬の2倍ルールというのを用いていまして、例えば、全厚生年金被保険者の、今、三十数万円ぐらいが平均標準報酬ですけれども、その2倍、これは、ちょうど65万円ぐらいということで、65万円の等級を上限にしています。そう意味では、年金額も2倍までを上限にするということになります。
 ただ、ここの点につきまして、実は65万円の上限に該当することは、非常に多い状態でして、全体の階層で、男性は特に多くなっています。
 という意味で、その2倍のルールと年金額の問題は、もちろんあるのですが、負担能力に応じた負担をいただく、あるいは健康保険の等級を見た場合に、もう少し上限を上げてもいいのではないかという議論で、今、進めております。
 では、どこまで上げるのかというところは、先ほどの医療と年金の違いもありますので、極端に言えば、健康保険に合わせるという議論もあるとは思うのですが、そこまでではないのではないかというところ、当然、事業主負担等も増えますので、そういう御懸念の声もございます。
 オプション試算につきましては、どこまで上げるという、そこまで見据えたものというよりは、まさに政策効果として、どの程度やった場合に、どれぐらい上がるというものを見て、その数字を見て議論に資するようなものをいただきたいということで、ある意味、機械的に今回3つ設定しています。
 それで、75万、83万という数字というよりは、上限に該当する方が、全体にどれぐらいいらっしゃるのかという割合で見ていまして、現在65万円該当の方は6.2%、12ページの資料にありますけれども、いらっしゃいますが、これが4%、3%、2%、機械的に設定した場合の等級が、たまたま75万、83万、98万だったということです。
 それから、健康保険につきまして、さらに上限該当者数の割合ですね、1%とか1.5%とか、また別のルールでやっていますので、そういうのも見据えながら議論を深めていきたいと考えております。
 以上です。

○翁部会長 どうもありがとうございました。
 全体としてお伺いして、皆様おっしゃっているように、今回分布推計とかが出てきて、どのように1号、2号、3号の比率が変わっていくのかとか、女性の就労でどのように大きく変化していくのかというのも非常によく分かって、非常に大変な作業だったと思いますので、御尽力に感謝しますし、また、御説明もどうもありがとうございました。
 追加的にございませんでしょうか、よろしいですか。
 それでは、年金数理部会では、本日の御説明も踏まえまして、今回の財政検証について、どのような視点から検討を進めていくのか、各制度からどのような資料を御提供いただくのかといったことについて検討し、今後、各共済も含めて詳細なヒアリングを実施していきたいと思っております。事務局におかれましても、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、今後の日程については、いかがでしょうか。

○村田首席年金数理官 今後の日程につきましては、調整させていただきまして、御連絡申し上げますので、よろしくお願いいたします。

○翁部会長 ありがとうございます。
 それでは、第101回年金数理部会は、これにて終了いたします。どうもありがとうございました。

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